ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
デュエルを終えた俺とユミは他メンバーにこっぴどく叱られた後に星屑の流星ギルドハウスへと戻ってきた。
そのまま帰ろうと思ったが突然ヨシノから「ハル兄と一人ずつ話さない?」という提案がされて全員が満場一致でYesを出したことにより俺はメンバーそれぞれと個人で話すことになった。
──────
個人的な話もするかもという事でそれぞれの使ってる個室にて話すことになりまず最初にミコトの部屋へ招かれた。
「いやー、ヨシノちゃんには困ったもんだね」
「あんたも賛成してただろ」
「おや失敬な。私は空気を読んで賛成しただけだよ」
ふふん、とドヤ顔を見せるが要するに嫌でも多数決に勝てないと察して賛成したってことだろう。
全員のうち4人は手を挙げてたわけだし。でもまさかユミも手を挙げるとは思わなかった。
「それで、何か話したいことでも?」
「後輩くん……あぁ、いや。
「──何でしょう?」
アーガス時代からずっと呼ばれてた呼び方を改めた先輩は真剣な声色になった。
「君は、本当に件の子を救えるのかい?」
ミコトは……いや、北沢先輩はアーガスの、そして人生の先輩として普段見せない大人びた声で静かにそう聞いた。
救う、か───。
「答えなんて出せません。彼女が何故この道を選んだのか、それすら分からない今は、救う救えないなんて考えるだけ無駄です。
でも、それでも俺は───」
たとえ、導いた先に苦悩が待っていようと、今彼女が選んだ道は間違いだと、そう伝え、正しい道へと手を差し伸べる。
「あいつを、放ってはおけないです」
「それならどうする、もし、彼女が君に、君の大切な仲間に危害を加えそうになったら、危害を加えたなら、それでも君は彼女をただ許し、導くのかい?」
「それは……」
「今の君の考えを聞くだけじゃ、その場の勢いだけでただ助けると言ってるだけに思えるんだけど、どうなのかな」
「先輩の言う通りかもしれないです、でも──
あいつが歩んでる道が間違ってることを正せる人は今この世界に数人しかいない。
たとえ、無理して突っ込んででも、あいつが危害を加えようとも俺は、
確かに、俺は後先考えずに彼女を助けることだけを目標にしているかもしれない。
でも、たとえ彼女が俺らに危害を加えようとも、手を差し伸べられるのは俺たち──
それならば───
「まさか、
「……あいつには明るい未来を与えますよ。
ただ、その場に───」
最悪の結果なんてものは彼女が道を間違えた今で終わりにする。
もしもの事があれば、その時はその時だ。
きっと、
「……君って奴は」
「無理はしませんよ、死ぬ気で挑むだけです」
「君に死なれたら困るんだけどね」
「未来は、誰にもわかりませんから」
どんな時だって、ほんの少しの選択肢の違いだけで運命は左右する。
今回だって、彼女が戻るまでに選んだ手段が全て正解に向かうとも限らない。
「……ま、これ以上言っても無駄だろうから隣の部屋に行きなよ」
「そうさせてもらいます」
少し呆れた様子で話の終わりを伝えてきた先輩は部屋の扉を開けて隣へ行くよう促してきた。
俺もこれ以上話すことは無いため素直に従い廊下に出た。
──死ぬなよ、後輩。
先輩がそう呟いたことに気づくことは無かった。
隣の部屋の扉を叩き返事を貰ってから中へ入る。
「ようこそ、でいいのかな」
「お邪魔しますよ、ヤヨイさん」
「ん、別に遮音だし名前でいいと思うよ」
「ならそうさせてもらいます」
2人目に話すのはミコトと同じアーガスの先輩であるヤヨイこと新田先輩だ。
先輩はアーガスにいた時と変わらず静かに座り俺を手招く。
「それで、ヨシノの提案に賛同したってことは何か話すことがあるんです?」
「うん、一つだけ」
招きに従い隣に座った瞬間、俺は先輩の膝へと倒された……所謂膝枕なのだが。
何故こんなことをしたのかと目線をあげようとしたが、彼女に抑えられ動けなかった。
「何したいんですか」
「そのまま、私の話を聞いて」
「……わかりました」
起き上がれる状態じゃないため諦めて彼女の膝に身を預けると「くすぐったい…」と小さく聞こえたが無視して話に耳を傾けた。
「実は、サキちゃんが君と知り合いだって聞いたんだ。それで両親と妹……アキちゃんの事を悔やんでるって、そしてその……」
サキがどこまで話したのか分からないが後で口封じしておこう。
というのは置いておいて先輩は彼女から聞いた話の途中で言葉を詰まらせた。
「そういえば先輩には話してませんでしたね」
「高校生なのにアーガスにいる時点でなにかあるんだろうとは思ったけどね……でも、なんで君は何も打ち明けないの?そんなに──」
「曇ってる、って言いたいんですか」
先輩が言いたいことは俺が1番わかってる。
そりゃ、誰だってあんな経験して曇らないやつはいないだろう。
だが、先輩の返事は想定とは違っていた。
「違う──なんでそんなに……
「平気……か」
「君はあれだけの事があったのに、周りに見せる姿はまるで何も無い普通の高校生、本当なら外に出ることさえ嫌になるぐらいの思いをしたのに、それでも君は……」
先輩は声を震わせて少量ながらも大粒の涙を流していた。
膝枕されてる俺の顔へ少し落ちてきたがそんなことは気にせずに先輩の涙を拭った。
「そりゃ俺だってあの事件以降しばらくは外に出てませんでしたよ。
でも、妹があんな状態になってまで頑張ってるのに、
それでもしばらくは普通に暮らせてましたし、特に問題は無かったです」
「……でも途中で勘づかれたんでしょ?」
「そこまで聞いてたんですか……そうです、サキの言う通り俺は途中で周りの人達から人を殺した人間と、子供故の詮索が原因でバレたんです」
「何も、思わなかったの?」
「……思いましたよ、でも、そう言われても
「それで君がずっと悔やむ必要は……」
「両親を殺され、妹があんな目にあったのに、俺が出来たことは我を忘れて犯人が落とした銃で犯人を撃つことだけ。
もし、あの時俺が妹を守れていれば、あいつは傷付くことは無かった。
もし、俺が両親を庇っていれば……千秋が今の暮らしになることは──」
そこまで言いかけたその時、突然先輩に両手を掴まれた。
彼女の手は震えていた。
「バカなこと言わないで!!」
「何も、間違っちゃ……」
「間違ってるよ、君が言ってることは全部」
「なら何が正しいって言うんですか」
先輩の言っていることに思わず反論しようと起き上がろうとしたが両肩を押さえつけられてしまい起き上がることは出来ない。
そして当の先輩は膝枕を解除し突然俺の上へ馬乗りになった。
「君は、
過ぎてしまった運命を今更後悔しても遅いんだから」
「でも……」
「なら君は──死にたいなんて言うつもり?」
先輩の言葉に対して否定を口にしようとしたが言葉を詰まらせてしまう。
その理由は俺自身がよくわかっている。
両親を目の前で殺され、妹が……千秋が右目を撃たれたあの瞬間、我を忘れて犯人を撃った。
その後妹と共に病院へ運ばれた俺は
それでも、あと一歩が出せずに自殺未遂で終わった。
俺が死ねば、起きた事実に向き合わずに逃げてしまえば、失った物が戻ってくると、そんなバカげた事をずっと考えていた。
でも……
「……妹が頑張ってる姿を見てしまったから、俺は生きてしまったんです」
「……それ以上は聞かないよ」
思わず口に出していた言葉を深く聞かずに先輩は俺を抱きしめて頭を撫でてきた。
慰めのつもりなのかわからないが今突飛ばす理由もない。
「よく今まで頑張ったね。
それだけ辛い思いをしたのに君は弱音を吐かず、それだけじゃなく周りの人を助けようとまでして、君は──」
「……ありがとうございます」
「感謝するのはこっちだよ、
「……どういうことです?」
「──君は、生きることきっと否定し続けてきた。
でもね、如月君は──ううん、誰でもそうだけど……」
先輩は俺を離して両肩を掴み向き合う形になった。
そして、たった一言。
「
「……っ」
「君がいなければきっと救われないままの子が沢山居た。
サキちゃん……はどうか分からないけどアキちゃんやヨシノちゃん、カエデちゃんとその友達
みんな君に、どんな形でかはわからないけど救われたと思うよ。
君は自覚が無いかもしれないけどね」
「……なら、いいですけど」
「……これ以上は言わないでおこうかな
長話してると他のみんなに怒られちゃうから」
話を途中でやめた先輩は普段は見せないふにゃっとした笑みを浮かべて立ち上がった。
気にしてなかったがミコトの倍近い時間話していて時間はかなり遅くなってしまっている。
「さ、次の子の所へ」
「そうさせてもらいます」
自分からうかべた笑みに照れた様子の先輩は何故か目を逸らしながら次の部屋へ行くように促してきた。
言葉に従い立ち上がってドアノブへ手をかけたところで彼女が声をかけてきた。
「……如月君」
「なんでしょう?」
「単なる人生の先輩なだけの戯言程度でも、さっきの言葉が伝わってくれたら嬉しいな」
「ちゃんと伝わりましたよ、先輩の気持ち」
「うん、良かった」
戯言だとは決して思わなかった。
そうとは言わなかったけどきっと彼女には伝わっただろう。
俺が初めて言われた
新田先輩──ヤヨイの部屋を出た俺は次に隣の部屋をノックした。
返事がないと思いきや扉がいきなり開かれて腕を掴まれた俺は部屋の中へと引きずり込まれた。
「……泣き跡!?」
「お前な……引っ張るなよ」
思いっきり地面へ倒れた俺の顔を覗き込んで失礼な第一声を放ったのはサキだった。
起き上がり彼女を見るとてへぺろと言いたそうな表情を浮かべている。
「今日サキっちとユミっちがやったやり方真似してみたんだけどダメだった?」
「当たり前だろ」
「ありゃ、そうだったのか」
「わざとだろ」
「さぁ、それはどうでしょう……それより何かあった?」
「ちょっと先輩とな」
中学のときとあまり変わらない会話の中、彼女はあの日──中学の放課後の時のような声色で俺の変化を聞いてきた。
別に泣いてた訳では無いがそんな些細な変化に気づくとは……
「ま、吹っ切れた様子だから別にいいかな」
「そうかもな、それより──」
「久しぶり、って?」
自然に話していたがこれでも3年ぶりぐらいの再会になる。
それこそ千秋よりは短い期間だがこう見えてまともな彼女との再会は嬉しいところがある。
「卒業以来特に連絡もしてなかったからな」
「そうだよ、ラギクン携帯もな──あっ」
「だから、それは良いって言ってるだろ」
「そうだけどさ……不謹慎だよね」
「別に携帯ぐらい無くてもどうにかなるしその件もあまり気にしてない」
再会の喜びもつかの間サキは言葉を詰まらせ謝罪をした。
詳しいことは省くが中学を卒業する頃に周りのほとんどがスマホを持っていたが両親がいない俺はスマホを持つことは無かった。
自宅は祖父母が用意してくれた家に住んではいるもののスマホまで用意してもらうわけには行かなかったためアーガス入社後まで所持していない。
それに関して「俺だけなんで」だとか考えることもしなかったから気にしてなかったのだ。
「でも……」
「しつこいと嫌われるぞ」
サキは中学の時から変わらず何かと心配してくれるが少し過保護な気がする。
本人が気にしてないって言ってるんだからそんなに深く考えることは無いと思うのだが……
「ま、ラギクンがいいならいいけど……」
「それで、要件はなんだ?」
「あーそれね、無いよ」
「……は?」
話を戻して今俺がここにいる理由、つまり各個人で俺と話すという突如決まったこの大変なイベント、それに大きく賛同したサキは前者の先輩達と同様に何か話すことがあると思っていたのだが本人の口から出たのは真反対の言葉だった。
「ならなんでヨシノに賛成したんだよ」
「私は特に話すことないけどさ、今日君がここに来た時と第10層で会った時にみんなが見せた反応から何かしらの繋がりがあるんじゃないかなって思ったんだ。
それで、一番何かありそうなヨシノちゃんが話したいって言ったんだもん、多忙そうなラギクンが空いてる今のうちに機会を作らないとと思ってね」
「それで賛成したのか……」
相変わらずな理由を話した彼女に呆れよりも安心をしてしまった。
確かにヨシノやサキ、そして先輩2人も俺がいるとわかってからやけに士気が上がってた気がするし人を見ることに長けた彼女だからこそその理由が俺であると気づいたんだろう。
「まぁ、ユミさんには冷や汗出たけど」
「俺がいちばん焦ったよ、なんなんだアイツ」
「悪い人じゃないんだよ……多分」
「それは話しててわかったけど」
もちろん夕立の霧雨のメンバーが心配でそのそばに居続けた俺がどんな奴か確かめる必要があるのは理解出来る。
それこそ俺だって6分の5が知り合いのこのギルドに参加してるユミがどんな実力か確かめようとはしただろう。
それにしてもいきなり剣向けてくるのは正直怖かった。
「でも、ユミさんもずっと「ある子達を探してる」って言ってたんだよ」
「ずっと……そういえばお前らいつギルドを?」
「そっか、まだ話してないっけ」
「再会が今日だからな」
「んー……なら、私よりヨシノちゃんの方がいいかな」
ユミの言ったある子達というのは間違いなく夕立の霧雨たちだろう。
ただ彼女がシズク達とどんな関係なのかはわからないままだ。
そして気になったのはこのギルドの結成時期だが、サキは考える素振りを見せた後にヨシノから聞けと話を流した。
「あの子がギルドリーダーだからね」
「あいつ頑張ってるんだな」
第10層ではしばらくの間気を失ってしまい彼女の活躍は後からシズクに聞いたが先頭に立つ姿はギルドを率いる者としての風格があったらしい。
まさか、彼女が前線にたつなど考えてもなかったが。
「私があった頃には「ハル兄に会う!」って意気込んでたからね」
「……まぁそれで誰とはわからなかったならいいか」
「私もすぐには気づけなかったからねぇ」
サキもそうだがリアルの情報をペラペラと喋るのは規則違反になる。
どこかの誰かもペラペラと喋っていたがこのゲーム内に規則違反してるプレイヤーが多い。
個人情報を話して苦労するのは当人だから他人がどうこう言うものでは無いがプライバシーを少しぐらい考えるべきだと思う。
それはそうと彼女が先程からソワソワしている。
それに気づきしばらく見ていると彼女は首を傾げた。
「ん?何さ?」
「いや、何か言いたそうだから」
「君も人を見る目があるね」
「お前ほどじゃないよ」
いたずらな笑顔をうかべる彼女は昔と変わらず俺の顔を覗き込んできた。
人を見る目があれば他人の恋心を踏みにじるようなやつにはなってないがそう言いたい気持ちを抑えて彼女の言葉を待った。
「正直見てればわかる……けど、ちゃんと君の口から聞きたいんだ」
「……何を?」
「ラギクン……いや、春揮」
年相応……では無い顔から真剣な顔になったサキ……鈴は呼び方を変えた。
「──人を好きになれたかい?」
いつの日か彼女とした約束、「人を好きになる」。
あの時の俺は周りから距離を置き孤立して生きていた。それ故に彼女に泣きながら抱きつかれる一件に発展したのだが。
あれから色々あった、アーガスに入りあの先輩方やカエデ、そしてヨシノと出会い、このゲームでシズクやライム、そしてハヅキと会った。
好きになる、それがどういう意味だったのかは今もわからないがそれでも答えは見つかった。
「関わる相手としても、そして恋愛的な意味としても、俺は人を好きになったよ
もちろん、全員を好きになれるほどお人好しじゃないけどな」
「……そっか」
俺の答えを聞いたサキは一言だけ呟き立ち上がる。
そして俺の前に立ちウィンドウを操作して何かを取りだした。
「それを聞けたなら私は十分。
いつか会う時に現実で渡そうと思ってたアクセサリーなんだけど、SAOでもそれを忘れられなくてついずっと持ってたんだ」
「これは……」
「前線に立つプレイヤーである君には邪魔かもしれないけど、受け取ってくれる?」
彼女が手に持ったのは長めのモコモコした布。
詳細を開くとそこには『白銀のマフラー』と書かれている。
「現実で渡すつもりでこっちでもって……」
「……二度と会えないかもしれないのに、馬鹿だよね」
「お前……」
彼女は寂しそうな表情を浮かべたまま俺の前に立っている。
きっと、彼女は──
「……ありがとな、天崎」
「ふぇ?」
このまま泣き出してしまうんじゃないかという顔をしている彼女の名を呼び立ち上がりながら彼女の名を呼ぶ。
いきなり名前を呼ばれて困惑してる彼女の手にあるマフラーを受け取り首に巻いてから彼女の頭に手を置いた。
「お前も、あいつらと同じなんだな」
「それって、そっちのギルドの……?」
「あぁ、お前もあいつらと同じ……恋愛感情を持ってるんだろ」
「そんな……こと……」
サキは俺の言葉に戸惑ったがすぐに彼女は俯きながら俺に抱きついてきた。
何も言わずに彼女の背中と頭に手を置く。
「……だよ」
「鈴……?」
「私は、きっと君が好きだった。
あの日、怒られそうになるぐらい遅くまで一緒にいたあの瞬間から……名前を呼んでくれたあの時から。
でも、好意は君には重いって勝手に決めて何も言えずに……その気持ちを塞ぎ込んだんだ」
「そう、か……」
「……ごめん、こんなこと今更言っても困るよね」
「何言ってんだお前」
「えっ……?」
ライム達の時と同様、俺は他人がどう思っているかを気にしていなかった。
……いや、
自分の行いが勘づかれてしまい周りの目を、思いを無視し続けてしまったからこそ、無理やりにでも話しかけて仲良くしてくれた初めての友人が好意を抱いてくれたその事実に目を背けていた。
それが、こうやって彼女を苦しめていた。
「お前の気持ちに気づかなかった俺が悪い」
「そんなこと──」
「……俺は、お前の好意を今更気づいた。
それも、
「あの子が……」
サキだけじゃない、シズク達にも好意を抱かれていたのに俺は一を選んだ。
何も知らないただ一人の少女を助けるために、
俺は、どうしようもない屑だ。
でも───
「春揮」
「……?」
「私は、ううん。
みんな、きっと君のその思いにしっかり納得してくれたと思うよ。
だから───」
彼女は抱きつくのをやめて俺の正面に立つ。
未だ流れる涙を拭い満面の笑みを見せた。
「──私は君たちを応援する。
もちろん悔しいけど、
「……いいのか?」
「好きな相手が他の人をすきになるなんてよくあることでしょ、気にしなくていいんだよ」
「……そうか」
「ほら、これで私の話は終わり!ほら次行きなよ!」
優しくそう言ってくれた彼女が少し寂しそうな顔を見せながらも俺を部屋のドア前に移動させた。
意外と力が強くそのまま扉の外へと押し出されてしまった。
「最後に一つだけ言わせろ!?」
「……何」
無言で扉を閉められそうになったのを足でギリギリ止める。
いきなりの展開に頭が追いついてないがそれでも一言ぐらいは伝えておかないと。
「マフラー、ありがとな」
「……うん」
そう伝えると静かに頷き挟まった俺の足を蹴って無理やり扉を閉めた。
後で文句のひとつでも言おうと思ったが、やけに静かな廊下の雰囲気でその気分はどこかに行ってしまっていた。
「次は……」
気持ちを改め俺は隣の部屋──《アキ》と書かれたネームプレートがかけられたドアノブに手をかけた。
ラギが隣の部屋に入った直後。
耐えられず無理やり追い出してしまったサキは扉に背を預けて座り込んでいた。
(何やってんだ私……わかりきってたことを今更知ったような口で──)
彼が他人から好かれているということ、そして彼が誰かを好きになったということはこの世界で再会した時、彼の表情と彼の周りにいた少女達の信頼を見てすぐにわかった。
それでも、『ありえないはずの』奇跡に頼って彼へ告白した。
もちろん答えは良い方には行かなかった。
「……悔しいな」
サキは泣いていた。
叶わぬ恋だとどこかでわかっていたのに口を開いた自分の愚かさに、選ばれなかったと改めて知ったことに対しての涙を流していた。
「……でも、良かった」
悔しいのも、彼と現在行方不明の少女が上手くいくことを応援する気持ちもどちらも本当の気持ち。
だからこそ、
「春揮、楽しそうだった。
ちゃんと、約束も覚えていてくれたし」
ある日、彼と交した約束。
無理な約束をしたつもりでどうせ再会した時には忘れてると思っていた故に、彼があの約束に対する答えを見つけていたことが何よりも嬉しかった。
様々な気持ちに揺さぶられてはいるものの、彼女は覚悟だけは揺らがせなかった。
「……本気で、君たちを応援する。
──君が死なないようにするためにね、春揮」
そう、既に別室で話をしている次のイベントで死ぬ覚悟の彼を助ける覚悟を口にしていた。
2ヶ月空いてしまいました、お久しぶりです。
今回はおまけ回前編、星屑の流星メンバー3人との会話です。
どうでもいい話多めだと思ったそこのあなた、あながち間違ってる。
本来なら1話で6人にしようと思い書いてたら3倍長かったので前編を先に公開します。
この回はシズクとのデュエル回(78話)後に執筆し始めたのでデュエル時には今回でてきたマフラーを未装備です。
先輩故に気にかけてくれる2人と久しぶりに再会した同級生との会話。
彼は罪な男ですね、重罪です。
────────────
キャラクタープロフ(簡易)
ミコト
黒髪ショートの薄緑色の目
メイン武器:片手直剣
ヤヨイ
茶髪ショートの黒色の目
メイン武器:両手剣
サブ武器:片手直剣
サキ
朱色のショートヘアで水色の目(SAO内)
メイン武器:弓
サブ武器:片手直剣(弓装填用)