アイ潜IF外伝   作:四季の歓喜

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こっちの楯無は本編以上のアレになっております…


IF未来 続・トライアングル編 その1

気配を隠し、息を殺し、目を凝らす

 

 

 

 幼少の時より培ってきた技術、経験、勘

 

 

 

 その全てを使い、目の前の標的に狙いを付ける

 

 

  

 標的は依然として此方に気付かず、隙を晒し続けている。これ以上の機会は無い…

 

 

 

 ならば、やることは決まっている

 

 

 

 躊躇はしない

 

 

 

 怖気づくことなど、あり得ない

 

 

 

 撤退など以ての外だ

 

 

 

 私はIS学園生徒会長にして更識家現当主、私に失敗は………無いわけでもないが、殆ど無い…

 

 

 

 私は狙いを標的に寸分の狂いなく合わせ、その引き金に合わせた指をゆっくりと動かした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――パシャッ!!

 

 

 

 

「ゲット!!よし、もう一枚!!」

 

 

 

 

―――パシャッ!!

 

 

 

 

「良いわ良いわぁ!!さらにもう一枚……いや、何枚でもッ!!」

 

 

 

―――パシャパシャパシャパシャッ!!

 

 

 

 

 街のど真ん中で物陰に隠れ、狙い(ピント)を合わせ、引き金(シャッター)に置いた指を動かしまくる水色が約一名。随分と無駄に高性能で無駄に高価格な望遠カメラを使用しながらハイテンションになっていく彼女を止められる人間は、残念ながらここには居ない…

 

 これまた無駄にプロの本気を出しながら身を隠しているため、道行く通行人に警察を呼ばれる心配も無い。その為かこの不審者…更識楯無は一切自重せずにレンズの向こうに居る、とある人物の写真を一心不乱に撮り続けた。その人物は誰かと言うと…

 

 

 

「あぁ、やっぱり可愛いわぁ……簪ちゃん…!!」

 

 

 

 他でも無い彼女自身の妹、更識簪その人である。最近はちょっと複雑な理由で微妙に不仲になってしまっているのだが、楯無にとっては溺愛すべき妹に変わりは無い。この様に定期的に妹分を摂取しないと、仕事に支障が出る程大事な子である。

 

 

 

「けど、今日の目的はちょっと違うのよねぇ……いや簪ちゃんが大事なのに変わりないけど…」

 

 

 

 我が愛すべき妹は世界一可愛い。兄弟姉妹の自慢ならば、かの世界最強にも天災にも負けない自信がある。簪ちゃんのためならば、いっそ世界を敵にだって廻して見せよう。

 

 しかし、そんな妹に…大事な大事な妹に、魔の手が忍び寄ってる可能性があるのだ…

 

 

 

「誰よいったい……『ブレッド』と『リボル・ヴァーガン』って…」

 

 

 

 事の発端は、簪の側近である本音からの報告である。曰く、最近簪はとあるネットゲームにハマっているらしい。確かタイトルは『モン○ターハンターF』だったような…

 

 人付き合いやコミュニケーションが苦手の分類に入る簪の交流関係は身内を省くと、基本的にネット関係が主なものになっている。ネトゲ然り、チャット然り、ブログ然り、裏サイト然り……この前見つけた例のサイトは、本当にどうすれば良いのか分からなくて見なかったことにしたが…

 

 とにかく、いつもの様に簪がそのネトゲで遊ぼうとした際に本音がそれに便乗したのである。別に断る理由も無かったので簪は普通にそれを承諾し、そして本音に“奴ら”を紹介したのだ…

 

 

 

「簪ちゃんの友達になってくれるのは良いのだけど、ちょっとねぇ…」

 

 

 

 何でもそいつら二人は簪がそのゲームを始めた初期の頃、たまたま一緒にゲームを攻略して以来意気投合して今も進んで一緒にパーティを組んでいるそうだ。あくまでゲーム内の話なので顔どころか本名も分からないのだが、本音の報告によればその時の三人のやり取りはとても楽しげだったと聴かされた。

 

 そして、二人が『オフ会』なるものを計画していることも…

 

 

 

「仲良くするのは不本意だけど…本当に、ほんとーに不本意だけど許すとして、直接顔を合わせた際にあまり度が過ぎたスキンシップされると心配なのよね……」

 

 

 

 自分の事を棚に上げといて何を言ってやがるんだと思うかもしれないが、つまりはそう言う事だ。人見知りでもある簪が進んで誰かと会おうとすること自体は、素直に喜ぶべきことなのかもしれない。

 

 しかし、しかしだ…もしもそいつが上っ面だけの糞野郎だったら?簪に手を出すゲス野郎だったら?愛する妹を傷つける塵芥だったら?……私はそいつに地獄を見せ、産まれたことを後悔させながら閻魔様の元に送ってやる権利があるのではなかろうか…?

 

 

 

「否!!これは権利で無く義務よ!!大切な妹を汚い魔の手から守る姉の義務なのよ!!」

 

 

「だからって仕事をほっぽり出すことが許されるとでも…?」

 

 

「愛の前には全てが無力よ、虚ちゃん!!」

 

 

「……頭が痛くなってきました…」

 

 

 

 今年一番の深さを誇るため息を吐きながら、このはた迷惑な当主の側近を担う布仏虚は頭を抑えた。自身の妹が持ってきた報告を聞いた途端、常日頃から自重の二文字を覚えて欲しいと思ってた目の前の主は暴走を開始。山積みになった仕事を全部放り出し、丁度街へと私服姿で出掛けた簪の後を尾行してきたのである…

 

 何度も連れ戻そうとしたのだが、結果は御覧の通り。IS学園シスコントップスリーの一人である彼女は色々なものを建前に、例の人物との待ち合わせ場所に佇む自分の妹を盗撮しているのである。

 

 

 

「もう、嫌なら帰っていいのに…」

 

 

「帰ったところで、後は貴方専用の仕事しか残ってません」

 

 

「あ…そう、なの……」

 

 

「それより、いったいどんな方々なのです…?」

 

 

 

 さっきから気になってしょうがないのだが、画面のアバター越しとはいえ簪と意気投合できた人物となると少なからず興味が湧く。

 

 

 

「『ブレッド』はライトボウガン使いでチキン殺法が主流、『リボル』は狩猟笛で防御力と回復力にものを言わせた特攻精神が主な戦い方らしいわ。因みに簪ちゃんは弓使いで弾幕形成タイプ…」

 

 

「誰がそんなこと聞きたいと…」

 

 

「いや、ぶっちゃけ本音ちゃんの報告ってこれしか無いのよ。後は簪ちゃんのユーザーネームが『カミカザリ』ってことぐらいしか…」

 

 

「……調べようとしなかったんですか…?」

 

 

「簪ちゃんを追いかけることで頭が一杯だったのよ、悪い…?」

 

 

「まさかの開き直り…」

 

 

 

 もう何を言ったところで、この妹バカな生徒会長には全て無駄のようだ。そう悟り、虚が再度深いため息を吐いたその時、遂にその瞬間はやって来た…

 

 

 

「来たわ…!!」

 

 

「え、何処ですか…?」

 

 

「あそこよ、あのキョロキョロしながら簪ちゃんの居る所に向かってる男!!あの挙動は、間違いなく誰かとの待ち合わせ場所に向かう時の動きよ!!」

 

 

「……その洞察眼は流石と感心すべきか、無駄使いするなと呆れるべきか…」

 

 

 

 とにかく楯無が示した方角に視線を向けてみると彼女の言うとおり人混みに紛れ、携帯らしきもので何かを確認しながらゆっくりと簪の居る場所へと向かう一人の男が見えた。年は簪や本音と同じくらいで背はやや高め、どこかで見覚えのある赤い髪をして額にバンダナを巻いてた…

 

 それを見た途端、虚は思いっきり動揺し、楯無は意外な人物に驚いた…。

 

 

「て、あの人は確か…!?」

 

 

「あら、『五反田弾』君じゃない…」

 

 

「……まさか、『ブレッド=弾』…?」

 

 

「親父ギャグね…」

 

 

 

 やって来たのは何と織斑一夏の親友であり、数少ない男友達の一人である『五反田弾』その人であった。楯無は仕事の都合で一夏の交友関係を調べた際に彼の存在を知り、虚は先日の学園祭の時に顔を合わせている。余談だが二人ともその時に何かあったらしく、虚は彼のことを思い出すと微妙にトリップしてしまう。細かいことは分からないが、桃色系の何かであるのは確かである…

 

 

---実際は互いに一目惚れみたいなことになり、それ以外は名前を言うことすら出来てないのだが…

 

 

 

「何にせよ、仕事に支障が出ない程度でお願いね…?」

 

 

「どの口がほざきますか、この口ですか?その口ですか?」

 

 

「いひゃい、いひゃい!!」

 

 

「まったく、それを言ったらお嬢様もでしょう?……ただでさえサボり癖が酷いのに、例の殿方のことになると織斑君の周りに居る彼女たちより酷いことになってるじゃないですか…」

 

 

「うぐっ…」

 

 

 

 例の殿方とは無論、セイスの事である。前回のレゾナンスの一件以来さらに彼のことを意識するようになってしまい、定期的に色ボケてしまうようになってしまった。その酷さはワンサマラヴァーズに勝るとも劣らない…

 

 

---仕事の書類を間違える

 

---授業の時間を忘れる

 

---ISの訓練中にトリップして事故る

 

 

 こんなのまだマシな方だ。この前なんて一夏の特訓中に考え事をしていたら、手加減するのを忘れて保健室送りにしてしまったのだから。あの時の千冬さんによる折檻は本気で死ぬかと思った…

 

 因みに虚達には自分に意中の相手が居ることを告げてはいるのだが、セイスが亡国機業に所属していることはおろか名前すら教えてない。いずれ何らかの決断をしなければならない日がくるのだろうが、それまではもう少しだけこの現状を維持しておきたかったのである…

 

 

 

「それに立場や身分の違いに邪魔される恋って、何だか燃えるものがあると思わない…?」

 

 

「いきなり何ですか……それと、また簪様の居る場所に直進してる人が現れましたよ。多分、もう一人はあの人じゃないですか…?」

 

 

「む、来たわね!!さて、うちの可愛い妹に手を出す不届きものはどんな奴なの…かし、ら…………嘘でしょ…?」

 

 

 

 待ち合わせ場所で合流し、軽く挨拶の言葉を交わす二人に真っ直ぐ歩みを進める3人目の人物。そいつは弾と同様に年は簪達と殆ど同じくらいであり、背も同じくらいでやや高めである。ただ髪の色は黒に近い深緑色であり、肉つきは見た目よりしっかりしていた。

 

 しかし明らかに動きが堅気のモノでは無かった。多くの人が行き交う大通りの中で一切速度を落とすことなく、しかも誰にもぶつからないどころか掠りもせず歩き続けた。どう見ても自分の同業者である。

 

 

---そして自分はソイツを…彼のことをよく知っている……

 

 

 

「どうしました…?」

 

 

「ちょ、待って!!嘘よ嘘よこんなの嘘よ!!有り得ないわよ!!冗談にしてはタチが悪すぎよッ!!」

 

 

「とりあえず落ち着きなさい、そして本当にどうしたんですか…?」

 

 

「だって…だってアイツは、彼は……」

 

 

 

 あまりの現実に指が震えまくる。それでも、その震える指はその現実を指差した。そしてその指の先に映った光景は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もしかして、『リボル』さん?』

 

 

『あ、あぁ……そう言う二人は『ブレッド』と『カミカザリ』さんか…?』

 

 

『おう、初めまして…で、良いのか?……ま、とにかくヨロシクな!!』

 

 

『よろしくお願いします』

 

 

『……マジ、かよ…』

 

 

 

 

 

 理由は違えど、今の自分と同じく憔悴状態に陥ったその意中の相手……セイス本人が居た…

 




リボル・ヴァーガン→リボルバーガン→六連発銃→6→セイス
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