アイ潜IF外伝   作:四季の歓喜

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すいません、諸事情により8月は全然執筆ができませんでした…;

取り敢えず、書き上がった分だけでも投稿しておきます。


プロジェクト・DU その2

 

『御来場の皆様、ようこそドルピーク島へ。どうぞ本日は、素晴らしい時間をお過ごし下さいませ!!』

 

 そこは最早、レジャー施設なんて言葉で収まるような代物では無かった。

 最初に衝撃を受けるのは、その大きさだろう。並の遊園地は当然のこと、これまで人工島最大を誇っていたIS学園を軽く凌いでおり、大き過ぎて衛星写真にもくっきりと写るほどである。

 次に目につくのは、人工島であることを忘れさせるほどに豊かな自然と、島を囲む綺麗な海だ。最新技術の粋を集めて作られた緑は、スタッフと来園者の自給自足すら可能にする豊かな自然を生み出すことに成功し、周辺の海水は南国を思わせる程に透き通った青。最近では遠洋から回遊魚や渡り鳥、時にはクジラまで出没することがある程だとか。

 そして最後に注目を集めるのは、このドルピーク島の要、島の各地に点在するレジャー施設の数々だ。島の大きさに飲み込まれないだけの存在感を見せつける各レジャー施設は、その数も大きさも桁違いである。それぞれが街のように大きく、そして取り扱ってるものは食べ物から遊具まで全て世界最先端のものばかり。にも関わらず、料金は全て庶民にとってもお手頃価格と言うから信じられない。

 まさに夢の国、いや夢の島、楽園である。

 

「着きましたね」

「えぇ、そうね」

 

 そんな楽園の正面玄関とも言える中央エントランスに、弾と虚の二人は居た。庶民の弾は勿論の事、実家のお陰でセレブチックな場所へ行き慣れている筈の虚も、溢れ返る人の多さと、島の全貌に圧倒されて思わず立ち尽くしてしまったようだ。

 

「ところで本当に良かったんですか、ドルピーク島にまで来て朝ご飯が俺の作ってきた弁当なんかで?」

「良いの、私、弾君の作るご飯好きだから」

「ど、どうも…」

 

 朝の六時に専用のフェリー乗り場で待ち合わせして、そのまま一時間掛けてドルピーク島へ。早朝にも関わらず港もフェリーも人でごった返しており、ドルピーク島の人気っぷりが良く分かった。フェリーの中には食堂もあったのだが、あの混雑っぷりではゆっくり朝食なんてとれなかったことだろう。ドルピーク島自体は飲食物の園内持ち込みを禁止しているが、幸いなことにフェリーまでなら持ち込みは可能だったので、弾が家を出る前に作ってきた弁当で二人は朝食を済ませたのである。

 因みに二人は全く気付いていなかったが、二人が弁当を美味しそうに、そして仲睦まじく食べてる姿を見た他の客達は、非常に羨ましそうな視線を向けていたことをここに記しておく。

 

「それに、他の人達が朝食とってる今なら、どこのエリアも空いてるでしょう?」

「なるほど。じゃあ折角ですし、本来一番混みそうな遊園地エリアとか行っちゃいます?」

「ふふっ、行っちゃおうか」

 

 この島にはホテルもあり、泊まり込みで過ごす利用者も多い。なのでこの時間帯だと、まだ起床したばかり、もしくは朝食をとりにレストランや島内の屋台を巡る人が殆どで、日中は最も混雑する遊園地や水族館、海水浴エリアなども比較的空いているのだ。

 

「えっと、それじゃあ…」

 

 取り敢えず最初の目的地は決まり、早速移動しようかと思ったその時、虚に向かってそっと差し出されたのは、弾の手。

 

「今回も、は、はぐれないように、手を…」

 

 付き合い始めてそれなりに経ったにも関わらず、未だに緊張と照れ臭さで顔が赤い。その自身の赤毛並に赤くなった弾の顔と、彼が差し出した手を交互に見やった虚は苦笑を浮かべ、そして…

 

「エスコート、よろしくね」

「……はい…」

 

 そっと握り返してくれたその手は、相変わらず柔らかくて、とても優しかった。 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

「かー、初々しいわねぇ二人とも。て言うか何なの虚ちゃん、完全に女の顔じゃない。一応自分の方が年上だからって平静装ってるけど、あれ絶対に内心では動揺しまくってて心拍数どエライことになってるわよ。その証拠にほら見て、虚ちゃんの耳、すっごい真っ赤」

「……あの、楯無さん…」

 

 さて、弾と虚が本格的にデート開始した一方こちら、エントランスの隅っこ。

 

「それにしても…五反田弾君だっけ。話には聞いてたけど、見た目に関しては、まぁ悪く無いわね。流石は一夏君の親友やってるだけのことはあるってとこかしら」

「楯無さん…」

 

 物陰に隠れながら、随分と初々しい姿を見せるカップルを見つめる、一組の男女が居た。

 

「けれど幾ら見た目が良くても、それだけじゃあ認めることは出来ないわ。今回のデートで、五反田弾君が本当にうちの虚ちゃんに相応しい男なのかどうか、この更識楯無が見極めてあげるわ!!」

「刀奈さん」

「なーに、一夏君?」

 

 その正体は言うまでも無く、ロシア国家代表にしてIS学園生徒会長、更識楯無…もとい、更識刀奈。そして、世界最強織斑千冬の弟にして世界唯一のIS男性適合者、織斑一夏である。

 

「言いたい事はたくさんありますが、取り敢えず最初にこれ言わせて下さい。こんなとこまで来て、何してるんですか?」

「だから言ってるじゃない、一夏君の親友が私の大切な虚ちゃんに相応しい男なのかどうか見定めるのよ」

「そう言う意味じゃありません。て言うか、なんで俺まで…」

「あら、お姉さんと二人きりでのデートは嫌?」

「デートって言うかコレ、最早ストーカーじゃ…」

 

 今日は日曜日、IS学園も休校日。今日はゆっくりしようと思って二度寝しようとした矢先、扉をこじ開けてきた刀奈に半ば拉致られるように連れ出され、訳も分からぬ間に外出の仕度をさせられ、仕度が終わったら終わったでISを展開するよう強要され、そのままついてくるようにと言われ空を飛ぶこと数十分、気付いたら噂の楽園に来ていた。そして、その元凶と一緒に親友のデートを盗み見していた。

 そう言えば先日、電話で雑談してた時に弾が虚とデートに行くとか言ってた気がする。流石に、具体的な内容や日程までは聞かなかったが、まさか今話題のドルピーク島とは思わなかった。

 実を言うと、結構前からIS学園の生徒の間でも話題になっていたので、それなりに興味はあった。まずセシリアでさえチケットを入手できなかったと聞いた時点で凄ぇと思い、その後クラスメイトからちょくちょく話を聞いて更に凄ぇと思い、ネットでちょろっと調べてみて更に更に凄ぇと思った。そしていつの間にか、いつか一度は行ってみたいと思うくらいにはドルピーク島に興味を持っていた。

 

「それがまさか、こんな形で足を運ぶことになるなんて…」

「良いじゃない、どんな形だって遊びに来れたことに変わりないんだから。はい、一夏君の分のチケット」

 

 手渡されたのは、更識のコネと刀奈本人の伝手をフル動員して入手してきたプレミアムチケット。因みに弾がセイスに貰ったのと、虚がこの日の為に手配して貰ったもの、そしてセシリアが入手できなかったものと同一のものである。

 

「それに一夏君だって五反田君が上手くやれるのかどうか、気になるんじゃない?」

「それは、否定しませんけど…」

「でしょう? だからコレはれっきとした善意、決して野次馬根性丸出しの嫌がらせとか、碌に恋路が進展しない主を差し置いて幸せ気分ルンルンな従者が羨ましいとか、人の従者誑し込んだ馬の骨に対する恨みとかの類では無いのよ」

 

 言葉の割におもっくそ私情を挿んでいるみたいだが、何を言ったところで聞きゃしないだろう。そう思った一夏が深い溜め息を吐く傍ら、当の刀奈は再び弾と虚に視線を向け、スッと目を細めた。

 

(万が一、例のタレ込みが本当だったらって言う懸念もあるんだけどね)

 

 何の前触れも無く掛かって来た、謎の電話。早い話が匿名によるタレ込みだったのだが、内容には色々と問題があり、情報の信憑性も重要度も中途半端なものであった。結局、ガセネタであることを前提にして、念の為に情報の真偽を確認することになり、更識家が出るまでも無いと判断され、布仏家の一員である虚に回された訳なのだが、いつの間にか日帰りデートツアーに変わっていた。恐らく、危険度がほぼ皆無と想定されているが故に、デートを楽しみながら片手間で仕事をこなすつもりなのだろう。

 ぶっちゃけると、常に誠心誠意、真面目に尽くしてくれて、公私共に支えてくれる彼女のことを思えば、日頃の感謝も込めてこのくらいは目を瞑っても良いかなと思う。そもそも、あの程度で何か言うと尽く自分にブーメランが突き刺さるので、最初から自分に虚を批難する資格は無い。だから虚には、この滅多に機会が無い休日デートを楽しんで貰いたいというのは一応、本心である。

 故に尚更、例の案件は放置できない。多分、情報の通りだったとしても虚の実力なら問題ないと思うが、どうせなら最後まで普通にデートを楽しんで貰いたいので、ここは主人として一肌脱ぐとしよう。

 

「っと、二人が移動するわ。行くわよ、一夏君」

「あぁもう、分かりましたよ。行けば良いんでしょ、行けば…」

 

 そして虚ちゃんの彼氏君を観察しながら、こっちはこっちでデート楽しもっと♪

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「面倒くさいのも来ちまったな…」

「生徒会の仕事で手一杯の筈じゃなかったのか?」

「のほほんさんに全部押し付けた挙句、学園には更識の任務でゴリ押したらしい。ま、取り敢えず五反田と布仏姉共々、このまま予定通りに見守るとするか」

「仕方ないか……まぁそれはさて置き、セヴァス…」

「どうせ腹が減ったんだろ、ホレ、さっきそこの屋台で買ったゲバブ」

「わーい」




○のほほんさん、現在IS学園にて奮闘中
○ラヴァーズ、現在IS学園にて憤激中
○ただし簪は除く
○これを書き上げる一週間前に、弾が当日にチケット紛失する夢を見た四季の歓喜

こんだけ待たせといてなんですが、本格的なデート回は次回から。本当に申し訳ない…

そして、まだ先の話になりますが、DU編書き終わったら、今年のクリスマス特別編を準備がてらボチボチ書き始めようかなと思ってます。

『世界を超えたクリスマス狂想曲~ルナちゃん・イン・ライスフラワータウン(仮)~』

お楽しみに…
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