アイ潜IF外伝   作:四季の歓喜

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お久しぶりです、続きの更新大変お待たせして申し訳ありませんでした;

しかし、またもや内容が当初予定より長くなり、このままだといつ更新出来るか分からないので、先にキリが良いとこで投稿しておきます。


IF未来 学園編ゼロ 後編その1

「待て、止まれ!!」

「逃がさないよ!!」

 先程まで平和そのものだったIS学園は、久方振りの喧騒に包まれた。この二年、一夏達を中心に毎日のように騒動が起きては少なからず巻き込まれ、振り回され続けてきた内に、学園の生徒達は多少のトラブルに大して動揺しないメンタルを手に入れてしまったが、そんな彼女たちでさえ、流石に今回の出来事は想像の範疇を超えていたのか、それを目撃した殆どの者が驚愕に目を見開き、もしくは思考停止したかのように動きを止めた。

 彼女達の視線の先に居るのは、三人の人物。その内の二人は学園の専用機持ち、あるいは『一夏ラヴァーズ』の一員として認識されている篠ノ之箒、そしてシャルロット・デュノア。一夏の無神経な言動に怒り狂い、箒たちが物騒なものを手に彼を追い立てるのはいつものことであり、学園の生徒たちにとっては割りと見慣れた光景だ。今回、彼女達が追いかけているのが一夏では無く、熊の着ぐるみでなければ…

「くっ、何て逃げ足だ!!」

「もしかして、ラウラより速いんじゃ…」

 専用機持ちとして、常日頃から身体を鍛えている二人だが、そんな二人のことを嘲笑うかの如く、熊は恐るべき足の速さで彼女達をぐんぐんと突き放していく。そして暫く走り続けた後、突如向きを変えて、近くにあった空き部屋をどこからか取り出した針金を使い、一瞬で抉じ開けて中に駆け込んだ。

 その様子をバッチリ目撃していた箒とシャルロットは、躊躇することなく、熊…セイスに続いて部屋に入ろうと扉に手を掛ける。

「それで撒いたつもッ!?」

「うわッ!?」

 その瞬間、扉が勢いよく開け放たれ、中から何かが飛び出してきた。よく見ると、それは人が一人分スッポリと収まりそうなサイズのダンボールだった。突然のことに驚き、怯んでしまった箒とシャルロットの間をすり抜けるようにしてやり過ごし、先程の熊に匹敵するスピードで、まるでゴキブリのように地面を滑るように走り出すダンボール。箒とシャルロットが我に返った時には既に、通路の突き当りにまで走りぬけ、曲がり角の階段に差掛かろうとしていた。二人は慌てて後を追いかけようとするが、既に彼女たちの足では到底追いつけるような距離では無くなっていた。このままでは追いつく前に姿を見失い、まんまと逃げられてしまう。

「ホアタああああぁぁぁ!!」

「鈴!?」

 そんな時だった、階段の上から気合の雄叫びと共に、先回りして待ち構えていた鈴が、逃げるダンボール目掛けて勢いよく飛び蹴りをブチかましてきたのは。突然の一撃に成す術も無く、鈴に蹴られたダンボールは派手に吹き飛んで壁に叩き付けられ、そのまま地面に落下した。そして、そんな見るからに大ダメージを受けた相手に、騒ぎを聞きつけ集まってきた野次馬たちの視線を気にすることなく、鈴は鬼のような形相でズンズンと歩み寄っていく。

「ふふ、ふ、ふふふ…」

「り、鈴?」

「ちょっと、どうしたの?」

 鬼の形相のまま、背筋が凍りそうな狂笑を漏らす鈴だったが、彼女がこうなるのも無理はない。なにせ目の前の下手人は、うら若き乙女の秘められた日常を覗いた、あるいは盗み聞きした疑いがあるのだ。それは想い人への気持ちが暴走した世迷い言だったり、浮かれまくった挙句に漏らした迷言だったり、痛々しい妄想からのアホ丸出しな妄言だったりと、とにかく他人に聞かせられるような代物では無い。それを、よりによってそれをコイツは二年もの間、ずっと聞き続けてきたというのだ。思い返すと恥ずかしさで死にそうな内容であることが充分に自覚出来る今、あの黒歴史の数々を。それに加え、もしも例のコンプレックスに対する悪足掻きとか、同じコンプレックスを抱いた者同士で集まったアレとかも見られていたとしたら…

「良し、殺そう」

 

 箒とシャルロットでさえ怯むような冷笑を浮かべ、鈴は即決断。吹っ飛んで少しばかり形が歪んだダンボールをガシッと鷲掴みにして、躊躇せずに引っぺがして放り投げる。そして隠れ蓑(?)を剥ぎ取られた逃亡者は当然ながら、その姿を晒す事になった。既に覚悟を決めていたのか既に臨戦態勢を整えており、鈴の方を向いて威嚇のつもりなのか、黒くて大きな羽を震わせながらブブブと鳴らしていた。

 それを見て、一番近くに居た鈴が最初に衝撃を受けてフリーズした。何せ、セイスが入っていると思っていたダンボールの中に、彼は存在していなかった。それだけならまだしも、そいつは人間にあるまじき黒い羽を持っていた。そして、テカテカのボディを、二本の触手を、六本の手足を持っていた。そして何より、そいつは馬鹿みたいな大きさを持っていた。

 鈴がパンドラの箱を開けてしまった直後、その場に居た全員が言葉を失い、そいつの羽音だけが響いて不気味な空気が出来上がった。ある者は鈴と同様にその場で動くことが出来なくなり、ある者は恐怖で顔を引き攣らせ、ある者は既に泣きそうになっていた。それでも誰一人として声は出さない、誰一人として物音をたてない。何故なら音を立てた瞬間、この空間が地獄絵図と化すことを、誰もが直感していたからである。しかし、そんな彼女たちの行動は焼け石に水も良い所で、時間稼ぎにすらならなかった。時間にして僅か十秒ほど、ソイツは鳴らし続けていた羽をピタリと止めた。完全な静寂が訪れ、誰かがゴクリと息を呑む音が響いた。

 

 

---その瞬間、全長1,5mの巨大ゴキブリは、目の前に居た鈴に飛び掛った…

 

 

 

『『『『『きいぃぃやぁああああああ!?』』』』』

「流石は十兵衛、効果は抜群だ」

 携帯のような端末を手に、鈴を筆頭とする女子たちの悲鳴を耳にしながら、遠く離れた通路を悠々と進むセイス。彼の手に握られている端末は、先程から向こうで猛威を振るっているゴキブリ型ロボット10号、通称『十兵衛』のコントローラーである。箒とシャルロットに追いかけられていた彼は、一縷の望みを掛けて物置部屋に駆け込んだが、実はその部屋には潜入任務時代、組織から支給された装備を幾つか緊急時用の為に置いといてあったのだ。まさか潜入任務どころか、組織に身を置く事すらやめた後に使うことになるとは思いもしなかったが、結果的に助かったので良しとしよう。ついでに言うと、セイス達は先程の部屋以外にも装備やトラップやらを学園中に配置しており、隠し部屋を楯無に抑えられた後もその殆どが未だに発見されていない。故に地上の設備限定とはいえ、今のIS学園は実質、彼の庭と言っても過言ではなかったりする。

「そんじゃ、今の内にお暇させて貰ッ…」

「ちょっとよろしくて?」

 背後から聴き慣れた声を耳にし、後ろを振り向いたら、10mほど離れた場所に金髪ドリル…もといセシリア・オルコットが居た。その表情と口調は、かつて一夏と初対面を果たした時のように落ち着きのある澄ましたものだが、目の方は現在の怒り狂うラヴァーズ同様、絶対零度の冷たさを放っている。そんな彼女の様子を一目見て、セイスは確信した…こいつもアカン、と。

 

「セイスさん…と仰いましたね。改めて、お初に掛かります、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットですわ。以後、お見知りおきを」

「これはこれは、ご丁寧にどうも」

 『うん、知ってる』と内心で呟きつつも、優雅なお辞儀と共に送られた自己紹介に、セイスも思わずお辞儀で返す。しかし警戒心は決して解かない、解ける訳が無い。もしも目を離したら、間違いなく禄でもない目に遭うだろう。

 

「それでは、最低限の挨拶も済ませたことですし……お覚悟を…」

 だってセシリア、いつだかの文化祭の時に使ってたライフル向けてるんだもん…

「やっぱりそうなんのかッ!!」

 宣告と共に躊躇なく放たれた弾丸。セイスは口調とは裏腹に余裕で避けてみせたが、一発、二発、三発と間髪入れずにセシリアは次々と弾丸を放ってくる。ビビらすのがメインであるが故に、精々身体に掠る程度に狙ったとは言え、初弾を回避されるとは思ってなかったのでセシリアは内心で驚いていたが、逆にそれが彼女自身の射撃の腕に対するプライドを刺激してしまい、殺る気スイッチが入ってしまったのである。更に、事前に楯無に『どうせ防弾チョッキとか着てるから、遠慮なく殺る気で行って構わない』と伝えられていたことがそれに拍車をかけ、今のセシリアに遠慮の二文字はすっかり無くなっていた。銃の狙いも段々と掠らせることよりも、急所を外す程度に意識され始め、セイスも徐々に本気で避けに徹する羽目になっていった。

「当たり前ですわ。淑女のプライベートを覗き見るだけに飽き足らず、乙女の秘密を握るなんて万死に値します。死んで詫びなさい」

 そもそもプライベートのセシリアも、他のラヴァーズに負けず劣らず酷い。お嬢様育ちが仇になったのか定かではないが、料理を含めた家事全般は最悪の一言に尽きるのは勿論のこと、時たま中途半端な箱入り娘っぷりを披露することもしばしば。だが、そこら辺はまだ可愛い方だ、初めてBL本を読んだ時の反応なんて笑ってられる。

 問題はこの娘、思考がオランジュ並の煩悩まみれになることが多々あったのだ。ぶっちゃけ、その兆候は一年生の時からあった。よく考えれば、臨海実習の時も勝負下着を装備して一夏の元に行こうとして本音達に『セシリアはエロい』とか言われていたが、二年生になったらそれが悪化の一途を辿っていたのである。私服の露出度が増えたのなんてまだ序の口で、一夏に対するアプローチがボディタッチメインに変わり、隙あらば部屋へ連れ込もうとするのはいつものことで、更には一服盛って既成事実を作ろうと画策していた時期さえあった。下手すりゃ楯無を超える痴女になったのでは無いかと思ったが、これにはセイス達だけでなく学園の生徒達もドン引きした。まぁ最終的に一夏にまでドン引きされてしまい、それが原因で最近は随分と大人しくなった。

 とは言え、それは今の彼女にとって間違いなく黒歴史。おまけに実行に移さなかった、もしくは移せなかった一夏籠絡作戦は数知れず。更に言うなれば、それらの作戦がボツった理由は、既に周りにドン引きされていた自分でさえも『これは酷い…』と思った内容だったからである。そんな代物と、そんな代物を生み出した英国淑女にあるまじき姿を、こんなどこの馬の骨とも知れない相手に見られたとあっては、心中穏やかでいられる筈もなく、表面上は覗き魔に対して冷静に断罪を下すように、内心では半ばヤケクソ気味に、そして八つ当たりするかのように、セシリアは引き金を引き続けた。

「生憎と、俺は…」

「えッ」

 しかしセイスは、セシリアに何時までも付き合う気は無かった。このまま足止めされ続けたら、先程どうにか撒いた箒達が追いついてくるかもしれない。今は何とか持ちこたえているが、こんな血気盛んで物騒な乙女(笑)共が合流してしまったら、確実に地獄を見る。そう結論付けたセイスは、銃撃と回避の応酬が十を超えた辺りで遂に動いた。

 最初と同様に正確無比で、尚且つしっかり急所を外して放たれたセシリアの弾丸に向かって、彼は自ら飛び込んだのだ。彼の予想外な行動にセシリアは思わず間抜けな声を出したが時既に遅く、セイスは右目から鮮血が飛び散らしながら衝撃でのけぞり、そのまま床に吹っ飛ぶようにして仰向けに倒れた。

「そ、そんな、どうして!?」

 実弾では無く摸擬弾を使用しているとは言え当たれば痛いし、それが眼球ならただでは済まない。直撃すれば失明は免れないだろうし、最悪の場合は痛みでのショック死も有り得る。そんなことすら失念していた自分に今更ながら嫌悪しつつも、せめて応急処置だけでもと銃を放り投げ、血相を変えて倒れたセイスに駆け寄るセシリア。もしもこの場に楯無、せめてティナが居たら全力で彼女の行動を止めたかもしれないが、生憎とこの場にはセイスとセシリアの二人しか居ない。故に…

「こんな、こんなつもりではってヒィッ!?」

 近寄り傷の状態を見るべく、顔を覗き込もうとセシリアが膝を付いた瞬間、仰向けで倒れていたセイスが身体を勢いよく起き上がらせた。その拍子に二人は顔を至近距離で付き合わせるような形になったのだが、セイスが突然起き上がったことに加え、命中した摸擬弾のせいで右目からダラダラと血を流す彼の顔を目の前に突きつけられたセシリアは、小さな悲鳴を上げて衝撃を受けていた。

 「この程度じゃ死ねないんだ、安心しろ」

 その隙を逃さず、セイスは彼女の首筋に慣れた手つきで手刀をくらわせ、意識を奪うことに成功する。意識を失ったことにより力が抜けたセシリアをそっと床に降ろし、そのまま一息を入れる。 

「ふいぃ、一丁上がり。これで残るは…」

 言うや否やその場を飛び退くと、直前までセイスが居た場所に数本のナイフが飛んできた。前転しながら体勢を整えると同時に、間髪入れず小柄な影が長い銀色の髪を靡かせながらタックルをぶちかましてくる。本職の本気の不意打ち故に回避は間に合わず、セイスは真正面から受ける羽目になった。流石と言うべきか、セイスの身体能力に加え、互いの体格に大きな差が存在するにも関わらず、軍隊と世界最強に仕込まれた彼女のタックルは彼にそれなりのダメージを与え、衝撃で幾らか後退させることに成功する。

「ぬおおぉぉ…さ、流石に効く……」

「抜かせ、こっちは気絶させる気でやったと言うのに」

 ギリギリまで気配を殺し、セイスにタックルをくらわることに成功したラウラ。しかし、本人の言う通り割と獲る気で放ったタックルは、彼を仕留めるには些か威力が足らなかったようで、自分が予想していたよりも反応がいまいちだった。生身なら未だに自分を軽くあしらう事が出来る楯無だが、その彼女を相手にして何度も苦汁をなめさせたと言うだけあってか、その実力はやはり本物なのだろう。そう結論付けたラウラは一瞬にして思考を切り替え、セイスが動き出す前に次を仕掛けた。まだ動かないセイスの足を蹴り付けて体勢を崩し、全身で腕に絡みつくようにして取り付いて身体に捻りを入れる。そのまま関節を決めながら床に投げ飛ばし、寝技に持ち込む算段である。

「タンスの下を勝手にくり抜いた収納ボックス」

「ッ!?」

 しかし彼女の動きは、セイスの呟いたその一言で中断させられる。片膝をついたセイスの腕に引っ付いた状態のまま、ラウラの顔色はみるみる青褪めていった。何せ今セイスが言った場所は、ラウラが未だにシャルロットどころかクラリッサにさえ教えていない自分の趣味と、それらを纏めて隠した秘密の場所。どうやら他の面子と違って自分は大丈夫とか思っていたようだが、全く持ってそんなことは無かったようである。その証拠に…

「その年で実行して違和感沸かなかった体型つーのも悲しいな、プ○ズマ☆イ○ヤ」

「うわああああああああぁぁぁぁぁ!?」 

 ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべ、当時自分で実行して自分で凹んだコスプレの内容を告げられたラウラは、青褪めていた筈の顔色を瞬時に赤くして他のラバーズ同様、狂乱状態に陥る。絶叫してパニック状態になりつつもセイスに関節技を仕掛けるあたりは流石と言うべきだが、動揺して集中力を切らせた状態で、しかも息と体勢を整え終えたセイスが相手では、太刀打ちするなんてことは無理だ。

「いやぁ、何かスマンね。最初は見る気無かったんだけど、間が悪いというかなんと言うか、機密情報を目当てに部屋に忍び込んでガサ入れすると、何故か必ず見つけちまって…」

「ふざけるな貴様ぁ!!…っておい、何をする気だ!?」

 戸惑うラウラを余所に、セイスは腕を取り付いた彼女ごと持ち上げ、思いっきり振りかぶる。幾ら小柄とはいえ人一人を軽々と持ち上げたことにも驚いたが、セイスのその姿勢がボールを投げようとする野球投手のような状態になっていることに気付き、ラウラは慌てて彼から離れようとする。しかし、セイスはそれを許さず、逃げようとするラウラの襟首を掴んでそれを阻止する。そして、先程のセシリアによる流れ弾で砕けた窓目掛けて…

「目指せジャイアントのスターーーーーーーーッ!!」

 最早悲鳴すら上げられない、まるでISの瞬時加速のような速度で窓から外へとぶん投げられたラウラ。その姿はさながら、止まることを知らない白い彗星である。激しく動揺していたせいか、ISを出すことさえ忘れたラウラは最終的に、そのまま学園の敷地にある溜め池に盛大な水柱を上げながら着水した。天気が清々しいほどの快晴だったこともあり、外には綺麗な虹が出現していた。

「……どうしよう、もう許して貰える気がしない…」

「当たり前でしょうに、今回は流石の私も引くわよ」

 外の虹を遠い目で眺めながら今更ながら後悔するセイスの隣には、いつの間にか今回の騒ぎの元凶…楯無が立っていた。ただ、何故かその姿は既にボロボロ状態だった…

「なんで既にボロ雑巾になってんの?」

「あなたが、仕掛けた、トラップの、せいよッ!!」

 セイスにゴミバケツを顔面に直撃させられ、箒に釘を刺された後、楯無はすぐにセイスの追跡に加わったのだが、そこから先が大変だった。廊下を歩けば生ゴミの雨、階段を上れば電気ショック、教室に入れば蜂の群れ、トイレに入ればスタングレネードと、嫌がらせ染みたものから完全に命を獲りに来てる危ないものまで多種多様なトラップが次々と楯無を襲ったのである。いつだかの学園祭の夜の光景とデジャヴった彼女は、このトラップを仕掛けた犯人がセイスであることを三秒で確信。積年の恨みに加え、行く先々でトラップに引っ掛かる度に強い怨嗟を抱きながらセイスを探しながら彷徨い続け、ようやくこの場所にたどり着いたのだ。故に今の楯無には、名付し難い黒いオーラがにじみ出ているようにセイスは思えた。

「て言うか私だったから良かったものの…いや良くないんだけど、あんな危ないもの、一般生徒の子達が巻き込まれたらどうする気なの!?」

「大丈夫だ。危ないトラップは全部、お前のミステリアス・レイディに反応して起動する仕様になっている。しかも人混みの中でも正確に目標を見つけてピンポイント狙撃出来る高性能センサー付きだから、何があっても死ぬのはお前だけ」

「何ソレ怖い」

「それが嫌なら、その物騒なものをさっさと手放すこった。ホラ来いよ楯無、ISなんて捨てて掛かって来い」

「あなたみたいな怪物相手に冗談じゃないわよッ!!」

 怒声と共に顔面目掛けて繰り出される回し蹴り。それを屈んで避けるセイス目掛けて追撃の掌底が飛んでくるが、届く前にバックステップで距離を取る。しかし攻撃が全て見切られたにも関わらず、楯無はニヤリと笑みを浮かべた。そしてセイスの背後にチラッと目をやり…

「今よ、簪ちゃんッ!!」

「なにぃ!?」

 慌てて背後を振り返るセイス。だが彼の視線の先には誰も居らず、無人の廊下がどこまでも続いているだけだった。その時点で漸くハッタリであることに気付いたが、既に手遅れ。再び顔を楯無の方へと向けたと同時にセイスの顔目掛け、待機状態のミステリアス・レイディが飛んでくる。咄嗟にそれをキャッチしてしまったが、その頃には既に彼女は駆け出して距離を詰めており、セイスに跳び蹴りを喰らわすべくジャンプしたところだった。

「やあぁろうぶっ殺してやるわあああああああぁぁぁぁッ!!」

 元々楯無を含めた専用機持ち達は、これまで数え切れない回数の指導と罰則を受けている。その主な理由は『私的過ぎる理由によるISの展開』だ。その為、いい加減に堪忍袋の尾が切れそうな千冬を筆頭とする教師陣からは、『次に下らない理由でIS使ったら、留年させる』と釘を刺されてしまう始末である。

 故に今のこの状況において、楯無にとってISはあっても無くても変わらないアクセサリーの一種と変わりなく、どうせなら目くらましとして投げた方が役に立つ。実際それに成功した今の自分は、セイスに対して一矢報いることが出来そうだ…そんなこと思った楯無の顔に、自然と笑みが浮かんだ。

 

「トラップはミステリアス・レイディに反応すると言ったな…」

 

---だが、そんな彼女の笑みは…

 

「アレは嘘だ」

 

---床下から飛び出たパンチングマシーンのアッパーカットにより、一瞬で消滅した…

 

「げふぅ…!?」

 

 手動操作により起動した、長い棒の先にボクシンググローブを付けただけのパンチングマシーンは、楯無の顎を見事に捉えていた。乙女らしからぬ呻き声と共に彼女は衝撃で宙を一回転し、そのまま顔から床に落ちて、うつ伏せのまま動かなくなった。

 ちょっとだけ心配になったセイスはそっと楯無に近寄り、ちゃんと呼吸も脈もあることを確認。安心すると同時に、先程キャッチしたミステリアス・レイディを彼女の頭に乗せ、一度だけ両手を合わせて頭を下げた後、早々にその場から逃げ去った。

 

---その姿を、楯無と同じ色の髪をした眼鏡少女が、ジッと見ていたことに気付かないまま…




○変わらなかった彼女達、色々と悪化した彼女達
○楯無が『どうせ防弾チョッキ~』と言ったのは、『どうせ不死身~』と言っても信じないと思ったから
○彼女達がISを使わないのは、先生と留年が怖いから
○まぁ最終的にはそんなの関係ねぇ、そんなの関係ねぇ!!

○決戦は第三アリーナで!!


近頃なろうの方では『悪役令嬢』なるものが流行っているんですが、試しに短編で一つ書いてみようかなと思う今日この頃。でもアイ潜も書きたい、なろうで更新始めた新作も書きたい……嗚呼、どうしよう…(泣)
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