ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
2022年12月1日。
都内某所のアパート
この時期の都内にしてはやけに冷え込む朝、例外なく冷え込んでいるアパートの一室に爆音のアラームが鳴り響く。
「んぁ?……っさいな」
爆音の中さすがに寝ていられないと苛立ち気味の声を出しながらアラームを鳴らしている機器に手を伸ばす。
鳴り止んだ機器の画面を寝ぼけながらも見るとそこには10件ほどの着信履歴が表示されていた。
「いっけね、今日は約束してたんだっけ……ってまだ5時やん」
掛け布団の誘惑を何とか逃れながら起き上がり思考が覚めるのを待ち今日という日に何があるのかを確認するが、明らかに約束の時間では無い。
そしてよく見れば着信は別の者から来ていた。
「げっ、宮田……」
心底嫌そうな声を出して呼んだのは会社の上司にあたる人物、半年ほど前に喧嘩してからあまり口を聞いてないしタメ口で接してるからか妙な苦手意識を持っている相手からの着信が10件。
これ以上着信履歴に名を残したくないという一心でかけ直すことを決めて電話をかける。
『やっと繋がった』
「朝から何ですか、嫌がらせですか」
『いや、自宅待機期間過ぎてんだが、何してんだ』
「……出勤出来る状況ならしとるよ」
『それならせめて11月半ばにはそういう連絡よこせって』
「いやいや、音沙汰無くしたのはお互い様でしょ、それに自宅待機期間自体先週末だから連絡する必要ないって」
『……悪いニュースがあるんだが』
「なんや、茅場晶彦がお陀仏?」
『それはいいニュースだろ、じゃなくて。
うちの社員数名、SAOにログインしてる』
「──は?」
約一ヶ月ぶりの上司からの電話、所謂業務連絡に過ぎないものだったが何よりこの1ヶ月、正確には3週間と数日、アーガス社員は全責任を負った社長の辞職と共に半数が辞め、残されたのは元から名前の上がる人物たち──つまるところ優秀とされるメンバーだけだった。
そしてそんなメンバーの一部はデスゲーム開始数日後に来た菊岡という男の指示で自宅待機を強制された。
それから半年後には自宅待機期間は終わっていたが、久しぶりの長期休暇と余裕ぶっていたこの女──北沢琴海は突然の発言に超低いトーンを出した。
「あっちゃん……では無いのはわかってるけど、誰や?」
『如月と小嵐、あと下田』
「後輩くん達が……?」
『当日、如月は自宅で、小嵐はアーガス社内の仮眠室でログインした』
「いやいや、ログインした時の状態なんてどうでもいいって!」
『……言いたいことはわかるが、落ち着け』
「落ち着いとる場合やないやろ!?」
落ち着きながら淡々と事を語る宮田に対し、普段の彼女は出さないような大声を上げた。
無理もない、彼女がキレているのはアーガス社員という同じ立場ながらも自身が友人の次に好きだと感じている後輩2人がかのデスゲームにログインしているのだ。
『そんな声荒げなくていいだろ』
「どーせあんたは無事だからどうとか言うんやろうけど、あんたが楽観視してんのは
『そりゃ分かってるが……』
「わかっとんなら『落ち着け』じゃないやろ!?このクソゴミが!!」
『お前言っていいことと悪いこと──』
「知るかボケ!」
上司とか歳上など全く気にしない強い言葉を吐きより一層嫌いになった相手との通話を切り彼女は慣れた手つきで別の相手へと電話をかける。
「朝早くごめん、予定なんだけど───」
数分話した後、それなりに整った部屋の隅にあるクローゼットから普段着を取りだして寝間着から着替えてそのほかの細かい準備を終えた彼女は机に放られていた社員証をカバンに詰め込み外へ出た。
部屋を飛び出した私は今日本来の予定を5時間ほど前倒ししてその集合場所であるカフェに到着した。
「はぁ……はぁ……」
「琴海ちゃん……大丈夫?」
「だ、大丈夫……ではない」
「もう、焦らなくていいって言ったの琴海ちゃんでしょ……なんで猛ダッシュしてるの」
「だってここ遠いし電車は混むしあっちゃんを待たせる訳にはいかんかったのよ」
「気持ちは嬉しいけど体力無いんだから」
「それ言われるとなんも言えん」
自慢では無いけどアーガス社内で見ても下から数えた方が早いぐらいには体力が無い。
それだからいつも電車使って移動しとるけど、この都会で急ぎとはいえめちゃくちゃ混む中に乗る気にはならない。
とはいえ無理言って朝早く来てもらった相手を待たせる訳にはいかず猛ダッシュしたら案の定着いた時点で息するのがやっとなぐらいバテてしまった。
「それで、急遽話が出来たって何?」
「そうかあっちゃんに電話するわけないわなあの輩は」
「……?」
「他でもない、あっちゃんにしか頼めない……いや、
「どこに……?」
一人で宮田にありもしない──とも限らない──偏見をぶつけながら納得している向かいで何一つ理解してないあっちゃんへスマホを見せる。
そこには今現在も大きく取り上げられている《SAO》のホームページが。
「浮遊城、アインクラッドにだよ」
あっちゃんに事の経緯を全て話したら一つ返事で首を立てに振ってくれた。
今更ながら少し申し訳ない気持ちはあるけど、それでも外部からの協力者は一人でも多いほうがいい。
なんて心配をしながら私たちはマスコミが湧いてるアーガス社に裏ルートで入った。
「それであの人あんなキレてるわけね」
「あんなのほっといて、どうにかならへん?」
「なるけど、本気?」
「本当は一人で行く気だったんやけど、
「納得、それに──」
頭を抱えたりキレたりを繰り返してるらしい宮田を横目に現状のリーダー的な立ち位置になっている木田さんへ交渉を持ち込んだ。
少し考える素振りを見せながらもその目線は今は空席となった彼──如月君の席に向いていた。
「彼、下手したら死にそうだもんね」
「あ、気づいてたんや」
「ま、あんなわかりやすいとね」
「それじゃ……」
「それとこれは別、とも言いきれないけど……今現状、アーガス社内に残ってるナーヴギアは使用不可能、ログイン出来ないの」
「どうして……って聞くまでもないか」
アーガス社内にあるナーヴギアは基本的に開発用で使われてる所謂管理者アカウントを使用するものだ。
それを使用可能にすれば内部で管理者権限使い放題の暴れ放題になるだろう。
ならばまずその面倒になりそうなところを潰す、それはあの茅場晶彦でなくても考えうることだろう。
「ま、それでも普通の、一般に販売されてるナーヴギアとSAOならログインは可能よ」
「なら用意すればええんやな!」
「あるわよ、2台」
「え?なんで?」
木田先輩はそう言うと嫌そうに2つのダンボールを軽々と持ち机に置いた。
「管理者用じゃログイン出来なくてもログインが行われた痕跡が発見されたの、それでもしかしてと思ってあの
「じゃあ……?」
「本当は金貰いたいけど、いいわよ使って」
「ありがとうございます!」
「……戻れないけど、その覚悟は?」
仕方ないと言いたそうな顔を見せる木田先輩は改めて珍しく声を低くして質問をしてきた。
突然の質問にあっちゃんと顔を合わせるとあっちゃんは静かに頷いてくれた。
「もとよりその覚悟はしてきた、死ぬかもしれないのは怖いけど……でもこうしてる間にも命かけて戦っとる後輩がいる、ならこんなとこでうだうだ言ってられないやろ」
「私も、琴海ちゃんと……ううん、
「……わかった、仮眠室使いな」
「「ありがとうございます!」」
数分後。
2つのダンボールをそれぞれ持った私たちは準備を終えてナーヴギアを装着する。
と、その直前にあっちゃんが声をかけてきた。
「ね、琴海」
「あっちゃんがその呼び方するとくすぐったい」
「それはほら、許して」
「別に気にしとらんけど、それで何?」
「……告白、したら?」
「──はっ?」
「さ、ログインしよ」
「ちょっ、今のどう言う──ってもう準備出来とる!?」
突然の言葉に戸惑っているうちにナーヴギアを装着しベッドに横になったあっちゃんに続いて私も同じように横になる。
動揺を抑えて深呼吸する。あっちゃんもいきなり変なこと言ってきてビックリさせないで欲しい。
でも──告白って、誰に……?
そんなことを考えたまま私とあっちゃんは同時に「リンクスタート」と口にした。
蒼穹に広がる無限、地獄へと化した鋼鉄の城へと私とあっちゃんは降り立つのだった──。
それから数週間後。
凄腕と呼ばれるくらいのコンビネーションを発揮していると噂になったとある2人の初心者は今にも崩れそうなほど脆く、それでいて力強く輝く星を見つけるのだが、それはまた別の話───。
それぞれ後編執筆中、詰まった時に勢いで書いた実は重要な回、投げときます
今回は新田と北沢の所謂先輩達のログイン裏話
実はサービス開始からいる訳ではなかったんですね
拙い文でしたが御付き合いありがとな!