「はあ、面倒だ。」
俺はそんな言葉を呟きながら天井を扇ぎみた。
俺の名前は
そして、俺は今
「はっはぁ!!さっさと金をよこせぇ!」
ヴィラン犯罪に巻き込まれていた。
ヴィラン、それは超人社会に『個性』と言う力を振り回して犯罪を起こす犯罪者だ。そんな犯罪者を捕まえるためにヒーローが存在するが今はおいて置こう。
普段ならすでに捕まっているだろうが今回は違う。今回はコンビニの中で立て込もっている上、幼い子供を人質に取り、金を請求しているのだ。
更に厄介なことにそのヴィランはパワー増強型の個性のため、子供一人を殺すのに一秒もいらない。
其が理由で外にいるヒーローたちは何一つとして手を出せない状況になっているのだ。
「おらぁ!!さっさと金を用意しろぉ!!」
「ママ、ママァーーーー!!」
幼い子供を人質に取り、更に金まで請求する、か。ふざけた
「はっはっはっ!!……え?あぎぃぱのごがぁー!?」
突如、ヴィランの男が苦しみ出したかと思うと身体中の至るところからおびただしい量の血液を放出した。
「ビュー……ビュー……」
男は微かな呼吸音と共に死亡した。
…………ああ、またやってしまった。
「さて、帰りますか。」
俺は男の横を通りすぎ、そのままコンビニ内の裏口から出ていった。
俺の個性は『処刑』
自分が『罪』だと認識し、相手を『悪』だと心底決めつけた時、相手を物理的、個性的な要因を無視して相手を処刑するある意味最悪の個性。
それが俺だ。
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酷いものを見た。
とあるヒーローのサイドキックをしていたけれどあれだけ不可解な事件は初めてだ。
パワー型のヴィランがコンビニに押し入り、子供を人質にして立て込もって、お金を要求してくる。
ウチの雇い主のプロヒーローは精神系の個性だから立てこもり事件何かによく呼ばれて来ることが多い。
そして、今回の事件の内容は典型的なヴィラン犯罪とも言える。
けれど、立てこもりが始まって十分程がたった時、事態は急変した。いきなり大量の血液がガラスに付着したのだ。
ウチはこの時、ヴィランが人を殺したんだな、なんて思ってしまった。そして、助けれなくてごめん、とも思った。
事態を重く見たプロヒーローはわずか一分程で強硬突入の準備を整えた。
「よし、行くわよテレサ!!」
「わかっています、パトロン!」
そして、今からコンビニに強硬突入するところだ。他のヒーロー事務所のサイドキックたちと連携し、準備を完了させ、突入した。
ーーそこにあったのは、私の想像を遥かに超えていた。
「え、何…これ。」
思わずウチはそう口からこぼしていた。
何せ、まさかのヴィランと思われる男性が殺されていたのだ。男性は身体中から血を流し、動かす時、その体重があまりにも軽かった。多分、身体中の血液がほぼ全て外に出たのだろう。
「う…。」
あまりにも凄惨な死体に吐き気を催しながらも何とか調査を開始する。
ウチの個性は『交信』。霊と話す事ができる個性だ。霊は何故か口が軽くて直ぐ情報を話してくれる。ただ、ウチは幽霊が苦手だからあんまり好きじゃないけど…。
「あの、あなたはどうやって死ん」
『おらぁ!!金をよこせぇ!!ヒーローども!!』
「きゃあ!?」
幽霊となった男に話しかけた瞬間、私の顔にパンチを繰り出してきた。もちろん、幽霊だから痛くも痒くもないけどそれでも怖いものはこわい。
「ど、どうしたの?」
「い、いえ…。ゆ、幽霊との交信はできました…。」
「それで、どうだった?」
「……、死んだことに、気がついていませんでした。」
こうゆう事が起きるのは幽霊が本当に認識するよりも早く殺されるか、認識が追い付かないほど唐突に殺されたか、のどっちかになる。ということだ。
「なるほどね、さっき被害者の一人に聞いたんだけどね被害者はもう一人いたらしいのよ。男で小柄で中性的な顔立ち、白髪で片眼が赤く、もう片眼が青い若い男らしいわ。」
「わ、わかりました。」
本当にこの男性を殺したのは誰でしょう…。
鉄乙女罪鎖
個性:『処刑』
自分が相手の行動、言動を『罪』だと認識し、なおかつ心の底から相手を『悪』だと認識した時相手を物理的、個性的な要因を無視して処刑する発動型の個性。
個性を応用し、処刑道具を作り出すことも可能なため、発動型ではなく創造型だと義理の両親は思っている。