アイ潜IF外伝   作:四季の歓喜

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次回で最後です。今回全体的にピンクが足りませんが、その分ラストに詰め込む予定です


IF未来 続・トライアングル編 その4

(何だこのカオスは…)

 

 

 

 前回と言い、今回と言い…俺の休暇には碌なことが起きない。もういい加減に諦めて全て受け入れてしまえば楽になるだろうか?……いや、変わらないだろうなぁ…

 

 楯無改め楯子の駄目っぷりにより、カミカザリさんこと簪の機嫌がすこぶる悪くなったあの後、どうなったかというと…

 

 

 

「……。」

 

 

「……。」

 

 

(き、気まずい…)

 

 

 

 俺と向かい合う様に座っている楯無は両手で頭を抱えるようにして沈黙しており、その隣に座る簪はそんな楯無にそっぽを向くようにしてジュースをストロー銜えながら飲んでいる。そして何より、今ここに居る3人とも無言を貫いているというのが辛い…

 

 別にまだ楯子=楯無の構図がバレたわけでは無いのだが、弾の携帯に電話が掛かって来たのを皮切りに負の連鎖が発生してしまったのである。

 

 

『もしもし、どうしたんだ蘭?……え、人手が足りないから戻ってこい?嘘だろオイ…』

 

 

 どうやら五反田食堂が本日予想外の繁盛っぷりを見せ、猫の手も借りたい状況に陥ったから帰ってこい…という内容だったらしい。バックれると後が怖いのだろうか、残念そうにしながらも2,3俺達と言葉を交わして帰って行った。

 

 

 

―――ここで簪の不機嫌度が一段上がった…

 

 

 

 今日はもうお別れする羽目になったのは残念だが、弾とはまたネットを繋げればいつでも会えるので俺も簪もそれで良しとすることにした。仕方ないので漸く装備が整った楯無を入れ、残った3人で続きをやることになったのだが…

 

 全員、開始3分でゲーム機のバッテリーが切れた…

 

 

 

―――ここで簪の不機嫌度がさらに一段上がった…

 

 

 

 見知らぬ黒髪に乱入されなければ時間とバッテリーを無駄遣いすることもなく、丁度弾が帰るまでたっぷり遊べる筈だったのが全部台無しに……その事実を理解した簪の不機嫌メーターはMAXを超え、最終的に…

 

 

 

「あの、カミカザリさん…?」

 

 

「……。」

 

 

「……うぅ…」

 

 

「……。」

 

 

 

―――全ての元凶(楯子)をガン無視するという手段を取った…

 

 

 

 完全に楯無から視線を逸らし、何を話し掛けられようが謝られようが全て無視だ。取りつく島も無い簪の様子に楯無は涙目、俺はこの精神的に辛い状況に涙目である……無論、弾に便乗して帰ろうとしたんだけど、悪寒が走ったから断念した…

 

 と、その時…おもむろに簪が席を立った……

 

 

 

「……ちょっとトイレ行ってくる…」

 

 

「お、おう…」

 

 

 

 それだけ言って簪は店の奥にあるトイレへさっさと行ってしまい、テーブルには俺とアホだけが残された。因みに、席を立つ時も楯無しとは一切目を合わそうとしなかった…

 

 そして簪が居なくなった途端、楯無はまるで掴みかかるような勢いで俺に近寄って来た。

 

 

 

「どうしようセイス君!?私このままじゃ簪ちゃんに嫌われちゃうッ!!」

 

 

「落ち着け馬鹿」

 

 

「へうッ!?」

 

 

 

 割とマジに力を込めてデコピンをお見舞いしてやる。並の窓ガラスなら簡単に割る威力を持つソレは、暴走するシスコンを黙らせるには充分だった。目の前にはデコを抑えて蹲る今日の元凶が一人…

 

 

 

「……イッタァ…」

 

 

「そもそも、全てにおいて手遅れだろうが。元々お前って簪に苦手意識持たれちゃってるじゃん、そんで今日の出来事を無かったことには出来ねぇよ…」

 

 

「で、でも!!まだ正体がバレたわけじゃないから大丈夫よ…」

 

 

 

 確かに今日は終始印象が最悪な楯子さんだったが、まだ簪は楯子が楯無である事実に気付いていないようだ。2度と髪を黒に染めて彼女の前に現れない限り、ただの黒歴史で済ませることが出来る…

 

 

 

「俺が喋らなければな♪」

 

 

「ッ!!」

 

 

「俺も休暇をパーにされちまった一人だしな…何処かでうっかり口をすべらせるかもなぁ?」

 

 

「な、な…!?」

 

 

「どうなるだろうな~?……ところで楯無、今日は無性に寿司屋へ行きたいと思わないか…?」

 

 

「……私に奢れと…?」

 

 

「簪さ~ん!!楯子さんはね~、楯無って言うんだよ本当はねッ!!」

 

 

「分かった奢るから!!寿司でも焼肉でも何でも奢るから黙っててえええぇぇぇ!!」

 

 

 

 いやぁ、ついこの前マドカの奴にまた財布の中身を空っぽにされて困ってた所なんだよね。今日は不運が続いたが、これで結果オーライということにしとこう…

 

 

 

「……。」

 

 

「あれ、どうした急に黙り込んで…?」

 

 

「……別に奢っても良いけど、行く時は私も一緒に連れていってね…」

 

 

「え?……まぁ、良いけど…」

 

 

「よし!!」

 

 

 

 何か暗い雰囲気から一転、急に明るくなったよこいつ。俺と一緒に行くってのがOKになった事が嬉しいのか?……それってやっぱり…

 

 

 

「……お前ってさ…」

 

 

「ん?」

 

 

「この前は途中で色々と有耶無耶になっちまったから確認出来なかったんだけど、アレってやっぱりマジだったのか…?」

 

 

「アレって…?」

 

 

「いや、そりゃお前…」

 

 

 

 

―――お前が、俺の事を好いてるってことだよ…

 

 

 

 

「……いや、やっぱ何でも無い…」

 

 

「?……変なの…」

 

 

 

 そりゃこっちのセリフだっての。この前は肝心な所でマドカに席を外せとか言われ、戻ってきたら楯無は何故か顔を赤くして気絶してたし。その後、事実を知ってるマドカは何も教えてくれないし、当の本人は再会する度にいつもの鬼ごっこ状態になるだけだった…

 

 そもそも、俺に好意を抱く理由とか要因が分からない。ワンサマーの様に誑しなセリフをコイツ自身に言ったことは無いし、さっきも言った通り出会うと命懸けの追跡劇しかやらない。その全部で俺は楯無をイライラさせ、おちょくりまくった記憶がある。むしろ嫌われるようなことしかしてないのだが…

 

 

 

「ま…いいや。とにかく、これからどうっすかなぁ……」

 

 

「そうねぇ…」

 

 

「いや、お前はもう帰れよ。つーか、どうするか悩んでるのは超が付くほど機嫌が悪くなった簪のことなんだけど…」

 

 

「尚更帰れないわ」

 

 

 

 目をキリッとすんな、腕をグッと構えるな、鬱陶しい……ていうか、この胃に優しくない状況を作った本人が何を言ってやがる…

 

 

 

「それに、簪ちゃんとセイス君を二人っきりにするなんて色々と心配なんだもん!!特に貞操が!!」

 

 

「どういう意味だコラぁ!?俺が節操なしとでも言いたいのかテメェ!!」

 

 

 

 もっとも…犯罪組織の一員と国家お抱えの暗部が、こんな場所でこんな会話してる時点で可笑しな話かもしれないけどな。今更過ぎて疑問に持つことすら忘れてたよ…

 

 

 

「……いや、逆もまた然りなんだけど…」

 

 

「あ?何か言ったか…?」

 

 

「ううん、何でもないわよ」

 

 

 

 何か碌でも無い言葉が聴こえた気がしたが、無かったことにしよう。嗚呼、早く帰って来てくれ簪さ~ん……俺の何かが限界を迎える前に…

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「……はぁ…」

 

 

 

 セイスと楯無がアホなやり取りをしている頃、簪は未だに御手洗いに居た。ぶっちゃけ既に用は済んでいるのだが、あのテーブルに戻りたくなくてずっと鏡に映った自分と睨めっこを続けていた…

 

 今日初めて顔を合わせたブレッドとリボルは、ゲームをやっている時と同様で良い人だった。何より、直接顔を合わせながら言葉を交わせたのは本当に楽しかった。だけど…

 

 

 

「楯子、か…」

 

 

 

 突如自分たちの輪に乱入してきたあの黒髪は、今日の楽しみを全てをぶち壊した。本来なら悪態をつく…とまではいかないが、不満や愚痴を漏らすことぐらいはしただろう。しかし、簪はそれをしなかった……いや、出来なかったと言った方が正しい…

 

 

 

「似てる…あの人に……」

 

 

 

 自分が決して届かない理想、限りない劣等感と現実を突きつける権化…そして、自分のたった一人の姉である、更識楯無。あの楯子という女の雰囲気は、そんな彼女を否が応でも思い出させるのだ。

 

 ていうか『楯無』と『楯子』って殆ど名前が一緒だが、まさか本人だとか言わないだろうか…?

 

 

 

「いや、流石にそれは無いか……多分…」

 

 

 

 普段から色々と自重しないことに定評のある姉だが、幾らなんでもこんな馬鹿げた真似を控えるぐらいの分別はある筈だ。そもそも、こんなことをする理由が分からない。もしも理由があるとしたら、最早自分に対する嫌がらせ以外思いつかないし。やっぱり人違いだろう…

 

 シュールな現実を知らない簪は、そう結論付けた…

 

 

 

「……戻ろう…」

 

 

 そういえば、リボルをそんなあの人とそっくりな人間と長時間二人っきりにしてしまった。自分はおろか本音の姉であり、しっかり者である虚さんですら参るくらいなのだ…さぞかし精神的に死に掛けている頃だろう。今日のこれからの事とかもあるが、とりあえず今は一刻も早く二人のところに戻ろう…

 

 そう思い、店の奥に位置する御手洗いの扉を開き店内に戻った……その時だった…

 

 

 

「お、可愛い子ちゃん見ぃ~っけ!!」 

 

 

「え…?」

 

 

 

 いきなり軽薄な口調と声が聴こえ、それとほぼ同時に簪の肩へ誰かの手が置かれた。振り向くと自分の背後には随分とチャラい雰囲気の男が立っており、少しばかり嫌悪感を抱かせるニヤニヤした表情を浮かべていた。年は自分より少し上と言ったところだろうか…?

 

 

 

「ねぇねぇ、君って可愛いね。今、暇だったりする?」

 

 

「え、いや私は…」

 

 

「良かったら俺とドライブとかどう?俺の車、フランス車で恰好良いんだぜ?」

 

 

 

 こっちの状況なんてお構いなしで喋りまくるチャラ男。日頃の人見知りが仇となって中々拒絶の意思を示すことも出来ず、簪の口からは言葉らしい言葉が出てこなかった…。

 

 簪はブレッドやリボルと違って完全に初対面なこの男に恐怖さえ感じそうになっていたのだが、そんな彼女の様子を調子に乗って自分の都合の良いように解釈したチャラ男の行動はエスカレートしていく…

 

 

 

「ほらほら、黙ってないで行こうよ!!損はさせないからさ!!」

 

 

「い、いや…」

 

 

 

 そのまま男は簪の腕を取り、半ば引っ張るようにして彼女を連れて行こうとしだしたのだ。やっと搾り出すように発せられた拒絶の言葉は男の耳に届くことは無く、体が強張って上手く動かせない簪は為す術なく連れて行かれそうになる…。

 

 だが、そんな彼女に対してさらなる追い討ちが…

 

 

 

「ん?どうしたんだ、その子は…?」

 

 

「さっきそこで会ってね、どうせだから一緒に連れて行こうかと」

 

 

「お、そりゃ良いな!!」

 

 

「ッ!?」 

 

 

 

 最悪な事に、男には連れが居た。しかも残りの二人も一人目と同様、簪が苦手意識を持つには充分過ぎるチャラい感じの奴らだった。この時点で簪は顔を青くしながら限界を迎え、完全に言葉を失ってしまう…

 

 

 

―――怖い…

 

 

 

 

「あれ?君、大丈夫かい…?」

 

 

「ッ…!!」

 

 

 

 今更になって簪の様子に違和感を覚えた一人目が簪の顔を覘きこんで来る。しかし、簪にとってそれは逆効果でしか無い。仕舞いには身体がカタカタと震えだす始末だ…

 

 

 

 

 

―――イヤ、誰か…

 

 

 

 

 

「おいおい、やっぱり止めといた方が良いんじゃないか…?」

 

 

「大丈夫だって、嫌とは言ってないから問題は無いって。ただ緊張してるだけだよ……ね…?」

 

 

 

 念を推すように…まるで合わせろと言わんばかりに見つめてくる一人目の男。恐怖で頭の中が真っ白になっている簪はうんともすんとも言わない、言えない。ただひたすら、心の中で叫ぶことしか出来ない…

 

 

 

 

 

―――誰か、助けて…!!

 

 

 

 

 

「あぁもう、まだろっこしい!!とにかく行こう!!車に乗せさえすればどうとにでも……」

 

 

 

 

 簪が心の中で助けを求めたのと、一人目のチャラ男が言葉を途切らせて視界から消えたのは殆ど同時。少し遅れて店のガラスが割れる音が聴こえ、店内に居た人々の悲鳴が響いた…

 

 

 

 

「……ちょっと、あなた達…」

 

 

「ッ!!」

 

 

 

 そして自分の目の前には、今日の楽しみを奪ったあの黒髪の女の人。その背中は自分に劣等感を抱かせるあの人の…決して追いつくことが出来ないと実感させるあの人の……

 

 

 

 

「……いっぺん地獄を彷徨って来なさい…!!」

 

 

 

 いつも自分を守ってくれる、器用なようで本当は不器用な優しい姉の背中にそっくりだった…

 

 

 




無論、セイスと怪奇魔王も参戦しますよ~


……俺が言うのも何だけど、チャラ男確実に死ぬな…www
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