「それにしても、収拾つくのかコレ…」
セシリアにラウラ、そして楯無との連戦をどうにか生き延びた走る熊…もといセイスだが、その表情は余り浮かない。身から出た錆とは言え、楯無企画の一夏との初対面から始まったこの騒動、箒とシャルロットに襲われた辺りから他の生徒達も巻き込まれ始め、十兵衛を使ったのが決定打となり、気付いたら全校規模の大騒ぎになってしまった。早いところ着地地点を決めないと、自分と楯無以外に怪我人が出てしまう可能性がある。だが正直な話、怒れる彼女たちを沈める方法が全く思いつかない。
「まぁ最悪、覚悟決めて俺が袋叩きに遭えば良いんだろうけど、なんだかなぁ。どうすりゃ良いと思う?」
「そんなことより、この縄を解いてくれッ!!」
因みに現在、セイスが居る場所は一夏の寮部屋で、しかも目の前には縄でグルグル巻きにされた部屋の主が床に転がっていた。
楯無を撃退し、ひとまずその場を離れた直後、場の空気に流されて取り敢えずセイスを捜していた一夏とバッタリと出くわしたのである。ほんの一瞬だけ訪れた静寂の後、トラップと同様に校内に仕込んでおいたロープをゴミ箱の下から取り出し、呆気にとられる一夏を余所に瞬時に拘束。箒達に対する人質、もしくは盾として拉致り、そのまま彼の部屋へ避難することにしたのである。当然ながら一夏は憤慨するも、状況が状況なので苦情は一切受け付けない。
「まぁまぁ落ち着けよ。さっきは碌に会話する事も出来なかったが、お前とは一度しっかりと話してみたかったんだ」
「……さっき言ってた、監視のことか…?」
一夏は思わず訝しげな声で返事をしてしまったが、そうなるのも仕方がない。箒達みたいに必死になってセイスを締め上げようとするほど動揺している訳では無いが、やはり毎日の様に見張られていたとあってはあまり良い気分ではいられない。しかも聴いた話によれば、間接的にとは言え命を狙ったこともあるそうで、普通ならそんなことをしていた相手に警戒心を抱かない方がおかしい。と言うか、普通なら会う事すらしたくないだろう。しかし実のところ、一夏もまたセイスと言う人物に対し、元から少なからず興味を抱いていた。それ以前にぶっちゃけると彼は箒達と違い、セイスの存在自体は既に知っていた…
「それもあるが、マドカのことだ」
(あぁ…やっぱり……)
決して短くない、そして激動の日々を経て、ようやく千冬と一夏の元に迎え入れられることになったエム改め、織斑マドカ。あの亡国事変の収束後、改めて織斑家入りが決定した彼女は、未だ素直になりきれていない部分があるものの、命を狙ってきた当時とは比べ物にならない程に穏やかで、性格も幾分丸くなっていた。千冬と共に赴いた面会時にこれまでのこと、そしてこれからのことを語る彼女の姿は、話の内容はともかくとして、完全に年相応の少女のそれだったと言えるだろう。
で、その時にマドカが語っていた『これまでのこと』とは、当然ながらマドカが亡国機業に身を置いていた時の話になる訳なのだが、そこで織斑姉弟は否が応でも意識をせざるを得ない名前を聞くことになった。それは、マドカの直属の上司であるスコール、亡国機業に寝返ったダリルとフォルテ、そしてアリーシャ。更には一時的にとは言え、裏で組織と繋がっていた篠ノ之束…いずれも、一夏達にとっては決して浅い関係では無い人々だったにも関わらず、そんな彼女らの名前すら霞む程、マドカが口にした彼の名前は、二人の頭にしっかりと記憶される事となった。
その名はセヴァス…亡国機業フォレスト派の若手メンバーにして、主力の一人。織斑マドカが最も心を許した少年であり、彼女の語る『これまでのこと』の内容の8割を占めた存在である。
「どうした、何かを悟ったような顔して?」
「いや、別に…」
最初こそ微笑ましく相槌を打ちながら聞いていられたものの、口を開けばセヴァス、口を閉じていてもセヴァス、こっちが何かを言ってもいつの間にかセヴァス、出てくるのは彼の名前ばかり。帰る時にはもう、セヴァスの名前しか頭に残っていなかった。そして同時に一夏達は、このセヴァス…もとい、セイスに対して興味を抱いた。マドカにあそこまで言わせるからには、今まで彼女にとって一番の心の支えとなっていた事と、大切な存在だと言うのは間違いないだろう。だが、やはり直接会ってみないことには分からない。なので対面する機会を人知れず待っていた訳なのだが、一応織斑家の一員であるマドカと違い、組織の壊滅と同時に後ろ盾が無くなったセイスは彼女よりも監視の目が厳しく、まともな面会も禁じられており、千冬もマドカの織斑家入りの手続きが忙しいため、マドカと一緒に身柄を拘束された直後の事務的な取り調べ以来会ってないらしい。因みに、その時のセイスは千冬に対しマドカの安否を尋ね、彼女の無事を知った途端に蓄積した疲労が限界を迎えて意識を手放してしまったので、会話らしい会話もしていない。
故に今回、楯無が企画したこれは一夏にまさに良い機会であったのだが、それがどうして今の自分は簀巻きにされ、冷たい床に転がされるような羽目になっているのだろうか。
「まぁ良いや、直接痛い目に遭わないだけいつもよりマシか…」
「俺が言うのも何だが、縄で拘束されてんのがマシって言えちゃう辺り、碌な日常送れてないなオメェ…」
「そう思うなら変わってくれ」
「嫌なこった。あんな乙女(笑)共の相手なんざ、今回だけで充分だ」
カラカラと笑いながらそう言いつつも、何だかんだで一夏の縄を解き始めたセイス。今更ながらこの男、現在進行形で箒達に総出で追い回されているんだった。諸々の事情でISは使ってないのだろうが、あの専用機持ち達の猛攻に曝されて未だに無事でいられる辺り、何度も楯無とやり合ったと言う話は本当なのかもしれない。仮に今回の鬼ごっこで逃げる側が自分だった場合、とっくに捕まっていることだろう。て言うか、鬼側に楯無とラウラが居る時点で無理だ。
なんてことを考えていた一夏だったが、いつの間にか縄を解き終えたセイスが自分に対して頭を下げていたことに気付いた。思わず戸惑う一夏だったが、セイスはそれに構わず口を開く。
「まずは、マドカを織斑家に受け入れてくれたこと、感謝する。本当にありがとう」
言うや否や顔を上げ、これまでのことを思い出すかのように、彼はポツポツと語り出す。
「育ちと環境のせいもあるが、アイツは性格悪いし、食い意地も張って人の財布の中身を容赦無く減らしてくる。しかも基本的に我儘な癖して、肝心なところで素直になりきれない面倒な奴だ。何より、一度意識したものに対する執着心は半端じゃないぞ。人の食料だろうが相手の命だろうが、アイツに一度でも執着したものを諦めさせるには何かと苦労するぜ。いや改めて、世話が焼けるったらありゃしないぜ、全く…」
苦笑交じりに、そして皮肉気に次々と並べられていくマドカに対する不満の言葉の数々。だけど心なしか一夏には、この言葉の数々が彼女に対するただの文句のようには思えなかった。何故なら、目の前のマドカのことを語るセイスの表情と、面会時にセイスのことを語っていたマドカの表情が殆ど同じなのだ。まるで、弟のことを誰かに語る姉…一夏のことを誰かに語る時に、千冬が浮かべた表情のようで……
「だけど、それでも、そんなアイツでも、誰かを救うことがあるんだ。アイツの在り方に、救われる奴が居るんだ…」
あの時彼女は…マドカは言っていた、相手が女子供だろうが容赦なくぶん殴ってくる最低な奴が居ると。ちょっとした悪戯に、本気で仕返しをしてくる大人気ない奴が居ると。大胆不敵な仕事振りを見せる癖に、時たま女々しくウジウジ悩んでいる時があって、ちょっと普通の人間とは違う身体を持っているそいつは、それを良い事に無茶ばっかりして、こっちの気持ちなんてお構いなしに何度も死に掛けるし、酷い時は勝手に命を捧げていた時さえあった大馬鹿野郎。だけどそいつは、こんなロクデナシにも等しい生き方をしてきた自分を最後まで見捨てなかった、最後まで約束を守り続けてくれた。そいつが居たから、今の自分があるんだと、彼女はそう言っていた。
相手に対する不満さえも大切そうに、愛おしそうに語る、目の前のセイスが浮かべる表情と同じ顔で。
「アイツの本当の家族に、俺なんかがこんなこと言って良いのか分からないけど、これからアイツのことを…マドカのことを、よろしく頼みます」
そう言って再び頭を下げるセイスを見て、一夏は改めて理解する。目の前に居る自分とほぼ年の変わらない少年は、マドカと言う存在を心から大切に想っていることを。今まで自分と姉が隣に居なかった間、彼がずっとマドカの心の拠り所になり続けていたことを。その身を挺して、彼がマドカを守り続けていたことを。根拠も何も無いけれど何故か、一夏には確信を持つ事が出来た。だからこそ、娘を男に譲る時の父親みたいだなんて茶々は入れずに、彼は真面目に答える。
「マドカは俺達の家族だ、当然だよ」
「……重ね重ね、感謝する…」
まだ互いに顔を直接合わせたのは今回が初だし、今後セイスの処遇がどうなるかまだ分からない。だけど、彼とは上手くやっていけそうな気がする。何となく、二人は心の中でそう思った、その時…
「見つけたぁ!!」
「鈴!?」
「ゲッ、もう来やがった…」
良く響く声と共に勢いよく部屋のドアが開け放たれ、荒ぶるチャイナガールが現れた。おまけに良く見ると背後には竹刀を持ったポニーテールや、ナイフを池ボチャ銀髪少女も見える。入り口が狭くて見えないが、気配から察するにセシリアとシャルロットも居るのだろう…
「もう逃がさないわよアンタ、覚悟しなさい!!」
「分かった、もう逃げない」
「逃げようたってそうはいかな……へ…?」
セイスノ予想外の返事には、咄嗟に間抜けな声を出した鈴は愚か、後ろの箒とラウラ、更にはセイスの隣に居た一夏でさえ戸惑いの色を見せた。しかしセイスは煮るなり焼くなりと言わんばかりに、大人しく彼女らの前に進み出て大人しく正座し始める始末。直前まで逃げ続けていた奴とは思えない態度に、鈴は思わず疑いの視線を向けた。
「どういうつもり?」
「いや痛い目に遭いたくなくて反射的に逃げちまったが、やっぱり任務とは言え自業自得な面もあるから、どんな形であれ、いっそこの場で清算しといた方が良いかと思って……思い残すことも無くなったし…」
「いや、何でもうすぐ死ぬみたいなこと言ってるのよ…」
「鈴、お前さっき『良し、殺そう』って言ってたよな?」
「うぐッ…あ、あくまでアレは比喩表現みたいなもんよ!!」
とは言え、セイスにとって今の言葉は割と本音である。自分はいつアメリカ政府に身柄を引き渡されるか分からない立場故に、唐突にこの学園の施設から居なくなるかもしれない。その場の流れで思わず逃げたが、残りの期間を後腐れなく過ごす為には、やはりこれが最善の選択なのかもしれない。マドカが元気で居ることは楯無から聞いていたので、後は織斑家に彼女の事を自分自身で頼みに行っておきたかったのだが、一応はそれも済んだ。セイスとしては、どうせならこの学園で行った罪の数々(主に盗撮の件)に対する清算もしておきたいのである。
そして実を言うと、鈴達もそろそろ頭が冷えてきたところで、もう最初ほど怒ってはいなかった。何度も言うが、恋する乙女の日常を覗くなんて万死に値する。しかし約一名怪しいのがいるが、本気で彼を殺そうとは誰も思っていない。むしろ、その彼の仕事の過程で一夏を、想い人の命を何度か守って貰っていた事実を楯無から聞かされており、少しだけ感謝している部分もある。尤も、逆に命を狙ったこともあるそうだが全て未遂に終わり、狙った時より守った時の方が圧倒的に多いらしいので、そこは許すとしよう。走り疲れて幾分冷静になり、その事を思い出した彼女らの怒りはかなり静まり、正負の感情プラスマイナスの結果、平手一発で手打ちにしてやろうかな位には思っていた。そんな時に、このセイスの言葉が出てきた訳なのだが…
「まぁとにかくだ、もう好きにしてくれ。ただ、あわよくば今回の制裁で今までのことは水に流し…」
せーいーすーくーん、あの時みたいに串刺しにしてあげるから出ておいでー♪
「ごめん前言撤回、やっぱまだ死にたくないッ!!」
「あ、ちょ!?」
「うおい、窓を突き破るな!!」
「と言うか待て、ここ何階だと思って…!!」
「って、普通に着地した上にそのまま走り出してる!?」
「何と言う身のこなし……先程の私との攻防と言い、やはりプロだな…」
「言ってる場合ですの!?」
どこからともなく聴こえてきた、水色生徒会長の声により全て台無しになった。
「セイス君はここかぁ!?」
「楯無さん、目が血走っていて怖いです…」
◇◆◇◆◇◆◇
―――10分後
「さぁ、もう逃がさないわよ、セイス君!!」
「そのセリフは、もう、聞き飽きた、ぞ…」
あの後、トラップの発動を含めた数回の攻防を経て、セイス達は第三アリーナに辿り着き、その中央で睨み合っていた。既にセイスは疲れ切っているのか息も絶え絶えで、楯無もセイスの反撃とトラップによって更にボロボロである。
「オイどうするんだ、あの二人…」
「私に言われても困りますわ」
「一夏、あんた止めて来なさいよ」
「無茶言うな」
箒達はもう既にセイスをどうこうする気が失せてしまってはいたのだが、セイスと楯無を放っておく気にもなれず、取り敢えず先程合流した一夏を連れて二人を追いかけてきた。しかし、追いかけたのは良いものの、直前まで自分達が行ったセイスとの攻防に加え、一夏の部屋から第三アリーナに向かうまでの短時間に行われた二人の追跡劇を見た後となっては、二人を止められる自信は欠片も残っていないかった。今もこうして何度目か分からない、芸人よろしく生贄役の押し付け合いが繰り広げられる程である。しかも…
「ちょっと待て楯無テメェ、何さり気無くIS起動させてやがる!?」
「もう卒業なんてどうでも良いわ、勝てば良かろうなのよーーーーッ!!」
「この野郎、そっちがその気なら……来い、十兵衛ッ…!!」
楯無が留年覚悟でミステリアス・レイディを展開するや否や、空から舞い降りる黒い影。言うまでも無く、巨大ゴキロボの十兵衛である。さっき直接襲われる羽目になった鈴、そして基本的にゴキブリが生理的に受け付けないセシリアとシャルロットがビクリと身体を震わせたが数秒後、もっと恐ろしい光景を目撃する事になった。
「あら、私も甘く見られたものね。この私が昆虫如きにビビるとでも…」
「幽霊は漏らすくらい苦手なのにな」
「うるさいわよッ、て言うか怖いのはアレだけよ!!」
「だろうな。だから、こうする」
その瞬間、何を思ったのかセイスは十兵衛を蹴りつけた。すると十兵衛は、なにやら微妙に大きくて黒いカプセル状の物体を吐き出す。そしてその黒いカプセルは、見た目に似合わないポンッと言う音を出しながら…
―――100匹近い、小型ゴキブリロボットを一斉に吐き出した
「え、ちょ、待ッきゃあああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!?」
「ふははははッ!! ゴキロボシリーズの最終形態である勘九郎、その勘九郎を大量に搭載し、同時に運搬することを目的に開発されたのが十兵衛ッ!! かつて、オランジュ達の悪ふざけから生まれたゴキロボシリーズ、なんか思いのほか便利で装備として正式採用された上に、ここまで進化したぞ!! やっぱり亡国機業の科学力は世界二位いいいぃぃぃぃ!!」
「一位じゃないんだ…」
「一位はホラ、篠ノ之博士が居るから…」
「て言うか、あの奇妙なハイテンション、もしかして彼疲れてますの?」
「いや、そりゃ疲れるだろ」
百近いゴキに一斉に襲われ、一気に余裕が無くなった楯無。虫如き平気みたいなことを言っていた彼女だったが、あの数ではそれ以前の問題らしく、あっという間にパニック状態に陥っていた。ただ、そのせいで周りを闇雲に攻撃し始め、その流れ弾が幾つかセイスを襲い始めた。このままでは、離れた場所で見守っていた一夏達も被害が飛び火しそうな勢いで、流石にもう怖いから手を出せないとか言ってられなくなってきた。何より、一生徒として、この状況を見過ごす訳にはいかない。
「仕方ない、こうなったら僕が!!」
「待てシャルロット、ここは軍人である私が行く」
「お待ちになって、こう言う時こそ、このセシリア・オルコットの出番でしてよ!!」
「格好つけてるんじゃないわよアンタら、私が行くわ」
「待て鈴、ここは私が!!」
「え………じゃあ、俺が…」
「「「「「どうぞどうぞ」」」」」
「言うと思ったよ、てか言ってる場合じゃないだろッ!!」
「じゃあ、私が行く」
「え゛?」
止めなきゃいけないと分かっていても、あの修羅場に足を踏み込む勇気が出ない。そんな一夏達6人を尻目に、スタスタとセイス達の元に歩み寄っていく一つの影。その影の正体は楯無と同じ水色の髪に赤い瞳、そして眼鏡、全員が敢えて口には出さなかったものの、今どこに居るんだろうと地味に気にしていた専用機持ちの一人、更識簪その人である。誰もが無謀と思ったその行為を、一夏が咄嗟に伸ばした制止の手に空を切らせ、彼女は悠々とした足取りで近付いていく。そして、ゴキブリと弾丸が飛び交う奇妙な戦場の目と鼻の先にまで近づいたところで、何を思ったのかジ○ジョ立ちを決めた。
「本音」
「はいは~い♪」
―――決着は1秒掛からなかった…
◇◆◇◆◇◆◇
簪(と言うより本音と明日斗)の手により、一瞬で制圧された二人。幸い、アリーナに大きな被害は出ておらず、怪我人もセイスと楯無だけで、一般の生徒に負傷者は居なかった。とは言え騒ぎの切っ掛けを作った上にISを起動した楯無は、騒ぎを聞きつけて駆けつけてきた千冬によって即座に捕まり、生徒指導室にドナドナされた。間の悪い事に『卒業なんて~』の部分をバッチリ聞かれてしまい、その辺の言い訳を必死に考える姿は日頃の常に余裕のある態度が微塵も見られず、一夏達をなんとも言えない複雑な気分にさせたが、千冬が去り際に残した『このバカの始末が終わったら、次はお前らだ。あと特にセイス、お前にはじっくりと話を聞かせて貰う』という言葉により、その場に居る全員に暗い影が落ちたのは、まぁ些細なことだろう。因みに、お菓子と主人のお願いの元、助っ人として呼ばれた学園の裏番長達は寝起きだったらしく、二度寝しに戻って行った。で、肝心のセイスの方はと言うと…
「ねぇ…」
「な、何でしょう簪さん…?」
「私達の画像データがあるってことは、一夏の画像データもあるってこと?」
「「「「「ッ!!」」」」」
「あ、いや、まぁあるけど…」
「それで手打ちにしてあげる」
「オイ待て、なんでそこで俺の画像が取引に…」
「ちょっと黙ってろ一夏」
「男が自分の写真の一枚や百枚で文句言うんじゃ無いわよ」
緊急の金策用に別の場所に隠しておいたデータの引き渡しと…
「それと、もう一つ」
「え?」
「さっきお姉ちゃんに止められた、お漏らしと下着泥の件に関して詳しく」
知られざるお姉ちゃんの所業を洗い浚い吐くことにより、どうにか今までのことは水に流して貰うことが出来た。この賄賂…もとい御詫びの品と、織斑先生の生徒指導を共に乗り越えたことにより、妙な仲間意識が生まれ、それを機に一夏達とセイスの関係は一気に良い方向へと進むのであった。結果的に見て、楯無の企画は自分にとって、本当にありがたいものだったと翌日になって改めて実感し、少なくとも彼女に礼の一つは言っておこうと思うぐらいには感謝していた。
「そう思うなら一発本気で殴らせなさいッ!!」
だがまずは、皆に『E・N』を見て漏らしたこと、そして楯無が一夏の下着を盗んだことがあるってことを暴露した件を謝ろう…
○暫く妹に豚を見るような目で見つめられた楯無さん
○原因を知った直後、セイスのとこに殴り込みに行ったものの、待ち構えていた千冬さんに即座に捕獲された
○後日、一夏に言った内容をマドカに知られ、顔を真っ赤にしたセイス
○同時に、一夏に言った内容をセイスに知られ、顔を真っ赤にするマドカ
○最終的に、二人の中で例の会話は無かったことにされた
次回クリスマス特別企画、『アナザートライアングル・メリー修羅場マス編~雨のち青宝石~』、お楽しみに。