とりあえずネタバレ要素が皆無なコッチから投稿します。
これは、もしものお話。
あるかもしれないし、無いかもしれない未来のお話。
彼らがこの結末に辿り着けるのかどうかは誰にも分からない。
けれど、もしもこの結末に彼らが辿り着いたら、きっとこんな日々を送るだろう…
これは、そんなもしもな未来のお話…
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
なぁ、聞いてくれないか?俺は今日、なんとも久方ぶりな休暇を貰ったんだ。ワンサマーの監視はオランジュに押し付け、今日は丸一日自由に過ごせとフォレストの旦那から直々に頂いたんだ…。
それはもう喜んださ。ここ半年間ず~っと部屋に引き籠ってハーレム野郎の観察しなきゃいけない上に、食事の時か奴が外出する時以外に外へ出る機会も殆ど無い。そんな日々を一日だけとはいえ、何もかも忘れて遊んで来いと言うのだ。嬉しいに決まってる…。
なのに、なのに何で…何で近場の大規模ショッピングモールに行ってみたら…
「もう、遅いよセイス君!!女の子は待たせちゃいけないんだぞ♪」
「……。」
―――何で私服姿の天敵(楯無)が満面の笑顔で手を振りながら待ってんだよ!?
「…さ・ら・ば・!!」
あまりに違和感なく周囲に溶け込んでいた為、正面入口を入った後もしばらく気付けず、何時の間にか彼女の3メートル付近にまで近寄ってしまった…。が、気付いただけマシだ……俺は速攻で回れ右をしてその場から逃走を試みる。
「だが残念、逃げられない!!」
「てめッ、ISの部分展開とか卑怯……ていうか何普通に出してんだテメェ…!?」
「私、暗部の人間。もみ消し、隠蔽、お茶の子些細…おーけー?」
「いや、全然『おーけー』じゃねぇし…」
畜生…二度目の鬼ごっこを制してからと言うもの、段々と俺に対して遠慮が無くなっていってるんだよなコイツ。この前なんか俺を見つけた瞬間、警告も無しにISのガトリングぶっ放してきたし…。
て、それどころじゃない…このまま捕まるわけにはいかないんだよ……!!
「は~い、ちょっとタンマ…今日はいつもみたいに鬼ごっこしにきたわけじゃないよのよ?」
「あ?」
決死の覚悟で抵抗してやろうかと全身に力を籠め始めた途端、楯無が両腕を前に突き出して待ったをかけてきた。突然の行動に思わず動きを止めて彼女の言葉に耳を傾ける…。
「ほらほら、良く見て。今日の私は私服でしょ?」
「…?」
まぁ、確かに今日の楯無は私服である。それも、かなり気合を入れてお洒落してるみたいだ。だが…
「それがどうした…?」
「まったくもう、鈍いなぁ!!それでよく犯罪組織のエージェントなんてやれるわね?」
失敬な…。しかし、コイツが私服であることの意味ってなんだ?さっぱり思いつかないんだが……。
「その顔…さては全く想像もつかないってとこかしら?……仕方ないわね、教えてあげるわ…!!」
「いや、別にいいです…」
「私が私服、それが意味することはただ一つッ!!」
「いいって言ってるだろ、ボケナス…」
どっかのマダオ娘に負けず劣らずなドヤ顔を見せ、愛用の扇子を取り出す楯無……どうせまた広げると何か書いてあるんだろうな…。
因みに、地味に欲しくなったからネットオークションやア○ゾンで探したけど、結局みつからなかった。実はコレってオーダーメイドなのか…?
と、くだらないことを考えていたら既に俺の目の前で扇子が展開されていた。少しばかり面倒くさいが、とりあえず書かれた文字を読んでみたのだが…。
―――『今日はオフです』
「……。」
「この位の事に気付けないなんて、本当にセイス君って駄目ね~?この恰好を見た時点で今の私がプライベートタイムだって察しなきゃ♪」
……言葉が出てこない…。コイツのあまりにアホな発言に言葉が出てこない。暗部の人間が言ってはいけないようなセリフを言ったことにも驚いたが、一番アホだと思ったのは…
「……おい、楯無…」
「な~に~セイス君?」
彼女はさっきから変わらない笑みを浮かべながらこっちを向く。とりあえず、そんなお前にどうしても言わせてもらいたいことがある…。
「私服も何も、更識家に仕事服なんて無いだろ」
「……え…」
「もしかしてIS学園の制服のことを言ってるのか?だが生憎、俺がお前の制服姿を見たのは最初の一回だけだ…」
「え、いや…その……」
「それ以降の鬼ごっこは全部、お前って私服だったよな?……あ、一度だけメイド服着てた時があったっけ?まさか、それが更識家の仕事服なのか?…わ~、俺って馬鹿だから知らなかったな~~」
「ちょ、ちょっとタンマ…!!」
「これは良い事を知ったな~日本最強の暗部、更識家の仕事服はメイド服。わ~い、今日もまた一つかしこくなったぞ~。更識家当主、更識楯無さん直々に教えて貰ったから間違いないよね~?」
「や~め~て~~ッ!!」
あらら顔を真っ赤にしちゃってまぁまぁ…。何を理由にトチ狂ったことを言っちまったんだか知らないが、思いっきり自分で墓穴掘った彼女は随分と珍しい。
「…ふぅ……さっきのお馬鹿発言は全部忘れてちょうだい…」
「貸し一つ、だ」
羞恥心により少しばかり息が荒いが、どうにか落ち着いたようである。彼女はこっちを一瞬だけジロリと睨んだ後、すぐにコホンと咳払いをして話の本題を切り出した…
「とにかく!!今日の私は貴方と一緒で休暇中なの!!ここで会ったのも何かの縁……どうせだから、一緒に回らない?」
「え゛?」
思わず変な声出しちまった…。いや、本当にどうした今日のコイツは?罠か何かか?それとも本気で言ってるのか?……どっちにせよ、嫌な予感しかしない…。
―――ていうか、それ以前の問題なんだが…
そんな思考が表に出てしまっていたのだろうか…楯無が少しだけ不満そうな表情を見せながら、口を開いた……。
「ちょっと…罠とか私の気が狂ったとか思ってる?……それとも、私じゃ不満かしら…?」
「いや、罠と正気を疑ったのは確かだが…今日、俺さ……」
「すまん、待たせたなセヴァス……って、何でソイツが居る…!?」
遠くから、先に遊ぶ約束をした彼女の荒ぶる声が聴こえてきた…。