ロウきゅーぶ!のハイ勢がロウだった頃+オリ主の話(仮)   作:緑茶わいん

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10th stage 翔子は小学生に特訓を課す

「みんなに選んで欲しいの」

「おみやげのおはなしデスか?」

「じゃなくて、バスケの話」

 

 京都から帰ってきた翌日、私はつばひーたち五人を集めた。

 足とか腰とか痛かったりはするんだけど、一日休まないと動けないとか言っていい歳じゃない。

 

「お土産はちゃんと買ってあるけどね。生八つ橋は後でおやつに食べよう。別に小物も買ってきたけど、無くしちゃうと困るから練習終わった後に渡すね」

「オー。ジャパニーズスイーツ。たのしみデス」

 

 ちなみに小物の方はあぶらとり紙と和風っぽいキーホルダーだ。キーホルダーはデザイン違いが五個だから、選んでもらう必要があるのは確かだ。

 食いついたミミちゃんに微笑んでから、私は表情を引き締める。

 

「まずは、ごめんなさい。コーチを引き受けておいていきなりお休みしちゃって」

「本当ですね。アルバイトとか言ってましたけど、本当は遊んできたんじゃないんですか?」

「うぐっ」

 

 さすが雅美ちゃん、容赦がない。

 遊ぶつもりならもっとゆっくり見て回るよ! と言いたいのはやまやまだったけど、楽しかったのも事実なので言い返しづらい。

 ここは素直に「ごめんなさい」をした。

 

「まーいいけどさ」

「愛莉のおにーさんと遊ぶのも面白かったし」

「えっと、その……ごめんなさい、私一人じゃ止められませんでした」

「あはは……ううん、私の方こそ本当にごめんね」

 

 香椎くんってば、つばひー達に遊ばれちゃったのか……。

 ラインで愚痴は聞いたけど、今度ちゃんと埋め合わせはしないといけない。お土産も他の人よりお高めの品を買ってきてあるけど、別に食べ物とかあった方がいいかも。

 何か食べたいものがあるか聞いてみよう。

 

 みんなのコーチを押し付けちゃったのは本当に申し訳ないものの、香椎くんのお陰でストレスはそんなに溜まってなさそうだ。

 これなら、うん、さっき言った選択も真剣に聞いてくれるのではないか。

 

「それで、練習の話をするね。京都に行ってる間に私も色々考えたの」

「「いろいろって?」」

「真帆ちゃん達に勝つ方法だよ」

 

 言うと、みんなの目が真剣になった。

 

「詳しく聞かせてもらえますか?」

「うん。……まず、最初に言っておくと、六年生のみんなに簡単に勝つ方法はないの。これは椿ちゃんや柊ちゃん、雅美ちゃん、かげつちゃん、ミミちゃんが弱いからじゃない。五年生が六年生に、初心者が経験者に勝つのが難しいっていう当然の話」

 

 高校二年と三年くらいの差なら才能と相性でどうにでもなるかもしれない。でも、小学生の頃の一歳差は大きい。まして、ミミちゃん以外のバスケ経験は愛莉ちゃん達よりもずっと少ない。六年生にもミミちゃんに対応するように智花ちゃんがいることを考えれば、これは単純なハンデだ。

 

「こっちが練習する間、向こうも練習するわけだしね。どんなに頑張ってもギリギリ勝つのがせいぜいだと思う」

「……そうですよね」

 

 こくんと頷くかげつちゃん。

 お姉さんであるひなたちゃんの頑張りを見ているだろうから、彼女はこの辺りを否定できないのだろう。

 でも、他の子は、

 

「でも、かてるんデスね?」

「可能性はあると思うよ」

 

 私は頷いて答えた。

 

「もちろんみんなの頑張り次第だけど、作戦と、どんな練習をするのかも重要になると思う」

「当然ですね」

「そう。で、色々考えた結果、私は二つのプランを作ってみた」

 

 A4用紙一枚ずつに纏めてきたそれを地面に置いて、みんなに見てもらう。

 ちなみに私達がいるのはバスケコートがある公園だ。慧心の体育館は六年生が使っているので、私達は他の場所で練習するしかないのである。

 

 ――さて、問題のプランだけど。

 

 前提として、愛莉ちゃん達のプレースタイルを知っておく必要がある。

 

 スピードとテクニックに秀でたオフェンスの智花ちゃん、負けん気が強くスタミナお化けの真帆ちゃん、トリッキーな動きで翻弄してくるひなちゃん……と、決してオフェンスが弱いチームではないんだけど、どっちかというとディフェンス寄りのチームだと思う。

 司令塔、ポイントガードの紗季ちゃんがあの手この手でリードを奪うのを好んでいること、センターである愛莉ちゃんが優しい子であることが、私の印象をそうしている理由だ。

 後は、コーチである昴の好みがそういうチームであることも一つ。

 

 この手のチームは弱点が少ないために本当に手強い。

 ポイントレースで勝つことを主眼としているため、相手の点を抑えることも自分達の点を増やすことも両方しっかりやってくる。それでいて無理はせず、アレが駄目ならコレを試そう、と、引き出しの多さを武器にしてくる。

 そんなチームの弱点を敢えて挙げるなら、

 

「若干、守りが弱い」

「……若干?」

「総合的に強いチームだからね。強いて言うならどこが弱いか、って話でしかないよ」

 

 相手の点を抑えつつ、確実に点を決めてくるのがメインの戦法。

 多少の失点なんか知るか、と、ガンガンシュートを決められると多分弱い。

 

「そこでプラン1。とにかく攻めて攻めて攻めまくる。

 こっちにボールが回ってきたら全員で前に走って、決められる子が一気に決める。相手ボールになったら全員で戻って、ディフェンスできそうならディフェンスする。取られた分以上に取っちゃえば勝てるんだから、ディフェンスに拘り過ぎなくていい」

「なにそれ!」

「ちょうボク達好みじゃん!」

 

 うん、なんとなくそんな気はした。

 多分、短い期間でこの子達を勝たせるなら、このプランが一番現実的。相手より素早く多くの点を取るという一点だけに集中するので、練習の種類を絞れるからだ。

 

「ただし、練習は滅茶苦茶地味。ハードな体力トレーニングを延々してもらうことになると思う。敵チームが落ち着いて陣形を組む前にダッシュで攻めにいくからね。疲れるなんてもんじゃない」

 

 正直、私が選手だったら、この作戦だけで勝負を決するとか嫌だ。

 バスケットボールをしに来たんであって短距離の選手になった覚えはない……ってなっても正直「それはそうだろうな」って共感することしかできない。

 

「プラン2は、もうちょっとバランスを取った攻めのチームを作ること。

 点を取るのをメインに考えるのは同じだけど、攻めのバリエーションと最低限の守りも意識する。どこからでも短い時間で点を取れる攻めのスペシャリストを目指すのが理想」

「あの、すみません。……どこがどう違うのか、よくわかりません」

「そうだよね。実際、そんなに違わないから」

 

 ただ、敢えて違いを口にするなら。

 

「プラン1は、今の状況から真帆ちゃん達に勝つ最短ルート。プラン2は、このチームが()()()()()()()()()()()の、私なりの最短ルート……かな」

「「勝てるチーム?」」

「ガチガチの速攻って結構大変なんだよ。普通は選手交代しながらやる作戦。鍛え方が足りなければ後半息切れするだろうし――後から別の戦い方を身に着けたい、ってなった時に、基礎を飛ばして攻撃ばっかり覚えたツケが回ってくるかもしれない」

「ショウコのオススメは2なんデスね?」

「おススメっていうか好みの問題だけどね。私はみんなにバスケを続けて欲しい。一回勝ったらそこで終わって欲しくないから、みんなに向いてる戦い方を一から身に着けて欲しい」

 

 五年生ズは好戦的な子が揃っている。

 愛莉ちゃんたちが穏健四、好戦一のバランスだとすると、つばひーたちは穏健一、好戦四のバランス。となれば、攻めと守りのバランスもそんな感じに調整すればライバルとしてちょうどいい形になるはず。

 

「ただ、プラン2の方が勝つための練習としては効果が遅くなるよ。最終的に強くなれるのは2の方だって私は思うけど」

 

 優秀な指導者なら1から2に自然とシフトさせることもできるかもしれない。

 そのあたりは私の力不足というしかない。

 

「どうかな? どっちがいい? みんなで決めて欲しい。私はどっちになっても全力でみんなのコーチをするから」

 

 それからしばらく作戦タイムを取った。

 保冷容器に移してきた生八つ橋や飲み物を取り出しておやつの準備をしつつ、みんなの結論を待っていると――。

 つれだって戻ってきた五年生ズを代表し、雅美ちゃんがふんと鼻を鳴らした。

 

「満場一致でした」

「え」

 

 ってことはプラン1か。

 うん、その方がわかりやすいし、指導も迷わなくてすむ。勝つ喜びを知ってもらうことで結果的に長く続けて貰えるかもしれない。

 

「ワタシたちはプラン2をえらびマシタ」

「ええっ?」

「……なんであなたが驚いてるんですか。あれだけ熱心に勧めておいて」

「いや、それはそうなんだけど、いいの?」

「はい。みんなで話して決めたので」

 

 微笑んで頷いたのはかげつちゃん。可愛い。

 

「だって、一回勝っただけじゃ足りないし」

「一回負けてるんだから、二回勝たなきゃ勝ちじゃないし」

 

 椿ちゃんと柊ちゃんは強気の回答。

 なるほど。今の段階から何度でも勝つ覚悟を決めていたか。本当に負けず嫌いだ。だけど……続けてくれるなら、それ以上に嬉しいことなんてない。

 

「わかった。結構スパルタになると思うけど、泣き言は言わせないからね?」

「いいよ」

「おねーさんこそ、ボク達にあっさり負けちゃっても知らないからね」

「う。まあ、実は私もけっこーキツイメニューなんだよね、実際」

 

 生八つ橋を振る舞いつつ苦笑いをすると、みんなの頭の上に「?」が浮かんだ。

 

「次の大会まで時間がない。五人中三人は基礎ができてるから、それだけを集中してやるっていう意味の基礎トレは基本、自主トレでなんとかして欲しいの」

 

 じゃあ集まった時に何をするのかと言えば、

 

「実戦。徹底的に実戦して経験値を増やしてもらう。相手は――私とミミちゃん」

 

 この宣言に、ミミちゃん以外の四人が驚きの声を漏らした。

 

 

  ☆   ☆   ☆

 

 

「よっす。だいぶ頑張ったみたいだな……って、なんで翔子おねーさんが死にかけてるんだよ」

「あ、こんにちは夏陽くん。あはは、子供たちのスタミナを舐めてたかなって」

 

 そろそろ帰る時間という頃になって夏陽くんが現れた。

 椿ちゃんたちをお迎えがてら様子を見に来てくれたんだろう。その辺に座ったり転がったりしてる五年生ズを見て感心とばかりに頷いた後、みんな以上にバテバテの私を見て目を丸くした。

 今、真っ白に燃え尽きそうなくらい身体が痛いです。

 

「な、何してたんだよおねーさん達」

「二対四でひたすら試合だよ」

 

 私&ミミちゃんvsつばひー、雅美ちゃん、かげつちゃん。

 テクニックと経験では私達に分があり、人数ではつばひーたちに分がある。私もミミちゃんもダブルチームくらいならその気になれば引き剥がせるので点がほいほい入る。つばひーたちも四人いるから、パスさえ出せばほいほいフリーでシュートできる。

 結果的にどうなるかというと、速攻による乱打戦だ。

 取られた分だけ取り返すポイントレース。だからこそ一回のディフェンス成功が大きな意味を生む。愛莉ちゃんよりちょっと大きい私と、智花ちゃん並みのテクニシャンであるミミちゃんをどうやって防ぐか、という課題とつばひーたちは取り組まなければならない。

 もちろん、私側にいるミミちゃんも高一女子と同じだけのポテンシャルを要求されるわけで――死ぬ。超死ぬ。

 

「なんでそんな面白いことしてるんだよ……!?」

「そっち!?」

「間違った。大会までスタミナ持つのかよ、そんな練習で」

「まあ、やってれば慣れるんじゃないかなーって」

 

 さつきと多恵を釣れれば、葵がやってたみたいな三対五でもいい。

 夏陽くんが来てくれれば私かミミちゃんと交代してもらえるので、そういうのも悪くないと思う。

 

「これくらいの無茶はしないと勝てないからね」

「なるほどなあ……。って、そういうやおねーさんさ」

「うん?」

「京都で男装したんだって? なんか俺だけ見てなくて真帆達に馬鹿にされたんだけど。ずりーぞ。今度見せてくれよ」

「ああ。うん、いいよ。それくらいならいつでも」

「本当だな? 約束したからな?」

「だんそう? なんのはなしデスか?」

「ん?」

「あ?」

 

 この後、食いついてきた五年生にも見せる約束をする羽目になったのは言うまでもない。

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