アイ潜IF外伝   作:四季の歓喜

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季節外れも良いとこだけど、書きたかったので…


IF未来 続・学園編 その1

 

「海、見えたぁ!!」

 

 

 

 2年前と同じタイミング、同じ場所で同じ誰かが叫ぶ。目を窓の外へと向ければ、その誰かの言うとおり綺麗な海原がどこまでも広がっていた。それだけで楽しめるのも分からなくもないし、それにつられて同じようにテンションを上げるのだって理解できる。海に囲まれた学園に住み込みで在校してる癖に、何を今更…などと無粋な思いは抱かない。何せまだまだ自分達は遊び盛り、学園生活から離れる事に意味があるのだ。

 

 しかし生憎、自分は皆の様に素直には楽しめそうに無い。頭では理解していたが、心の何処かでどうにかなると思っていたのは事実。故に、周りほど御機嫌にはなれなかった。何せ…

 

 

 

「……やっぱり無理だったか…」

 

 

 

 深い溜息と共に、マドカは一人呟いた。今日はIS学園夏の恒例イベント、『臨海実習』の日である。れっきとした授業や実習の一環なのだが、泊りがけで行うそれは生徒達にとって行事感覚で受け取られている。実際、初日の殆どは自由時間で遊び放題である。

 

 諸事情により途中から編入してきた…それどころか、まともな学生生活すら初めてなマドカ。なので、こういう遠足とか修学旅行の類も初体験だ。クラスの面々とも馴染んで来たし、何だかんだ言って楽しみだった。だが、ここで一つ残念なお知らせが彼女に届いた…

 

 

 

「どうした、溜め息なんてついて…?」

 

 

「言わなきゃ分からんか…?」

 

 

 

 楽しげな雰囲気に包まれた周りに気を使い、極力小声で呟いたつもりだったのだが相手が悪かった。何せ自分に対する事には極限なまでに鈍感な癖に、周りの人間に対しては腹が立つ位に敏感な事に定評のあるへタレ野郎だ。こういう事を隠すには些か分が悪い…

 

 

 

「いや、分かるわけ無いか…どうせ一夏だもんな、所詮一夏だもんな、所謂一夏だもんな……」

 

 

「心配しただけでこの言われ様!?」

 

 

「黙れ朴念神、鈍感王、へタレ卿。お前と喋ってると鈍さが染つる…」

 

 

「……泣いて良いか…?」

 

 

 

 自分の家族に精神的にフルボッコにされ、彼女の隣に座っていた一夏は暗い影を落としながら轟沈した。その様子を見て多少なり気が紛れたのか、彼の状態に反してマドカの方は満足げな表情である。

 

 余談だがマドカが織斑家入りするにあたり、一夏とマドカのどっちが姉で弟、もしくは兄で妹なのか揉めた時期がある。残ってたデータにはどっちが先に産まれたのか記録されておらず、結局は身内と仲間達による多数決で決定する事となった。マドカのマダオぷりっが既に露見していた当時、軍配はしっかり者の一夏に上がろうとしていた。しかし彼女の理解者である男の一言により、それは一瞬にして覆されてしまった…

 

 

『しっかり者の方が兄っぽいて言うけど……織斑家の長女はマダオじゃん…』

 

 

 その一言により、この論争は彼女の逆転勝利となったのである。その日の内に彼女の理解者は誰かに闇討ちされ、事の発端である一夏とマドカは二人してこの結果を喜んで良いのかどうか分からず途方にくれてしまったが…

 

 

「そういえば結局、あの後はどういうことに決まったの…?」

 

 

「うむ、興味がある」

 

 

「お、シャルロットにラウラか…」

 

 

 後ろの席からひょっこり顔を出した金髪と銀髪…シャルロットとラウラの二人が話しかけてきた。元から気配り上手なシャルロットと、千冬をリスペクトする者同士なラウラとは比較的早く仲良くなれた。学園の人間の中では、最も親しく出来る人間のうちの二人と言っても過言では無い。

 

 

「早い話、保留だよ。あの後、セヴァスをボコッた姉さんに『お前は末っ子だ、誰が何と言おうが末っ子だ…いいな?』って言われてな…」

 

 

「織斑姉=マダオをそこまで否定したかったのか…」

 

 

「家庭内限定とはいえ、千冬姉自身が駄目人間である事実は変わらなげぶふえッ!?」

 

 

 

 顔面にめり込む勢いで一夏に投げつけられた出席簿…ズバンッ!!という凄まじい炸裂音を響かせ、短い悲鳴を上げた彼はそれっきり静かになった。凶器が飛んできた方向に目を向ければ、最前列の方から鬼のような形相で此方を睨みつける鬼教師……

 

 しかし自分達はバスの真ん中、これらの凶器を投げた本人は最前列に座っていたのだが……どんな地獄耳と、どんな投擲技術だ…

 

 

 

「そういえば…セヴァスは結局来れなかったな……」

 

 

「ちょ、ラウラッ!?」

 

 

「……はぁ…」

 

 

 

 シャルロットの静止も間に合わず、せめて今は忘れようとしていた事実を突きつけられる。窓際に座っていた彼女はさっき以上の大きな溜め息を吐き、テンションをさらに下げて行った。心なしか彼女の居る場所だけ影が差している気もする…

 

 ラウラとしては担任が送ってくる背筋の凍りそうな視線を誤魔化すべく持ち出した話題転換のつもりだったのだが、今のマドカにとっては逆効果も甚だしい。彼女を中心に立ち込める憂鬱オーラは、留まるところを知らない…

 

 

 

「す、すまん…」

 

 

「……別に良いさ。残念がっていたとはいえ、セヴァスも納得はしていたからな…」

 

 

 

 これはあくまで臨海実習…そう、“実習”なのである。幾ら学園に在籍している身とは言っても、セヴァスは事務員。授業をするわけでもないし、教員の様な仕事もない。自分達の様に臨海実習に参加する理由も建前も無く、むしろ関係者からしたら邪魔以外の何者でも無い。というわけで今回の三泊四日にセヴァスは同行することが出来ず、おまけに暫く会えない。これで憂鬱になるなという方が無理だ…

 

 

 

「ま、まぁセヴァスも一緒に来れなかったのは残念だけど……マドカがずっとこんな調子じゃ彼も喜ばないと思うよ…?」

 

 

「……。」

 

 

「折角のイベントなんだし、やっぱり楽しまなきゃ損だよ」

 

 

「……そう、だな…」

 

 

 

 シャルロットに言った事にも多少思う所があり、ちょっとだけマドカの雰囲気がマシになる。それに、いつまでも周りに気を使わせる訳にもいかないとも思ってた。マドカは心機一転も兼ねてもう一度だけ溜息を吐き、二人の方を向いた。

 

 

 

「確かに、このままじゃ碌な土産話も出来ないしな…精々、セヴァスが羨ましがる位に楽しむとするよ。気を使わせて悪かったな、二人とも…」

 

 

「どういたしまして~」

 

 

「む、そうだ。確かリュックに…」

 

 

 

 何かを思い出したのか、シャルロットの隣でひょっこり頭を覗かせていたラウラが引っ込んだ。そして暫くゴソゴソと何かを漁るかのような音を出した後、何かを手に再び現れた。そして…

 

 

 

「どうせ暫く暇なのだ、花札でもやらないか…?」

 

 

「花札…?」

 

 

「お前、やり方知ってるのか…?」

 

 

 

 マドカは花札が何なのか知ってるがやり方は分からず、シャルロットは存在すら知らかった。二人の表情からその事を悟ったラウラはどこか得意げな表情を見せ、フフンと無い胸を張りながら語り出した。

 

 

 

「ふふふ、甘いぞマドカ。この私を誰だと思ってる…?」

 

 

「色々と残念で可哀相な奴」

 

 

「よぉし、その喧嘩買った…」

 

 

「ちょっと二人とも…!?」

 

 

 

 一触即発の雰囲気に包まれたが、すぐに元通り。その後シャルロットに花札が日本の伝統の遊びの一つである事を教え、とりあえず遊び方を知っていると豪語するラウラにやり方を教えて貰う事にした。

 

 

 

「本当に大丈夫か…?」

 

 

「大丈夫だ、問題ない。クラリッサという情報源を持つ私に、死角は無い…!!」

 

 

「……すっごい不安…」

 

 

「ふん、聴くより見ろ!!これが花札だ!!」

 

 

 

 そう言ってラウラはケースからカードの束を取り出し、その中から一枚取り出してマドカとシャルロットに見せつける。実物を知らないシャルロットは興味津々だが、何故かマドカは微妙な表情を浮かべた…

 

 

 

「む、どうしたマドカ…?」

 

 

「……いや、気にするな。説明を続けてくれ…」

 

 

「?……うむ…」

 

 

 

 どこか釈然としない様子だったが、取り敢えずラウラは言われた通り説明を続ける。ケースにあった札を全部取り出し、バスの通路の床にまき散らす。そして徐にその中から一枚だけ手に取り、思いっきり振り上げ…

 

 

 

「せええぇぇいッ!!」

 

 

 

―――スパーーーーーーーンッ!!

 

 

 

 半ばガチでブン投げた札は地面に叩き付けられ、衝撃で落下地点の周囲にあった札が全てひっくり返った。その衝撃は地味に凄まじく、札が生み出した轟音はさっきまで気絶していた一夏でさえ飛び起きさせる程であった。

 

 そして、そんな光景を作り出した本人は良い仕事をしたと言わんばかりに汗をぬぐい、どこかやり遂げた感MAXな表情で一言…

 

 

 

「これが花札だ…!!」

 

 

 

「「「「「「「「「ぜってぇ違ぇからッ!!」」」」」」」」」」

 

 

 

「「それはメンコだ馬鹿者ッ!!」」

 

 

 

 何時の間にかラウラの花札講座に注目していたクラスメイト全員と、大和撫子二人のツッコミが響いた…

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「本当に妙なところで抜けているな…」

 

 

 

 バスから降りたマドカは、伸びをしながら先程とはまた違う属性の溜息を吐いた。あの後、ラウラが持ってたのは一応本物の花札だったので箒に教えて貰い、それなりに全員で楽しめた。しかし数合わせのつもりなのかは知らないが、時たまサボテンやらバラの写真が張り付けられたパチモンが出てきた時は流石に吹いた…

 

 

「まぁ何にせよ、今日は楽しむとするか。さて荷物を…」

 

 

「あ、お預かりしましょうか…?」

 

 

「む、すまない…」

 

 

 

 背後から聴こえてきたのは、割と若い男性の声。独り言のつもりだったのだが、どうやら聴こえる距離に人が居たようだ。雰囲気から察するに、旅館の従業員かその辺だろう。丁度良かったのでお言葉に甘えるとしようか…

 

 そして、彼女は荷物片手に後ろを振り向いて……固まった…

 

 

 

「おや、お客様?どうかなさいましたか…?」

 

 

「え、いや…あれ……何で…?」

 

 

「どこか御具合でも悪いのですか?何なら、医務室まで御案内致しましょうか?……駄目だ、やっぱ我慢出来ない!!何て間抜けたツラしてやがるアッハハハハハ…!!」

 

 

「せ、セヴァス…?」

 

 

「ハハハハ!!……おう、待ちくたびれたぞ…!!」

 

 

 

 何故か旅館の従業員の制服を身に着け、どこか楽しげな表情を浮かべたセヴァスが居た…

 

 

 




セヴァスの登場に驚くマドカ……しかし、刺客は彼だけでは無かった…!!
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