ロウきゅーぶ!のハイ勢がロウだった頃+オリ主の話(仮)   作:緑茶わいん

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翔子部長、初仕事をする

 女バスの活動は月、水、金の週三日。

 場所は主に体育館。

 走り込みなどで一時的に他の場所を使ってもいいけど、他の部や生徒に迷惑をかけないこと。

 顧問の美星姐さんは基本的に名前を貸すだけで、練習には参加しない。

 

「智花と翔子がいれば指導は大丈夫でしょ。私がいたらみんな気を遣っちゃうし」

 

 とのこと。

 

「そんなこと言って、ほんとはめんどっちーだけだろみーたん」

「にゃはは、バレたか」

 

 なんてやりとりがあったけど、本当に気を遣ってくれてるんだと思う。多分、理由の七割くらいは。

 

 

  ☆   ☆   ☆

 

 

 部長になった私の初仕事は、部員と話をすることだった。

 

「これからよろしくね、香椎さん。それから袴田さん」

 

 智花ちゃん、真帆ちゃん、紗季ちゃん以外の残り二人。

 説得するまでもなく、二つ返事でOKをもらってしまったため、愛莉ちゃん&ひなたちゃんとは碌に話をしていない。もちろん、同じクラスなので、部活の件に関係ない交流はあったはずだけど。

 

 ひなたちゃんを苗字呼びするのはなんかすごく違和感あるなあ……。

 と。

 

「うんっ。よろしくね、鶴見さん」

「おー。しょうこ、ひなのことはひなって呼んでください」

「ありがとう。じゃあ、ひなたちゃんって呼ぶね」

 

 昼休みを使って会話の機会を作ると、二人とも笑顔で答えてくれる。

 屈託がない良い子達だ。

 真帆ちゃんとは仲が良かったとはいえ、いきなり「バスケ部に入って」とお願いされて受けてくれるくらいだもんね。

 

「二人とも、バスケ好きなの?」

 

 ここは確認が必要だろうと尋ねると、二人は揃って首を振った。

 

「ううん」

「ありませんな」

「じゃあ、どうして?」

 

 首を傾げる私。

 

「真帆ちゃんのお願いだったから、かな」

「ひなも、まほとあそびたかった」

「そっか。やっぱりすごいなあ、真帆ちゃんは」

 

 誰とでも仲良くなれる。

 部長はやっぱり彼女の方が良かったんじゃないかと思ってしまうけど。

 

「鶴見さんもすごかったよ。この間の、体育のとき」

「おー。ひなもみました。かっこうよかったです」

「あはは、ありがとう。でも、湊さんがいてくれたお陰だよ」

 

 そっか、あの試合をみんなも見てたんだよね。

 夏陽くんを擁する男子に圧勝しちゃったんだから、憧れる子だっているだろう。

 

「しょうこ。ひなでも、かっこうよくなれる?」

「もちろん。でも、練習は辛いこともあるかもしれないよ?」

「もちろんです。かくごのうえ」

 

 愛莉ちゃんもこくんと頷いてくれる。

 

「えへへ、大丈夫だよ。鶴見さんも湊さんも、紗季ちゃんも――みんな優しいから」

「っ」

 

 不意打ちに頬が熱くなる。

 愛莉ちゃんが可愛い。胸とか身長で男子からからかわれてたみたいだけど、そりゃ、こんな優しくて可愛い子がいたら男子はそうなるよ。

 照れ隠しの意地悪って女子には逆効果なんだけど。

 

「良かった。私も湊さんと話し合って、なるべく楽しめる活動にするね」

 

 言ってから、一つだけ釘を刺す。

 

「あ、でも。もしまだだったら、お父さんやお母さんにはちゃんとお話しておいた方がいいと思う」

「うん。一応、部活に入りますって言ってあるけど……」

「それなら大丈夫かな? ほら、放課後に運動するから体操服が足りなくなるかもしれないし、洗濯も大変でしょ?」

「あ、そっか。そうだよね。一週間に三回だから……」

 

 部活があった次の日の朝に洗って夜までに乾かせばいいわけだけど、体育と被ったり被らなかったりするのがネック。

 被った日に同じ体操服をもう一回着るのかとか、洗濯のローテーションによっては二、三着、あるいはもっとあってもいいと思う。

 育ち盛りの時期に何着買うかは悩みどころ。

 

 他にも、将来的に体育館履きの替えかバスケシューズ、スポーツブラとかも必要になってくる。

 

 慧心に子供を入れられるご家庭なら何も考えずにぱーっと買えるかもだけど、いらない軋轢は減らしておいた方がいい。

 

「……そういえばお兄ちゃんも」

「香椎さん、お兄さんがいるんだ」

「う、うん。お兄ちゃんもやってるの、スポーツ」

 

 スポーツ、か。

 バスケと言わなかったのは、疎遠になってるから気まずいのかな。

 それなら私もこれ以上は突っ込まない。

 

「そうなんだ。それならお母さんも慣れてるかもね」

「そうだね」

 

 愛莉ちゃんもほっとしたのか微笑んでくれる。

 実家がスポーツジム経営してるアスリート一家だもんね。愛莉ちゃんはバスケ始めるまで縁がなかったけど、お母さん自身も経験者だから平気だろう。

 ひなたちゃんの方も、怪我の心配とかで引っかからなければ平気だと思う。

 

 そしてやっぱり。

 次の日、愛莉ちゃんもひなたちゃんも「オッケーだった」と報告してくれた。

 ほっと一安心。

 それじゃあ、いよいよ活動を始めていけるかな。

 

 

  ☆   ☆   ☆

 

 

「次の月曜日から始めるよ」

「おっしゃー待ってました! 早くやりたい!」

「落ち着きなさい。翔子が困ってるでしょ」

 

 真帆ちゃん紗季ちゃんに始動を伝えると、対照的な反応が返ってくる。

 っていうか、今。

 

「永塚さん、私のこと『翔子』って」

 

 意図的だったのだろう。

 紗季ちゃんは得意げに私を見て小さく笑みを浮かべた。

 

「駄目? もともと仲良かったし、部活仲間になるわけだし。いいかと思ったんだけど」

「う、ううん。駄目なわけないよ!」

 

 ただちょっと驚いただけで。

 前の時は紗季ちゃんだけ「鶴見さん」だった。なのに、一足飛びに名前を呼び捨てしてもらえるなんて。

 

「なんなら『部長』って呼びましょうか」

「いやいや、翔子で大丈夫だよ! 私も紗季ちゃんって呼ぶから」

「紗季でいいわ。その方が楽だし」

 

 と、そんなやり取りをしていると、

 

「むー。サキと翔子が仲良くなってる。あたしもあだ名考えよっかなー」

 

 頬を膨らませた真帆ちゃんが首を傾げ、

 

「えっと、しょこたん!」

「やめて」

 

 今回もそのあだ名は勘弁してもらった。

 その後、「ルミ姉」とかになりかけたり、私のあだ名は二転三転した挙句、「サキがサキなんだからショーコでいーや」ということになった。

 「るーみん」は案にさえ上がらなかった。

 「つるみん」が先にないと連想されなかったのか、お陰で私は真帆ちゃん紗季ちゃんと名前呼びをしあうことになったのだった。

 

 

  ☆   ☆   ☆

 

 

「……なんだか、夢みたい」

 

 智花ちゃんと一緒の下校中。

 並んで歩いていると、小さな呟きが耳に入った。

 

「夢じゃないよ」

 

 答えると、智花ちゃんは何度か瞬きをしてから頷いた。

 

「うん」

 

 部活の運営方法の相談にはラインを使うことになった。

 今週末はお稽古なんかで忙しいので、出歩くor私を家に招く暇がないそうだ。私も暇さえあればお母さんの相手(将棋)をしてるけど、智花ちゃんも忙しい子である。

 

「そういえば、智花ちゃんのお家の人は大丈夫だった?」

「え」

「バスケ、もう一回するの。もうやらなくていいんじゃないか、とか、言われなかった?」

 

 前世(仮)での彼女がどうしたのかは詳しく知らない。

 でも、忍さんがバスケに偏見を持っていたのは知ってる。

 

 ――智花ちゃんが足を止めた。

 

 答えが来るにはちょっと間があった。

 

「……なんでわかっちゃうんだろう」

「じゃあ……!」

「大丈夫だよ。お話して、わかってもらえたから」

「本当? それなら良かった」

 

 ほっとする。

 もし、ここで決定的な問題があって、友達の助けが必要なら、真帆ちゃんたちが首を突っ込み――花火大会前に忍さんと会っていただろう。

 そうじゃなかったということは、たぶん、本当に大丈夫。

 

「鶴見さんは」

「?」

「鶴見さんは、ドラえもんみたい」

「私、あんなに太ってないよ……?」

 

 何かもうちょっと可愛いのにならないだろうか。でも白いクソ運営とかも嫌だし……って、そういう意味じゃないのはわかってるけど。

 智花ちゃんも首を振って、

 

「そうじゃないよ。私が困ってる時、助けてくれるから」

「そんなの、特別なことじゃないよ」

「え……?」

()()が困ってたら助ける。そんなの当たり前でしょ?」

「あ……」

 

 前の感覚がまだまだ残ってるけど、今の私は智花ちゃんたちと同い年。

 先輩後輩でも、コーチと教え子でもない。

 友達。

 慧心女バスの中に入るのは申し訳ないような、気恥ずかしいような複雑な気持ちがあるけど、同時にみんなと友達になりたいとも思ってる。

 だから。

 

「永塚さんに言われたの。紗季って呼んで欲しいって」

「………」

「湊さんのことも、『智花』って呼んでもいい?」

 

 智花ちゃんが目を見開く。

 頬が赤くなって、何度も瞬きをして、それから首が縦に振られた。

 

「うんっ、もちろん……っ」

「良かった」

 

 私は微笑んで、智花ちゃんに――智花に駆け寄る。

 

「これから頑張ろうね。智花」

「うんっ。し……つ、鶴見さん」

 

 あ、翔子って言いかけて止めた。

 恥ずかしいよね、こういうの。よくわかるけど、こういう時はいじり倒すべきだと思う。

 

「智花? 私のことも名前で呼んで欲しいな」

「え、えっと……ふぁう」

「智花? とーもか?」

 

 しばらく「智花」を連呼していたら、悲鳴を上げて逃げられてしまった。

 

「そ、そんな急には無理だようっ!」

 

 残念。

 でも、週明けの月曜日。朝の挨拶で、

 

「お、おはよう……し、翔子」

 

 って、消え入りそうな声で智花は言ってくれた。

 物凄く恥ずかしそうな顔が可愛くて可愛くて、抱きしめそうになってしまったのはここだけの秘密である。

 

 

  ☆   ☆   ☆

 

 

 そして。

 慧心女子ミニバスケットボール部、初の活動日がやってきた。

 

「あたしは三年待った!」

「や、三週間も待ってないでしょ」

「わたし、放課後に体操服着るの初めて……」

「おー。たいいくかん、ひろいですなー」

 

 智花ちゃんも含めてみんな体操服。ジャージを着てる子はいるけど、シューズもみんな、ただの体育館履きだ。

 いかにも「素人の集まりです」って感じがすごく新鮮。

 桐原中の女バスは和気あいあいとした雰囲気が強かったけど、既存の部だから上下関係があった。でも、この女バスは新しい部なので私達六人しかいない。

 

 何をするかは全部、自分達で決める。

 ここから始まるんだ、っていう感じがすごく、

 

「やばい、マンガっぽい!」

「あはは、そうだね」

 

 真帆ちゃんの言う通り。

 訳あって転校してきたトラウマ持ちの天才的エースに、押しの強い純真な初心者が一目惚れして部を形成する。初心者の寄せ集めだった部は色んなトラブルを乗り越え、やがては全国を目指せるまでのチームに……なんて、まるっきりスポ根もののマンガだ。

 もちろん主人公は智花。パートナー役は真帆ちゃん。

 成長した真帆ちゃんがやがて、主人公智花の最大のライバルとして君臨、人気投票で一位を争うようになるのだ。

 

 そういうマンガだとすると、私・鶴見翔子の立ち位置は「いかにも怪しい謎の部員」。

 実は他の学校のスパイだったりとか、とある強豪校を倒してもらうためだけに他の部員を焚きつけた性格の悪い子とかそういうのだ。

 読者視点なら「誰か怪しめよ!」とツッコミが入ることうけあいである。

 

 と、それはともかく。

 

「ね、ショーコ。今日は何するの!?」

 

 わくわくしながら尋ねてくる真帆ちゃんに私は笑顔を返した。

 ちなみに、その隣では紗季ちゃんが例のアイガードを着けた姿で「甘やかさなくていいから」という顔をしている。

 智花とは相談済みなので、彼女は苦笑い。

 ひなたちゃんはいつも通りにこにこしていて可愛い。

 

「うん。最初だし、3on3の試合をやろっか」

「よっしゃー! さっすがショーコ!」

「ああ、もう……。始まる前からはしゃぐな馬鹿真帆」

 

 紗季ちゃんがため息まじりに窘めるも、もちろん、何の考えもなく試合を選んだわけじゃない。

 

「まず私と智花ちゃん以外、四人でじゃんけんして、リーダーを二人決めてくれる? そのあと、リーダーの人がもう一回じゃんけんして、順番に一人ずつ仲間を選んでいく感じで」

「なるほど、ゲーム形式ね」

 

 早くも紗季ちゃんが頷いたように、敢えてゲーム要素を強めて楽しんでもらうのが狙い。

 最初の活動ってすごく大事。

 苦手意識を持たれちゃうと取り返すのがすごく大変だから、まずは楽しく遊んで、部活に好印象を持ってもらう。そこから少しずつ基礎練を入れていって上達を目指せばいい。

 

 ――じゃんけんの結果、リーダーは真帆ちゃんと紗季ちゃんになった。

 

 先行は真帆ちゃん。

 順に仲間選びを行い、真帆チームは智花と愛莉ちゃん、紗季チームは私とひなたちゃんになった。

 経験者が一人ずつなのでバランスが良い。

 ちらりと智花を見ると、彼女は微笑んで頷いてくれる。お互いが相手の時以外は手加減する。これも前もって決めたルールだ。

 

 作戦は上手くいった。

 智花は極端に点を譲りすぎないように調節してくれ、経験者と初心者では明確な差がありつつも、全く歯が立たないわけでもないくらいを演出。

 運動がそんなに得意じゃない愛莉ちゃんやひなたちゃんも、パスを出したりしてチームに貢献。

 ちょうどいい点差で真帆チームが勝利すると、紗季ちゃんが眼光鋭く「もう一戦」を懇願。リーダーとメンバーを入れ替えて、計三戦のミニゲームをやった。

 

 準備や片付けに慣れていないのもあって、休憩やお喋りの時間も含めるとそれが精一杯だった。

 

「次は明後日だね」

 

 終わりがけにそう言うと、みんな笑顔で頷いてくれた。

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