ロウきゅーぶ!のハイ勢がロウだった頃+オリ主の話(仮)   作:緑茶わいん

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6th stage 翔子は小学生と夏祭りに行く(4)

 待ち合わせ場所は夏祭りの会場に近い小さな公園だった。

 私が着いた時にはもうみんな揃っていたので、小走りで近寄る。

 

「翔子さんっ」

「お待たせ、愛莉ちゃん。みんな」

 

 駆け寄ってくれた愛莉ちゃんと手を繋いでにっこり微笑む。

 

「やっほーるーみん! おとーさんの着物似合ってるじゃん!」

「こんばんは、鶴見さん。今日はよろしくお願いします」

「おねーちゃん、こんばんは。ひなのきもの、にあってる?」

「えへへ。みんな浴衣でお揃いですね」

 

 智花ちゃんの言った通り、みんな思い思いの浴衣で着飾った艶やかな姿だった。

 

 智花ちゃんは藍色の生地に金魚の柄。臙脂色の帯が鮮やかで目に楽しい。

 真帆ちゃんのは黄色地のミニ丈で、柄はなんと幾何学模様。さすがデザイナーさんと言うしかない、前衛的ながら和のテイストも織り交ぜた逸品。

 紗季ちゃんのは黒地に水色の帯。ちょっとシックすぎる取り合わせを兎柄がうまく中和して、可愛らしさをプラスしている。

 ひなたちゃんのは自前なのか、白地にアニメキャラがプリントされたものだった。丈が合わなくなってミニになっちゃってるけど、このくらいの歳の子なら活動的な感じが出て全然アリだと思う。

 

 そして愛莉ちゃんは薄い桜色の浴衣。

 良く見ると、縁取り部分だけを白くすることで舞い散る桜の模様を入れ込んである。ド直球のピンクにこの上品さは、愛莉ちゃんの穏やかさと見た目の大人っぽさを上手く取り合わせていると思う。

 みんな、ほれぼれしてしまうくらい可愛い。

 これは誘拐に気をつけないと、と、ちょっぴり本気で思いつつ。

 

 私は、この場にいるもう一人の人物に頭を下げた。

 

「無理を言ってすみません。……久井奈さん」

「いいえ。お呼びいただきありがとうございます、るーみんさま。お召し物もよくお似合いです」

「そんな。久井奈さんこそ」

 

 久井奈さんの浴衣は黒地に、臙脂色で鳥が描かれたもの。

 鳥は雲雀か燕あたりだろうか。残念ながら(?)ヤンバルクイナには見えない。

 

 ちなみに私がいただいた浴衣は、ごくごく淡い青を基調に、帆を広げる船が大きく描かれている。

 ぱっと見ではなんの柄かわからないものの、前と後ろを両方見ると「ああ」と気づくデザイン。船は昔から女性格として扱われるものなので、女物の浴衣に使っても意外と違和感がない。

 

「むー。あたしとしてはちょっちきゅーくつなんだけどなー」

「ごめんね真帆ちゃん。私一人だとちょっと不安だったから」

 

 やっぱり久井奈さんにもお願いした、というわけだ。

 

「しょーがないなー。ま、やんばるならいいけど。その代わりうるさいことこと言うの禁止ね」

「心得ております。お小言は普段の半分ほどに抑えますので」

「半分!? もーちょっと減らしてよー!」

「馬鹿真帆、あんたいつもはどんだけ迷惑かけてるのよ」

 

 うーん、たぶんいっぱい、かな?

 凛とした表情の久井奈さんが「迷惑」と思っている雰囲気はない。むしろ真帆ちゃんが愛しくて仕方ない感じなので、二人は心の底では信頼しあってるんだろう。

 

「おねーちゃん、はやくいこ? おまつりにげちゃう」

「あはは。お祭りは足が遅いから大丈夫だと思うけど……でも、そうだね」

 

 楽しいことは目いっぱい味わった方がいい。

 私は久井奈さんと目配せしあって、会場に移動することにした。

 

「参りましょうか。みなさま、はぐれないように注意してくださいませ」

「できるだけ、私か久井奈さんの傍にいてね」

 

 はーい、という返事と共に、みんなで歩きだす。

 

 久井奈さんの傍には真帆ちゃんと紗季ちゃん、ひなたちゃんが。

 私の隣には愛莉ちゃんと智花ちゃんがついてくれた。手を繋ぐ? と尋ねると愛莉ちゃんは嬉しそうに、智花ちゃんは恥ずかしそうに手を差し出してくれる。

 二人の手をぎゅっと握って、私は思う。

 

 昴の代わりとはいかないけど、少しでも楽しんでもらえたら、と。

 

 

  ☆   ☆   ☆

 

 

「わ、凄い人だね」

「うん。有名になったのは最近なんだけど、凄いよね」

 

 うん、これは凄い。

 去年より更に人が増えているだろう。注意していないと人にぶつかって転んでしまうかもしれない。

 走り回るほどスペースがないので、どこかに行ってしまう心配がないのは嬉しいけど。

 

「出店もいっぱいだね」

 

 基本どころは大体揃っているように思う。

 同種の店が複数出店してる場合は味や、仕掛けの調整なんかも見極めないといけないのが難しいところ。

 人混みである程度は判別できるけど、隅っこの方に密かな穴場があったりすることもある。

 

「みんなはやりたいものとか、食べたいものとかある?」

 

 尋ねると、スーパーボールすくいに焼きそば、あんず飴などの名前が挙がった。

 

「翔子さんは好きなものとかありますかっ」

「私の一押しはじゃがバターかな」

 

 あれは個人的に外せない。

 女の子の身でバターたっぷりは控えなければと思いつつ、屋台の什器だからこそ出せるほくほく感と、活気の中で食べる充実感は格別だ。

 今回もあれだけは絶対に確保する所存。

 

「じゃがいもにバター……となると白ワインでしょうか」

「王道で日本酒もいいですよ」

「るーみんさま……?」

 

 久井奈さんの呟きについ反応したところ、ジト目で見られてしまった。

 まさか未成年で飲酒を? と思われているのは確実。

 しまった、ついつい前世の記憶が邪魔を。

 

「母さんがお酒好きなので、お酒に合う料理も調べたりするんです」

 

 これはまるきり嘘ではない。

 しれっと追及をかわすと、久井奈さんはすぐに引き下がってくれた。

 

「そういうことにしておきましょう。……るーみんさまが二十歳まではあと五年ですか」

「あ、四年です。私、誕生日が六月なので」

 

 今年は昴からシューズの手入れ用品を、葵から子ドラゴンのぬいぐるみをもらった。

 二人の誕生日にもちゃんとお返ししないと……と。

 

「六月……ど、どうしよう。わたし、何もしてない」

「どーしてそういう大事なこと言わないんだるーみん! アイリーンが泣きそうじゃん!」

「う。え、ええと……ごめんなさい。愛莉ちゃんとは知り合ったばかりだったから、教える暇がなかったというか」

 

 私、今度誕生日なんだーって、なんかプレゼントを催促してるみたいだし。

 真帆ちゃん達に至っては出会ってすらいなかった。

 嘆息した紗季ちゃんが肩を竦める。

 

「……仕方ないわね。真帆、来年豪華なのを用意しましょう」

「そっか! いーこと言うじゃんサキ、よっしゃ覚悟しとけよるーみん!」

「あはは……お手柔らかに」

 

 燃える真帆ちゃんの隣で久井奈さんが「では、私もそれで」と呟いているのがちょっと怖い。

 笑いが引きつりかけたところに、紗季ちゃんがそっと寄ってきて、

 

「大丈夫です。真帆のことだから、来年には忘れてます」

「それは助かります……」

「まあ、私は覚えてますし、真帆は関係なく変なことするかもですが」

 

 駄目じゃん。

 視線で抗議しようとした時には、紗季ちゃんはくすりと笑って身を離していた。

 やりおる。

 でも、ちょっとは仲良くなれたのかな、という気もした。

 

「おー、射的」

「あ、こっちにはフリースロー屋さんだって」

 

 ひなたちゃんと愛莉ちゃんが同時に見つけたのは、それぞれ遊ぶ系の屋台。

 せっかくなので二手に分かれてやってみることに。分かれ方は奇しくもさっきと同じ。私達はフリースロー屋さんの方だ。

 恐縮する智花ちゃん達を「一つくらいは」押し切って三人分のお金を払い、人柱とばかりに先陣を切る。

 使うのは軽いゴムボール。規定ラインから五回放って、離れたところにあるゴールに何回入ったかを競う。一回ごとに景品が豪華になっていき、全部入ればなんと、食べ物屋台で使える引換券十枚綴りを進呈とのこと。

 いわゆる見せ景品なんだろうけど、経営大丈夫なんだろうか。

 と、思って確認してみたら、お高めの食べ物は券を複数枚使うような仕様らしい。そりゃそうだ。むしろ一枚につき百円相当でも納得する。

 

 それはともかく。

 

 一球目は気軽に放り、あっさりゴール。

 二球目と三球目は欲が出たのかリングに嫌われる結果。

 ならばと残りの二球は肩の力を抜いて、なんとか連続で決めた。

 

「おめでとうございます! 三球成功はこちらのお菓子から一つをプレゼントです!」

「ありがとうございます」

 

 山盛りのポテチの端に覗いていたクッキーの袋を目ざとくゲット。

 続いたのは愛莉ちゃん。

 可愛らしい「えいっ」という掛け声と共に放たれたボールは五球中三球、ゴールに吸い込まれていった。普通のバスケとは色々勝手が違うけど、普段の経験が生きたのかも。

 

「やった……っ。翔子さんと同じですっ」

「凄いね愛莉ちゃん」

 

 賞品はささやかだけど、達成感は何にも代えがたい。

 私が引きずり出した穴の奥からもう一つ、クッキーの袋を引きずり出す愛莉ちゃん。店主さんが「それは隠しておいたのに……」っていう顔をしてるけど気にしない。

 そして、残るは智花ちゃん。

 ゴムボールを手にした彼女は神妙な顔。

 

「智花ちゃんなら全部入れられちゃうかもねっ」

「ふええっ。愛莉、緊張させないでよう」

 

 愛莉ちゃんの信頼も、このタイミングだと逆効果か。

 私は少し考え、吉と出るか凶と出るか、智花ちゃんに囁いてみる。

 

「……昴なら、全部決めるかも」

「えっ」

 

 結果は、どうやら吉。

 びっくりした顔の後、きっと表情を引き締めた智花ちゃんはいつものジャンプシュートで一投。入った。浴衣がひらりと翻る様がなんとも可憐で格好いい。

 見惚れるうち、少女は「うんっ」と勝手を掴んだのか、残りの四本を一気に決めた。

 本当にやっちゃったよこの子……!

 

「でました~! パーフェクト達成です!」

「凄い、智花ちゃん!」

 

 見事、タダ券をゲットした智花ちゃんは恥ずかしそうにはにかんだ後、「これはみんなで使いましょう」と謙虚に申し出てくれたのだった。

 私達はほくほくしながら射的チームに合流し、見事な片手打ちを決める久井奈さんに驚いて。

 みんなに智花ちゃんの活躍を話すと大喜びされた。

 

 じゃあ、先に遊びきってからご飯にしようということになって。

 メンバーをシャッフルしながら二手に分かれ、スーパーボールすくいや型抜き、金魚すくいなんかを楽しんだ後、各々食べたいものを片っ端から買っていった。

 あ、もちろん私はじゃがバターを確保しました。

 

 

  ☆   ☆   ☆

 

 

「鶴見さんとこのお嬢さんじゃないか! また一段と綺麗になっちゃって! お母さんは一緒じゃないのかい?」

「お久しぶりです。はい、今日は母とは別行動です」

 

 なんてやりとりを五、六回繰り返したりしつつ。

 本部テントの裏で日本酒片手に将棋を指していた母さんにじゃがバター(私の分とは当然別)を差し入れたところで、智花ちゃんの携帯が鳴った。

 相手はどうやら花織先生。

 二、三言話をした後、智花ちゃんは携帯を私に差しだしてきた。なんだろう、と思いつつ出てみる。

 

『こんばんは、翔子さん。お祭りはいかがですか?』

「こんばんは。はい、みんな楽しそうにしています」

『うふふ、それは良かったです。……それで、少々ご相談があってお電話したのですが』

「何かありましたか?」

『いいえ、大したことでは。ただ、主人が拗ねていまして』

 

 あー、六年生でもう「友達と回るからお父さんとは行かない」だもんね。

 

『よろしければうちの庭で花火を見ては、と』

「お庭……ああ、あそこからならよく見えそうです」

 

 一応、電話を繋げたままみんなに聞いてみたところ、みんなもこれを快諾。

 ならばと花織先生にOKの返事をして、食べ物をちょっと買い足した後、智花ちゃんのお家に取って返した。

 焼きそばやじゃがバターは多少冷めてしまったけど、それはそれ。

 

 笑顔で出迎えてくれた花織先生、むっつり顔ながら嬉しそうな湊先生。

 更に大勢になり、デザートにスイカまで用意してもらってわいわいしながら、日本家屋の庭から眺める花火は、はっきり言って最高だった。

 夜空に咲く大輪の花に、私はついつい見惚れてしまい。

 

「……私、この花火を一生忘れません」

 

 という、智花ちゃんの呟きに、

 

「うん、私も」

 

 と、返事をしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 なお、昴と葵とは幸い(?)鉢合わせなかったものの。

 二人もちゃんと夏祭りに来ていたようで、トラブル続きの末にいい感じになった模様。

 葵から「昴とキスしちゃった(>_<)」と私信が届いたので、さつきや多恵を交えてここぞとばかりにからかいまくった。

 後から詳細を聞く限り事故だったみたいだけど、偶然が後押ししてくれてるあたり風向きはいい感じ。

 

 今年中にもうワンステップくらい進展してくれたら最高かなあ、と思った。

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