※誤字脱字報告をして下さった皆様、本当にありがとうございます。作者は非常にポンコツなので今後も報告して頂けたら幸いです。
第六話
ーーー拳を振るう。
ーーーそれだけで大気は震え、余波で木々が薙ぎ倒されていく。
ーーー脚を振るう。
ーーーそれだけで大地に罅が入り、地割れとなって相手を追い詰める。
ーーーそれでもなお、相対する者の笑みは崩れない。
「·····お前、
ーーー圧倒的な暴力の嵐を前に、依然として動じないその姿勢に不気味さを感じながら、問いかける。
ーーー返ってきたのは、笑みを深めた加虐的な顔だった。
★☆ ☆★ ★☆ ☆★
「春ですよー!」
紅霧異変から数ヶ月、あれから色々あった·····。取り敢えず紅霧異変解決後の宴会をしたり、その宴会で改めて天狗達を引き連れた文が謝りに来たり等々·····。騒がしい夏が過ぎたと思ったら·····
「春やねぇ·····」
「春ねぇ·····」
「冬やねぇ·····」
「冬ねぇ·····」
「いいえ! 春です! 誰がなんと言おうと春なんです!」
リリーホワイトが、俺らの零した言葉に勢いよく喰いついてくる。興奮しているのか、鼻息が若干当たるが、我々の業界ではご褒美です。はい。
「って言っても、この状況見なさいよ。まだ雪も積もってるし春には程遠いわよ。」
「うっ·····で、でも!確かに春の兆しを感じたんです!」
「じゃあこの状況の一体何処が春なのか教えて頂戴?」
「そ、それは·····その·····」
「『異変による春の遅延』·····と、言ったところかしら?」
リリーと霊夢が言い争っている最中に襖が開き、奥から咲夜が出てくる。手にしている瓶を無造作にこちらに放り投げ、キャッチして中をみると桜色の花弁が入っていた。
「ちょっと咲夜? 何勝手に入ってきてんのよ?」
「別にいいじゃない。減るもんでもないし。」
「私はコタツでぬくぬくするのに忙し「はい。お土産の焼き菓子。作ってきてあげたわよ。」何を突っ立ってるのさっさと入りなさい風邪ひくわよ。」
見事な手のひら返しだ
「なぁ、コントなんてしとらんでコレについての説明はないんか?」
「見ての通り、春の結晶よ。」
「結晶?」
「そう、その花弁こそが春という概念が詰まった結晶体。それが今幻想郷からどんどん無くなっているのよ。」
「へぇ、ウチにはそんな大層なものには見えへ「春ぅぅぅッ!?」」
咲夜からの説明を受けている最中に横から勢いよくリリーが横切り、過ぎた跡には手に持っていた瓶が消えていた。
「はぁ♡ 探しましたよぉ·····一体何処に隠れていたんですかぁ·····」
うへへぇ、と最早先程までの面影が全く残らないほど顔を蕩けさせ、大事そうに春の結晶が入った瓶を抱えている。
「·····ほな、この春の結晶を集めると、春が戻ってくるんやね?」
「そういう事、だからこそ霊夢。いえ、“博麗の巫女”に依頼するわ。この異変を解決して欲しいと。」
「えーめんどーくさー」
ちゃっかり咲夜に作って来てもらったクッキーを頬張りながら、怠そうに炬燵の中でゴロゴロと怠けている。それでいいのか博麗の巫女·····
「お菓子、作ってきてあげたわよね?」
「·····」
「私も着いていくから」
「·····はぁ、分かったわよ。私も丁度、冬には飽きてきた所だし。」
「それじゃあ、行ってくるわ。」と咲夜と共に出ていこうとするが「あっ」と何かを思い出したようで、こちらに振り返る。
「そうそう、慧音がアンタのことを呼んでたわよ?」
「慧音が? ウチを? 何で?」
「知らないわよ。行ったら分かるでしょ。」
「伝えたわよー。」と今度こそ咲夜と共に飛んでいってしまう。リリーはどうするのかと思って炬燵の方を見てみると
「クンカクンカ···うへへぇ♡ スゥ·····ハァ·····うっ! ふぅ·····」
·····さて、人里行くか·····
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到着、と
「む? 来たか。」
「で、ウチに用ってなんや?」
「いや、正確には私では無いんだ。ある人から君を連れてきてくれと仲介人として頼まれてな。」
「ある人?」
「ああ。そこら辺の詳しい話も含めて着いてから話すよ。」
待っていたであろう慧音は歩き出し、俺もそれに着いて行く。見えてきたのは超がつくほどの立派なお屋敷。·····なるほどねぇ
「さて、着いたぞ。」
屋敷について早速使用人と思われる人物に案内され、部屋の前に着く。すると、中から「どうぞ·····」と声がするので慧音と共に部屋に入る。そこには、此方を見つめる一人の美少女が美しい正座をしながら待っていた。
「お待ちしておりました。私、稗田家九代目当主を努めさせて頂いております。
挨拶と同時に綺麗に頭を下げるあっきゅん。
「この度、お越しいただいたのは他でもありません。私が編纂している『幻想郷縁起』に貴方様の事を載せたいと思っております。ご協力をお願いしたいのですが·····」
·····か、硬っ苦しい
「別にええけど、一つ条件つけるわ。」
「何でしょうか?」
「敬語辞めてほしいんよ。 さっきから肩凝ってしゃあないねん。」
「し、しかし·····」
俺の条件に渋っていると、思わぬところから助け舟が来る。
「良いじゃないか阿求。その条件を飲めば。」
「慧音さん·····」
「昨日だって「ああ! 緊張するー! どうしよう·····私敬語苦手なんですよねー」っと言っていたではないか?」
「慧音さんッ!?」
おお。なら丁度良いな。あっきゅんも苦手な敬語を使わなくていい。俺もむず痒くなくなる。win-winの関係じゃねぇか。
「ほな、そういう事でよろしゅうな?」
「む、むむむ·····分かりました。でも! 後から敬語に直せって言われても遅いですからね!」
こほん。と一度咳払いをしてからこちらに向き直り、質問を開始するあっきゅん。
「まず、貴方の種族を教えてください。」
「鬼」
「(鬼、ですか? 確か初期の方の書物に載っていたはず。後で見返しますか·····)では次に、貴方の二つ名は何ですか?」
「二つ名ねぇ·····ウチそんな大層なモンあらへんで。」
「(こっちで適当にでっち上げますか·····)分かりました。 じゃあ人間についてどう思いますか?」
「人なんてどうでもええわ。ウチはウチのやりたいようにやるだけやさかい。」
「··········ふむ、分かりました。(危険度は高、人間友好度は低·····と言った所でしょうか? いえ、でもこうして話もしてくれますし雑とはいえ此方に気を使ったような発言もしばしば····友好度は普通にしておきましょうか。)」
だいぶ考えていた、今。
「では最後に·····
俺の能力、か·····
「知らんで?」
「なるほど、知らな·····え?」
「ウチ、最近幻想郷来たばっかやねん。その程度の能力についてなんも知らんねん」
嘘は言っていない。
「なるほど·····では、私が教えよう」
「慧音さん?」
「いや、正確には“能力を知るための方法”なんだが·····」
「へぇ、具体的にはどうすればいいん?」
コップに水溜めて葉っぱでも浮かべるのか?
「そうだな····まず、胡座をかいて、目を瞑り、胸の中心に霊力·····酒呑の場合だと妖力を集中させる。そうすれば心の中に薄らとだが見えてくるはずだよ。所詮、瞑想というやつだな。」
魔力····じゃない、妖力を言われた通り胸のあたりに集中させる。すると、能力と思われる名前が薄らとだが確かに浮かんでくる。
「·····『酒に融かす程度の能力』」
「酒に·····融かす·····ですか····(あまり危険ではなさそうですね·····)」
「具体的には何が出来るんだ?」
「そうやねぇ·····実際試した方が速いやろ」
能力名と同時に、使い方も分かったので試してみる。阿求に言って近くにあった要らない紙と器などを貰う。そして、器の上に紙をのせ能力を発動すると、紙だったものはドンドンと溶けていき、最終的には透き通った液体になってしまった。
「なるほど、いわば酒に変える能力ですか。」
「これなら酒に困らへんなぁ」
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「酒呑さん。今回はありがとうございました。お礼も少ししか出来ませんが·····」
「別に気にしいひんで、こんだけ貰えれば十分や」
お金は要らないと言うと、「なら、これだけでも」と、勢いに負けて、今人里で一番人気のお菓子をもらってしまった·····霊夢にあげたらどんな反応になるのだろうか?
「ほな、またな」
「ええ。ありがとうございました。」
「じゃあ、気をつけて帰りたまえ」
随分と時間が掛かったもんだ·····でも貴重な体験も出来たし、俺の程度の能力についても分かったことだし良しとするか。にしても·····使い方次第ではチートじゃねぇか?·····と、もう着いたのか。
「博麗神社に着いた事だし、色々試してみよか。」
「へぇ? 一体何をだい?」
「能力の効果範囲に、·····」
ーーー待て? 俺は今、誰と話している?
瞬間、脇腹に激痛が走り視界は反転し、身体が一瞬浮いたと思ったら直ぐに数回地面に叩きつけられる。直ぐに体勢を立て直し、攻撃してきたであろう人物を目のあたりにし、硬直する。
「なら、アタシが試してやるよ? 嗚呼、心配は要らない。どうせすぐに使えなくなるんだから·····」
おいおい、冗談だろう·····。
「アタシの名前は
遂に酒呑ちゃんの“程度の能力”公開です。私の頭の悪さではこれが限界です。(泣)
どういった使い方があるか皆さんも想像してみてください。フフフ····