ロウきゅーぶ!のハイ勢がロウだった頃+オリ主の話(仮)   作:緑茶わいん

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試験的に、原作おなじみ台本形式を挟んでいます。


4th stage 翔子、小学生と合宿に行く(3)

「うわ、もうテントできてる!」

 

 練習後にシャワーを浴び、さっぱりした様子で戻ってきたみんな(昴だけ汗だく)。

 最初に声を上げたのはやっぱり真帆ちゃん。

 俺と久井奈さんが設置した最新型テントに駆け寄り、見上げて歓声を上げた。

 

「ずるい、やんばる! あたしもテントやりたかったのに!」

 

 ……歓声?

 

「申し訳ございません、真帆さま。練習でお疲れになると思いましたので」

「我儘言うな。大体、今から作業したら暗くなっちゃうでしょうが」

 

 立場上、強くは出られない久井奈さん。

 眉を下げて詫びる彼女を擁護するように、紗季ちゃんが進み出て一喝。

 

「ごめんね、真帆ちゃん。でもほら、一番いいところは残してあるよ」

 

 もう一押しと、俺は調理道具一式と食材を示した。

 

「いいところ?」

「うん。キャンプと言えば、やっぱりカレーじゃない?」

「カレー! そうそう、わかってるじゃんるーみん!」

 

 ぱっと真帆ちゃんの顔が明るくなる。

 道具へ駆けていく少女をゆっくり追いかけながら、紗季ちゃんがくすりと笑った。

 

「そうね。前の時のリベンジをしなくっちゃ。……ありがとうございます、久井奈さん。鶴見さん」

 

 本当に出来た子だ。

 大袈裟にならない程度に頭を下げてくれる紗季ちゃんに、俺と久井奈さんは微笑みを返した。

 そうすれば残りの面々も行動を開始。

 

「おー。ひなたち、カレー作るの?」

「前の時は食べ損ねちゃったもんね。また野菜炒めにならないようにしないと……」

「えへへ。お料理なら、わたしも貢献できるかな」

 

 無邪気に歩き、笑顔を浮かべるひなたちゃん。

 智花ちゃんは決意を顔に浮かべ、愛莉ちゃんはほんわかと協力を表明してくれる。

 

 ほっと胸を撫でおろす俺。

 と、いつのまにか傍にいた昴が苦笑を浮かべて言った。

 

「悪いな。二人だけでテントまで張ってもらって」

「とんでもございません。むしろ、どんどんお申し付けくださいませ」

「そうそう。それより、そっちはどうだった?」

「ああ、こっちも順調……とは、いかなかったな」

 

 練習の出来事を思ったのか、昴が来た道を振り返る。

 彼の言葉は葵が継いだ。

 

「痛いとこ突かれちゃった。……一番、嫌なタイミングで」

 

 顔合わせと挨拶自体はスムーズに終わったらしい。

 ただ、硯谷側――特に野火止先生とレギュラーメンバーには、愛莉ちゃん達を軽く見ている節が多く見受けられた。

 

 キャプテンの少女から昴が罵倒され、合同練習なんて時間の無駄と一蹴

 野火止先生からも慧心女バスは五年生と練習するよう言い渡される。

 当然、葵や真帆ちゃん、紗季ちゃんが抗議の声を上げたが、そこで慧心女バスが抱える一番の問題点を突かれてしまった。

 つまり、人数不足で大会に出られないということ。

 

 そのことは、子供達には秘密になっていた。

 もちろん智花ちゃんだけは知っていたものの、残りの四人は知らなかった――特に、試合を強く望んでいた真帆ちゃんのショックは大きく、体育館から走って出て行ってしまうほどだったという。

 

「でも、みんなのお陰でなんとかなった」

 

 お通夜のようなムードになってしまったみんな。

 硯谷の六年生が自分達だけで練習を始め、五年生以下も動かない慧心勢を見て仕方なく練習開始。

 

 ――そんな、流れを変えてくれたのはひなたちゃん。

 

 いつもの調子で練習への参加を表明してくれたことで、智花ちゃんと愛莉ちゃんが続くことができた。

 ぎこちない流れも練習を始めた仲間達を見て、紗季ちゃんは昴と共に真帆ちゃんを追いかけ、小一時間ほどで連れ帰った。

 

「で、まあ、そのあとはうまくやれた感じ。……五年生とだけどね」

 

 と、葵が肩を竦める。

 別に全員が喧嘩腰だったわけではなく、レギュラーに遠い子はかなり親切にしてくれたそうだ。

 慧心女バスもみんないい子達なので、そうなれば和気藹々と練習は進んだ。

 

「だけど、この分じゃ試合もどうなるか」

 

 確かに、その流れなら「五年生とやって」と言われるだろう。

 ひどい話だ。

 きっかけが従姉妹からのお願いとはいえ、学校間での交流を了承した時点で、それはもう部として対応すべき話だ。こじれたら大事にもなりかねない。例えば真帆ちゃんがご両親に告げ口し、そこから硯谷の悪評が広がるとか。

 でも。

 

「仕方ないよね」

「翔子?」

 

 意外だというように、昴と葵が目を瞬いた。

 俺は二人に苦笑を返す。

 

「気持ちでは納得いかないけど。向こうも本気なんだよ。……五人しかいない、大会にも出られないようなチームと練習しても身にならないって思ってる。愛莉ちゃん達のことを知らないから」

「……諦めろってことか?」

「違うよ。逆。知らないなら知ってもらえばいい。……試合のある最終日までに」

 

 どうせ、昴達だって似たようなことを考えたはず。

 俺の意図を察した昴達はふっ、と、よく似た不敵な笑みを浮かべた。

 

「なるほど、な」

「よく言うわ。……あの子達の練習、まだ大して見てないのに」

「見なくても想像はできるよ。昴が夢中になる子達だもん」

 

 そうして俺達は笑い合った。

 と。

 

「るーみん! すばるん! あおいっち! 遊んでないで手伝えー!」

 

 真帆ちゃんからの可愛いカミナリが炸裂したため、高校生同士の相談はそこで終了となったのだった。

 

 

  ☆   ☆   ☆

 

 

 一番張り切っていた真帆ちゃんが一番へっぽこだったのはご愛嬌として。

 主に小学生のみんなが頑張って作ったカレーは無事、美味しく出来上がった。なおその間、久井奈さんはハラハラしたりうずうずしたりで物凄く忙しそうだった。

 残っても困るのできっちり全部食べきり、片付けと洗い物まで済ませたら、みんなを水場やトイレに案内してから入浴に向かった。

 

「はー……なんだかんだ疲れたかも」

「私も。あ、ごめんなさい久井奈さん。運転していただいておいて」

「いいえ。揺られるだけでも疲れますもの」

 

 息を吐く葵に答えつつ首を向ければ。

 利用時間が短いため一緒に入ることになった久井奈さんが着ていたものを脱ぎ、その見事なプロポーションを晒していた。

 

「? ……るーみんさま、変なことはなさらないと」

「ち、違います。見惚れるのは仕方ないじゃないですか」

 

 慌てて弁解すれば、反対側で葵が苦笑。

 

「翔子だってスタイルいいでしょ。モデル目指せるくらい」

「うーん……私、色気ないらしいからなあ。務まらないと思う」

「服を買うのは同性ですから、そこは問題ないかと」

 

 なるほど。

 であれば、女子受けはするらしい俺は適役か?

 

「あれ、もしかして久井奈さん、経験が?」

「ええ。職場が職場ですから似たようなことは」

「職場……?」

「あら、ご存知ありませんでしたか?」

 

 くすりと笑って教えてくれる久井奈さん。

 なんと、真帆ちゃんのお父さんがファッションブランド『ForM』のメインデザイナーなのだという。

 え、いやその、世界的に展開してるブランドなんだけど。

 そりゃお金持ちなはずだよ!

 

「お陰で、私服はなるべく『ForM』をという暗黙の了解がございますが、わたくしどもメイドにも社割が適用されます」

「……本気で就職したくなってきたんですが」

 

 社割に惹かれるのもどうかと思うけど。

 でも教師は免許さえ取っとけばすぐならなくてもいいんだし――と、よからぬ方向に思考が飛んだ頃。

 

「るーみん、うちで働くの?」

 

 すっかり蚊帳の外に置いていた小学生達が声をかけてきた。

 みんな服を脱ぎ終わったようで、生まれたままの姿を晒している。同性しかいないからこその無防備。いい加減に慣れたからいいようなものの、昔なら反射的に目を逸らしているところだ。

 言ってる俺も裸なわけだけど。

 

「ふふ。後輩ができるのも楽しそうですね」

「ひゃん!?」

「……なんか、翔子と久井奈さん、随分仲良くなってない?」

 

 急に首筋に触れられ声を上げれば、葵が半眼になってなにやら呟いていた。

 

 

--------

 

  ―ガールズ・トーク―

 

【真帆】るーみんるーみん、ずっと聞きたかったんだけど!

【翔子】なあに、真帆ちゃん?

【ひなた】おにーちゃんとは恋人さん? おつきあい、してたりする?

【翔子】な……っ!?

 

【紗季】ふむ。その反応……ありえるわね。

【智花】え、そ、そうなんですか……!?

【愛莉】そんな……今まで、そんなこと全然。

【翔子】だ、大丈夫。ちょっとびっくりしただけ。私と昴はそういうのじゃないよ。

【真帆】ほんとかー? 嘘だったら承知しないぞー!

【翔子】ないない。ただの幼馴染。

【ひなた】おー。よかった。おにーちゃんはまだおつきあいしてない。

 

【智花】ほっ。

【愛莉】ほっ。

【葵】……ほっ。いや、わかってたけど。

【聖】くすくす。あおいっちさまが一番ほっとしていらっしゃいますね。

【葵】なっ!? そ、そんなわけないじゃないですか! なんで私が!

 

【翔子】……ん? もしかして昴って凄い罪作りなことになってる?

 

--------

 

 

「……ふう」

 

 お風呂の後、みんなと別れて散歩に出た。

 火照った身体に夜風が気持ちいい。

 緑が多く、高いところにあるせいか夏でも意外に涼しいのもいい。そういう意味でもスポーツするのには良い環境なのかも。

 ついでに少し運動しておこうか。

 人通りのありそうなところから少し外れ、立ったままでできる運動を軽く行う。そのうち、ポーチへ入れて傍らに置いたスマートフォンが着信音を響かせた。

 

「もしもし?」

『もしもし、私だけど』

「ああ祥。どうしたの?」

 

 大して遠くない距離にいる親友からの電話だった。

 

『今暇? 外っぽいけど、どの辺?』

「うん、ええと……」

『わかった。行くから待ってなさい』

 

 大体で場所を伝えると、それだけ言って電話が切れた。

 

「……ふふ」

 

 つい口元が緩む。

 会えたらいいとは思ってたけど、まさか向こうから言いだしてくれるとは。

 別にわざわざ会う必要ない、とか言われるかと思ったのに。

 

 

 

 

 

 待ち人は程なくしてやってきた。

 草の揺れる音がだんだんと近づいてくる。ただし、音は二つ。

 ついでにコツコツという小さな音。

 

「?」

 

 疑問の答えはすぐに出た。

 連れだって現れた祥と、もう一人の顔に見覚えがあったからだ。

 

「や。こんばんは。久しぶり、かな」

「……っ。お久しぶりです、野火止先輩」

 

 右足にテーピングをし、松葉杖をついた女性。

 野火止麻奈佳先輩が俺に笑顔で笑いかけ、それからなんとも言えない表情に変わった。

 

「んー。昴くんたちにもお願いしたんだけど、できれば名前で呼んで欲しいな」

「じゃあ、麻奈佳先輩?」

「おっけー。や、でもほんと久しぶり。大きくなったねー、翔子ちゃん」

 

 かつて俺と葵を硯谷に勧誘し。

 その後、怪我で活動休止を余儀なくされたらしい二年生の彼女は、屈託なく笑った。

 麻奈佳先輩の身長は、杖で前傾になっている分を差し引いても俺より低い。

 

 ――かつて「勝てる」とは全く思えなかった人に、身長だけでもアドバンテージを取れている。

 

 俺は不思議な気分になりながら「ありがとうございます」と微笑んだ。

 

 それから、少し離れて立つ親友を見やる。

 若干日に焼けた肌。四肢は以前よりも引き締まり、身長も多少伸びている。こっちを睨んでくる目つきは変わっていないものの、表情は少し柔らかくなっただろうか。

 

「先輩を案内するために電話してきたの?」

「……そ。あんたにだけ会えなかった、って麻奈佳先輩が言うから」

「そっか」

 

 麻奈佳先輩、か。

 祥が人のことを下の名前で呼ぶのは珍しい。

 

「うんうん。祥は本当に先輩想いだよねー。うちに来てくれてよかったよ」

「……私のことは無視だった癖によく言いますよね」

「ごめんってば。今は後悔しながら感謝してるよ。優秀なポイントガードが七芝に行くのを防げたって」

「む」

 

 大会を見据えた宣言に俺は少々むっとする。

 元はと言えば、この人が祥を「誘わなかったから」こうなっているわけで――そう考えると、悪運の強さというか転んでもタダで起きない感じが憎らしい。

 先輩の発言に祥は肩を竦めて。

 

「……結局、桐原のエースは自主的に活動休止中ですけどね」

「祥。葵には会ったの?」

「ううん、会ったのは私だけ。この子は初等部には関わってないしね」

 

 うん、祥が進んで小学生の相手をするとは思えない。

 

「それで……どうして、こんなところに?」

 

 尋ねると、麻奈佳先輩は苦笑した。

 

「大した用事じゃないよ。ただお話したかっただけ。……怪我の事は聞いてるよね?」

「はい」

 

 よく考えると人づてに聞く話でもなかったかもだけど。

 

「なら話が早いね。……私は、会っておきたかったんだ。自分が逃した子が今どうなってるか。復帰した時、その子に勝てるのかどうか」

 

 そう言って、麻奈佳先輩はどこか艶めいた笑みを浮かべた。

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