ロウきゅーぶ!のハイ勢がロウだった頃+オリ主の話(仮)   作:緑茶わいん

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2nd stage 長谷川コーチ、小学生と合宿する(1)

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【名前】鶴見翔子(つるみ しょうこ)

 

【趣味】バスケ、アニメ・漫画鑑賞、ゲーム、ネットの口コミを見ること(主に美容関係)

【弱点】頼まれごとを断るのが苦手

【座右の銘】人はいつか必ず死ぬ。だからこそ一生懸命に生きるのだ

 

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「勝った、かあ……」

 

 スマホに送られてきたメールを見つめ、俺は深く息を吐いた。

 良かった、と思う。

 これでみんなの居場所は守られた。愛莉ちゃんとも知り合ってしまった以上、俺にとっても他人事とは言えなくなっている。

 

 同時に、良く勝てたものだという思い。

 後から聞いたところによれば本当にギリギリ、紙一重で掴んだ勝利だったらしい。愛莉ちゃんから送られてきたメールにも「勝てないと思った」と書かれていた。

 さすがは昴だ。

 人を活かすバスケにおいて彼の右に出る者はいない。俺が葵が同じ役を担ってもこうはいかなかったかもしれない。

 

「おめでとう……っと」

 

 お祝いの文章を作って昴と、それから愛莉ちゃんに返信する。

 

「そういえば昴、これからどうするのかな」

 

 コーチの話は臨時で、男バスとの勝負までって話だったけど。

 美星姐さんなら継続を打診しそうな気がするし、もし彼女が言いださなくても昴か、もしくは愛莉ちゃん達の方からお願いするかもしれない。

 

 きっと、人にバスケを教えるのもいい経験になるんじゃないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 それから二週間くらいがあっという間に過ぎた。

 

 案の定、昴はコーチを続けることになる模様。

 毎日女子小学生のフリースローを眺めていると嬉しそうに言われた時はどうしようかと思ったが、どうやら何がなんでも昴に続けて欲しい子がいたらしい。その子と賭けをしたのだという。

 あれからたまに連絡を取っている愛莉ちゃんもその子――智花ちゃんの勝ちを望んでいるようなので、きっと、慧心女バス五人の総意なのだろう。

 

「でさ、良ければ同好会、入ってくれないか?」

 

 七芝高校一年生による非公式のバスケ同好会。

 四月の終わり頃、昴からそんな話が持ちかけられたりもした。元・バスケ部入部希望だった生徒などに声をかけて回っているものの、今のところオーケーしてくれたのは葵と上原だけだとか。

 

「うん。ほとんど名前だけになっちゃってよければ」

 

 俺はそれを快諾。

 これが学校側を介した同好会なら校則を紐解かねばならないけど、非公式ならその必要もない。部活優先だから幽霊部員ならぬ幽霊会員ということで四人目のメンバーとなった。

 部活が臨時休みの時とか休日、顔を出せる時には出すことにする。

 

 でもコーチの方は平気なのかと思ったら、昴が提案した活動日はしっかり女バスの活動日とずらしてあった。

 葵のいるところで確認してバレそうになる、なんて羽目にならなくて一安心である。

 と。

 

「あ」

「ん?」

 

 昼休み。

 ご飯の前に花摘み(婉曲表情)へ行こうとしたところ、向こう側から歩いてくる目立つ人物と目が合った。相手も俺がデカイと思ったのか瞬きをする。

 チャンスか。

 

「あの、香椎くん、だよね?」

「あ、ああ。そうだけど」

 

 駆け寄って声をかけると、島崎先輩よりさらに大きいその男子生徒は戸惑いつつもそう答えた。

 

「すまん、どこかで会ったことあるか?」

「ううん。ただ、私が間接的に知ってたというか」

「?」

 

 わかりやすく疑問符を浮かべた彼に俺は微笑んで、

 

「香椎くん、妹さんがいたりしない?」

「愛莉のこと、知ってるのか?」

 

 やっぱり。

 そんな偶然そうそうないだろうと思いつつ、推測が正しかったことにほっとする。

 

「うん。ちょっと話す機会があって、お友達になったの。……それで、今時間あるかな?」

「ああ。学食で飯食いながらで良ければ」

 

 幸い、彼、香椎万里は俺の誘いを快諾してくれたのだった。

 

 俺はお弁当なので、万里には先に行ってもらい教室へ一度取りに帰った。

 学食に着いたのは、ちょうど万里が食事の受け取りを終えたところだった。

 

「香椎くん」

「おう。……さて、どこか空いてる席は」

「あそこでどうかな」

 

 ちょうど隅の方に向かい合って空いている席が。

 万里が頷いたため、席について腰を下ろす。

 

「うまそうな弁当だな」

 

 弁当箱の蓋を開けると万里がそんなことを言う。

 

「うん。なかなかの自信作だよ」

 

 白いご飯に卵焼き、鶏の唐揚げにいんげんの胡麻合え、にんじんと里芋の煮物という和食メニュー。

 塩分を取りすぎないようにやや薄味だが、そのあたりは出汁などを使って工夫している。

 万里が「いいなあ」といった様子で見ているので「食べる?」と聞いてみると、彼は驚いたのか目を見開いて「いいのか?」と言った。

 

「でもそれだと……ええと」

「あ、ごめんね。私、普通科の鶴見翔子」

「鶴見さんか。……あんたの弁当がなくなったら困るだろ」

「そこはトレードしてもらえれば」

 

 万里のトレーに置かれたカレーライスを指す。

 ちなみに彼の昼食はラーメンとカレーのセット。大柄かつ運動部とあってさすがによく食べる。

 俺も普通の女子よりは大食いだが、一般的な弁当箱ひとつで基本的に事足りている。部活終わりに間食することもあるし。

 

「むう……。そう、か。なら遠慮なく」

 

 割と本当に食べたかったのか、万里は交換した俺の弁当箱を興味深そうに眺めつつ煮物を口に入れた。

 

「うまい」

「ありがとう。でも、普通の料理だよ?」

「うちの飯は豪快なんだよなー。唐揚げも煮物も大量に作ってなんぼだから味は二の次になる」

「なるほど」

 

 相槌を打ちつつカレーを口に。

 大量生産といえば、このカレーも家庭で真似できない味に仕上がっている。こういうところのってなんともいえない美味しさがあるんだよな……。

 

「香椎くんの家は体育会系なんだ」

「ああ。家族でスポーツジムを経営しててな。親父もお袋も昔から運動やってたクチだ」

 

 アスリートのサラブレットというわけか。

 それは食事が豪華になるのもわかるというもの。

 

「愛莉ちゃんはお母さん似なのかと思ったけど」

「お袋もサバサバしたタイプだな。あいつは……誰に似たのか」

 

 言いつつ、万里が遠い目になる。

 愛莉ちゃんのことを心配しているのか、歯がゆいと感じているのか。

 しばらくして表情を戻すと俺に尋ねてくる。

 

「愛莉の話をしに俺に声かけたのか?」

「ううん。そういうわけでもないよ。ちょっと興味が出ただけ。ほら、私もバスケやってるから」

「そういうことか。……生憎、俺は止めちまったけど」

「一年生の長谷川昴から同好会の誘い、来なかった?」

 

 彼がバスケプレーヤーを繋ぎ止めようとしている話をすると、万里は首を振った。

 

「いや。聞いてないが、そんなやつがいるのか?」

「うん。私の幼馴染なの。本当にバスケ馬鹿なんだけど……香椎くんに声をかけなかったのは、どうしてだろう」

「あー、俺がバレー部入ったからかもな」

 

 肩を竦めて万里が言う。

 なるほど。既に新しい部を決めており、そこで楽しそうにやっているなら「邪魔しちゃ悪い」となるだろう。

 

「そうか、バスケプレーヤーだったのか。その身長ならセンターか?」

「うん。中三の時は県の決勝まで行ったんだよ。責任重大だけど、楽しいよね、センター」

「だよな。デカくて邪魔だとか言われるけど、それが仕事なんだっての」

 

 万里の表情が綻ぶ。

 彼も中学時代、センターを務めていた。彼の中学は生憎、優勝校と初戦で当たって敗退してしまっていたけれど、香椎万里の名はそれなりに知られている。

 県の高一の中では最高峰のセンター……だったと言っても過言ではないはず。

 当時は手一杯であまりよく知らなかった俺だが、後からデータを調べただけでも彼の凄さはわかる。だからこそバスケを止めてしまったというのは勿体ないけれど。

 

「そうそう、愛莉ちゃんとも昴繋がりで知り合ったんだよ。彼、顧問の先生から直接頼まれて、愛莉ちゃんの学校でバスケ部のコーチやってるの」

「何だって!?」

 

 バスケに悪印象を持ったわけではなさそうだし、愛莉ちゃんのことなら興味あるかも。

 そう思って話題を振ってみたところ、万里は予想外の食いつきを見せた。

 

「高校生の男が、愛莉のコーチ?」

「あ、そういうことだったんだ。大丈夫だよ、昴は小さい子に変な感情抱いたりしないから」

 

 バスケ馬鹿だし。

 むしろ、同世代の女子にすら碌に反応しないくらいだ。

 そうでなければとっくに葵と恋仲になっている。

 

「いや、しかしだな……!」

 

 ぐさ、と、ラーメンに載った薄っぺらいチャーシューが箸の餌食になった。

 

「心配なら、愛莉ちゃんに直接聞いてみたらどうかな。コーチに変なことされてないか、って」

「っ。……それができれば、苦労はしないんだけどな」

 

 さっきよりも更に遠い目。

 どうやら、万里と愛莉ちゃんの間にも何やら色々あるらしい。

 

 

  ☆   ☆   ☆

 

 

 後日。

 

 愛莉ちゃんのお兄さんが七芝にいたんだね、という話を昴にすると「あいつの苗字って鹿島じゃなかったのか」という、すっとぼけたことを言ってのけた。どうやらその勘違いのせいで「万里イコール愛莉ちゃんの兄」という図式が成立していなかったらしい。

 とはいえ、昴が万里をスルーしていた理由は想像通りだった。

 バレーに熱中している彼を無理に勧誘もできず、昴としても同じ痛みを持つ者として話を振りづらい。

 

 来年の新生・男子バスケ部にぜひとも欲しい人材ではあるが、こればっかりはどうしようもなかった。

 

 ちなみに、愛莉ちゃんにも「お兄さんと同じ学校だった」という話は伝えている。

 するとどうやら、万里とは緩やかな喧嘩中らしい。

 穏やかで優しい愛莉ちゃんなので、嫌味を言い合うとかそういうのではなく、単についつい避けてしまっている感じらしいけど。

 

「どうして? お兄さんのこと、嫌い?」

『ん……えっと、その、怖い、というか』

 

 ぽつぽつと教えてくれたことを総合し、意訳すると次のような感じだ。

 

 ――図体がでかくて声がやかましく、動きが乱暴なのが怖い。

 

 殆ど存在が全否定だった。

 万里も決して無駄にでかいわけではない。喧嘩したり、やたら騒ぎ散らすようなタイプでもない。単に小回りがきかないだけで、根の優しい力持ちって感じなんだけど……愛莉ちゃんからしたらそうは見えないのかもしれない。

 異性の兄妹はどうしても疎遠になっていくものだし、こちらも難しい問題だった。

 

 愛莉ちゃんも話したくないっぽいのでその話題は打ち切った。

 すると、ほっとした様子で「とあること」を教えてくれる。

 

『翔子さんっ。今度、みんなで合宿するんです』

「合宿? もしかして、バスケ部で?」

『はいっ。智花ちゃん達と、長谷川さんも一緒です。二泊三日でお泊まりです』

「昴も」

 

 場所は慧心学園の施設らしい。

 であれば宿泊費などの心配はないんだろうけど……女子小学生と男子高校生が二泊三日でお泊まり。

 ええと、それは物凄くアウトっぽいフレーズだ。

 少なくとも葵に言ったら確実に潰しにかかるだろう。

 

「美星姐さん――篁先生も一緒なのかな?」

『? いいえ、先生は「お前達だけの方が気楽だろー」って言ってました』

「そっか」

 

 後で美星姐さんに電話しようと誓う俺だった。

 実際に参加しないにせよ、対外的には顧問同伴にしておいた方がいい。大人がいればアウト感は薄まるし、いざという時に「身内のいるところで犯行に及ぶか?」と言い訳できる。

 

 後で聞いたところ、わざわざ言うまでもなく姐さんも把握していた。

 ついでに言うと参加者は女子だけでなく、男子が一名追加されているらしい。それなら安心、とは言い切れないのが今の世の中とはいえ、要は何も問題を起こさなければいいのである。

 

「一緒に寝たりご飯食べたりすれば、みんなもっと仲良くなれそうだね」

『はいっ。……できたら、翔子さんも一緒に行けたらいいんですけど』

「あはは。私は部活もあるし、他の子達のこと知らないもの。気兼ねなくみんなで楽しんできて」

 

 なんでもこの合宿は親睦会兼、初等部の球技大会対策らしい。

 

 愛莉ちゃん達が所属する六年C組は、男子バスケ部員の主力が所属する六年D組とライバル関係にある。

 練習場所を巡って試合したばかりの彼らは当然、球技大会でもバスケを選択――再びぶつかることとなり、お互いに必勝を誓っている。

 そこで、顧問である美星姐さんが手を回した結果が合宿だとか。

 

 前世の中高でやった球技大会は「自分の部活以外の種目に出ること」というルールがあったけど、どうやら慧心ではそういう決まりはないらしい。

 となると確かに、前回の勝利をもたらした名将――長谷川昴の存在は欠かせないだろう。

 

 つまり。

 長谷川、小学生と合宿するってよ――ということで。

 本当に何の問題も起こさないで欲しいと、俺は切に願うのであった。

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