ロウきゅーぶ!のハイ勢がロウだった頃+オリ主の話(仮)   作:緑茶わいん

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男→女(転生)、女→男(病気)というカオスなifです。


ending??.もう一回TSしちゃったら?

「性転換症候群……ですね」

 

 行きつけの病院から紹介を受けて訪れた大学病院にて、お医者さんから告げられた病名に、私は開いた口が塞がらなかった。

 じゃあ、この身体は……。

 と、今の自分を見下ろす。鍛えてもなお、一定の柔らかさを維持していた長躯は更に何センチか高さを増し、起伏が減った代わりに頑丈さが増した。十数年間かけて慣れた下腹部のへこみは、小学生くらいまで切実に求めていた「でっぱり」にとってかわっている。

 

 一、二週間くらい前から調子が悪いのは感じてたんだけど、そのうち身体に明らかな変化が出てきて、お医者さんにかかったらところ入院になった。

 病院のベッドで、日に日に変わっていく身体を見つめるのはこう、なんというか、絶望的な感覚だった。

 

「治るんでしょうか?」

「……いいえ。望みは薄いと思われます」

 

 端的に尋ねた私に、お医者さんは少し驚いたような顔をしてから、申し訳なさそうに首を振った。

 

「初の症例も最近で、世界的にも例があまりないのですが――今のところ、元に戻った方は一人もいません」

「そうですか……」

 

 私は息を吐いた。

 

 そもそも、病気というよりは遺伝子的な異常の可能性が高いらしい。

 変異は既に終わって、安定している。なので、女に戻りたいなら治すのではなく、もう一度変異を起こすより他にないんだけど、そんな技術はまだない。もう一度変異したとして、ちゃんと元の身体と同じになるという保証もない。

 詰み、である。

 

「その、こう言ってはなんですが、あまり気を落とさないでください。今のところ健康上の問題は見つかっていません。定期的に検査を行っていただく必要はありますが、まだまだ未知の病気なので――国から諸々の経費を補って余りある補助金が出ます」

「それは、そうですね。ありがたいです」

 

 話を終えて病室を出ると、それまで黙っていた母さんが口を開いた。

 

「……なるんなら、もっと早くなってくれればよかったのにね」

「ほんとだよ」

 

 私はもう一度溜め息をつく。

 

 まさか、ここに来てもう一度、異性の身体を味わうことになるとは思わなかった。

 感想としては第一に「遅いよ!」が来る。

 何しろ、私的には二度目なのだ。パニックに陥るほどの衝撃はないし、無駄にお医者さんに詰め寄る気にもならない。

 ただ、

 

「うう、これからどうしようかなあ……」

 

 うわあ、としか言いようのない微妙な気分が、私の心を支配していた。

 

 

  ☆   ☆   ☆

 

 

 約一週間後。

 

「というわけで、鶴見翔子です」

「………」

「………」

 

 検査やら各種手続きやら日用品の買い出しやらが一段落した私は、親しい知人に近況を報告することにした。

 症状が出始めたのが四月の中盤。

 そこから入院諸々で半月ちょっと音信不通の状態だったので、みんな心配しているだろう……と、まずは昴と葵、それから愛莉ちゃんたちを呼んで、『オールグリーン』のフードコートに集まってみた。

 

 軽い説明は前もってしてあったんだけど、実際に私が顔を出して名乗ると、みんなは「え、マジで?」みたいな顔で固まってしまった。

 数十秒という長い沈黙の後、初めに動き出したのは昴。

 

「くそ。お前、俺より明確にでかくなりやがって」

「そこなんだ」

 

 いやまあ、気持ちはわかるけど。

 ツッコミを入れつつ苦笑すると、葵もフリーズから復帰してくる。

 

「……本当に翔子なのね。またイケメンになっちゃってまあ」

「……あはは」

 

 うん、まあ。

 

 私の面影――というか、父さんと母さんの遺伝子は残しつつ、男性的に変わった私の顔は、幸か不幸か割と格好よかったりする。

 完全に変わってから初めて鏡を見た時は「誰? 私の兄か何か?」って感じだったけど、毎日見ているうちに少しずつ慣れてはきている。

 

 高校生二人が現実を受け入れたことで、小学生組も次々に声を上げた。

 

「まじかー! 本当にるーみんなんだ。男子になっちゃうとかマンガみたい!」

「口を慎みなさい真帆。鶴見さんが困るでしょう」

「おー、おねーちゃん、おにーちゃんになったの? おにーちゃんとおにーちゃんでひな、こまってしまいます」

「そう言われると翔子さんに似てるような……。でも、言われずに街ですれ違ったらわからないかも」

 

 良かった、みんな好意的な反応だ。

 いきなり「帰れ」とか言われたらどうしようかと思った。いや、難病にかかった知人にそんなこと言うような子達じゃないってわかってはいたんだけど。

 でも、一人。

 言葉が出てこないのか、私をじっと見つめたまま固まっている子が一人。

 

「愛莉ちゃん」

 

 前よりだいぶ低くなった声で呼びかけると、愛莉ちゃんはぴくりと反応し、私に目線を合わせてくる。

 

「翔子さん、なんですよね?」

「うん、鶴見翔子。見た目は大分変わっちゃったけどね」

「………」

 

 答えた言葉をしみこませるように、愛莉ちゃんがこくんと頷く。

 そして、彼女は柔らかな笑みを浮かべてくれた。

 

「えへへ、びっくりしちゃいました。……翔子さん、とても格好良くなっちゃったので」

「ありがとう、愛莉ちゃん」

 

 しばらく愛莉ちゃんと見つめ合った後、どちらからともなく視線を離すと、みんなとの詳しい話に移った。

 なかなか込み入った話だけに説明も難しかったんだけど、要点としては「身体は完全に男になった」「元に戻れる見込みはない」の二点になる。

 前の服も着られないことはないんだけど、筋肉量とかのせいでぱつぱつになるので買い直した。

 メンズなんて男装の時に着たくらいだから、なんというか違和感が凄いけど、デニムにシャツ、ジャケットという無難なスタイルでこの場に臨んでいる。

 

「学校どうするの?」

「申請はしたから、しばらくしたら戸籍が変わるの。それから男子として通うことになるんだって」

 

 世界でも百例に満たない奇病だけど、幸い国内では二例目だった。

 一人目の人は男から女だったらしいけど、お陰で前例ができていたので、どうすればいいか迷うことはなかった。ちなみにその人とは人づてに連絡先の交換をして、情報共有ができるようにしてある。

 たった一人の同類だし、お互い女の生活、男の生活についてアドバイスができるからだ。

 

「それまで休めるのか。羨ましいな」

「一か月近く授業出られないんだよ、むしろ大変だって。ついでに言うと、バスケの大会にも出られなくなっちゃったし」

「そうなのか?」

 

 昴の顔が蒼白になる。わかりやすいなあ。

 

「うん。男バスに入る分には問題ないんだけど、身体が男だから女子の大会には出られないし、男子の大会も、元女が出る場合の規定がないから出られないんだって」

「なんだよそれ。じゃあプロにもなれないじゃないか」

「どっちみち、センターだと活躍できなさそうだけどね」

「翔子さん、すらっとした体型ですもんね……」

 

 智花ちゃんがほう、と息を吐いて言う。

 うん。女だった頃よりはがっしりしてるけど、香椎くんなんかと比べると上背も幅も足りてない。センターやってた最大の理由が「身長」だったので、男子の間でバスケするなら別の武器が必要だ。

 女子の間で培った柔軟性を用いてフォワードかガードに回った方がマシかもしれない。

 

「じゃあやらないのか、バスケ?」

「そうだね。いっそこの際、将棋やってみようかとも思ってるんだけど……」

 

 そっちも鬼門なんだよね、実際。

 寝る間も惜しんで勉強すればワンチャンくらいはあると思いたいところだけど、男子扱いされてしまうと女流棋士になれない。

 界隈では悪名高いあの三段リーグを勝ち抜いてプロ棋士になれるかというと……正直無理、と言わざるを得ない。

 と。

 

「嫌ですっ!」

「愛莉ちゃん?」

「翔子さんには、まだまだ教えて欲しいことがあるんですっ。バスケ、やめないでくださいっ」

 

 切実な表情で愛莉ちゃんに見つめられる。

 ああ、そっか。

 さっきの言い方だとそういう風に取られちゃうか。

 

「大丈夫だよ、愛莉ちゃん」

「え……?」

「バスケはやめないよ。単に高校の部活に入らないってだけ。練習はできるし、みんなで遊ぶ分には問題ないんだから」

 

 というか、身に沁みついた習慣というのはなかなか変えられない。

 男の身体になってからもトレーニングは欠かしていない。バスケを完全にやめるなんてもってのほかだ。

 絶対、すぐに禁断症状が出る。

 

「良かったぁ……」

「ありがとう、嬉しい。……まあ、男になっちゃったから、今までみたいな距離感ではできなくなっちゃうのは事実なんだけどね」

 

 同性だった今までは問題なかったわけだけど、男になったとなれば、昴の身に降りかかった「部長ロリコン事件」が私にも影響してくる。

 愛莉ちゃんたちと着替えなんてできるわけないし、スキンシップもできるだけ避けないといけない。

 

「……それは、ちょっと寂しいです」

「うん、私も」

 

 しゅん、とする愛莉ちゃんを見て、私は素直にそう思った。

 

 

  ☆   ☆   ☆

 

 

「お待たせしました、翔(かける)さんっ。遅くなってごめんなさいっ」

「大丈夫。全然待ってないよ」

 

 駅前のロータリーで愛莉ちゃんを迎えた私は、操作していたスマホをポケットにしまって微笑んだ。

 スマホを出し入れするのに一々バッグを開けなくていいってつくづく楽だ。こういうところは男の方が得だとしみじみ思う。

 並んで立って歩き出すと、愛莉ちゃんがはにかんだ笑顔で言う。

 

「えへへ、翔さんって呼ぶの、やっぱりなかなか慣れないです」

「私――俺も全然呼ばれ慣れないよ」

 

 あれからしばらく。

 私は戸籍を変更し、高校にも復帰した。その際、性別と一緒に名前も変えたのだ。さすがに男子として通うのに「翔子」はまずかろうと、国も簡単に許可してくれた。

 新しい名前は京都で使った偽名と同じ。

 元の名前を残しつつ、男っぽく、となると自然に男装時の偽名に行き着いたのだ。

 

 慣れないといえば、「俺」という一人称もそうだ。

 内心はともかく、口にする方は長らく「私」だったので違和感が凄い。口調も元のままだと「女っぽい」って言われてしまうので微調整せざるをえなかった。

 

「まずはどこに行きますかっ?」

「愛莉ちゃんの用事から済ませちゃおうか。俺の買い物はどうしてもってわけじゃないし」

 

 今日はショッピングの予定。

 愛莉ちゃんも中学生になったので、もう少しお姉さん風の服を着ていい頃合いだ。もともと上の年代の服が多かった子なので大きく変える必要はないけれど、それはそれとして全く同じはつまらない、ということで、ファッションに興味津々らしい。

 真帆ちゃんたちや、お母さんと買いに行くこともあるらしいけど、今回は私との買い物を希望してくれた。

 親以外で年上の目線っていうと他に選択肢がほぼないしね。葵に頼むのはちょっとアレだし、久井奈さんを引っ張りだすのも悪い気がしてしまうだろう。

 

 私の方は男になった時に結構買ったので不自由はしていない。

 男なんて着られる服が二、三着あれば特に問題ないわけだし、時間が余ったらぶらっとするくらいで問題ない。

 

「えへへ、楽しみです……って、あっ」

「大丈夫、愛莉ちゃん?」

 

 目的の百貨店の入り口に来た時、愛莉ちゃんは外から出てきた人に気づかずぶつかりそうになる。

 咄嗟に手を引いて支えたので大丈夫だったけど、出てきた人ももう少し注意して欲しい。私も、ちゃんとエスコートしてあげないと。

 

「ありがとうございます、翔さん。……えへへ」

「うん。転んだりしなくて良かった」

 

 微笑みあって中に入り、婦人服売り場へ。

 見慣れた雰囲気にほっとするあたり、すっかり女子に染まってたんだなあ、と思う。男子のファッションも楽しくないわけじゃないんだけど、他人の服を見立てているような一線引いた感覚がある。

 それに引き換え、女子の服は見ているだけで心が躍る。

 とはいえ、この身体だとなかなか一人では来られない。前に一人でふらりと寄ったら「プレゼントをお探しですか?」って好意的に解釈してくれたので、あんまり気にしなくてもいいのかもしれないけど。

 

「うーん、どういうのがいいかなあ……」

「愛莉ちゃんはスタイルがいいから、なんでも似合うもんね」

「そ、そんなことないですっ」

 

 談笑しながらあれもいい、これも可愛いってやっていると、どんどん時間が過ぎていく。

 楽しい時間って早いよね、本当に。

 試着しに行った愛莉ちゃんを待つ間にしみじみ思っていると、店員さんがさりげなく寄ってくる。お客さんが少なめだから暇なのかもしれない。

 

「彼女さんですか?」

「いえ、友達の妹さんなんです」

 

 私が愛莉ちゃんが恋人なんて、ちょっと恐れ多い話だ。

 香椎くんという壁を突破する自信がない、というのでは断じてないけど、愛莉ちゃんなら現状でも色んな男をよりどりみどりだろうし。

 すると、店員さんは意外そうな顔をした。

 

「そうなんですか? 私はてっきり……」

 

 言いつつ、さりげなく隣に立って、手に小さなカードを握らせてくる。

 名刺だと、サイズで理解する。

 

「受け取っていただけますか?」

 

 囁くように言われ、私は理解する。

 名刺は仕事用のものだろうけど、多分、追記がされているんだろう。ラインのIDだか、メールアドレスだか、電話番号だか。

 どうしようか、頭の中で葛藤していると、

 

「翔子さんっ」

 

 笑顔の愛莉ちゃんが試着室から顔を出し、手招きしてくる。

 自然、口元に笑みが浮かんだ。

 

「また買い物に来ることがあったら、お願いします」

「あ……はい、是非お越しください」

 

 残念そうな店員さんに一礼して、私は愛莉ちゃんの元へと向かった。




適度に背が高くて割とイケメン。
元女子なので人当たりが良く、女子のショッピングに適応でき、清潔で、女子時代の習慣を引きずって健康的な食生活とスキンケアを続けている。
女子時代の友人を中心として、徐々に人気が増加している……可能性があったりなかったりするかもしれません。
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