アイ潜IF外伝   作:四季の歓喜

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お待たせしました、暫く放置していた続きです。ですが時間と区切りの都合上、今回も三分割になってしまいました……申し訳ないっす…;

でも次は割と早めに執筆時間がとれそうなので、後編の更新は今回ほど時間が掛からないと思います。ですので、もう少しだけお待ち頂ければ幸いです。


IF未来 トライアングル編3!! 中篇

「なんでここに居るの!?」

 

「いや、単に私もセヴァスを夕飯に誘おうかと思ってたんだ。そしたら、見覚えのある飛行物体が見えたんで追いかけたら、案の定お前らだった」

 

「クッ、一生の不覚だわ…」

 

「いや、お前の人生って不覚だらけじゃん」

 

 

 楯無は悔しそうにマドカを睨み付けるが、当の本人は柳に風と言わんばかりである。しかも、楯無を煽る様に彼女は何食わぬ顔で俺の隣へと座り直した。無論、楯無がそれを無視出来る訳も無く、狼狽えながらも批難の声を上げる。

 

 

「ちょっと、なにしてるの!!」

 

「まぁそう声を荒げるな、私だってタダで同席させろとは言わんさ…」

 

 

 躊躇せず人の財布で飯を喰らう常習犯はそんなことを抜かしつつ、自分の携帯を取り出した。その唐突な行動に俺も楯無も頭上にハテナマークを浮かべたが、そんな俺らの様子を無視するようにマドカは取り出した自分の携帯を操作していた。そして…

 

 

「あ、ポチッとな」

 

「ん…?」

 

 

 マドカが操作を終了させるのとほぼ同時に、楯無の方から割と軽快なメロディーが流れてきた。楯無はおもむろに服のポッケをゴソゴソと探り、自分の携帯を取り出す。誰かから…ていうか、十中八九マドカがメールか何かを送信したのだろうか。ニヤニヤと笑みを浮かべているマドカは気になるが、取り敢えず内容を確認してみることにした楯無。すると…

 

 

「ッ!?」

 

 

 データを開封したであろう楯無は驚愕に目を見開き、自分の携帯とマドカを交互に見て、そして何故か俺の方にも視線を送ってきた。その露骨な狼狽えっぷりに俺は逆に戸惑うが、マドカは楯無がこうなることを予測済みだったのか、依然として余裕の笑みを浮かべている。

 そして暫く言葉にならない程に動揺していた楯無は途中で我に返り、咳払いひとつして、一夏達に向けるようないつもの微笑を浮かべた。

 

 

「し、仕方ないわね。この前はちょっと抜け駆けしちゃったし、そのお詫びも兼ねて同席することは許してあげる♪」

 

 

 さっきまでの憤りはどこへやら、極めて冷静かつ穏やかな口調でそんなことを言い出した。隣に座っていたマドカは無言で小さくガッツポーズを決めていたが、逆に俺は絶賛混乱中である。いったい、コイツは楯無に何を送ったのだろうか…

 

 

「でも、流石に代金の支払いは自分でしてちょうだ…」

 

「二枚追加、後払いで貴重な寝顔も送ってやろう」

 

「さぁマドカちゃん、今日は私の奢りよ!!遠慮せず、好きなだけ食べてちょうだい!!」

 

 

 もう、ますます意味が分からん。さっきまで同席することさえ渋ってたと言うのに、この豹変っぷりである。ていうか、ちょっと待て…今『寝顔』とか言ったか、コイツ?

 

 

「おい、さっきから楯無に何を渡してんだ?」

 

「ん、ホレ」

 

 

 いい加減に嫌な予感がしてきたのでそう尋ねると、マドカは携帯の画面を俺に見せてきた。何だろうと思い、覗き込むように表示された画面に目を向けてみると…

 

 

―――仕事中に力尽き、パソコン前で涎垂らしながら、うつ伏せ状態で爆睡する俺の姿が写っていた…

 

 

「ちょっと待てコラああああぁぁぁ!?」

 

 

 反射的に携帯を引っ手繰ろうとしたが、向こうも慣れたもので、あっさりと避けられてしまう。どうにか捕まえようとするが、マドカは軽い身のこなしでテーブルの反対側…楯無の方へと飛び移り、射程圏外へと退避してしまった。長い付き合いなだけあり、向こうもそのことを承知しているので、楯無の隣で余裕の笑みを浮かべている。それはそれで腹が立つが、今はそのことよりも…

 

 

「なぁに人の写真を交渉材料に使ってやがんだ、て言うかいつの間に撮りやがった!?」

 

「12月6日の01:24、って書いてある」

 

「やっかましい!! そして、テメェもテメェで俺の写真なんぞに価値を認めんな!!」

 

「ええぇ…でもセイス君の寝顔なんて、絶対に拝む機会無いと思うし……」

 

 

 物欲しそうな目で、マドカの携帯を見つめる楯無。自分の写真数枚分が、この店の食事代に匹敵すると言われても、こんな展開では複雑な気分にしかならない。むしろ、色々な意味で待ったをかけたい…

 つーかそれ以前に、なんでマドカは楯無のメアドを知っているのだろうか。楯無も楯無で、さっきせマドカの事を『マドカちゃん』とか呼んでいたが、もしかして俺が思ってるより交流あるのか、この二人?

 なんてことを考えてたら、マドカはヤレヤレと言わんばかりに首を振り、肩を竦めた。多分、オランジュの真似をしてるつもりなのだろうが、イラッと来る部分以外は恐ろしく似てない。ていうか、似合ってない。しかも、自分でもそう思ったらしく、微妙に顔が赤い。微妙になった空気を誤魔化すように、先程の楯無のよりも大きめの咳払いを一つ響かせ、マドカは改めて口を開いた。

 

 

「まったく、写真の二枚や三枚でいちいち煩い奴め。お前らだって、盗撮した代表候補生の写真でせこせこと小遣い稼ぎしてるじゃないか」

 

「ここでそれを言うかテメェ!?」

 

 

 この場において、最悪の第一声だ。そりゃ仕事の都合上、何度か一夏の周りの人間の写真を撮って組織に報告書と一緒に送ったさ。けれどあくまで写真はついでだし、その写真を自分の為に使ったことは一度も無い……と、思う…

 

 

「え、セイス君ってそんなことしてるの…?」

 

「……黙秘権を行使する…」

 

 

 前言撤回、ちょっと私用でも使ってます。主にファンクラブの連中を対象にした、売り物として。俺は彼女たちの写真を仕事以外の目的で欲しいと思ったことは無いが、オランジュみたいな奴らは何人も居るので、当分は需要が尽きることは無いだろう。

 まぁ彼女たちには何度か仕事の邪魔されたり、監視対象の一夏を殺されそうになったりと、非常に勝手ながら迷惑に感じる時が多々あるので、罪悪感に関してはプラマイゼロである。むしろ、この臨時収入が無いと目の前の食いしん坊のせいで、あっという間に財布の中身を空にされてしまうのだから、今更やめるにやめられないのが現状だ。

 とは言え、当事者の一人の前でこの話題は勘弁して欲しかった、割と切実に!!

 

 

「因みに、対象は私も含まれてたりする…?」

 

「も、黙秘権を行使する」

 

「要注意人物ってことで、かなり早い時期に確保してたぞ。しかも一番最初に撮った写真は、オランジュ達には送らないで今も持ってるんだよな?」

 

「マドカああああぁぁぁ!!」

 

 

 また何食わぬ顔でサラリと爆弾を落とされ、思わず声を荒げるも本人は知らんぷり。確かに、最初に手に入れた楯無の写真は、今でもパソコンに保存してある。もっとも、写真自体は楯無だけでなく、監視対象である一夏、同じく要注意人物である織斑千冬や、ワンサマラヴァーズの面々も例外では無く、一枚目の写真は暫く保存していた。まぁその殆どは、小遣い稼ぎの為にオランジュ経由でファンクラブの連中に送っちまったが…

 で、何故に楯無の写真だけ残したのかと言うと、単に当時は楯無ファンが少なく、写真にあんまり良い値段がつかなかったから、値上がりするまで待っているだけと言う、本人には口が裂けても言えないくらいに失礼な理由だったりする。

 

 

「え、えっと…そう、持ってるんだ? 私の写真……」

 

「な、なんだよ…」

 

「べ、別に…」

 

 

 そのことを知ってか知らずか、言葉の割に楯無は少しだけ嬉しそうにする。写真を持ち続けている理由は、何が何でも絶対に秘密にしておこうと、改めて心に誓った…

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「ところでマドカちゃん、携帯変えた?」

 

「あぁ、前のより使い勝手が良くてな。それと、その時に新しい店も見つけたぞ。今度行ってみないか?」

 

「予定が空いてたら良いわよ。でも、その店って、また飲食店だったりする?」

 

「舐めんな、美容院だ。おいセヴァス、なんで吹き出した?」

 

 

 マドカの乱入と爆弾投下から数分後、俺たち三人は気を取り直して食事を再開していた。やはりというか、この店の料理は素晴らしいの一言に尽きる。隠れ食通のマドカも気に入ったようで、先ほどから楯無と和気藹々と談笑しながらも、箸を掴む手が休むことは一切なかった。それにしても…

 

 

「お前ら、いつの間にそこまで仲良くなったんだ…?」

 

 

 楯無はマドカを『マドカちゃん』と呼び、マドカはマドカでさっきから楯無と気さくに話している。人たらしと名高い楯無はともかくとして、俺以外にはオランジュですら名前呼びを許さないマドカが、あそこまで素を曝け出していることにビックリだ。

 そんな俺の戸惑いに対し、楯無は微笑みながらこっちを向き…

 

 

「女は常に、男には言えない秘密が幾つかあるのよ♪」

 

「この前3人揃ってレゾナンスで遭遇したあと、しつこく連絡先を聞いてきたから教えてやったんだ。それからは意気投合してつるんでる」

 

 

 ウィンクしながら発した言葉を、一瞬でマドカにばっさり両断されて硬直した。勿体ぶって格好つけようとしたのだろうが、お陰で俺とマドカが料理をモグモグと租借する音だけしか聞こえない、なんとも痛々しい沈黙が流れる。だが暫くして、我に返った楯無は引きつった笑みを浮かべたまま、マドカをジト目で睨み付けた。

 

 

「……マドカちゃん、この空気どうしてくれるの…?」

 

「元から痛い奴が痛い結果に終わっただけだろう? 何も問題ない」

 

 

 痛いって言うより、うざいと感じる時が多々あるのは俺だけだろうか…?

 まぁ、たまには真似してみたい時がなくもない。それに、そういう感じに余裕ぶっている奴が、今みたいに狼狽えまくる姿というのは中々に可愛げがあると思わなくもない。

 

 

「痛い奴ってなによ!? それを言ったらマドカちゃんだって充分に痛い子でしょうが!!」

 

「私が痛い子だと? ふん、いったい何を根拠に…」

 

「時間制限ありの大盛メニューにチャレンジする度に、料理に向かって『大盛○○、相手にとって不足無し』って呟いてるでしょ?」

 

「ほああああぁぁぁ!? ま、まさか全部聞こえ…」

 

 

 いったい何の影響を受けたんだ、この馬鹿は。他の奴らには冷酷で無慈悲なマシンガールを装っているが、実際は色々と大雑把な性格をしたアホの子に過ぎず、その事実をフォレスト一派のメンバーには勿論のこと、最近では姉御達にすら知られてしまった。化けの皮がはがれている事に気づかず、今でもクールに振舞おうとするマドカの姿は見てる側からすると残念を通り越して最早、微笑ましいものに見えてしまう。

 

 

「しかも完食後には必ず、『我が人生に、一片の食い残し無し』って意味の分からないことを…」

 

「うわあああぁぁぁぁそれ以上言うなあああぁぁぁ!! それ以上言ったら、この中二病患者のネタ帳みたいなものをセヴァスに晒してやるぞ!?」

 

「ちょっとおおおぉぉそれ私の手帳じゃない!!!」

 

 

 うん…まぁ、とにかく本当に仲がよろしいことで。因みにマドカが取り出し、楯無が顔を青ざめさせたそれは、確かに彼女の手帳である。生徒会室で一人になった時、どうすれば格好良く、威厳があふれ、人を惹きつけることが出来るのか日々模索して、その考えた一つ一つを書き留めたのがあの手帳だ。たまにテレビのドラマやアニメを参考にしている日もあったが、それを見るとやっぱり簪と姉妹なんだなぁって思った。だって本人たちは知らないみたいだけど、楯無が参考にしたアニメって、全部簪が好きな奴なんだもん…

 

 

「……やめにしない? こんな、不毛な争い…」

 

「……あぁ、そうだな…」

 

 

 勝手に始めた謎の戦いで、勝手に死に掛けている二人。あんまり口を出すと、余計なとばっちりを受けるので今は黙って食うことに専念する。と思ったのは良いが、いつの間にか食い過ぎたようだ。もう腹一杯で、ガリすら入らない。そんな俺の様子に気付いたマドカは、早速声を掛けてくる。

 

 

「もう満腹か? 今日は折角だから、コレを持ってきたんだが…」

 

「お、それは…」

 

 

 そう言ってマドカは持参した手荷物の中をゴソゴソと漁り、中から清酒一升瓶を取り出した。確かそれなりに値の張る代物で、先日に姉御が店に直接買いに行っていたような…

 

 

「スコールの酒蔵からパクッてきた」

 

「ぅおい」

 

「大丈夫だ、バレはしない。コレがあった場所には、ちゃんと同じ柄の瓶を置いてきたから……中身はコンビニで買ったカップ酒だがな…」

 

 

 いや、絶対にバレると思うけど。マドカが食通になった原因でもある姉御が、老舗の清酒とコンビニの安酒の違いに気付かない筈が無いし、今のスコール派に姉御の私物を漁るような不届き者は彼女だけなので真っ先に疑われるだろうに…

 

 

「まぁ良いか、その時はその時で…」

 

「そう言う事だ。さぁ飲め飲め、そして飲むぞ」

 

 

 とは言え美味い寿司を食った後に、そんな上等な酒を出されたら飲まずにはいられない。空になっていたグラスを手に取り、マドカへと差し出す。彼女は慣れた手つきで栓を外し、中身を注いでくれた。

 俺の分が注ぎ終わり、続いてマドカが自分のグラスに酒を注ぎ始めたあたりで、楯無のことを思い出して視線を向ける。すると彼女は何故か、こっちを見て困惑…というか、戸惑っていた。

 

 

「どうした?」

 

「え、いや…セイス君たちって今、16歳よね?」

 

「そうだぞ。忘れがちだけど、お前より年下」

 

 

 俺とマドカはタメで、一夏たちと同世代だ。そして楯無が一夏達の先輩ということは、俺達の一個上ということになる。まぁ今更過ぎるし、元々年上ってだけで相手を敬うような性格はしてない。そもそも、楯無を年上と感じたことが無い。ついでに言うと、俺達がそう思っていることを、楯無本人も薄々と分かっているだろう。なんだってまた今になって年齢の確認を?

 

 

「いやいやいやいや、そうじゃなくて!! なに堂々と目の前で未成年飲酒を実行しようとしてんのってことよ!!」

 

「あぁ、そういうことか…」

 

「なんだ楯無、お前は酒飲めないのか?」

 

「裏仕事専門とは言え、家の当主が未成年ルール破ったら示しが付かないでしょ!!」

 

「裸エプロンや裸ワイシャツで護衛対象とスキンシップとるのは示しつくんかい」

 

 

 つまりはそう言う事らしい。曲がりなりにも日本きっての良家、しきたりや体裁には厳しいのだろう。しかも、ここは更識家御用達の店。下手をすれば行動の全てを本家にチクられ、拷問…もとい、お説教部屋に連行されてしまう可能性だってある。俺をこの店に入れること自体が既に割とギリギリな行為だったろうし、これ以上本家の不興を買うような真似は出来ないのだろう。

 よく考えると確かに今日の楯無は、心なしか控えめな気がしなくもない。おまけにマドカが自重しないから、余計に色々と我慢しているのかもしれない。

 

 

「ふふん、案外お子様なんだな。セヴァス、こんな見た目はお姉さま、中身はガキんちょな水色は放っておいて、二人だけで飲もう」

 

 

 

---まぁ、もっともな話…

 

 

 

「……なんだ楯無、その差し出した空のグラスは…?」

 

「……決まってるじゃない…」

 

 

 

---その我慢に限界を迎えさせるのもマドカなんだが… 

 

 

 

「私も飲むのよ、お酒」

 

 

 

 

 マドカの挑発に乗せられた楯無(ニンゲン)は無自覚なまま、セイス達(バケモノ)との酒の席という名の死地へと、自ら足を踏み入れた…




○楯無って酒に強そうなイメージはあるんですけど、ナノマシン持ちの二人が相手だと流石に…
○お留守番中のオランジュ、マドカから報告を聞いて彼が最初に行ったことは、カップ麺のお湯を沸かすこと
○楯無の写真に関しては、セイス自身が自覚してないことがあります。詳細は次回…
○そして今回は、見方によっては敵に塩を送りまくっているように見えなくも無いマドカ。その行動の真意に関しても次回に…
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