いったい何話書くことになるのかなぁ…(汗)
「来るが良い、セヴァスッ!!」
「ヒャッハー!!上等だ黒兎ちゃんよおおおおぉぉぉぉぉ!!」
――ズドォンッ!!
「ラウラが吹っ飛んだああああああぁぁぁ!?」
「衛生兵ーーーーーーッ!!」
皆に誘われてビーチバレーに参加したのだが、ISを使わないこの状況においてセヴァスが無双状態に入った。今はセヴァス&オランジュvsラウラ&シャルロットの組み合わせで勝負しているのだが、まるで相手にならないようだ。さっきも自信満々だった鈴とセシリアコンビが彼らに挑んだが、結果は散々だった。その時の様子をダイジェスト版にしてお送りするとこんな感じである…
『オルァ!!』
『ちょ!?何でただのサーブ…それもビーチボールでそんな速度が出るのよ!?』
『スパイク貰ったああああぁぁぁ!!』
『せせせセヴァスさん!?ちょっとは手加減して下さきゃあああああああ!?』
―――試合が終了した時、鈴とセシリアのコートには比喩でも何でもなくクレーターが幾つも生産されていた…
「あんなのに勝てるわけ無いでしょうが!!」
「冗談抜きで死ぬかと思いましたわよ!?」
顔を真っ青にし、足がガクガクと震えていた二人。話でしか聞いた事が無かった故に、幾度となくISに生身で挑んだセヴァスの身体能力を完全に舐め切っていた様だ。そんな二人の体たらくにマドカが溜息混じりでぼやく…
「だから言ったろうが、ハンデを貰っておけと…」
「だって、あんなに凄いだなんて思わなかったんだもん!!」
「そうですわ!!実際この目で見て漸く理解しましたけど、『ISのシールドエネルギーを削る程度』の攻撃力なんて言われてもしっくり来ませんわよ!!」
「……まぁ、それもそうか…」
ふと視線を戻すと、ハイテンション(本気)になったセヴァスが再びスパイクを放つところだった。既にラウラは眼帯を外して『越界の瞳』を使用しているのだが、幾ら見えても身体が追い付かなければ意味が無い。マッハの如く放たれたボールはラウラとシャルロットの間に落ち、マッチポイントを決めた。
「勝者!!リクっち&らんらんチーム~!!」
「ヒャーーハッハッハハハハァ!!生身じゃ負けねぇんだよこの野郎!!ハーッハッハッハァ!!」
「くそ、無念だ…!!」
「こ、怖かったよぉ…」
「いや…セヴァス相手に良く持った方だよ、お二人さん……」
今回はペンギンの着ぐるみを着たのほほんさん。そんな彼女の声によって終わりが告げられ、それと同時にラウラとシャルロットはその場にへたり込んだ。大人げないセヴァスの猛攻にビビったシャルロットに至っては、目に涙さえ浮かべている…
実力、運動神経共にトップクラスのラウラ達の完全敗北。そして、試合終了時の敗北チーム側コートの惨状。それにより、その場に集まっていた者達は改めてセヴァスの実力を認識する事になった。それ故に…
「さて、まだ俺と勝負したい奴は居るか…?」
―――全員が首を横に振ったのは、ある意味当然だった…
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あぁ~あ、つまんねぇ……他の子達はともかく、お前や楯無まで嫌がるとは…」
程よく運動して疲れ、腹も減って来たセヴァス達は海の家を目指して歩いていた。そろそろセヴァスの自由時間も無くなりそうであり、彼の昼からの仕事場はその海の家だそうだ。丁度良いのでオランジュと一夏達もそれに同行し、今は合計10人がぞろぞろと列を作りながら行進中である…
「いや、しょうがないだろ?ましてや楯無の場合、尚更だ…」
「昔何度か楯無さんとやり合ったって話、本当だったんだな…」
「ふむぅ、その時の戦術、私の部隊にも利用できないだろうか…?」
「ヒトを辞める羽目になるからやめとけ…」
あの場には水着に着替え、普通に在校生達と遊んでいた元生徒会長も居た。しかし、セヴァスがビーチバレーに参加し始めた頃には既に逃げていた。というか、潜入任務時代に彼と直に戦った事がある奴らは一人残らず逃げ出していた。なまじ実力あるが故に、生身でISとやり合えるセヴァスと勝負させられることを危惧したのだろう…
と、そんな会話をしている間に目的の海の家の前に来た。前はかき氷とか焼きそばを売ってたが、今年から割と本格的な料理も出すとか無いとか…
それはさておき、一行は店の入り口をくぐった。まだ皆浜辺で遊んでいるらしく、セヴァス達以外は誰も居なかった。そんな彼らに気付いた店員は、店の奥の方から声を張り上げる…
「いらっしゃいませ~適当に座って待ってて下さいね~~」
言われるがままに、全員は適当にテーブルに着く。適当に場所を選んで座ったセヴァスに対し、マドカは自然な動作で彼の隣に座った。それをセヴァスも普通に受け入れる。そして、そんな二人の反対側にオランジュが座ると言ういつものポジションが即座に完成した。
「一夏!!当然お前は私の隣に…!!」
「ちょっと箒さん!!抜け駆けは禁止ですわよ!!」
「そういうアンタもちゃっかり一夏の隣に行こうとするな!!」
「一夏、隣に座っても良い?」
「シャルロット貴様!!嫁から離れろ!!」
「……。」
それに反し、残りのメンバーは思いっきり騒ぎ始めた。いつもの事なのでいい加減に慣れたが、せめてこういう場所でやるのはやめて貰いたい。ま、そろそろ一夏が…
「えっと…じゃあ、俺はオランジュの隣に行くよ。そうすれば、平等だろ?」
「「「「「はぁ!?」」」」」
―――やりやがった…
「バッ、こっちに来るな!!後で絞め上げられるのは俺なんだから!!」
「いや、そう言われても箒たちが…」
「何でお前はこうも馬鹿な真似を…」
「もう諦めようぜ。そんで、さっさと注文決めちまえ」
「……そうだな…」
いそいそと修羅場から逃げてきた一夏を尻目に、セヴァスとマドカはさっさと置いてあったお品書きに目を通す。小さい奴が一個しか無かったので、片手で互いに端っこを持ちながら身体を密着させる形になった。セヴァスは水着の上に上着を羽織っただけであり、マドカは水着を忘れたので半袖半ズボンだが薄着である事に変わり無い。つまり、結構肌同士が密着しているのである。
しかし一夏ラヴァーズだったら普通に動揺して赤面ものなこの状態も、二人にとっては割といつもの事。そんな二人の普通が、彼女らはちょっと羨ましくなった…
「はぁい、御冷お持ちしました~」
店の奥から、店員さんがトレーに水を入れたコップを大量に乗せて出てきた。改めて、こんな大人数で一気に来ちゃって何か申し訳ない。
「どうぞ~」
「あ、どうも」
取りあえず、貰った御冷を受け取る。そんで一口飲む。その拍子に店員の顔を見た。
「「「ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!?」」」
―――おもっくそ吹いた…
あまりの不意打ちにより、俺もマドカもオランジュも耐えられなかった。柔らかな口調で声を掛けてきたこの海の家の店員…さぞかし、気の良い人なんだろうな~とか思ってただけに、余計にビックリした。
そんな3人の心情なんて知らない他の面々は突然の事に動揺し、彼らの至近距離に居た一夏は少しだけ被害を被った。もっとも、一番被害が酷かったのは真正面に居た店員さんだが…
「うわ汚なッ!?何してん…!?」
「何しやがるこのクソガキ共おおおおおぉぉぉッ!?」
「……え…?」
―――それ故に、店員さんの豹変っぷりが現実である事をすぐに認識出来なかった…
「うるせぇ馬鹿野郎!!久しぶりにツラ見せたと思ったら何してんだよ!?」
「くそ、よりによってコイツの猫かぶりに騙されるなんて…!!」
「……おぉい、どうなってんだよ旦那…話と違うじゃねぇかぁ…」
頭を抑えたオランジュの呟きはだけは誰の耳にも届かなかったが、店員とセヴァス達の大声はハッキリと響いた。何事かと残りの面々も視線を向けたが、いったいどんな状況になっているのかさっぱり理解出来なかった。何せ優しげだった店員がいきなり豹変し、それとセヴァス達が言い争っているという構図なのだ。その光景に何やら微妙なデジャヴを感じた一夏は首をひねり始める…
「あれ?そういえばこの人、どこかで見た事があるような…」
「あらあら、随分と賑やかね…?」
「「「ッ!?」」」
そんなカオスな状況の中で、店の入り口前から新たな声が聴こえてきた。その場に居た全員の視線がそっちに向いたのだが、さっき水を吹いた3人は今度はその場でズッコケる羽目になった。新たに現れた声の主は店員の制服でもあるエプロンを着けて、でかでかと『氷』と書かれた旗を持っていた。しかも、頭には某魚専門家が被ってたハコフグの形を模した帽子を被っている。
これだけなら普通なのだが、その恰好をしている人物が3人にとって大問題だった…
「あら、どうかしたかしら?」
「何してんのアンタ!?」
「何って…あなたと同じよ?バイトよ、バ・イ・ト♪」
「……頭痛くなってきた…」
セヴァスはそのまま地に沈み、マドカとオランジュに至っては声すら出なかった。全くもって事情が分からない一夏達はただただ困惑するしか無かった。しかし、ここで遂に痺れを切らしたラウラが声を張り上げた。
「おい、いい加減に何だと言うんだ!?この二人はセヴァス達の知り合いなのか!?」
「……お前らも一応、会った事あるよこの二人…」
「「「「「「は…?」」」」」」
「特に一夏、お前は忘れちゃいけないレベルだぞ…?」
「え゛…」
オランジュの言葉に思わず固まる一夏。しかし、本気で二人の事を覚えて無いようだ。そんな一夏の様子に、セヴァスは深い溜め息を吐いた…
「お前なぁ…学園祭の時に襲ってきたビッチと、あんな良いスーツを買ってくれた人ぐらい覚えとけよ」
「おいコラ、今ビッチつったかこのガキャあ…」
「うっせバーカ、うっせバーカ!!脳筋秋女!!」
「表出ろセイスこの野郎ッ!!」
普段、セヴァスは人当たりが良い事に定評がある。そのセヴァスが初対面の筈の、この黒髪の女性店員と口論を始めたことに居合わせた全員がポカンとしていた。もっとも、会話の内容を聴いたら二人が初対面でないことはすぐに解ったろうが…
「上等だオラァ!!マドカと二人掛かりでボコボコにしてやんよ!!」
「え、ちょ…てめ、エムと一緒とか卑怯だぞ!?」
「とか言ってるが、どう思うよマドカ…?」
「ふん、今は夏真っ盛り。秋(オータム)が来るには少々時期が早かった……それだけの事だ…」
「やる気満々かッ!!つーか何かそれっぽい事言ってるけどさっぱり意味分かんねぇよ!?」
一夏達そっちのけで騒ぎまくる3人だったが、その間にも一夏は何とか思い出そうと試みていた。そして…
「学園祭?スーツ?……あッ!!」
「ちょっと待て、コイツらまさか…!?」
「……今更何をしにきたの…!?」
漸く思い出した一夏はポンッと両手を叩き、スッキリした表情を浮かべた。そして、すぐさま顔から血の気が引いて行った。セヴァスの言葉に、ラウラや箒達も二人の正体に気付いて思わず身構える。その皆の様子を見たオランジュは慌てて声を出す…
「あぁ待て待て!!気持ちは分かるが落ち着け!!とりあえず今はその恰好は置いておくとして、敵意は無いんでしょ!?ね、スコールの姉御!?」
「えぇ、その通りよ。私もオータムも、ちゃんと更識の御嬢様と話をつけてからここに来たわ。だから安心してちょうだい?」
こちらの気持ちを知ってか知らずか、フォレストと同様に指名手配中である元亡国機業の幹部…『スコール』は、相変わらず何を考えてるのか分からない怪しげな微笑を浮かべた。
ただ、その目だけは本当に楽しそうだった…
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「まさかスコール達まで呼ぶとは思わなかったわ…」
「僕たちも基本的に暇でね。それに今回に限っては、味方は多いに越したことは無いだろう…?」
「……あ、そう…」
「さぁて、問題はセイス…いや、今はセヴァスか。彼に手伝って貰うかどうかなんだけど、どうしたもんかねぇ……彼と付き合いの長い君は、どう思う…?」
「彼と戦った身だからこそ、彼が味方になった時は頼もしいと心から思うわね。だけど同時に…」
「ま、そうなるか…」
旅館の一室で座りながら向かい合っていた元犯罪組織幹部と暗部当主は、同時に溜息を吐いた。今回、国際指名手配されているフォレスト達がここに来れたのは楯無の御蔭である。今回の臨海実習で確実にトラブルが起きるという情報を手に入れた楯無だったのだが、ちょっと事情が複雑な為に戦力を増強する事が出来ないでいた。
そんな時、どういう風の吹き回しか知らないがフォレスト達の方からコンタクトが来た訳で…
「とにかく臨時雇いとはいえ、報酬に見合った働きはしてみせるよ…」
「えぇ、期待してるわ」
立ち上がり、その場から去るフォレスト。今は旅館の従業員である為、さっさと行かないとまた女将にどやされる。しかし彼が部屋の戸に手を掛けた途端、楯無が声を投げかけてきた…
「念のため訊くけど……ここに来た理由は、彼を連れ戻すためかしら…?」
「……さぁ、ね…」
それだけ言って、彼は部屋から出て行った。今の短い返事の中に含まれた真意はどっちなのか、流石の楯無にも分からなかった…
次回、『夕食&温泉』編…