因みに、『続・学園編』は、臨海実習を舞台にしようかと思ってます。本編が最近アレな分、ギャグとラブを増加させて御提供する予定です。御期待下さいませ~
「諸君、準備はいいか…?」
「「「「応…!!」」」」
何やら物々しい雰囲気を醸し出す数人の女子達…場所は皆様お察しの通りIS学園。そこのとある人物が寝泊まりしている寮の一室の手前に、彼女達は集合していた。
今日は平日なので全員学園の制服姿だが、その空気はまるで今から超難関任務に挑む戦士達さながらであった…。
「参謀!!」
「ハッ!!現在、ターゲットは昨日の疲れを癒す為に就寝中。しかし、そろそろ勤務時間の都合で起床する筈であります!!いかがなさいますか隊長?」
「ふ…そんなの決まってるわ……」
隊長と呼ばれた少女…ティナ・ハミルトンは自身の金髪をパサッと靡かせながら宣言した…。
「セヴァス君が部屋を出た瞬間に全員で同時にアタック&アプローチ!!うち(アメリカ)の十八番である物量作戦でいくわよ!!」
「「「「「イエッサー!!」」」」」
彼女の指揮の元、IS学園の人知れず誕生した『六道様を愛し隊』のメンバー達のテンションは上昇する一方である。先程から全員で廊下の曲がり角からこっそり窺っているセヴァスの部屋…そこからもうすぐ出てくるであろう彼を朝食に誘うべく、彼女達はその瞬間を待ち続けた……そして…。
―――ガチャ…
「ッ!!隊長…!!」
「総員、突撃準備!!」
「「「イエッサー!!」」」
廊下にゆっくりと響くドアが開かれる音…それを聴いた瞬間にティナ達は臨戦態勢に入る。セヴァスにかける言葉は既に決めてあるので、後は全員で一斉に突撃するだけ。それらの要因と肩を並べし自分の同類達を勇気の源に、彼女たちは廊下に飛び出た…。
「「「「「六道君、皆と一緒に朝ご飯食べに行こッ!!」」」」」
朝早くから寮中に響いた彼女たちの声…寮長である魔王が青筋を眉間に浮かべたかもしれないが、彼女たちはお構いなしである。朝っぱらから、それも廊下に出た瞬間に多数の女子達に声を掛けられれば否が応でも思考がフリーズするかもしれないが、ティナ達『六道様を愛し隊』を前にしたその人物はいきなりの事と朝特有の眠気のせいでキョトンとしていた…。
が、それはティナ達も同じだった。何せ部屋から出てきたのは、彼女たちにとっても色々と予想外な姿だったのだから。部屋から出てきたのは無地でシンプルな寝間着に身を包み、これまた無地…だけど随分フカフカな枕を抱きかかえ、欠伸をしながら眠そうに片眼を擦る…。
「……何だ、お前らは…?」
―――『織斑マドカ』が立っていたのだから…
「…ゑ?」
ティナ達が激しく混乱したのは言うまでもない。何せ、自分達が張り込んでいた部屋は確かにセヴァスの部屋…にも関わらず、出てきたのは彼では無くマドカである……しかも何故かパジャマ姿…。
思わず、部屋を間違えていたという間抜けなオチを想像してしまったが、その心配はこの時ばかりは悪い事に外れた…。
「マドカ、ゲーム機忘れてんぞ」
「ん~?あぁ、すまん…」
という言葉と共に、彼女たちのお目当ての人物であり部屋の本来の主であるセヴァスが出てきた…
「ったく…だから夜更かしは程々にしとけっつったのに……」
「うぅん……むにゃ…」
「ほら、さっさと着替えてこい。先に共用キッチン借りに行って待ってるぞ…?」
「ん~……」
「おい?」
「……眠い…」
「しょうがねぇな…」
マドカの言葉に苦笑いを浮かべるセヴァスだったが、ティナ達にはその苦笑いが幸せそうな微笑みに見えた。何かこう…日頃の日常に対する幸福感を噛みしめる様な……。
「……デコでいいから、おはようのキスを頼む…」
「ん、良いぞ」
「「「「「「ちょっと待てええぇぇ!?」」」」」
完全に蚊帳の外になっていたティナ達だったが、流石にこのマドカの爆弾発言とそれをあっさり承諾した彼を無視する事はできなかった。この叫びにより、ようやくセヴァスは彼女たちの存在に気付く…
「あれ?ティナじゃん…って、何してるんだお前ら?」
「え、あ…その、え~っと……」
まさか朝から貴方の事を朝食に誘うために待ち伏せしてましたなんて言えず、言葉に詰まるティナ。それ依然に、マドカの出現と彼に名前を呼ばれたことによって冷静さがどんどん無くなっていった…。
―――だが、そんな彼女にとって絶望的な光景が…
「セヴァス…」
「ん?どうし……むぐッ…」
「「「「「ッーーーーーーーーーーーーーーー!!?」」」」」」
―――彼女たちの目の前で、マドカがセヴァスのにキスをした…
マドカの突然の行動に流石のセヴァスも戸惑ったが、それはほんの僅かな間だけ。それほどディープなものでも無かったのかすぐに合わせた唇を放し、マドカは満足そうな表情を浮かべた。セヴァスもセヴァスで満更でもなさなそうである……むしろ、彼女と同じようにどこか嬉しそうだ…
「……額じゃなかったのか…?」
「気が変わった…と、いう事にしといてくれ。御蔭で目が覚めたしな…」
それじゃ、また後でな…とだけ言い残し、マドカはさっさと自分の部屋へと帰っていった。セヴァスも先程の会話にあったように、彼女と待ち合わせをしている為か準備をしに部屋へと戻って行った。思考が完全にフリーズして石像の如く固まった『六道様を愛し隊』を放置して…。
「……隊長…」
「お、おおおお落ち着きなさい参謀!!これは何かの間違い…いいえ、悪い夢よ!!今すぐそこの窓から飛び降りれば何もかも元通りになるわ…!!」
「やめれこの馬鹿ッ!!」
「へぶッ!?」
何の躊躇いもなく、言った事を今まさに有言実行しようとしたティナを誰かが全力で止めに入った。窓から半ば乗り出し気味だった彼女はその誰かに強引に引きづり降ろされ、床に後頭部を強打して女子にあるまじき声を出してしまった…。
「何か朝から騒がしいと思ったら、やっぱりあんた達か!!セヴァスのファンクラブだか何だか知らないけど、周りに迷惑掛けない程度にしてよね!?」
「それだけは、あなた達に、言われたくないわよ、鈴ッ!!」
ルームメイトという名の腐れ縁の元、顔馴染みである『凰鈴音』の棚上げ発言に思わず即座に立ち上がったティナ。頭にタンコブができてるが、それだけの元気があれば大丈夫だろう…。
「三年間なんの進展もしないあなた達以上にこっちは必死なのよ!!邪魔すると馬に蹴らすわよ!?」
「ほっといてよ!!そして邪魔する気は……ないけど、強制終了させるかも…」
「え?」
もの凄い気まずそうにする鈴の姿に思わず言い知れぬ不安感に襲われるティナだったが、不安半分興味半分だったため鈴を制止することを躊躇ってしまった。それが間違いだったかもしれない…。
「あたし達はセヴァス達に直接聞いたから知ったんだけど、昨日あの二人……」
―――恋人宣言したわよ…
その瞬間、ティナの中で何かがガラガラと音を立てながら崩れ去った…
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「何か手伝うか?」
「ん~?じゃあ、そこの塩を…」
「ほれ」
「すまん」
一部の生徒達がよく利用する共用キッチンにまな板を包丁で叩いたり、フライパンで何かを焼いたりと手慣れた雰囲気を感じさせる作業音が心地よく響く。それらの音の発生源は、女子生徒ではなく事務員の少年とその彼女である…
「マドカって料理出来たんだな」
「実はブッツケ本番だったりするんだが…」
「マジでか…!?」
それはそれでその場に居た女子達のプライドを傷つけたのだが、それ以上に衝撃的だったのは二人の距離が急激に縮まっている事である。
つい昨日オランジュによって二人の関係を聴かされたセヴァスに好意を寄せる者達は危機感を感じ、急遽その日の内に集合して対抗策を練ることになったのだが……結果は御覧の通り、全て手遅れだったようだ…。
「よし、出来た!!」
「お~!!美味そうだな……見た目は…」
「ゲテモノメーカーと一緒にするな」
「聴こえてますわよ…!?」
突然会話に割り込んできたのややトーンの高い声…何時の間にかやって来た、共用キッチン常連使用者セシリアの声が響く。
「というかマドカさん!!いい加減その呼び方やめてくれませんこと!?」
「そういう事は、せめて自分で作ったモノを自分で完食できるようになってから言うんだな」
「GAHAッ!?☆」
―――英国代表候補性・撃沈…
「それにお前と違ってちゃんと味見したし、何より一夏特製のレシピを借りてきたんだ。失敗なんぞせん!!」
オタマ片手に腕を組みながら言い切ったマドカが、何故か千冬に重なって見えてしまった…。
「あれ?マドカ、結局使ったのか…」
「ッ!?い、一夏!?」
「いやぁ必要ないの一点張りだったし、捨てようかと思ったら何時の間にか消えてたからどうしたのかと思ってたんだけど…。そうか、使ってくれたのか」
「え、あの…いや……」
丁度ラヴァーズに連れて来られる形で現れた一夏と、彼による思いもよらないカミングアウトに狼狽えまくるマドカ。嗚呼、千冬さんに重なって見えたのは……ツンデレの部分か…
「どれどれ、俺が味見してやるよ」
「ッ!?ちょっと、待ッ……!!」
いつもの調子でいつもの行動…その場に居た全員が『いくら何でもそれはダメだろ!?』的な視線を送るが本人はまるで気付かない。そして、マドカの手からヒョイっとオタマを取るとそのまま鍋に…。
―――クワーンッ!!
「痛ぇ!?」
「おいコラそこのKY…」
「な、何するんだよセヴァス…?」
空気を読まずにマドカ特製味噌汁の味見を敢行しようとした一夏を、セヴァスによるフライパンの一撃が阻止した。当然ながら一夏は不満を漏らすが、セヴァスは冷めた視線でそれを受け流す…。
「いくらお前でも、彼女の手料理の一口目は譲らねぇ!!」
「あ…わりぃマドカ、俺なにも考えてなかったわ……」
「……分かればいい…」
セヴァスの力説に一瞬だけ呆気にとられた一夏だったが、すぐにその意味を理解…というか思い出して慌てて謝罪する。その3人のやり取りにより、その場に居た女子達が興味津々な態度を見せながらヒソヒソと彼らの関係について情報交換及び事実確認を始めたが……今は無視しよう…
「さてと…んじゃ、味見一号行かせて貰おうか?」
「ドンと来い!!」
オタマで掬った一口分を小皿に乗せ、セヴァスはクイッと一息に飲みこんだ。そして…
「美味ッ!!」
「ほ、本当か!?」
「当然ッ!!」
「そうかそうか!!ふははははは!!」
二人のやり取りを言い表すならば、新婚バカップル…それ以外の事を、誰も思いつかなかった……
「何故か凄く負けた気がして悔しいんだが……」
「いいなぁ、マドカとセヴァス…」
「私もいつか嫁とあのように…!!」
「……羨ましい…」
失恋に打ちひしがれているルームメイトを宥めている鈴と、轟沈しているセシリアを除く一夏ラヴァーズは心から羨ましそうに二人の様子を眺めていた。いつか、自分達もあんな風に…と、思いながら……
「さて、さっさと食べるか?」
「うむ!!」
そんな彼女達の事なんて知ったこっちゃないと言わんばかりの様子で、二人は自分達だけの空間を形成していく。それはもう、とてつもなく嬉しそうで、楽しそうで…だが、何よりも……
「…おっと、そういえば……」
ところが唐突に、マドカがその場に居る全員に向かって言葉を投げかけた。半ば不意を突くように発せられたその声は、共用キッチンに集まっていた全員の視線を彼女に集めるには充分だった…。
全員の視線が自分に集まったことを確認したマドカは、いつもの不敵な笑みを浮かべて口を開いた…
「セヴァスは私のだ!!誰にも渡さないからな!!」
「あ、俺もマドカ以外の女の子にはゴメンナサイする気なんで……そこんとこ、よろしく…」
―――その瞬間、IS学園中に黄色い叫び声と絶望に染まる断末魔が響いた…
「あ~あ、これで残りの在学期間中に嫉妬の視線を浴びまくる羽目になるぞ…?」
「何か問題あるか?」
「……ククッ、無えな…」
「だろ?ふふ…!!」
―――互いに視線を交じわせる二人の表情は、誰もが羨むほど幸せそうだった…
~おわり~
☆と、見せかけてのちょいオマケ☆
「4月24日・晴れ。
朝起きたら共用キッチンが騒がしかったので来てみると、今回は一夏達ではなくてマドカとセヴァスが騒ぎの中心になっていた。それだけなら珍しいことでは無いのだが、その後のセヴァスの発言が問題だ…
『いくらお前でも、彼女の手料理の一口目は譲らねぇ!!』
…おい、誰が誰の彼女だと?確かにお前はそんじょそこらの奴に比べればマシ…むしろ良い奴だが、流石にうちの妹はそう簡単にはやらんぞ!?
『セヴァスは私のだ!!誰にも渡さないからな!!』
と、思った矢先にこれである…。マドカ本人がセヴァスを好いてるというのなら仕方ないと思いたいが素直にそう思えん!!だって弟と妹は姉のものだろう!?そう易々と手元を姉離れされると寂しいじゃないかッ!!
でも、あまり露骨にそんなこと言うと嫌われそうだし…私はいったいどうすれば……」
「織斑先生、何を書いてるんですか?」
「ッ!?な、何でもないぞ山田先生…!!」
~おわり~
そういえば現在、人気投票ランキングでブッチギリの結果を叩き出してる彼から一言…
オ「最後のスペルが『ge』だから勘違いしてる人が多いみたいだけど…フランス語でオレンジは『オランジュ』なんだよ。『じぇ』じゃなくて、『じゅ』なんだよ……脳内メーカーでも『オランジュ』って打ち込んだから『阿呆専門』になったんだよ…(泣)」
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