ロウきゅーぶ!のハイ勢がロウだった頃+オリ主の話(仮)   作:緑茶わいん

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翔子と新しい学校

「何でお前と同じクラスなんだよ」

「いきなり喧嘩売るなよ!」

「それはこっちの台詞」

「翔子も買わない! せっかく同じクラスなんだから仲良くしなさいよ!」

 

 悲喜こもごものクラス分けの結果。

 俺は昴、葵と同じクラスになった。早速つっかかってきた諏訪はおまけ。他にも同じ小学校出身が何人かいるが、比率を見る限り、先生方は出身校と男女のバランスを心がけたようだ。

 他の面々はというと、さつきと多恵が一緒のクラス、鳳は一人で別クラスだった。

 

『なんで翔子がカズ君と一緒なのよ。代わりなさい』

『無理』

 

 諏訪を連れて行ってくれる分には一向に構わないけど、学校側の決定は絶対。

 

『……はぁ。理不尽』

 

 肩を落として歩いていく鳳は少しだけ可哀そうだった。

 他の友達だっているんだから、もうちょっと元気出してもいいだろうに。

 

「彼女と別々になったのは残念だけど、仕方ないでしょ」

 

 睨み合いを止めると、葵が溜息をついて言う。

 すると諏訪は嫌そうな顔をして答えた。

 

「祥は彼女じゃねえよ」

「え、嘘だろ」

 

 素で反応したのは昴。

 自分のことには鈍感な癖に、他人のことには案外鋭い。ただし今回は本当に誤解だ。

 諏訪と鳳は付き合っているわけじゃない。

 鳳は何度も告白しているが、その度に諏訪が断っているのだ。恋愛とかよくわからないというのが大本のようだが、数を重ねるうちに「無理」とか「嫌だ」とか、断り文句は雑になっている模様。

 

 鳳は鳳で「そういうカズくんも素敵」と言っているのだから、ある意味お似合いである。

 

「今はそういう気分になれねえ。もっとやりたいことがある」

「バスケか」

「違うっての。……ただ、勝ちたい奴がいるだけだ」

 

 ふん、と、諏訪は顔を背けると俺達から離れていった。

 割り当てられた教室に先生が来るにはもうしばらくかかるだろうか。

 

「ねえ翔子」

「ん?」

「定期的に挑戦してくる男子がいるって言ってたけど、どっちが勝ってるんだっけ」

 

 俺はなんとなく窓の方を見ながら答えた。

 

「五戦五勝。今のところ私が勝ってる」

「ふうん、なるほどね」

「? つまり、諏訪(あいつ)は翔子に勝ちたいってことか?」

「大丈夫、それで合ってるわよ」

 

 こっちとしては割と迷惑な話である。

 

 

  ☆   ☆   ☆

 

 

 小学校と中学校の差は大きい。

 一番違うのは見た目だろう。公立小学校は基本私服だが、中学は公立でも基本制服。画一的な衣装、規律をより重んじる雰囲気は「一歩大人になった」という実感を与えてくれる。

 二次性徴が本格化する時期でもあるため、二、三年生の先輩はぐっと大人びて見える。

 学習科目も英語その他、幾つもの追加があるわけで、進学に際しては誰もが多かれ少なかれ期待と不安を抱くはずだ。

 

「でも、思ったほど変わんないわね」

 

 入学式を終えた葵の感想に俺は頷く。

 

「そんなものだと思う。授業が始まったらまた別かもだけど」

「まだ入学式だもんな」

 

 昴がのほほんと同意した。

 変わるといっても普通は少しずつだ。よっぽど進学校でもない限りは初日から授業なんてやらないし、整列とか校歌斉唱とかも最初は丁寧に教えてもらえる。

 

「多分、後は教材配布と自己紹介があるくらい」

「自己紹介かあ……わかってても憂鬱になるわね」

「葵たちが緊張?」

「いや、私だって緊張くらいするわよ。ねえ昴」

「え? ああ、そりゃもちろん」

 

 いや、昴は普通にやれば問題ないと思う。

 

『長谷川昴です。桐原小学校から来ました。趣味はバスケ。部活もバスケ部に入ろうと思ってます。好きな奴がいたら一緒にやろうぜ!』

 

 とか。

 ちなみに本当の自己紹介も想像と大差なかった。普通ではあるが引かれるような要素はなにもないし、スポーツが好きなさわやか系なのは過不足なく伝わっただろう。

 葵も似たようなもの。

 むしろ、問題なのは俺である。まあ、イメチェンには成功しているので普通にやればいいんだろうけど。胃が痛くて仕方ない。

 

 ――そして、心の準備が全然足りないうちに順番が来て。

 

 なるべく平静を装いながら席を立った。

 

「鶴見翔子です」

 

 第一声は定番。というか他に選択肢がない。いきなり「オッス、オラ~~」から入るのはハードルが高すぎるし、「ただの人間に興味はありません」とか言い始めたら痛い人だ。

 第一印象は何よりも大事。

 前世でさんざん経験したからこそ、ここでの失敗が響くことはよくわかっている。

 

「部活は女子バスケ部に入ろうと思っています。趣味はバスケと漫画とゲーム。たくさんと友達ができれば嬉しいです。一年間、よろしくお願いします」

 

 深くお辞儀。

 幸い、拍手はしっかりと返ってきた。「よっ、男女!」とか野次が飛んできたらどうしようかと思った。

 諏訪を見れば、彼はなんともいえない表情で黒板を睨んでいた。

 

「なによ、翔子も全然平気だったじゃない」

「平気じゃない。凄く緊張した」

「それはみんなそうでしょ。私だって緊張したし」

 

 ホームルームが終わった後で言われたが、いや、だって葵達は初対面の相手に「バスケしようぜ!」とか言えるタイプだし……。

 物凄く感謝してるので、ネガティブな意味合いでは絶対言えないけど。

 俺は軽い荷物を持ち上げて話題を変える。

 

「部活紹介、行く?」

 

 入学式とホームルームの後には、自由参加の部活紹介が予定されていた。

 既に部活を決めている身としては行ってもいいし行かなくてもいい。行けば部の雰囲気を少しでも掴めるかもしれないし、行かなくても支障はない。

 昴達は顔を見合わせ、笑顔で頷いた。

 

「せっかくだから行こうぜ」

「そうね。部活って初めてだし」

 

 俺もだけど、そういえば昴達も帰宅部だったっけ。

 バスケ部に入っててもよさそうなのに何故か。尋ねてみると、単にバスケ部がなかったらしい。確かに、小学校だと自分で作るっていう発想もあんまりないだろう。

 そのお陰で俺は二人に会えたわけだ。

 

 ――神様に感謝しないと。

 

 俺は小さく笑みを作り、昴達に移動を促して、

 

「なあ、部活見に行くんだろ?」

「荻山さん? たちも一緒に行こうよ」

 

 機を窺っていたらしいクラスメート達にわっと群がられた。

 さすがは昴と葵。何の問題もなく友達が増えそうである。

 ついでに俺も恩恵に預かれれば、もう言うことはなかった。

 

 

  ☆   ☆   ☆

 

 

「お、翔子」

「やっほー、つるみん達も来たんだねえ」

 

 会場となる体育館に着いたところで、さつきと多恵に会った。

 二人はちゃっかり友人を作っていたらしい。クラスメート数名と一緒に合流してきたものだから、人数が大幅に膨れ上がった。女子が多いせいもあってきゃあきゃあと騒がしい。

 

「羨ましいコミュニケーション能力」

「そっちも人のこと言えなくね?」

「こっちのは昴と葵の力」

 

 実際、二人は物怖じせず初対面の子とがんがん話している。

 俺はついつい気後れしてしまってうまく話せない。男子相手なら割と気兼ねなく話せるけど。

 

「なあなあ、鶴見。好きな漫画は?」

「スラムダンク」

「古いやつじゃん。今やってるのだと何?」

「進撃の巨人。あれはそのうち色んな奴が巨人に変身し始める」

「あはは、そんなわけないじゃん」

 

 というか、男子ってちょろいんじゃないだろうか。

 趣味が合えば喋り方がどうとか気にしないし、女子だろうと気にせず話しかけてくる。趣味がぶつかったらぶつかったで言い合いを楽しみ始めるし。

 これが女子だとまず前提からして変わってくる。

 

 例えば、男子との会話が途切れたところで入ってきたクラスの女子は。

 

「ね、鶴見さんって好きな人いるの?」

 

 いきなりか。

 

「いない」

「じゃあ、好みのタイプは?」

 

 ロングヘアーの清楚系。

 ……って、そうじゃなくて。

 

「優しくて清潔感があって、趣味のあう人……とか?」

 

 前世の嗜好を答えるわけにもいかず、適当に答えておく。

 すると、高い歓声が返ってくる。

 

「それって、長谷川君のことだよね?」

「へ?」

「だって長谷川君って落ち着いてるし、さっぱりした感じだし、バスケも好きなんでしょ?」

「あ、あくまでタイプだから」

「でも、ばっちりタイプだよね?」

 

 当たり障りない回答をしただけだったんだけど!

 目をキラキラさせた女子に問われ、俺は愛想笑いを浮かべながら途方に暮れる。

 ちょっと離れたところでは昴が「え? 俺?」という表情を浮かべていた。まあ、こっちはどうにでもフォローできるだろうけど、隣にいる葵が何食わぬ顔で耳をそばだてているのが怖い。

 変な勘違いをされたら大変である。

 ついでに諏訪と鳳――いつの間にか合流したらしい――が冷ややかな目を送ってきているしで、やむなく早急にリセットをはかった。

 

「残念だけど、昴にはもう好きな人いるから」

「報われない恋ってこと!?」

「へ……?」

 

 きゃー、と、より熱狂した声を上げられ。

 聞きつけた他の女子に群がられた俺は、部活紹介の開始をひたすら願ったのだった。

 

 

 

 

 

 桐原中の部活ラインナップはいたって普通だった。

 ごらく部とか階段部とか学園生活部とか変な名前の部は存在せず、一覧にはサッカーや陸上など一般的な名前が並ぶ。野球部や吹奏楽部といったスペース、道具の問題が大きい部もない。そのせいか、バスケ部が運動系の部活第三位くらいの印象である。

 

「多恵、ここ読書部とかあるけど」

「そっちはバスケに挫折してからでも遅くないからぁ」

「なるほど」

 

 運動部は今入っておかないとついていけなくなる。

 部活動必須の学校における文化部は当たり外れが大きい印象もある。部活とかダルイという層が興味なしに入部していたりするからだ。黙って暇つぶししているか幽霊部員になってくれればいいが、そういう手合いは無駄に場を荒らしたりする。

 ラノベを指して「こんなガキみたいなもん読むのか」とか言われたら多分、ぶん殴ってしまう。

 

「お、始まるぞ」

 

 昴が呟いた直後、壇上に先生が立った。

 新入生たちを静かにさせると前口上を述べ、順番に一つずつ部の代表を呼んで紹介をさせていく。持ち時間はひとつの部活ごとに三分程度。

 バスケ部は運動部の最後に登場した。

 

 男子部と女子部合同のようで、三年生と思われる男女が体操着にゼッケンをつけて登場した。

 なんか、体育館であの格好をしているだけで凄くバスケ部っぽい。身長は、残念ながらそれほどでもなかった。それぞれの平均よりちょっと大きな、程度だ。

 

『バスケ部です』

『バスケットボールは五対五でプレーするスポーツで、小さなコートの中を走り回るので、まるで格闘技のような激しさがあります』

 

 二人は実際に、手にしたボールを使ってデモンストレーションをしてみせる。

 男子がオフェンス。

 両手を広げて立った女子のディフェンスが道を阻む中、ドリブルしながら隙をついて前進、ゴールへシュート。ボールは残念ながらリングに弾かれた。

 

 ――高いな、ゴール。

 

 遠目に見上げてあらためて思う。

 昴達と中学ルールでも練習しているが、やっぱり高い。シュートの感覚が大分違うから本格的に覚えなおさないといけない。

 彼らが言った通り、バスケは激しいスポーツ。

 小学校、中学校、高校と身体が大きくなればなるほど傾向は強くなる。そんな中、バスケを選んでプレーしている先輩方はなんというか、格好いいと思った。

 

『練習が辛いと思われるかもしれないけど、実際、辛い時もたまにあります』

『でも、うちのバスケ部はそんなに強くありません。初めての子でも大歓迎です。みんなで楽しくバスケをやりましょう』

『授業が始まってから一週間、体験入部できます。是非、来てください』

 

 紹介に目新しいところはなかった。

 でも。

 

「やっぱいいなあ」

「そうね」

「……うん」

 

 昴も葵も、俺も、言葉少なに感動を共有した。

 バスケ部って感じがした。

 今までは真剣に、でも遊びとしてバスケをやっていた。部活に入ればもっとたくさんの人とバスケをすることになる。

 もっと本格的にバスケができる。

 

「おいおい、燃えてんな三人とも」

「うずうずしてるのが見え見えだよお」

 

 さつきと多恵からはそんなふうにからかわれてしまった。

 

「仕方ない。さつき達こそ、気が変わったり?」

「しないって」

 

 さつきが苦笑して答える。

 

「翔子がそんな顔してるのに、やっぱ止めたなんて言えねーよ」

「? そんな顔してる?」

 

 むに、とつまんでみてもよくわからない。

 俺達のやり取りを聞いた多恵は爆笑していた。

 

 そういえば、鳳はどうするんだろう。

 

 諏訪は男子部に入るらしい。

 考えてみるとマネージャーという選択肢もあるわけで、朝のはそっちのつもりだったかもしれない。

 さつき達に聞いてみると「ないんじゃね?」との返答。

 

「さっちんは『それだと負け』とか思ってそうだしねぇ」

「……最終的に落ちぶれそうなあだ名だな」

「死徒最強クラスは進化じゃないかなぁ」

 

 通じるのか。いや、漫画もあるから不思議じゃないけど。

 というか、その勝ち負け云々は誰をライバル視してるんだ。俺か。

 

「どうせなら普通に仲良くしたいんだけどな……」

「無理じゃね?」

 

 台無しだった。

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