ロウきゅーぶ!のハイ勢がロウだった頃+オリ主の話(仮)   作:緑茶わいん

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「ending??.三度目は小学生」の続き的なアレです。


おまけ 小学生with小学生
翔子(小五)、バスケ部を作る


「うん、いいよ」

 

 あっさりすぎませんか美星姐さん。

 

 思わず心の中でツッコミを入れてしまうくらい、顧問探しは簡単に終わった。

 とりあえず担任に聞いてみようと職員室に行って直談判したら二つ返事でOKである。ちょろいというか、姐さんの優しさがすごい。

 私と智花ちゃんがぽかんとするのをよそに、真帆ちゃんは大喜び。

 

「いいの!? やったー、ありがとみーたん!」

「にゃはは、そんなに嬉しそうにされると照れるだろ」

 

 言いつつ、姐さんはぴっと指を立てて、

 

「でも、一つだけ条件がある」

「ふえ、じょーけん?」

「そ。それはね、部員を五人以上集めること。新しい部活を作るには、顧問の先生と、五人の部員が絶対必要なの。だから――」

 

 私と智花ちゃんに視線が向けられて、

 

「後二人以上、集めてからまた来な」

「おっしゃー! 二人くらい余裕だし! もともと三人集めるつもりだったもんね!」

「お、その意気その意気。頑張りな」

 

 意味ありげに微笑まれた。

 いや、真帆ちゃんの人脈を使えば、私が何かする必要もないと思うんですが。

 

 

  ☆   ☆   ☆

 

 

「嫌。他を当たりなさい」

 

 一人目から難航の予感。

 栄えある部員候補第一号、永塚紗季ちゃんは「一緒にバスケしよ!」という真帆ちゃんの誘いをきっぱりと断った。

 ちなみにこれは()()()の勧誘。

 真っ先に勧誘に行ったら「顧問の先生のあてはあるの?」とため息と共に言われたので、顧問を決めて出直してきたんだけど。

 話をする前提条件を満たしたからあらためて断る、という無慈悲な結果である。

 

「鶴見さんも、こいつの思いつきに一々付き合わなくていいわよ」

 

 こっちに視線が向けられたので、私は微笑んで首を振る。

 

「ううん。私がしたくてしてるんだよ」

「………」

「………」

 

 紗季ちゃんと智花ちゃん、二人の視線が突き刺さる。

 

「私もバスケしたいの。だから、真帆ちゃんに付き合わされてるんじゃない。むしろ真帆ちゃんが私に付き合ってくれてるんだよ」

「そう……」

 

 紗季ちゃんは何かを考えるように黙って、それから首を振った。

 

「でも駄目。お店の手伝いもあるし、運動なんて体育で十分だもの」

「そっか。紗季ちゃんがいてくれるとすごく助かるな、って思ったんだけど」

 

 見た目は完全にインドア系だもんね。

 真帆ちゃんとは事あるごとに張り合ってたみたいだけど、バスケ部を作るまでは真帆ちゃんの方も本腰入れてスポーツやってたわけじゃないはず。

 真面目に体育をやって、後は理論と実践で十分ついていけてたのかも。

 

 ――でも、ここからはそうはいかない。

 

 真帆ちゃんがしっかりバスケに取り組むようになれば、運動能力には大きな開きが出てくる。

 とはいえ「このままだと負けるよ」なんて挑発の仕方はしたくない。

 

「出直してこよっか、真帆ちゃん」

「うー、サキの意地悪! いいもん、何度でも頼んでやる!」

「はいはい。おととい来なさい」

 

 やや適当な感じで追い払われ、説得は後日に持ち越された。

 

 先に他の子を誘うという手もあったけど、真帆ちゃんは紗季ちゃんの説得に拘った。ムキになって視野が狭くなっているというのが一つ、もう一つは、なんだかんだ一緒にいる一番の仲良しだからだろう。

 実際、紗季ちゃんも変に距離を取ったりはしなかった。

 いつも通り真帆ちゃんの世話を焼きつつ、でもバスケはしないという、格好いいくらいにさっぱりした態度を貫いていた。

 

 残念ながら翌日も説得に失敗。

 「三顧の礼」とはいかなかった。まあ、あれって一国の主がわざわざ自分の家まで訪ねてきて、っていう前提だもんね。学校で毎日会う友達とは前提条件が違う。

 条件。

 今の状態じゃ何かが足りてない?

 ゲーム的に言うと「立っていないフラグがある」か、「好感度が足りない」か。後者ならこのまま頼み続けるだけでいいかもしれないけど、現実的には会話をして好感度が下がることだってある。

 

 どうしたらいいんだろう。

 

 悩んだ末に私が取ったのは、意味があるのかわからない一つの行動だった。

 

 

 

 

 

 

「急に『美味しいお好み焼きが食べたい』なんて」

「だって、ここのお好み焼き、すごく美味しいらしいんだよ」

 

 母さんを誘って暖簾をくぐったお店は、当然『なが塚』だ。

 

「アツアツのお好み焼きを食べながら焼酎をぐいっと――」

「いいわね。行きましょう」

 

 ちょろい。

 夜の訪問だったけど、夕飯をちょっと我慢して遅い時間に行ったせいか、ほとんど待たずに入ることができた。

 

「いらっしゃいませ……あら」

「まあ。なが塚って……永塚さんのお店だったんですね」

「ようこそ。娘さんも一緒なんですね」

 

 私と紗季ちゃんは同じクラス。

 お母さん同士も保護者会で会ったことがあるようで、お互い一発で知り合いだと理解していた。授業参観のせいか私の顔も割れてるみたい。

 紗季ちゃんはお店にはいないみたいだ。残念。

 

「来てくれてありがとう。ゆっくりしていってね」

「はい。ありがとうございます」

 

 紗季ちゃんのお母さん――亜季さんに微笑みを返して、メニューを見る。

 

「あ、日本酒もある。ビールも……。翔子、どれが合うと思う?」

「私に聞かないでよ……。お好み焼きメインならビール、お酒メインなら日本酒、バランスが良いのは焼酎じゃない?」

「ビール、焼酎、日本酒の順で頼むのもいいわね」

「私に聞いた意味は?」

 

 メインは豚玉と、ネギ入りの豚玉にした。

 母さんは他にお酒とおつまみを注文し、私にもおつまみをつまませてくれる。それだけで食べるには味が濃い目だけど美味しい。

 ご飯が欲しくなるけど、小五の食事量的に我慢すべきか。

 やがてお好み焼きのタネが運ばれてくる。自分で焼いてもいいし、頼めばお店の人で焼いてくれる。融通のきくシステムになっている。

 

「私がやっていい?」

「私のもお願い」

「はいはい」

 

 母さんは既にビールを飲んでる。

 タネを混ぜて鉄板に載せたら、ヘラの二刀流で整え、ひっくり返す。うん。身体が小学生に戻ってるせいで勝手が違うけど、なかなか上手くできた。

 

「すごい。お上手」

「でしょう? 食事の支度もよく手伝ってくれるんですよ」

 

 手伝いとは、準備から調理までを一手に引き受けることを指します。

 

「もう、母さんは調子いいんだから」

 

 『なが塚』のお好み焼きはやっぱり美味しい。

 基本の豚玉もいいし、ネギ入りのも香りがいい。これはお酒にも合うだろうなあ。

 二つのお好み焼きを二人でシェアして食べていると、二階に繋がる階段からとんとんと足音が聞こえて――。

 

「お母さん。シャープペンの替え芯ってまだ――」

「あ、永塚さん」

「鶴見さん? どうして?」

「お好み焼きを食べに来たんだよ」

 

 八分の一カットのそれを持ち上げて答える。

 

「永塚さんの顔を見てたら食べたくなって」

「うふふ、紗季はうちの看板娘だものね」

「お、お母さん! 恥ずかしいから!」

 

 紗季ちゃんの声が響くと、お店にいた他のお客さんも笑う。

 常連さんも多いのだろう。

 身内が占拠してるって意味じゃなくて、味とアットホームな雰囲気から自然と常連になっちゃうって感じ。

 顔を赤くした紗季ちゃんが囁くように尋ねてくる。

 

「本当に、食べに来ただけ?」

「うん。……あ、あと、永塚さんと仲良くなりたかったから、かな」

「っ」

 

 目を逸らされた。

 

「別に、仲いいでしょ。よく話すし」

「そうなの? 翔子ちゃん、これからも紗季と仲良くしてあげてね」

「はい、もちろんです」

「お母さん! 鶴見さんも!」

 

 恥ずかしそうな紗季ちゃんはすごく可愛かった。

 それから、母さんが「もう飲めない」って言いだすまでゆっくりしてから、タクシーで家に帰った。

 何をしに行ったのかといえば、言った通りお好み焼きを食べに行ったのだ。あわよくば好感度を上げようという目論見はあったけど、あんまり強引に押す気はない。

 必要があったかといえば、やっぱりなかった気がする。

 

 でも、紗季ちゃんとはちょっと仲良くなれたんじゃないだろうか。

 

 

  ☆   ☆   ☆

 

 

 次の日。

 私と智花ちゃんは「本当のお金持ちの恐ろしさ」を知った。

 

「はい、サキ。これあげる」

 

 朝のHR前。

 紗季ちゃんと雑談を繰り広げていた真帆ちゃんが、思い出したように取り出したのは、何やら箱状のものが入った紙袋だった。

 受け取った紗季ちゃんも怪訝そうな顔になって首を傾げる。

 

「あげるって、何よこれ? お父さんのところの新製品とか?」

「ううん」

 

 真帆ちゃんはあっけらかんと首を振って。

 

「バスケで使えるサキ用のゴーグル。かっこいいやつ。おとーさんにお願いして、知り合いの人に作ってもらったの!」

「はあ!?」

 

 私はすぐに「ああ、あのアイガードか」と思い当たった。

 視力の低い紗季ちゃんは練習の時や試合中、特注品のアイガードを身に着けていた。真帆ちゃんからのプレゼントなのは知ってたけど、まさか、勧誘に成功する前から注文していたとは。

 っていうか、この日数で完成してるって……。

 二回目の勧誘が失敗した時点で動いていたとしても、確実にお急ぎ注文だよね。いったいいくらかかったのか。

 

 真帆ちゃんに甘々な風雅さんに加え、紗季ちゃんを気に入ってるらしい萌衣さんの働きかけがあったのかも。

 

「待ちなさい。私、やらないって言ったでしょ。なんでこんなもの――」

「しょーがないじゃん、作っちゃったんだから! セキニン取ってバスケやろ! やって!」

 

 子供か。

 なんとなく智花ちゃんを見ると、彼女もまた困惑した様子で私を見ていた。

 

 ――知ってた? ううん、知らない。

 

 でも、うまい手かもしれない。

 勝手にしたことである以上、OKする必要はもちろんないんだけど、紗季ちゃんの性格からすれば、

 

「……わかった。やればいいんでしょ、やれば」

 

 やっぱり。

 紗季ちゃんは溜め息をついて頷いた。

 しょうがないなあ、この子は。そんな感じ。我が儘な妹に困ってるけど、そんな妹が愛おしくて仕方ない、みたいな。

 一方の真帆ちゃんはOKが出た瞬間に大喜びで、

 

「やった! やっぱりもつべきものはトモダチだよね!」

「調子のいいこと言ってるんじゃない。ほとんど脅迫でしょ、これ」

「キョーハクじゃないもん! ワイロだもん!」

「また変な言葉覚えて……。それ、いいことじゃないから」

 

 無邪気な真帆ちゃんに冷静な紗季ちゃん。

 このコンビが部活でも見られる。

 ほっとした私は席を立って二人に駆け寄った。

 

「ありがとう、永塚さん。引き受けてくれて」

「……鶴見さん。気にしないで。このアホの面倒が私が見ないと不安だって思っただけだから」

「あはは」

 

 私は苦笑した。

 真帆ちゃんは「アホってゆーな!」と怒ってるけど、彼女が短絡的でないかといえば、その、うん。明言を控えさせていただきます。

 でも。

 結果を見れば、私が予想していた通り。

 真帆ちゃんに任せておけば上手くいった。彼女のカリスマ、人を惹きつける魅力はやっぱり本物だ。こういう純真な子に人はどうしても惹かれるものなんだろう。

 

 ともあれ、これで四人。

 

「真帆ちゃん、次はどうするの?」

 

 私が尋ねると、元気のいい声が返ってくる。

 

「まかせろ! もうメボシはついてるもんね!

「本当?」

 

 私は智花ちゃんを手招きし、四人で彼女の話を聞く。

 真帆ちゃんの口から出てきたのは、あの子とあの子の名前。

 

「アイリーンとヒナ! キミにきめた!」

 

 名前を呼ばれた二人が振り返る。

 智花ちゃんが目を見開く。

 何かを感じたのかもしれない。私もその瞬間、運命の巡り合わせを感じた。

 一人余計なのが混ざってるけど――この子達は五人になるべきだ。

 

「わ、わたし?」

「おー、ひなのこと、よんだ?」

 

 困惑した様子の愛莉ちゃん。

 無垢な笑顔のひなたちゃん。

 二人が反応してくれたのをいいことに、真帆ちゃんはその場で声を張り上げる。夏陽くんが心底鬱陶しそうな顔をしたけど、そんなことは気にも留めていない。

 

「うんっ。二人とも、あたしと一緒にバスケやろーぜ! サキと翔子と、ええと、もっかん! これだけいれば試合もできるんだって!」

「……できねーよばーか」

 

 夏陽くん、やめてあげて。

 真帆ちゃんが言ってるのは3on3のミニゲームのことだから。公式戦に出られないのは折を見てちゃんと教えるから。

 まあ、幸い聞こえてないみたいだけど。

 

「ほーい。みんな、私が来たぞー。席につけー」

 

 美星姐さんがやってきたので、話はそこで中断された。

 でも、次の休み時間。

 詳しい話――って言っても、バスケできる子が二人いるから一緒に遊ぼう! で終わりだけど――をしたところ、愛莉ちゃんとひなたちゃんは、またも拍子抜けするくらいあっさりと快諾。

 

「うん、いいよ。私でよければ」

「おー。ひなもいっしょにあそびたい。あそんでいいの?」

「もち! ぜってー楽しいから一緒にやろ!」

 

 揃った。

 

「……揃っちゃった」

「うん、揃ったね」

 

 私は微笑んで智花ちゃんの手を握った。

 

「バスケできるよ、湊さん」

「っ」

 

 智花ちゃんは感極まったように唇を噛んで、それから小さく微笑んだ。

 数日後。

 美星姐さんを介した部の設立申請は正式に受理された。

 

 届け出用紙に記載された部員は六名。

 部長の欄に記されたのは――私、鶴見翔子の名前だった。

 

「……なんで?」

「なんでって、それは」

「もちろん」

 

 言い出しっぺだから。

 部長とかかっけーけど、めんどっちーのは嫌だから。

 目立つのはちょっと苦手かも。

 おー、ひな、ぶちょうさんやるよ?

 

 などなどの理由によるものだった。

 

「どうしてこうなった」

 

 歴史が早速変わってしまった。

 まあ、真帆ちゃんが部長だからどうこうって場面、私が知ってる限りでは無かったし。部長なんてただの裏方みたいなものか。

 

「鶴見さん、活動日は?」

「週三日。それ以外の日は男子のバスケ部が体育館を使ってるんだって」

 

 こうして、慧心学園初等部女子ミニバスケットボール部は無事に設立されたのだった。

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