ロウきゅーぶ!のハイ勢がロウだった頃+オリ主の話(仮)   作:緑茶わいん

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※すばるんが女の子だったらというIFです。


ending??.元七芝三人娘

 起きたら知らない部屋だった。

 

「ここどこ……?」

 

 転生して女子になった私だ。

 多少の珍事件では動揺しない自信があったけど……これは予想外。

 

 身体は──うん、見慣れた私、鶴見翔子だ。

 体型とか肌の張りから言って、歳も高校生のまま。隣に誰か寝ていたりもしないので、酔ってお持ち帰りした(された)とかじゃないと思う。

 でも、このベッド、

 

「二段ベッドだ」

 

 天井が近い。

 這うようにして下を覗き込むと、布団とパジャマを軽くはだけた状態で、葵がすうすう寝息を立てていた。

 

「な!?」

 

 驚いて頭を上げた拍子にごん、と頭を打った。

 

「いった!?」

「うーん……? どうしたの翔子、朝から暴れちゃって」

「いや、えっと。その。ごめん葵、起こしちゃって」

「いいわよ別に。えーっと時間は……なんだ、いつもの時間じゃない。いつも起こしてくれてありがとね」

「う、うん」

 

 え、なにこれ。

 どうやら私は葵と一緒に住んでるっぽい。部屋の感じからして寮っぽい? クローゼットが二つあってそれぞれに制服がかかってるし。

 って、これって、

 

「す、硯谷の制服?」

「? 当たり前じゃない。私達、硯谷に転校したでしょ?」

 

 呆然とする私に、葵があっけらかんと言った。

 

 

 

   ☆   ☆   ☆

 

 

 

 日付を確認したら一年生の六月だった。

 転校って言ってたから、たぶん、七芝に入った後で硯谷に来たんだ。

 

 でも、なんでそんなまどろっこしいことを?

 

 首を捻りながら洗顔をして、髪を整え、トレーニングウェアを着て部屋を出た。

 登校にはまだまだ早い時間。葵によれば朝練とのこと。バスケ部だよね? とそれとなく尋ねたら「他に何があるのよ」と呆れられた。いや、もう、野球でもテニスでも驚かないつもりだったから、つい。

 

 寮の外に出ると、体操着やウェア姿の生徒でいっぱいだった。

 女子校かつ、生徒全員が運動部所属の硯谷ならではの光景。

 と、近くでストレッチをしていた一人の女の子が声をかけてきて、

 

「おはよう葵、翔子も」

「うん。おはよう昴」

「え。どちら様ですか?」

 

 昴? 今、昴って言った?

 ショートながら女の子らしさを感じる髪型。控えめながら起伏のある胸元。身長は葵より二、三センチ低く、可愛い系の顔には七夕さんの面影がある。

 うーんと、その、昴というよりは、

 

「長良川かえでさん?」

「長谷川昴です」

「ねえ翔子、ほんとに大丈夫? 頭打った時に記憶飛んだとか?」

「それは危ないんじゃ。翔子、脳震盪は見た目じゃわからないから油断すると危ないよ」

「あ、あはは。それは大丈夫。ただその、随分長い夢を見てたみたいで、それとごっちゃになってるっていうか」

 

 私的には(こっち)が夢に思えるんだけど。

 

 

 

 

「昴が男の世界、ねえ。確かにこいつは男っぽいとこあるけど」

「酷いこと言わないで欲しい。これでも女子の自覚はあるって」

 

 ストレッチの後、ランニングをしながら話をすると、幸い葵も昴(女子)もすんなりと受け入れてくれた。

 

「でも、いくらリアルな夢だからってごっちゃになるなんてね。ショージに毒されすぎたんじゃない?」

「や、多恵なら全員男にするんじゃないかなあ」

「あいつならありそうだから怖い」

 

 どうやらこの世界にも多恵とさつきはいるっぽい。

 二人は変わらず制服の可愛い学校に通っているらしい。練習嫌いもそのままか。

 

「で、えっと、まだ記憶が混乱してるんだけど……なんで硯谷に転校してきたんだっけ?」

「女バスが一年活動停止になって、転校する私に翔子達がついてきたんだよ」

「あ、なるほど」

「島崎? とかって二年生がコーチの娘さん(三年)とキスしてるところを見つかったのよね……。ほんと迷惑な話だったわ」

 

 何やってるのきらら先輩!?

 っていうか、いくら現場が見つかったからってキスだけで一年間活動停止? うん、確実に「その先」に発展してた気がする。突っ込まないけど。

 

「相変わらず仲良いわね、あんた達」

 

 元の世界との違いにくらくらしていると後ろから声。

 雑談のためゆっくり走っていた私達に追い付いてきたのは、ファッション誌の読者モデルくらい余裕でできそうな美少女。

 

「祥」

「なに? 幽霊でも見たような顔して」

「ううん。ただ、祥とバスケできるんだなって実感して」

「……なに言ってるの。当たり前でしょ」

 

 つんと顔を背けた祥は再びペースを上げて私達を追い抜いていってしまった。

 

「相変わらずクールだなあ」

 

 元の世界の祥は私に告白してくれたわけだけど、こっちの世界でも同じとは限らない。

 むしろ、昴とか葵に恋してる可能性もある。というかそっちの方がありえそうだ。

 

「うん。翔子は相変わらずだわ」

「ほんとに。なんでこう鈍いんだか」

 

 何故か幼馴染二人に罵倒された。

 

 

 

 

 

「ね、葵?」

「ん?」

「やっぱり昴のこと好きなの?」

「は、はぁっ!?」

 

 シャワーを浴びて朝ご飯を食べて(硯谷の寮の食堂は料理がとっても美味しかった)、着替えに戻ってきたところで、葵に尋ねてみた。

 でも、そこまで大きな声出さなくても。隣の部屋に迷惑がかかりそうだ。

 

「その様子だと、やっぱりそうなんだ」

「いや、ちょっと待ちなさい。無いから。そういうのは一切」

 

 納得して話を打ち切ろうとしたら腕を掴まれた。

 顔が赤い。

 説得力がないにもほどがある。

 

「ほんとに?」

「ほんとだってば。だ、だって昴はただの幼馴染だし。女同士……なのは、別に関係ないっていうか、むしろそういうのは全然ありっていうか、私が好きなのはもう一人の」

「葵、無理しなくていいからね?」

「む、無理なんて別にしてにゃっ!?」

 

 あ、舌噛んだ。

 

「大丈夫? ごめんね、変なこと言って。安心して。私は別に女の子同士の恋愛とか偏見ないから」

ふぉ()ふぉんふぉ(ほんと)?」

「ほんとほんと。もし、私自身が女の子に告白されても気持ち悪いとか思わないよ」

 

 でも、そっか、こっちの世界でも葵は昴のこと好きなんだ。

 わかってたから、残念、っていうことはないんだけど、少し寂しい気はする。

 まあ、もう葵のことは諦めてる──ってはっきり言えるほど吹っ切れてはないけど、少なくとも自分の中で割り切ってはいるから、それでいい。

 むしろ、昴と葵と私、それに祥まで一緒にバスケができるなんて、こんな機会、元の世界ではありえない。

 

「えへへ、そっか、そっかあ……」

「葵? 着替えないと時間無くなるよ?」

 

 いきなり元の世界に戻っちゃう可能性もあるわけだし、せっかくだから目いっぱい楽しんでおこう。

 

 

   ☆   ☆   ☆

 

 

 硯谷ってすごく環境いいんだなあ……。

 

 登校して、放課後まで授業を受けてみて、私は心からそう実感した。

 学校の敷地内に寮があるから登校時間はないに等しくて、ご飯は学食と寮の食堂で栄養満点のあったかいものが食べられて、クラスの誰に話しかけてもスポーツの話ができる。

 百合の花を咲かせてる子がいたりするからか、噂に聞いていた「本当は怖い女子高生活」みたいな絵面もない。女の子からの目を気にする子が一定数いれば、ちゃんと綺麗に保たれる。それでいて男子のセクハラは存在しないわけで、性的な意味を含めなくても私にとっては天国に近い。

 

 家で料理と洗濯と掃除をする生活も苦だとまでは思ってなかったけど、なんだかんだ時間を食われるのはどうしようもなかったし、朝練と放課後練がみっちりあるのを考えても、ここでの生活の方が楽で自由なくらいだ。

 

「翔子、部活いこ?」

「うん。えっと、部室まで連れてってもらってもいい?」

「もー。一晩寝てもそんな調子だったら、今度の休みに病院行きなさいよ?」

 

 普通科の私達と違いスポーツ強化コースの昴とも途中で合流して部室へ向かう。

 ちなみに硯谷の普通科は一般高校のスポーツ科をイメージしてもらった方がいい感じ。なので、硯谷の中でもスポーツ重視の科は、私達の中でもバスケ馬鹿な昴にはぴったりのところだ。

 

「あ、あの、翔子先輩っ」

「?」

 

 廊下で呼び留められて振り返ると、一人の女の子の姿。

 硯谷初等部の制服を着たその子の印象は「大人しいお嬢様」といった感じで、

 

「綾ちゃん?」

「は、はい。都大路綾です」

 

 思わず名前を呼ぶと、嬉しそうにはにかんで頭を下げてくれる。

 よかった、この様子だと知り合いだったみたい。

 

「どうしたの、高等部に用事?」

「あ、はい。いえ、翔子先輩にこれをお渡ししたくて……」

 

 差し出されたのは可愛い花の刺繍が入った新品のタオルだった。

 後ろから覗き込んだ昴が「今治」と呟く。さすがタオルマイスター、見ただけで生産地がわかるとは。

 

「この間、ハンカチをお借りしてしまったので、お礼です」

「そんな、気にしなくていいのに」

「い、いえっ。その、ハンカチ、汚れが落ちなくなってしまったので、代わりに」

 

 あ、なるほど。

 怪我したところを保護するのに使ったとか、そういうのか。見たところ今は大丈夫そうだから、どこかを軽くすりむいたとか、その程度だったんだと思う。

 なら、血の染みがついちゃっても不思議じゃない。

 あんまり断ると逆に気を使わせちゃうかも。

 

「そっか。うん、そういうことなら、ありがたく使わせてもらうね?」

「あ……はいっ。ありがとうございますっ」

「あはは。お礼を言うのは私の方だよ。ありがとう、綾ちゃん」

 

 恥ずかしいのか真っ赤になった綾ちゃんはぺこぺこと何度も頭を下げると初等部の方へ戻っていった。

 

「さすが翔子。年下の女の子に強い」

「「え、昴が言うのそれ」」

「え、私なんかした……?」

 

 後輩の子から懐かれていた話をしたら「それを言うなら葵だって」と昴が言いだし、いや翔子だ昴が葵だ、と無駄な言い争いが部室に着くまで続いた。

 

 

 

 

「やー、元七芝組は今日も賑やかだね」

「麻奈佳先輩」

 

 お疲れ様です、と三人で頭を下げると、松葉杖をついた野火止麻奈佳先輩は屈託なく笑ってくれた。

 

「お疲れ様。いやほんと、転校生が三人も来て、全員バスケ部に入るなんて思わなかったな」

「それ毎回言ってますよね」

「嬉しいからね、すばるん」

「すばるんってなんですか」

「なんとなく?」

 

 なんとなくでそのニックネームとは。

 昴は「すばるん」のニックネームから逃げられないのか。

 

「なんていうか、女たらしなら麻奈佳先輩の優勝だよね」

「ほんと」

 

 葵と二人でうんうん頷いていると、麻奈佳先輩がこっちを振り返って、

 

「君達に言われるのは心外だなー。っと、翔子。くーみんがまたコーチして欲しいってさ」

 

 初等部六年生の塚田(つかだ)久美(くみ)ちゃんのことだろう。同じセンターとして頼ってくれてるのかな。

 私は「わかりました」と笑顔で答える。

 硯谷ミニバスケットボール部の正センターを教えられるほど上手い自信はあんまりないんだけど、やれるだけのことはやってあげたい。

 

「……都大路さんに塚田さん。それに祥まで。まだ転校してそんなに経ってないのに」

「いやー、大変だね葵ちゃん」

「麻奈佳先輩が煽るせいですっ!?」

「?」

 

 葵があんな風に怒るなんて珍し──くはないけど、転校して間もない割に距離が近い。

 麻奈佳先輩パワーか、それとも、葵の好きな人はこの人だったのか。

 そういえば葵って麻奈佳先輩に憧れてたんだっけ。

 

「同じ部屋なんだからいっそ襲っちゃえばいいのに」

「おおお、襲うとか何言ってるんですか!」

 

 襲うってなんだろう。

 もし葵に性的な意味で襲われたらただの役得なんだけど、葵がそんなことするわけないだろうし。

 

「着替えよっか、昴」

「……いや、ほんと。刺されるなよ翔子」

「え、襲われるってそっちの話!?」

 

 

 

 

 

「昴は恋愛とか興味ないの?」

「無い」

「即答かあ」

 

 七芝女バスより一回りか二回り厳しい練習を終えて、夕食。

 三人でテーブルを囲みながら尋ねると、昴はきっぱりはっきりと色気のない答えを返してきた。

 

「勿体ない。モテそうなのに」

「私がモテるとかないって。色々足りてないし」

 

 そうかなあ。

 まあ、胸はあんまりないかもだけど、ちっちゃくて可愛いし、七夕さん譲りの童顔が男受け悪いはずない。

 

「翔子はちょっと身長分けて欲しい」

「あげられるものならあげたいけど。もらうなら葵の胸の方じゃない?」

「っ」

「いや、いらない。余分な脂肪があると速度が落ちる」

「あんたはほんとそればっかりよね……」

 

 溜め息をついた葵はそのまま何かをぶつぶつ呟きだす。

 

「もうちょっと小さい方が好みだってこと? 胸を小さくする方法……ああもう、相手が男ならこんな悩み方しなくていいのに」

 

 大変だなあ……。

 

「葵はそのままで十分可愛いよ」

「誰のせいで悩んでると思ってるのよ!」

ひはいひはい(いたいいたい)

 

 頬をひっぱられて睨まれた。

 

「はは……。っと」

 

 私達のやりとりを苦笑しながら眺めていた昴のスマホにぴろーんと着信。

 

「げ」

 

 あまり女の子らしくない呻き声を上げてスマホをしまおうとした彼──もとい、彼女。そこに再びぴろーんと着信。

 ぴろーん。ぴろーん。ぴろーん。

 ぴろぴろぴろーん。

 連続して来るなあ、とか思ってたら私達のスマホまで鳴り出した。

 手に取ってグループチャットの通知からアプリを立ち上げると、

 

『薄情者! バスケ部の顧問とかちょー大変なんだけど! 助けろ!』

 

 美星姐さんからの悲鳴だった。

 あー、そっか、私達が三人揃って硯谷に来ちゃったから、愛莉ちゃんたちの指導は美星姐さんがやるしかないんだ。

 

「いっそさつきと多恵に頼むとか」

「あの子たちなら人気は出るでしょうけど、気づいたらバスケ部じゃなくなってそう」

「言えてる」

 

 まあ、顧問を引き受けた美星姐さんが悪い。

 どうしても無理なら専門の人呼ぶとかするでしょ……と、私達は食事を続けたのだった。

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