アイ潜IF外伝   作:四季の歓喜

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さて、クリスマス編を挟んだせいで随分と久しぶりになってしまいました…;

多分学園編は、これを含めて3話で終わらせます。その後は、ちょっと試しに本編でも言っていた『緋弾のアリア』にセイス達を送り込んでみた話をちょこっと…


IF未来 続・学園編 その5

 

 

 暴露大会の後、元凶のオランジュにコブラツイストを喰らわせて宴会は終了した。マドカ達と別れた俺とオランジュは現在、ひと気の減った旅館の通路を歩いていた。出来れば同じように黒歴史を暴露してやりたかったが、コイツは毎日の行動が黒歴史なので意味が無いんだよなぁ…

 

 

 

「だからって本気でやること無いじゃねぇか……あ痛たたた…」

 

 

「皆笑ってたから良いじゃないか」

 

 

 

 そして仕事も無くなり、女子達は入浴時間なので一人残らず温泉に出払っているこの時間、俺ら男組は暇なのだ。というわけでムサイ暇人同士で集まり、暫く時間を適当に潰そうと思っている。今年も一夏は千冬さんと同じ部屋であり、俺は従業員の方々と同じで場所で寝る。あれ?そういえば…

 

 

 

「お前、何処で寝るんだ?ていうか、お前って何の名目でここに居る訳?」

 

 

「……あぁ…」

 

 

 こいつはIS学園の生徒じゃない…ていうか一夏みたいにISを動かせるって訳でも無いし、俺みたいに臨時従業員をやってる訳でも無い。楯無の付き添いと言えばそれまでだが、そもそも楯無がここに来た理由も分からない。いつも悪ふざけしている様に見えるが、あいつの全ての行動にはいつもそれなりの思惑がある。そのせいで何度仕事を邪魔されたことやら…

 

 

 

「まぁ、あんまり気にするなよ…」

 

 

「馬鹿言うな。お前がそう言う時ってのは大抵、絶対に何か裏がある……しかも、裏仕事絡みのな…」

 

 

「……。」

 

 

 

 いつの間にか互いに立ち止まっており、露骨に目を逸らそうとするオランジュに俺はジト目を送り続ける。どうやら本当に何か隠しているみたいなので、このまま視線を送り続けても何も吐かない場合…

 

 

 

「物理的に吐かした後に、洗い浚い吐かす…」

 

 

「待て待て!!取り敢えずその握った拳を解け!!」

 

 

「なら言え、何を企んでるのか言え…!!」

 

 

 

 知った事では無い、こちとら折角平和な表世界に馴染んできたところなんだ。俺もマドカも、今のこの平和ボケした日常が気に入ってるが故に、それをブチ壊すような奴には容赦しない。例え少しばかり洗った足をまた汚す羽目になろうとも、厄介事を持ちこんで来る輩が古くからの仲間であろうとも…

 

 

 

「……徹底的にボコボコにしてやる…」

 

 

「分かった、分かったから落ち着け!!言うから!!」

 

 

 

 漸く話す気になったようなので、構えた拳を降ろす。それを見て本気で安心したのか、オランジュは安堵の溜息を吐いた。さて、その次は真相を吐いて貰おうか…

 

 

 

「ふぅ……お前の冗談抜きのガチパンは、比喩でも何でも無く人を殺せるからな…」

 

 

「御託は良いから、早くしろ…」

 

 

「はいはい、急かすなっての……実はな…」

 

 

「それは、僕が説明しよう」

 

 

「ッ!!」

 

 

 

 背後からオランジュに割り込む形で投げかけられてきた、第三者の声。それは初老の男性の声であり、決して忘れる筈が無い恩人の声。会わなくなった期間は精々半年程度だが、それでも懐かしさを感じずにはいられなかった。

 

 正直言うと、ここに居るのではないかと半ば確信していた。なので多少動揺したが、ある程度心の準備は出来ていた俺はゆっくりと後ろを振り返る…

 

 

 

「もう、驚きましぇ……驚きませんよ…」

 

 

「今、噛んだよね?」

 

 

 

―――現在行方不明中である俺の恩人、フォレストの旦那が苦笑いを浮かべながら立っていた…

 

 

 

「お久しぶりです、旦那」

 

 

「無かった事にしたよこの子……まぁ良いか、久しぶりだねセイス。元気にやってたかい…?」

 

 

「はい。マドカ共々、御蔭様で」

 

 

 

 今こうして平和な日常を過ごせるのも、全て旦那の御蔭である。去年の亡国機業の内戦により組織が崩壊した際、俺達が世界各国に逮捕ではなく保護という形をとって貰えたのは全て旦那の根回しの御蔭なのである。俺を拾ってくれた事と言い、面倒を見てくれた事と言い、俺はこの人に感謝しても仕切れない位の恩がある。しかし…

 

 

 

「姉御だけでなく、貴方まで来ているとなると……やっぱり何かあるんですね…?」

 

 

「その通り、話が早くて助かる」

 

 

「……だけど、俺はもう…」

 

 

「言われなくても分かってるよ、セイス…いや、セヴァス六道。だけどね、今回はちょっとばかり事情が複雑でね。僕たちの意思に関係なく、君達は巻き込まれる事になるだろう……」

 

 

「ッ…」

 

 

 

 どうやら、事態は俺が思っている以上に深刻のようだ。あの旦那がここまで言う物事がどんな代物なのか考えるだけで、自然と身体が強張るのが分かる…

 

 

 

「そう身構えなくても良いよ…と言っても説得力の欠片も無いだろうから、取り敢えずコレを見てくれ」

 

 

「え…」

 

 

 

 そう言って旦那はヒョイッと横に移動し、自身の背後に佇むものを俺に見えるようにした。その旦那の背後にあったものが視界に入った瞬間、俺は思わず固まってしまった…

 

 

 

「ティ、ティーガーの兄貴…?」

 

 

「久しいな、セイス…」

 

 

「……。」

 

 

「……何を黙っている…」

 

 

「いや…その……」

 

 

 

 旦那の背後に立っていたのは、やはりというかティーガーの兄貴だった。旦那と同じく行方をくらましていたので、旦那が居るのなら居るだろうとは思ったが…

 

 

 

「……セイス、そのムカつく顔は何だ…?」

 

 

「いや、だって……ぶふッ…」

 

 

 

 この人も大切な恩人の一人であり、ここは久しぶりの再会を真面目に喜ぶところなんだろうけど…これはやっぱり無理だ。オランジュに至っては俺以上に笑いを堪えるのに必死のようで、壁を叩きながらヒーヒー言いながら悶えている。しかし、仕方のない事だと思う。どんな奴だって、久しぶりに会ったいつも真面目な兄貴分が…

 

 

 

 

 

―――バ○殿メイクでシリアスな瞳を向けて来たら誰だって笑うって…

 

 

 

 

「ッあはははははははは!!駄目だ、我慢出来ねええええええぇぇぇぇぇ!!」

 

 

「ぎゃははははははははははは!!あ、兄貴…何でそんなアホ面してあははははは!!」

 

 

「黙れ殺すぞ…」

 

 

 

 悪いけど、俺もオランジュも無理っす。俺達にとってこの人は、一夏達でいうところの千冬さんポジションだ。あいつらだって、千冬さんがア○パンマンの恰好してたら爆笑するかドン引きするかのどっちかに決まってる…

 

 

 

「因みに、僕がやったのさ!!」

 

 

「な、何でですか?ククッ…」

 

 

「当然、面白そうだから!!」

 

 

「「あんた自分の側近を何だと思ってるんですか!?確かに面白いけど!!」」

 

 

「……貴様ら、本当に一回死んでみるか…?」

 

 

 

 結局、野郎4人の馬鹿騒ぎは宿の怒った女将さんが来るまで続いたのだが、更に恐ろしい剣幕の千冬さんまでやって来たので俺達は逃亡を余儀なくされてしまった。しかし運の悪い事に俺は千冬さんに捕まり、兄貴に負けず劣らず強烈な拳骨を落とされ自室に連行される羽目になった。そして、その途中で気付いた…

 

 

 

「……俺、何も聞けてないじゃん…」

 

 

 

 不安にさせるだけさせといて、その元凶であるオランジュ達は俺に一切何の説明もしてくれなかった… 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「やれやれ、ここまで来れば大丈夫かな…?」

 

 

「安心するのはまだ早いっすよ、旦那。織斑先生の行動範囲と勘の良さは、マジで侮れないでっせ?」

 

 

「そうかい。それにしても、何であそこまで真剣に追い掛けてきたのかな?僕達って指名手配犯だけど、今は更識の嬢ちゃんに許可貰ってるし…」

 

 

「いや、単に教師として馬鹿騒ぎする馬鹿共に御仕置きしたかっただけだと思いますよ…?」

 

 

 

 旅館の方々に迷惑が掛かる程騒いだためか、織斑千冬は大変ご立腹である。かつてのセヴァスが楯無と愉快な…もとい激しい追跡劇を繰り広げた時と同じように、彼らは必死で逃げまわった。フォレストとオランジュは現在旅館から少し離れた海辺に逃げてきたところであり、互いにデスクワーク派故にゼェハァと息を切らしていた。二人とも同時に『今度から運動しよう』と本気で思ったのはここだけの話である。因みに、ティーガーは囮になるべく未だに千冬と鬼ごっこを続けているそうな…

 

 

 

「ところで、人数は揃ったんですか?」

 

 

「丁度さっきね。これで戦力も揃った事だし、セイスの手を借りなくても済みそうだ…」

 

 

「……最初からアイツを巻き込むつもり無かったんでしょ…?」

 

 

 

 そのオランジュの言葉に、フォレストはニヤリと笑みを浮かべる。来たるべきトラブル対策の為に楯無に仕事を依頼されたわけだが、本音を言うと亡国機業が崩壊した今は色々とキツイものがあった。もしもスコール達が来てくれなかった場合、強引にセヴァスを巻き込むことになっていただろう。彼の実力を買っている身としては、協力してくれるに越した事は無いのだが…

 

 

 

「ま、せめて万が一の時の保険にでもなって貰おうかと思ったけど、堅気の人間達とあんな風に楽しそうにしている二人を見てたらそんな気も失せたよ…」

 

 

「何だかんだ言って、旦那って御人好しっすよね…」

 

 

「おや?そんな御人好しと同じ事を考えて、張り切って仕事を手伝ってくれたのはどこの誰かな?」

 

 

「……何のことやら…」

 

 

 

 

―――結論、師弟そろって御人好し…

 

 

 

 

「とにかくセヴァスを参加させない事も、そうしても平気なだけの戦力が整った事も楯無に伝えておきますよ。他に何か伝えておく事や打ち合わせする事ってありますか…?」

 

 

「そうだね…取り敢えず……ッ…!?」

 

 

 

 その瞬間、二人に悪寒が走った。嫌な予感して横を向くと、遠くから何かが砂塵を巻き上げながら迫ってくるのが見えた。そして、それを見た己の勘が告げていた……早く逃げろ、と…

 

 

 

「流石だな世界最強!!ラウラ達の教官を務めた人物なだけはある!!」

 

 

「貴様、誰かと思ったらティーガーか!!待て、馬鹿者!!」

 

 

「断る!!それよりも、ここで去年の続きをしようでは無いか!!」

 

 

「そう言う位なら逃げるのをやめて止まれ!!」

 

 

 

 

―――今更色々と引けなくなったティーガーと千冬の鬼ごっこが、段々とコッチに迫りつつあった…

 

 

 

 

「……更識の嬢ちゃんに伝えといてくれ…」

 

 

「……何をですか…?」

 

 

「『織斑先生が怖いから今日は外で寝る』って、ね!!」

 

 

「りょーかいッ!!」

 

 

 

 言うや否や、一般人に毛が生えた程度の体力しかない身体に鞭を打ちながら、フォレストとオランジュはその場から全力で逃亡した。しかし…

 

 

 

「ちょ、織斑先生!?何で兄貴達追いかけるのやめてこっちに来るんだよ!?」

 

 

「貴様が一番捕まえやすそうだからだ!!」

 

 

「くっそ大人気無ぇな畜生ッ!!」

 

 

 

 

―――数分後、阿呆専門の断末魔が響いた…

 

 

 




次回、真面目なフォレスト組が本気出します
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