ロウきゅーぶ!のハイ勢がロウだった頃+オリ主の話(仮) 作:緑茶わいん
「昴は今年の誕生日、どうするの?」
京都から帰ってきて二日後の夜、私は昴に電話をかけた。
五年生たちの調子はどうかという問いに秘密と答えた後、本題に入った。
来たる十月十一日、火曜日は長谷川昴の十六回目の誕生日である。
『誕生日? ……ああ、そういえばもうすぐだったか』
「うわ、やっぱり忘れてる」
『いや、いい加減、誕生日が嬉しい歳でもないだろ』
本格的に嬉しくなくなるのはもっと後だけどね……と、私は一人遠い目になりつつ、
「葵から話来てない? 一緒にお祝いしよう、とか」
『いや。今のところはないけど……。そうか、そういうのもあるんだよな』
「そうだよ。お互いの誕生日なんて特に大事な日なんだから。……特に、今が一番楽しい時期でしょ?」
と、電話の向こうで言葉に詰まる気配。
『まさか、葵から聞いたのか……?』
「そりゃあ親友だもん。おめでとう」
『あ、ああ。ありがとう……でいいのか、この場合?』
「嬉しくないなんて言ったら一発殴るよ?」
葵と昴には末永く幸せに爆発してもらわないと私が困る。
『すまん。そうだな。……葵と、一回話してみるよ』
「そうしてもらえると嬉しい。それによって私達がお祝いするかどうかも変わるし」
『私達?』
「私と、愛莉ちゃんたち」
そもそもこの電話自体、愛莉ちゃんたちからの要請だったりする。
――昴の誕生日を祝っても大丈夫か。
もちろんお祝い自体は良いことだけど、昴には
で、私が代表してそのあたりを聞き出すことになった。
もちろん、昴にはそこまで詳しくは伝えないけど。
「二人だけでお祝いしたいならプレゼントだけ贈ろうかなって。それとも一緒に参加してもいいのか、別々にお祝いした方がいいか。別々なら葵の前がいいか後がいいか、とかね」
葵からのお祝いを先にするのが無難な気はするけど、その場合、土日のどっちかになると思う。例えば土曜の夜に長谷川家でささやかなパーティをやって、そのまま昴の部屋で二次会が始まった場合……果たして昴は、ううん、昴
翌日のお昼とかに私達とのパーティを設定してしまうと、シャワーも浴びてないあられもない姿の葵とご対面という可能性もある。
『なるほど。難しいな。……葵にそのまま聞いてみるか』
「お願い。……でも、変な聞き方して喧嘩にならないでね?」
『善処する』
本気で自信なさげな声が聞こえてから、電話が切れる。
私はほっと息を吐き、ストレッチをしてから寝ることにした。
☆ ☆ ☆
つばひーたち五年生組の特訓を再開して以来、私には休みらしい休みがなくなった。
平日の午前中は学校がだし、午後は公園や『オールグリーン』に集まって毎日のように練習。土日はみっちり練習するチャンスだから当然の如く猛特訓。
唯一、土日を控えた金曜日だけはお休みを言い渡しているけど……私にとっても小学生たちにとってもハードなスケジュールである。
でも、これくらいはしないといけない。
愛莉ちゃんたち六年生につけいる隙があるとすれば、それは練習が週三日であることだ。
熱心な子達だから自主練もしてるだろうけど、エースの智花ちゃんはお茶や踊りのお稽古があるし、紗季ちゃんもお店の手伝いがある。仲がいいからバスケ以外で遊ぶことも多い。
なので、週四日以上練習することが彼女達に近づく道になる。
女バス辞めたのになんでこんなにバスケしてるのか、不思議な話である。
ともあれ。
それだけ練習しまくってるので、同好会への参加はしばらくお預けになった。ついでに葵たちと遊びに行ったりもできない。
唯一お休みの金曜日も練習プラン練ったりしないといけないし。
「翔子、なんだか最近疲れ気味じゃない? 大丈夫?」
「あはは。うん、大丈夫。毎日充実してる証拠だよ」
水曜日のお昼休み。
久しぶりに葵と二人でお昼ご飯を食べながら、そんな話をする。
最近、葵はお弁当を持ってくることが増えた。
葵のお母さん作と葵お手製の割合もだんだん後者が増えてきている。昴にお弁当を作ってあげるため、まずは自分を実験台にしているらしい。ご馳走様です。
昴、お弁当は作ってもらってないとはいえ、競合相手が七夕さんだからきっと大変だ。
「それでね。昴とのお誕生日会なんだけど……八日の土曜日にしようかって」
言った葵はほんのりと頬を染めていた。
恋愛感情を吹っ切ったとはいえ、やっぱりこの子は可愛い。
「ん、わかった。私とか、慧心のみんなでお祝いしても大丈夫? ……あ、もちろん別の日でいいんだけど」
「もちろん」
と、今度は頬を膨らませる葵。
「あんた、変な気を遣いすぎよ。……翔子とだって、ちゃんと幼馴染のつもりなんだからね」
「う。……ごめん」
古傷をえぐられた私は目を伏せて謝った。
葵はつんつんと、弁当箱の中身をつつきながら、
「でも、その、嬉しかった。……応援してもらってるんだなって」
「もちろん、私は二人のこと応援してるよ?」
「だからって、この前のお赤飯はやりすぎだからね」
じろっと睨まれ、これには素直にごめんさいを言った。
京都のホテルでの出来事(間接的表現)のお祝いに、お赤飯でおにぎりを作って渡したのだ。余った分は私のお昼ご飯になったので大して目立たなかったと思うけど……悪ノリが過ぎたか。
そういえばお赤飯、智花ちゃんが好きだって聞いた気がする。パーティにも持っていくか検討しよう。
「あ、あの。それでね、翔子」
「ん?」
「翔子も来てくれない? その、土曜日のお祝い会」
「私も?」
私がいたら邪魔じゃないだろうか。
七夕さんがいるから二人っきりにはなれないって考えかな? 七夕さんならさりげなく部屋に行くよう誘導してくれそうな……あー、でもその後、それとなく聞き耳立てそうな気もする。
純粋に我が子の成長が嬉しいから、っていうのが美星姐さんとかと違うところだけど。
「……足止め狙い?」
「ち、ちがっ……。それだけのためじゃないからねっ!?」
「あはは、うん。わかってる」
私だけ除け者にするのは、って思ってくれた割合の方が多分大きいだろう。
本当に嬉しい。
「うん、もちろん参加させて。……あ、でも、昼間は練習入っちゃってるんだよね」
「それは大丈夫。晩御飯の予定だから」
「そうすると美星姐さんの足止めも必要になる可能性があるかな」
「そうなったらさすがに諦めるわよ……」
案外、二人っきりになる気満々じゃないですか、葵さん。
☆ ☆ ☆
―交換日記(SNS)― ◆Log Date 10/6◆
『というわけで、お祝いできることになりました。土曜日以外なら都合つけられるって。
『っ!
『やったー! でかしたるーみん!
『良かった……。ありがとうございます、鶴見さん
『これくらい全然平気だよ。……でも、ここって私、書きこんでいいの?
『えへへ、翔子さんなら大丈夫ですっ。ちょっと緊張しちゃいますけど……
『ほら。無理しないでね、愛莉ちゃん。
『おー。おねーちゃんも、たまにはいっしょにおはなししよ?
『グループチャットでもいいんですが、私達としてはこっちの方が楽なので。悪用するような方じゃないというのはわかってますし。
『あらためてありがとう。特別な時以外は覗かないから安心して。あ、プレゼントも聞いたよ。今治のタオルだって
『タオル? いがいとジミだなあおいっち!
『でも、今治のタオルは高級品だよ……。昴さんならタオルはたくさんお使いになるだろうし……。
『うん。実は昴はタオルフェチだったりするんです。
『おー、はつみみ
『聞く機会もなかなかないものね。じゃあ各自、似たようなプレゼントやあんまり高いものは避けましょう。特に真帆
『なんでナザシなんだよ!
『あはは……。でも、被っちゃったら本当に申し訳ないもんねっ
『うん。被らないようなもので、喜んでくださるもの……。難しいな
『みんなが心を込めて選べば、なんでも嬉しいと思うよ。
『むずかしいなー。るーみんはショーギの駒にするの?
『んー。今からだと発注が間に合わないから、今回は別のものかなって。思いつかなかったら料理っていう手を使うかも。
『じゃー、あたしもいいのが思いつかなかったらるーみんを手伝う!
『邪魔にしかならないからやめなさい。
☆ ☆ ☆
その後、準備もあるので月曜日のお昼にしよう、と決まった。
プレゼントはみんなで相談しながら用意する方向。
葵の分を目安にすれば子供たちの無茶を抑制できるということで、昴としても願ったり叶ったりらしい。そうでなかったら何か制限をつけていたかも、とのこと。
真帆ちゃんとか、ゲーム機くらいならぽんと出してきそうだもんね……。
さて。
流れで二回、お誕生日会に出席することになった私だけど、その日は祝日。普通なら練習をする日なので、つばひーたちにお願いしてお休みをもらわないといけない。
五年生ズもお家の事情でお休みしたりするとはいえ、私には前科がある。
どうしたものかと考え、一応、策を練ってみた。
「「敵情視察?」」
「うん。昴の誕生日を祝う振りをして、作戦とか必殺技とか聞きだしてこようかと。……駄目?」
私とつばひーたちの決戦は十一月六日――今からだいたい一か月後に行われる、『ForM』主催ミニバスケットボール大会が舞台となる。
硯谷からも「メインメンバーとはいかないけど連れていけるかも」と情報が入っている。愛莉ちゃんたち以外にも強敵がいるとなれば俄然燃えてくるところである。
となれば、今からそこに向けた調整が必要なわけで。
「……そんなこと言いつつ、遊びに行く口実なんじゃないんですか?」
「う。そ、そんなことないよ」
雅美ちゃんから鋭い指摘を受けてぎくっとする。
さすがに簡単にはいかないか。
ならば、と、私は他の子を巻き込むという最終手段に出る。
「ほら。ひなたちゃんの妹のかげつちゃんとか、智花ちゃんの友達のミミちゃんを連れて行けば向こうの口も軽くなるかなって」
「わ、私達……」
「デスか?」
「どう? 美味しい料理も出るし。……そうそう、私もお赤飯とか用意しちゃおうかなって」
「お赤飯くらい、今時コンビニでも買え……」
「セキハン、きょうみありマス」
「「駄目だった!?」」
和食を使うことでミミちゃんをゲット。
「じゃ、じゃあ私も……。ごめんなさい」
ミミちゃんが行くならとかげつちゃんも引き抜きに成功した。
雅美ちゃんとつばひーも「しょうがないか」といった感じで息を吐き、苦笑を浮かべた。
「でも、ボク達はいかないからね」
「向こうのコーチのことはよく知らないし」
「紗季とパーティするくらいなら自主練していた方がマシです」
「あはは……。そっか。でも、無理しすぎないようにね?」
一応、月曜日をお休みにすることには別の狙いもある。
「祝日だからって三日続けて身体をいじめると学校が辛いかもしれないから」
「……わかってます。体調管理も能力のうちですから」
不満そうにしつつ、雅美ちゃんも頷いてくれた。
私が言い訳を口にすると、かげつちゃんも罪悪感が和らいだのか微笑んでくれる。プレゼントをどうしよう、という彼女には「お姉さんと共同にしてみては」と提案した。
ミミちゃんの方は割とお嬢様だからか「もんだいありません」とのこと。
「それより、ショウコ。セキハン、忘れないでください」
「うん、了解」
その後はいつも通り、五人の小学生たちと身体を重ね合わせ、汗を流した。
一か月は長いようで短い。
一日お休みを貰った分、張り切った私は、やっぱり終わった頃にはへとへとになんっていた。