ロウきゅーぶ!のハイ勢がロウだった頃+オリ主の話(仮) 作:緑茶わいん
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【名前】鶴見翔子(つるみ しょうこ)
【胸囲】良
【今月の弁当マイベスト】
蒸し鶏と焼き野菜のヘルシー弁当
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「ね、昴。……私のこと、どう思う?」
胸の前あたりで手を重ね合わせて、ゆっくりと尋ねる。
目線の高さは同じくらいなので彼の目を苦もなく覗き込むことができた。
昴が浮かべたのは、かすかな動揺。
可愛いと思い、くすりと笑う。
「どうしたんだよ、急に」
「答えて。私って魅力ない、かな? ……友達からは可愛い、って言われるんだけど」
真っすぐ見返してきた昴は恥ずかしくなったのか、視線を下に移動させる。
組み合わせた指に目をやれば、自然とその先――サイズはそこそこだが形のいい、割と自慢の胸が目に入るだろう。
慌てて天井を見たりしても無駄である。
こっちだって恥ずかしいのだ。
少しくらいはときめいてもらわなければ割に合わない。
「そりゃ、可愛いんじゃないか」
「嘘」
他人事のような感想を一蹴。
「嘘って……。なんでだよ」
「じゃあ聞くけど、昴」
軽く息を吸って、告げる。
「小学生と高校生、どっちが好き?」
「いや本当になんの話だよ!?」
昴の声が、彼の部屋全体に大きく木霊した。
俺は肩を竦めて苦笑。
「だって、昴がわかってないみたいだから。……自分が、どれだけ危ない状況か」
「待て。なんの話だ」
ほらやっぱり。
部屋に一つきりの椅子に座った幼馴染は「よくわからない」という顔。
俺は彼のベッドに腰かけたまま深いため息をついた。
「この前、小学生の女の子の部屋に夜這いをかけたでしょ?」
「ああ。……じゃあやっぱり、あの料理はお前だったのか。っていうか夜這いじゃない。ミホ姉から事情は聞いてるだろ」
「まあ、聞いてるけど」
まず、女バスメンバーの一人の落とし物(パンツ)を拾いました。
動揺した彼はもう一人の男子――唯一の男子小学生にそれを拾わせることで共犯者に仕立て、一緒に返しに行こうと唆して女子部屋に侵入。
なんとかバレずに済んだものの、女の子達に「謎の侵入者の存在」を知らせてしまった……と。
なんというか、誰が信じるんだこんなの、という話である。俺だって昴の性格、言動を熟知していなかったら百パーセント嘘だと思っただろう。
「そもそも、何で部屋に侵入するの。返すだけなら他に方法があるでしょ?」
そう言うと、昴は仏頂面になった。
「そう言われても、相手は女の子だぞ。正面切って返せるか」
「……あー」
そう言われると微妙なところだ。
これが俺なら同性のよしみがある。落ちてたよ、ありがとうで済むだろうけど、同じことでも年上の男性から言われるのは嫌かもしれない。
ませてる子で、かつ、好感度によっては「触られた」という事実だけでゴミ箱に放り込むかもしれない。
硯谷でバスケに邁進しているはずの親友の顔を思い出しつつ、頷いた。
「それにしたって、昼間の誰もいない時間を狙うとか」
「……お前は天才か」
「昴がパニックになりすぎなんじゃないかな」
この通り、別に昴には悪気があったわけじゃないのだ。
ただ単に、バスケ以外の機微には疎い上、妙なところで感覚がズレているというだけで。
とはいえ。
「昴、このままだと確実にまた何かやらかすでしょ」
「既に何かやらかしたみたいな言い方だな」
「じゃあ、女バスの子達に今回の件を話せる?」
「うっ……」
ですよね。
「だからね、少しブレーキが必要だと思うんだ」
でないと二度三度と同じようなことが起こりかねない。
そういうのは防いでおくのが誰にとっても幸せに繋がる。
合宿が無事に終わったのはいいことだけど、次も上手く誤魔化せるとは限らないのだ。
そうだ。
合宿といえば、球技大会での試合は無事、女バス側の勝利で終わったらしい。愛莉ちゃんも大活躍だったそうで、俺としても嬉しい限りである。
やっぱり昴は指導者としても素晴らしい素質を持っている。
そこも踏まえて、彼が警察の御厄介になる可能性は潰しておかないと。
「……なるほど、わかった。で、何をすればいい?」
覚悟を決めたのか、真剣な目になる昴。
「うん。じゃあ、とりあえずクイズを出してみようかな」
「クイズ?」
「そう。次のうち、小学生の女の子に対してセクハラになるのはどれでしょう?」
A,性行為を強要する
B,抱き着く
C,キスをする
D,手を繋ぐ
E,「今日も可愛いね」と声をかける
「……簡単だな。さすがに俺でもこのくらいわかるぞ」
「本当? じゃあ、答えは?」
安心したのか表情を緩めた昴は自信満々に言った。
「AからCまでだ。さすがにDとEはセーフだろ」
「ぶー。正解は全部です」
「何!?」
どうやら全然簡単じゃなかったようである。
驚愕している昴だが、少し考えれば当たり前の話だ。
「昴。セクハラってね、凄く被害者側に寄った概念なんだよ」
「?」
「被害を受ける側とか、訴える側がセクハラだと思えばセクハラになるってこと。PTAのやかましいおばさんとか、性格のきつい先生とかが見たら、Eだって十分セクハラ」
「なんだよそれ。言ったもん勝ちってことじゃないか」
「そうなんだよ」
深く頷く俺。
痴漢冤罪とかもそうだが、この手の仕組みは正直どうかと思う。まあ前世はともかく、今は主に訴える側になってしまったのだが。
「だから注意する必要があるってこと」
言って、俺は更に説明を続けていく。
幸い昴は熱心に聞いてくれ――小一時間ほどのレクチャーが終わった時には「よくわかった」といい表情を見せてくれた。
「つまり、みんなが嫌がってないか逐一確認しろってことだな」
「うん、そういうこと」
そういうことなんだけど……。
なんとなく、それだけだとあんまり意味ないかもなあ、なんて思ってしまった俺であった。
☆ ☆ ☆
「……ってわけで、昴のやつ最近付き合い悪いのよね。何してんだろ」
「あ、あはは。どうしたんだろうね?」
歩道を並んで歩きながら、俺は葵の愚痴へ曖昧に答えた。
「昴のことだから、バスケ関係なのは確かなんだろうけど」
「でも、それだったら私に言ってくれてもいいと思わない?」
「確かに……」
フォローしてみたらすかさず反論され、思わず同意してしまった。
――昴。葵のことももうちょっと構ってあげて欲しい。
今日は久しぶりに二人で買い物だった。
中三辺りから服や下着を買いに行く機会も増えたけど、今日はちょっと違う用事。七芝高校の最寄り駅から歩いて十五分ほどの位置にあるスポーツ用品店「ミウラスポーツ」が目当てだった。
中学時代からシューズなんかでお世話になったお店であり、七芝高校のスポーツ用品指定店舗でもある。
六月に入って段々暑くなってきたこの時期は水着の注文シーズンなのであった。
「あー、暑いから早く中入りたい」
「もうちょっとの我慢だから」
入店した俺達は真っ先に学校指定水着のコーナーへ。
せっかくだから色々見ていきたい気持ちはあるけど、それは後からゆっくりで構わない。開店から昼にかけて徐々に混んで来るだろうし。
と。
「すいませーん。七芝高校の指定水着が欲しいんですけど」
葵が係の人を呼ぶのとほぼ同時、俺の耳に別方向からの声が入ってきた。
「こ、このバッグ良いと思わない?」
「ええっ……? そ、そうですね……」
ちらりと視線を送れば、小さな女の子を一人連れた「もう一人の幼馴染」がいた。
わざとらしい会話は突然現れた天敵、すなわち荻山葵から隠れるため、連れの子の注意を惹くためだろう。幸い(?)葵は店員さんの方を向いているので昴達には気づいていない。
――目が合った幼馴染は態度だけで「見逃せ」と訴えてくる。
いや、なんで隠れなければならないのか。
隣の子は教え子の一人だろうし、やましい関係でも……そうか、説明するとなし崩しに慧心女バスのことを話さずにいられない。
俺は「了解した」と首肯すると視線を昴達から逸らし、葵と昴達を結ぶライン上に立った。
「七芝高校ですね! サイズはどうされますか?」
「んーと、どうしようかな……。あはは、たぶんM……なんですけど、ちょっとおしりが緩かったりすることが多くて。でも……」
すぐに店員さんが来てくれたので、葵の注意も完全にそちらへ向いた。
相談された店員さんは試着を勧め、葵もそれを了承。葵がSサイズはないだろう(身長の話である)と思うけど、スリーサイズが大きく関係してくる女性ものは実際その辺シビアなのである。
「そちらのお客様はどうされますか?」
「えっと、私はLで大丈夫だと思うんですけど……逆に胸が緩くなっちゃうかなあ」
「でしたら、やはり試着をお勧めいたします。……ただ、試着用の数がないので順番でお願いすることになりますが」
「はい。じゃあ、それでお願いします」
にこりと微笑んだ店員さんは試着用の水着を取りにその場を離れていく。
「じゃあ、葵から先にどうぞ」
「いいの? 私が後でもいいけど」
「葵がM着けてる間に私がL試せばちょうどいいかなって」
「なるほど」
俺の提案に葵は笑顔で頷いてくれた。
良かった。下着つけたままだから汚れの心配はないとはいえ、逆の順番だとちょっと心苦しいところだった。別に葵の温もりがどうこうとか言うつもりはないけど、なんとなくだ。
結果、俺はちょっと大きめだけどLサイズ、葵はちょっときついけどSサイズを購入した。
俺は来年以降の成長を見越した形で、葵は逆に来年買い直す前提のチョイスである。身長か胸、たぶんどっちかは大きくなって水着のサイズに影響してくるだろう。
島崎先輩がLサイズなのか、それとも特注しているのかちょっと気になる。
「でも、こういうところで水着になるのちょっと恥ずかしいよね」
「わかる。でも慣れちゃった方がいいと思う。そういうの言ったら試合中だって人前で胸揺らしてるんだし」
「確かに」
目的を終えた俺達はついでにバスケシューズやバッグなどを物色し、お昼をうどん屋で食べてから帰宅した。
数量限定の特別メニューがあったらしいのだが、それはあいにく品切れだった。残念。かまたまカルボナーラとかいう、聞いただけで美味しそうなメニューだったのに。
まあ、カロリーのこと考えたら品切れで良かったかもしれないけど。
☆ ☆ ☆
「というわけで、葵にも構ってあげて」
『……そう言われてもなあ』
月曜日の夜。
昴から電話がかかってきたので、いい機会と思い彼に釘をさした。
しかし、返ってきたのは浮かない声。
「気が進まない?」
そこまで邪険にされると葵が可愛そうになる。
『そうじゃない。そうじゃないが、話すとボロが出そうだ』
「でも、避けてるのも不自然だよ」
本当なら、幼馴染三人のうち一人だけ除け者というのもひどい話なのだ。
事情を話せるなら話してしまった方がいい。
「そろそろ二か月経つし、既成事実でなんとかならないかな」
『いや。あいつの気分は電気ケトル並みに急上昇するからな。説明を全部聞いてくれるかも怪しい』
「うーん……」
俺にも覚えがあるため、それについては否定できなかった。
昴と喧嘩すると売り言葉に買い言葉、何で急に怒鳴り合ってるのこいつら、とぽかんとしてしまうこともあったりする。
試合の時はその切り替えの早さが速攻をより強力なものとしているんだけど。
「私から言えば少しは聞いてくれると思うよ?」
『いや、大丈夫。話すときは俺から言う』
「本当?」
『ああ』
力強い返事。それなら任せてみようか。
根本的には二人の問題だから、あまり俺が口出しするのもアレかもしれないし。
「じゃあせめて、何かあったら教えて。葵のことでも、愛莉ちゃん達のことでも」
『わかった』
答えた後、ほんの少しの間があって。
『あ』
「?」
『なら一つ、聞きたいことがある。……お前、割と泳ぎ得意だったよな? どうやって泳いでるんだ?』
「どうやってって――えっと、身体を水に浮かせた上で、何らかの手段で推進力を作って?」
って、そんな杓子定規な回答が欲しいわけでもないか。
「何かあったの?」
『ああ。実は、愛莉に泳ぎ方を教えることになった』
「へ?」
どうやら愛莉ちゃん、水が苦手で水泳もできないらしい。
ちょっと意外ではあるものの、心優しいあの子のことだから不思議ではない。兄の万里なら「泳ぐのなんて簡単だろ」とかあっさり言っちゃいそうだけど。
でも、水泳。
それはつまり。
「愛莉ちゃん達と一緒にプールに行くってこと?」
『うむ。そうなるな』
「……そっかぁ」
おまわりさん、こっちです。
って、ならないことを祈るしかないなあ、これは。