アイ潜IF外伝   作:四季の歓喜

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どうも皆様、遅ればせながら新年おめでとう御座います。

年内にAT編終わらせるつもりが、今日まで時間取れず気付いたらこんな時期に;
て言うか去年更新した話数を改めて数えたら、滅茶苦茶少なかった。今年はもうちょい多く、そして早いペースで更新出来るように頑張りたいです…

何はともあれ、今年もよろしくお願いします。


IF未来 アナザートライアングル編 中編

 

 

「うわああああぁぁん先輩のバカああああああぁぁぁッ!!」

 最後にそう叫んで、フォルテは懺悔室から飛び出すように出ていった。懺悔らしい懺悔もせず、とんでもない爆弾発言を残して行った彼女に本来なら文句の一つでも言ったところでバチは当たらないと思うが、話を聞かされた本人は驚いた拍子に椅子から転げ落ちてしまい、内容が内容だった為に思考ごと身体がフリーズしてまともな受け答えも出来ず、勢いのまま逃げる様に去る彼女を見送る(壁越しなので見えないが…)ことしか出来なかった。

「……なんか、とんでもないこと知っちゃったなぁ…」

 教会から人の気配が無くなり、再び静寂がその場を支配したところで、漸く彼は我に返ることが出来た。明らかに聞いたら不味い内容だったが、元々懺悔室とはそう言うところ。見ず知らずの他人が人には言えない罪や過ちを壁越しの神父、もしくは神に告白する場所だ、もう割り切るしかない。まぁ尤も、自分は神でも無ければ神父でも無いし、さっきの彼女とは赤の他人と言うほど無関係な間柄でも無いのだが…

「っと、次の客か…」

 再び聴こえてきた、教会の扉が開かれる音と懺悔室に向かってくる足音。ただ心なしか、先程の真っ直ぐな足取りだったフォルテのものと違い、今度の足音はやけに不安定なリズムを刻んでいた。まるで酔っ払いの千鳥足のようにアッチへフラフラ、こっちにフラフラ、しまいには何かに躓いて転ぶ音まで聴こえてくる始末。

 聴くからに足取りの覚束ない、まだ見ぬ来客のことが微妙に心配になってきたが、教会の扉が開かれてからキッカリ2分後、とうとうそいつは懺悔室に入ってきた。あのヘロヘロの足音から察していたが案の定、かなり酒が入っているようで、そいつが入ってきた途端にアルコールの臭いが狭い懺悔室に充満してしまった。壁越しにも漂ってくるその臭いに、思わず彼は眉間に皺を寄せた。同時に相手がここを教会と認識せずに入ってきた、ただの酔っ払いだった場合、有無を言わせずここから摘み出すことを決意した。

「マスター、いつもの一本…」

 そして、聴こえてきたのは、またもや若い女性の声。しかし先程のフォルテとは違い、こちらの方が幾分ハスキーで大人びた印象を感じる。おまけに、明らかに女性の声なのだが、随分と男勝りな…いや、男前な雰囲気が壁の向こうから漂ってきている。だがやはり相当酔っ払っているのか、ここを教会ではなく自分の行きつけのバーか何かと勘違いしているようだ。全くもって、いい迷惑である。ところが…

「……今、変な音が聴こえたんだけど…?」

「いや、ちょっと転んで頭を打ち付けただけです…」

 意外な事に、彼は動かなかった。正確に言うなれば、動けなかった。やたら聞き覚えのある声と、神掛かったタイミングの悪さに思わず床に突っ伏してしまい、頭を抱える他無かったのである。これは神の悪戯なのか試練なのか、はたまた誰かの手による悪質なドッキリなのか。どちらにせよ、元凶に会えたとしたら、割と本気でぶん殴ろうと、彼は心に誓った。

「なぁマスター、ちょっと愚痴聞いてくれないか?」

「あぁもう、どうにもなーれ……私で良ければ、お伺いしましょう…」

本音を言うと、この酔っ払いが何を愚痴るのか気になった点も強い。それも、先程のフォルテの話を聞いた直後では尚更である。

「最近までさぁ、スコールおばさんからの命令で長期の仕事やってたんだけどさぁ…」

 スコールの秘蔵っ子として、IS学園で暗躍していたダリル改めレイン。京都での出来事を期にスコールの元へ戻り、今は再び直轄の部下として働いている。諸事情によりフォレスト派の連中とは今まで殆ど面識が無いに等しい状態だったが、元々の彼女の性格もあって彼らとはそれなりに上手くやっているとのことだ。最近はフォルテを連れながら、オランジュやバンビーノ達と飲み会に行くこともあるとか。

「本気で面倒くさかったけど、終わったらその分たっぷり休暇くれるって言うから頑張ったよ。超頑張って、そのクソ長い仕事を昨日の夜にやっと終わらせたんだよ」

 そんな彼女は先日、スコールからとある任務を与えられた。亡国機業傘下のとある裏組織が最近、どうにもキナ臭い動きを見せている為、その実態を探って来いと言うもので、ダリル・ケイシーとしての潜入任務が終わったばかりのレインにとっては非常に遠慮したい内容であった。最初は渋ったものの、これ以上フォレストに借りを作りたくないスコールも必死で中々諦めてくれず、最終的に報酬として長期休暇を貰う事で妥協した。余程フォレストに頼むのが嫌だったのか、その時スコールがレインに土下座までしたのは、彼女の名誉と誇りの為にも秘密である。

「これでやっと、フォルテとの二人の時間が取れると思った訳さ。待ちに待った休暇の為に、今までの疲れを取るために昼までグッスリ眠った訳さ…」

 予想通り、任務はそれなりに長くなった。しかも勝手に許可が出ると思っていたフォルテの同行は、貴重なIS保持者を二人も出すような仕事でもないと言うことで却下されてしまい、レインのモチベーションは最底辺まで急降下。代わりに寄越されたサポート役に理不尽な八つ当たりをしてみたが、その程度では少しも気分は晴れない。定期的にアジトへ、そしてフォルテの元へと一時的に戻ることは出来たが、ゆっくりする時間なんて殆ど無く、同時に誰かと会話する暇も無かったので、何の慰めにもならない。

 とは言え、これでも自分は人生の半分以上をこの道で生きている。受けてしまったからには、途中で仕事を投げ出すなんて真似は絶対にしない。それに、この仕事が終われば長期休暇が貰えるし、休暇中は絶対に仕事を回さないと言う言質もとった。終わりさえすれば、全てが報われる、楽しい楽しいフォルテと二人っきりの時間が待っている。そう思えば、このクソ面倒くさい任務もどうにか頑張る事が出来た。

 そして今日、対象が亡国機業を裏切ろうとしていた証拠を手に入れ、その落とし前を付けさせ、スコールに任務完了の承認と、約束の長期休暇を受け取ったのだ。スコールとサポート役のアイツに対しての挨拶もそこそこに、レインはスキップまでしそうな軽い足取りでフォルテの元へと向かったのである。ところが…

「なんでそのフォルテに、出会い頭に『先輩の浮気者、そしてゴメンなさいいぃぃ!!』って言われた挙げ句、逃げられる羽目になってんだ!?」

「えええぇぇ…」

 久々に面と向かい合った恋人が投げかけたのは、明確な拒絶。レインは何が起きたのか分からず、衝撃で思考が完全にフリーズしてしまい、逃げ去るようにその場から離れていくフォルテの背に手を伸ばすことはおろか、声を投げ掛けることも出来なかった。我に返った頃は既に時遅く、完全に行方を眩まされた後であった。どうにか探そうとしたものの、向こうも本気で逃げ隠れしているようで、昼頃に探し始めたにも関わらず、深夜になった今も見つけることが出来ずにいた。

「浮気者ってどう言うことだよぉ、オレがいつフォルテ以外の女とそんな関係になったって言うんだよぉ…て言うかゴメンなさいって何に対して謝ってるんだよぉ、もう本気で分からねぇよぉ……」

「あれ、仕事中に浮気した訳じゃないの?」

 思わずと言った感じで呟いた途端、数発の発砲音と同時に鉛玉が壁を突き破って飛んできた。彼はその場から飛び退き紙一重で避けきったが、仕切りと背後の壁には無数の弾痕が出来上がってしまった。しかし、それやった張本人はそんなこと知ったこっちゃ無いようで…

「オレが、フォルテ以外の女に、手ぇ出す訳無いだろがッ!!」

「し、仕事で潜入先の男相手にハニトラとか…」

「ちょっと色仕掛けみたいなことはしたが、キスすらしてねぇよ!! しかも今回の潜入先の連中、今は一人残らず永眠中だ馬鹿野郎ッ!!」

 そこまで聞いて、彼はオヤ?と思った。最近レインが殆ど相手してくれなかったと言うのは、フォルテの言う通りなのだろうが、壁越しの彼女の様子から察するに、原因は本当にスコールからの仕事のせいであって、断じて他の男に現を抜かしていた訳では無さそうだ。となると、フォルテは全く持って関係ない奴を寝取る…と言うか、単に性的に襲ったことになってしまうのだが、彼女は一体誰をレインの浮気相手と勘違いしてしまったのだろうか。

「あぁもう、どうしてこうなるんだよッ!! 私か、私が何かしたってのか、えぇオイ!?」

「お、おい落ち着け。壁で見えないが、恐らく持っているであろう、その物騒なモノを仕舞え」

 だが取りあえず今は、この酔っ払いが勢いに任せ、無差別に銃を乱射しないことを祈るばかりだ。一発か二発なら、馬鹿な若者が爆竹や花火で遊んでるとでも思われるかもしれないが、そう何度も銃声を響かせられたら近所に通報されかねない。

「へッ、こんなチンケな代物、アイツの持ってるモノと比べたら大し、たこ、と…」

「……どした…?」

 何やら下ネタ紛いな台詞が聴こえたと思ったら、急にレインの言葉が小さくなった。だが完全に黙った訳では無いようで、微妙にブツブツと何かを呟いている。怪訝に思い、壁に耳を当てて声を拾ってみることにしたのだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……違うんだ、アレは違うんだ浮気じゃ無いんだ…拒絶されてショックだった上に肝心のフォルテが見つかんなくて、自棄酒に溺れたところにアイツが現れて妙に優しくしてくれるからその場の雰囲気に流されたと言うか酒に呑まれたせいで正常な判断が出来なかったんだて言うかどの道オレは仕事中は他の女はおろか男にも手は出してないし出されても無いんだよさり気無く既に童貞卒業してたアイツと違ってさっきまで実質処女だったんだよマジで信じてくれぇ…」

 

 

 

---なんかもう、本当に聞いちゃいけないことばかり聞いてしまった…

 

「そもそもオレが、そうよこの私がアイツなんかと一緒にやる訳無いじゃない。きっと飲み過ぎたせいで碌でも無い夢を見たに決まって…」

 

 キャラも口調も壊し、薄っすらと残っていた記憶から目を逸らし、現実逃避を試みるレイン嬢。しかし、現実とは非情で無情なものであり、その程度で逃げ切ることなんて出来る筈も無い。それを示すかのように、拳銃を仕舞った表紙に彼女の懐から落ちてきた一枚の紙切れ。思わず拾い、そこに書かれた三つの言葉を読んでしまった彼女は、一瞬で絶望の底へと叩き落された。

 

 

 

・今日の日付・

 

・領収書・

 

・ラブホテル・

 

 

 

---銃声よりも遥かに大きな絶叫が轟いた…

 

 




○昨夜にレインが帰還、疲れたので即就寝
○朝になっても起きないレイン、フォルテの堪忍袋が切れる
○午前中、フォルテがとある男をレインの浮気相手と勘違いして襲う
○昼頃、起床してスコールに報告を終えたレインがフォルテから拒絶&謝罪される
○フォルテ逃走、レインは追跡するも見つけられず
○夜頃、打ちひしがれて酒場に入店、自棄酒
○顔見知りなアイツとやっちゃった訳で…
○再び自棄酒で現実逃避しながら彷徨い、フォルテと時間差で教会に←今ここ

新年最初の話がこんな内容で申し訳無い;
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