遊戯王 WIND SEEKER   作:鐡 銀

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前回の感想戦&ちょっとした内心の吐露です。

前書きの中身が思い浮かばないので本編。


十七枚目:秘めた苦悩

 

「そこまで。勝者、緑葉風華!」

「…ありがとうございました」

「ありがとうございました」

 

ジャッジ役の先生がそう宣言して僕達が互いに礼をした時、見ていた生徒達が一斉に沸き立った。耳が痛いくらいの歓声だけど、悪い気はしないかな。

それに、また負けちゃったけど、楽しかったし無問題(もうまんたい)

 

「凄かったよ濡羽っち、風華さん!」

「あぁ、見てて熱くなるデュエルだったぜ!」

「最後のあれは、どうかと思いましたけどね」

「…引いちゃったし、何より優姫が入れたカード。使わないわけない」

 

いや、神名さんが入れたのに苦言を呈してるんですか!?!?

 

「それはそれで嬉しいのですが…星風さんも乗らなければまだ勝負は分かりませんでしたよ?」

「なんと言いますか…乗りたかったんです」

 

こればっかりは僕の気分。それに、最後の手札は《テラ・フォーミング》。僕のデッキに入ってるフィールド魔法は竜の渓谷1枚だけ。次のドローにかけたとしても、ライフを削り切れはしなかった。返しのターンでシンクロされたら、それこそ手のつけようがなくなる。どのみち、乗っていようがいまいが、あれを発動された時点で負けていたんだ。だったら乗るでしょ?

 

(『言い訳だな』)

(るさい)

「それより濡羽、なんだよあのドラゴン!2体とも見たことねぇぞ!」

「そ…それは…」

 

言えないよね…片方は精霊、もう片方は精霊から貰った力だ、なんて。

 

「本日の授業はこれにて終了とします。各自、寮に戻るか帰宅をしてください」

 

説明しようか悩んでいた時、タイミング良く先生が帰宅を促してくれた。

 

「だってさ。帰ろうよ」

「色々気になるが、まぁ帰るか」

「…そうね。余り長居しても意味無いから」

 

さて…帰るまでにどうはぐらかすか考えなきゃね…

 

 

 

 

 

2時間後、晩御飯のあとで…

 

「では、教えてもらいましょうか」

「さぁて、根掘り葉掘り聞かせてもらおうかぁ?」

「どこの悪人なのさ…」

 

結局何も思いつかないまま、神名さんと湊月君に吊し上げを食らってます。小春は少し離れて笑顔で観戦。緑葉さんは少し困り顔で見てる。柊真さんは、キッチンで晩御飯の後片付け。スープパスタ美味しかったです(現実逃避)。

 

「私も、あの2体の竜に関しては興味がありますね」

「答えてもらうぜ。あれは、どこで手に入れたんだ?」

「うぅ…黙秘権は…」

「ねぇよ」

「ですよねぇ…」

 

どう答えれば良いのかな…

 

『ヌレハ、彼らにも明かしてしまいましょうよ』

「えっ…でも…」

『しょうがないさ。そうでもしないと、延々と続くぜるそれに、この2人は友達なんだろ?』

「…そう…だね」

「どうした、濡羽?1人でブツブツと…あ、やり過ぎたか?」

 

自分でもそう思ってたならやらないで欲しかったかな。

 

「ううん、そうじゃないよ。ちょっと、常識の範囲外だけど…誰にも言わないって約束できる?」

「なんか怖ぇな…でもまぁ、濡羽が言うなってんなら言わねぇさ」

「私も、星風さんがそう言うのであれば」

「ありがとうございます。じゃあ…出ていいよ」

『呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!』

『スターダストさん、いきなりそれはインパクトが!』

『なんということでしょう。3体ものカードの精霊が現れたではありませんか』

『ファストさんはナレーションしないで!』

「「…………」」

 

お2人、沈黙。というか唖然。

 

「……セイヴァー・スターはスターダスト・ドラゴンから貰ったカードで、クリアウィング・ファスト・ドラゴンはそのまま精霊なんだ。召喚師ライズベルトも精霊だよ」

「…ぬーれーはー」

「ハイ、ナンデショウカ」

 

なんだか、湊月君が、怖くて、カタコトに、なりました。

 

「そーゆー面白そうなのは早く言えーっ!!!」

「言えるわけないでしょぉ!!」

「あ…あの…風華…」

「…優姫、どうしたの?」

「もしかしてですが…風華も精霊を?」

「…えぇ」

『いるよー!』

『つーわけだ』

『何卒よしなに』

 

神名さんはさらにショックを受けてますね。そりゃそうか、幼馴染が精霊のカードを所有してるなんて知ったら驚くよね。

 

「うわ、なんか知らない内に精霊増えてる?」

「柊真さん。僕のはスターダスト・ドラゴンの、緑葉さんのは閃珖竜 スターダストの精霊ですよ」

「へぇ。僕は龍凪柊真って言うんだ、よろしくね」

『よろしく、トウマ!』

『よろしく頼む』

 

柊真さんは精霊を見慣れてるから、あんまり動じてないね。

 

「…とりあえず私は、優姫を部屋に連れて行ってくる」

「あ、いってらっしゃい」

 

緑葉さんは、神名さんを少し重そうにしながら引きずっていった。僕も、湊月くんをどうにかしなきゃなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふぅ…」

 

なんとか、優姫を部屋に運べたわ。

 

『なぁ、フウカ』

 

閃珖竜が急に話しかけてきた。なんの用かしらね。

 

「…どうしたの」

『他の精霊から聞いた。かの少年はサヴァン症候群なのか?』

「…彼は、そうだよ」

『そうか…大変なのだな』

 

大変…?

 

『その表情…何も考えておらんかったのか…』

 

そう言われてみれば…少なくとも私は、サヴァン症候群だということを聞いただけで、あとは深く考えてなかったかもしれない。

 

『少し考えれば分かることだろう。サヴァン症候群で最も有名と言えるのが、完全記憶能力。それはつまり、全てを記憶する…逆に言えば、()()()()()()()()()という事だ』

「…それは、ダメな事なの?」

『あぁ。人間に限らず、生きとし生けるもの全ては『忘却』を最善の自己防衛機能としている。だが、かの少年はその『忘却』が出来ないのだ』

 

忘却が出来ない…忘れられない…それは、ダメなことなのかな。

 

『フウカ、やはりお主の表情は他の者より読み取りやすいな。忘却出来ないことが、一概に駄目だという訳では無い。ただ、人間としては辛いというだけだ』

「…表情で心情を読まないで」

『特技なのでな』

 

そんな特技の精霊がいるんだ…

 

『それより、何故辛いか分かるか?』

「…いいえ、分からないわ」

『ならば、本人に聞くといい。そこにいる』

「…えっ…?」

 

閃珖竜が示した先にあるのは、私の部屋の扉。ということは…

 

「…いるの?」

『いるぜ。閃珖竜に呼ばれたんでな』

「精霊って…なんかずるいですよね」

 

やっぱり、彼がいた。

 

「それで、話せばいいんですか?」

『あぁ。本人の口から聞く方が良いと思ってな』

「…確かに、なにも忘れられないことは辛いですよ。そりゃ、覚えてたいこともあります。例えば、今日初めて緑葉さんにちゃんと名前を呼んでもらえたこととか」

 

…そう言われてみれば、今まで(今も)『彼』や『きみ』としか呼んでないわね。

 

「けれどそれと同じくらい、忘れたいこともあるんです。辛かった記憶、嫌な記憶、悲しい記憶…本来なら忘れることで自分を守るはずなのに、僕はその全てを覚えている。常に脳裏にあるんです。夢に見るのではなく、気を抜けば視界を覆うような、そんな感じなんです」

「…………」

 

なにも、言えなかった。私だって、忘れたいと思うことはいくらでもある。優姫や小春、龍凪さんや西条君にもあるだろう。それはいずれ忘れられる。けれど彼は…

 

「…だから、僕は記憶を取り戻すことが、少し怖いんです。その中に、知りたくない、覚えたくない記憶があることが…怖いんです」

 

彼の…星風君の気持ちは、よく分からない。私はそんなことを思ったことがないから。けれど、これだけは言える。言わなきゃならない。

 

「…力になれるようなら言って。私も、みんなも、力になるから」

「……ありがとうございます、緑葉さん」

 

 

 

 

 

けれど数日後、別の意味で彼から助けを求められることになった。




結局、精霊の存在が全員の知るところとなりました。除け者は可哀想でしたので…(け○フレかな?)

次回は学生らしい辛さがあります。

ではでは。
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