アイ潜IF外伝   作:四季の歓喜

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かつて、なろうで投稿した仮最終話です。順番的には学園編の前が良かった気がしたんで、敢えての挿入投稿です。

本編の最終話はどんな風にしようかな…


試作最終話 くだらなくも素晴らしきこの日々よ

 

 

初めてアイツと出会った時、アイツは俺にこう言った…

 

 

 

―――誰のものでもなく、誰を連想させるわけでもない、“自分自身”を持っているお前が羨ましい…

 

 

 

 だけど、俺は逆にアイツの事が羨ましかった。だからこう返した…

 

 

 

―――誰かとの切れぬ縁を、歪で固い絆を…“生きる理由”を持つお前が羨ましい…

 

 

 

 俺が心から欲した物をアイツは持っていて、アイツが望んだ物を俺が持っていて…そのくせして互いにそれを疎ましく思っていて。何だか馬鹿馬鹿しくて、何が可笑しいのか分からないけど、何時の間にか二人で同時に笑っていた…。

 

 

 それからだ…アイツと一緒に居るようになったのは……

 

 

 二人で喧嘩して、馬鹿やって、笑って…それに巻き込まれるように、時には巻き込むようにしてどんどん俺の周りに誰かが集まっていった。どんどん俺の周りが騒がしくなっていった…。

 

 

 何時の間にかその事に愛着を感じ、そして気付いた…

 

 

 

―――何だ…最初から全部、俺は持ってたじゃないか……

 

 

 

 知らぬ間に造られ、知らぬ間に捨てられ、知らぬ間に壊されかけ、そして知らぬ間にソイツらは全員死んでいた。俺に縁ある者達は全員、俺に何かを感じさせる前に消えていた。

 

 

 

―――けれど、俺が欲した物は…今の居場所であるココに拾われた時点で既に手に入っていたんだ……。

 

 

 

 口には最後まで出さないけど、キッカケをくれたアイツには心から感謝している。そして、誰に言われるわけでも無く俺は勝手に決意した…。

 

 

 

―――アイツが望んだ物を手に入れるまで、俺は最後までアイツの馬鹿に付き合おうじゃないか… 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう決めた時、不思議な事に俺は……今まで一番欲しかった物を手に入れた気分になったんだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

『おい!!まだ生きてるか!?』

 

 

 

「あぁ、ピンピンしてるよ……それも後数分程度だろうが…」

 

 

 

 もうすぐ夜中だというのに、定期連絡の為に組織の元へ一時帰還していたオランジュからの通信がやけに頭に響く。けれど、俺はオランジュの焦る声を聞き流すようにしながら作業を続けた。

 

 しくじったなぁ、年末だからってちょっと気が抜けてたのかもしれない…。今は冬休み…夏休みの時以上の規模で生徒達が実家に帰っており、この学園の一年間で最も人が少なくなる時期である。

 

 丁度設置しといた仕事道具が動作不良を起こしており、良い機会なので修理をする為に隠し部屋から外に出ることにした。しかし、その瞬間に悪夢が始まったのだ…。

 

 

 

 

『やぁ♪』

 

 

 

『ッ!?』

 

 

 

『やっと尻尾出したわね?……セイス君ッ!!』

 

 

 

 

 まさか部屋を出た瞬間に楯無が居るとは思わなかった。どうやら、ここしばらくの間に俺達が学園に潜入していた事に勘付いていたらしく、隠し通路のありそうな場所に目星をつけて見張ってたらしい。カメラや盗聴器の動作不良も俺を誘き出す罠だったようだ…。

 

 これまでの経験からか手加減する気が全くない楯無は初っ端からISを展開し、いきなり正面から全力で射撃をブチ込んできた。必死になって横に飛び退いて避けたものの、すぐに『ミステリアス・レイディ』の特殊兵装であるナノマシン入りの水が襲いかかってきた。

 

 結局送ってもらった『新型リムーバー』と、自分の腕一本(・・・)をくれてやることにより、隠し部屋へと引き返すことができた。ISを強制解除された瞬間、脳天に一撃喰らわされた楯無は今頃目を回しながらノビてるだろうが、学園の職員がそれに気付くのも時間の問題だ。

 

 

 

 

―――そして、この隠し部屋が知られるのも…

 

 

 

 

「一応、出入り口は全部ロックしたが…ISを引っ張り出されたらアウトだな」

 

 

 

『つーかお前は何してんだ!?早く逃げろって!!』

 

 

 

「……いや、もう無理なんだよ…」

 

 

 

 

 モニターに視線を移すと、残ったカメラ達がこの周辺を完全に封鎖するIS学園の職員たちが映されていた。ちらほらISを展開している者も見える。これでは海に繋がる緊急脱出口も同様だろう…。

 

 

 

 

「学園の奴らは、俺の事を包囲することに専念しているからココに来ないんだ。それが終わったら一気になだれ込んで来るだろうよ…」

 

 

『だからってお前ッ…!!』

 

 

「だから、せめて組織に繋がる痕跡の処分くらいはさせろ」

 

 

 

 

 俺が先程から続けている作業…それは、この部屋にありったけの爆薬を仕掛けることだ。今まで使っていたコンピュータと部屋をまるごと綺麗さっぱり吹き飛ばす程度の威力はあるだろう…。

 

 

 

 

「どう足掻いても逃げれやしねぇよ、これじゃあ…。自慢じゃないが、拷問や尋問に耐えれる自信は無いんだよ。うっかり組織の事を喋っちまうかもしれねぇぞ?」

 

 

『けどよッ…!!』

 

 

 

 

 人に自分が死ぬことを惜しんで貰えるってのは…何だか嬉しいもんだな……。だが、感傷に浸ってる時間はもう無いみたいだ。モニターに映された映像は、既に俺の終わりへのカウントダウンを開始していた…。

 

 

 

 

「……そろそろ時間だ、外の奴らが一斉に通信機で連絡を取り始めやがった…」

 

 

 

『セイスッ!!』

 

 

 

「じゃあな、相棒。皆によろしく頼むぜ…?」

 

 

 

『待て!!お前の遺言なんざ死んでも預からねぇぞ!!おい、聴いてるのか!?』

 

 

 

 言うや否や俺は通信機のスイッチを切ろうと指を動かし…直前で止めた。そういえば、こればっかりは忘れちゃいけないよな?オランジュはこう言ってるが、押し付けてしまえばこっちのもんだ…。

 

 そして、俺は最後にもう一度だけ通信機に語りかけた…。

 

 

 

 

「……オランジュ…」

 

 

 

『何だ!?』 

 

 

 

「アイツに……マドカの奴に伝えといてくれ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ありがとよ、ってな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい!!セイs(ブツッ)………』

 

 

 

「……。」

 

 

 

 

 言い残すこともなくなり、今度こそ通信機のスイッチを切る。これ以上喋っていたら未練がタラタラでこの世を去ることになりかねないし…。

 

 敢えて言うなら…アイツが望んだ物を手に入れるまで、最後までアイツの馬鹿に付き合うと決めたのに、それを果たせなくなることだろう……。

 

 

 

 

 

「さ~て、最後くらい派手にやりますかねぇ…!!」

 

 

 

 

 学園の職員により形成された突入部隊の奴らは、既に楯無が発見した入り口に集っている。リーダー格と思われるISを纏った職員が全員に指示を出しているところを見るに、俺の残り時間は秒単位ぐらいしか無いみたいだ…。

 

 けれど、今から死のうとしているというのに、不思議な事に恐怖も悲しみ感じなかった。何故か俺の胸に渦巻く感情は、随分と暖かいものだった…。 

 

 

 

 

 

「…はは、“完全なるナノマシン製の人造人間”なだけあって狂ってるってか?」

 

 

 

 

 

 

 本当に、最初から最後までイカレタ人生を送ってきたもんだ。わけの分からぬまま造られ、捨てられ、拾われ、育てられ、生きてきた。アイツと出会い、互いを見直そうとしなければ最後まで意味の解らないまま生きて、意味のわからないまま死んでいただろう…

 

 

 

 

 

 

 

―――だからこそ彼女には言いたい…

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとよ、マドカ……お前の御蔭で、悪くない人生だったよ…」 

 

 

 

 

 

 

 自分の歩んできた人生に対して妙な満足感を感じながら、俺はその手に握った起爆装置のスイッチをゆっくりと押した…。

 

 

 

 

 

 

―――『亡国機業』、『フォレスト』チーム所属

 

 

 

 

―――コードネーム『6(セイス)』

 

 

 

 

―――正式名称『Artificial・Life-No.6』

 

 

 

 

―――ニックネーム『セヴァス』(一人しか呼ばんが…)

 

 

 

 

―――大国の闇により造られ、それを上回る暗黒に育てられた化物…

 

 

 

 

―――馬鹿な生まれ方をし、馬鹿な育てられ方をし、馬鹿な生き方をした大馬鹿野郎…

 

 

 

 

―――それが俺、セイス……いや、セヴァスさ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そういう事は私に直接会って言えッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 

 いきなり頭に響いた通信音…思わず起爆スイッチを取り落してしまった。慌ててそれを拾おうとする暇も無く、通信機から語りかけてくる“彼女”は罵声を交えながら言葉を続ける…。

 

 

 

『この大馬鹿がッ!!ガラにも無い真似をッ!!』

 

 

「……あぁ、もう…何で最後に耳にする声がお前なんだよ…?」

 

 

 

 最後の言葉を送りたい相手…そして、最後に耳にしたくない相手……織斑マドカの声が、通信機越しに鳴り響いた。その事に、さっきまでの雰囲気から何までアホらしくなってくる…。

 

 

 

「今更どうこう出来る状況じゃないんだよ…スコールの姉御に文句言われる前にとっとと……」

 

 

『黙れ、そして危ないから少しも動くな』

 

 

「……はい…?」

 

 

 

 何やら気になるセリフを残し、通信は一旦切られた。こんな状況だというのに不思議に思ってその言葉の意味を理解しようとしたが、そうすることは叶わなかった。設置したカメラが、少しだけ外の突入部隊の会話を拾ってたのだ…

 

 

『急速で何かが接近中!!』

 

 

『この反応はまさか……サイレント・ゼフィルス…!?』

 

 

『何ですって!?』

 

 

 

 

 

 

 

―――ドガッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!

 

 

 

「ぬおッ!?」

 

 

 

 突然頭上から轟音を響かせながら、何かが天井を粉砕しながら降って来た。思わず両腕で顔を覆ってしまったが、そんなことをしている間に事態はノンストップで進んでいく…。

 

 

 

―――グイッ!!

 

 

 

「って、えぇ!?」

 

 

 

 視界が塞がっている間に、降って来たソイツは尋常じゃ無い力で俺を引っぱった。そしてその事に混乱する暇も無く…

 

 

 

「飛ぶぞ!!」

 

 

「は!?」

 

 

 

―――ギュバゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

 

 

 

「どあああああああああああああああああああああああッ!?」

 

 

 

 今度は強烈なGが俺を襲い、それと同時に周囲の光景が一瞬で変る。クラクラする頭が少しだけマシになった頃には薄暗い隠し部屋等では無く、どこまでも広がる大海原を見下ろしながら暗くも明るい星空を飛んでいた。かなりの速度で飛んでいる為か、顔にぶつかる風が微妙に痛い…。

 

 だが、それよりも…

 

 

 

「……何で来た…」

 

 

「仕事だ」

 

 

「嘘つけ…」

 

 

 

 『サイレント・ゼフィルス』を展開し、俺を御姫様だっこしながら飛んでいる大馬鹿(マドカ)に、思わず不機嫌な態度でそう言ってしまった…。

 

 

 

「こんな勝手な真似しやがって……またスコールの姉御とトラぶっても知らねぇぞ…?」

 

 

「心配には及ばない、この事はスコールも了承済みだ。それに、フォレストもな…」

 

 

「……マジか…」

 

 

「フォレストに至っては上層部を脅してまでこの作戦を決行したんだ。帰ったら感謝するんだな…」

 

 

「……。」

 

 

 

 俺を拾ってくれたあの人に、恩を返しきれる日が来るのか少し不安になった…。だが、そんな俺に構わずマドカは何やらブツブツと呟き続けていた…。

 

 

 

「まったく、何が『ありがとよ』だ……そんなの、こっちのセリフだというのに…」

 

 

「え?」

 

 

「いや、何でもない…ただ、強いて言うのなら……」

 

 

 バイザーを装着しているため顔は見えないにも関わらず、何故か彼女が不機嫌な表情を浮かべているような気がした。そして、その予想は大体当たってたようだ…。

 

 

 

「お前は私にとって、私が姉さんと…織斑千冬とは別の存在である事の証なんだ…。」

 

 

「……。」

 

 

「お前らと一緒に居る時が、一番私らしいと思えるんだ。自分が織斑千冬ではなく、織斑マドカだと実感できるんだ。だからセヴァス…そう簡単に死なないでくれ……」

 

 

「……く、くく…」

 

 

「…ん?」

 

 

「くくく…あっははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

 

 

 

 彼女の言葉を聴いた瞬間、俺は彼女の腕の中で込み上げてきた笑いを抑えることが出来なかった。当然ながら、真剣な面持ちで真剣な話をしたマドカは憤慨した。けれど、これはもう笑うしかない…

 

 

 

「おい…何が可笑しい……?」

 

 

「ははははっ、あはは!!……あぁ、わりぃ…お前も結局、俺と同じだったんだなって思ってさ…」

 

 

「は?」

 

 

「いや、気にするな…」

 

 

 

 互いに持ってるモノと持ってないモノを比べて羨ましがり、そして求め続けた者同士。俺が勝手に彼女を欲したモノに当てはめたように、彼女もまた俺のことを勝手に望んだモノに当てはめていたのだ。

 

 

---本当に、俺と彼女は…

 

 

 

「まぁ、いい…とっとと帰るぞ、御姫様(セヴァス)……」

 

 

「あぁ…エスコートよろしく、王子様(マドカ)……」

 

 

 

 その言葉と共に、マドカはゼフィルスの速度を上げた。一年近く住み込みで潜入していたIS学園がどんどん小さくなっていく。学園の職員たちはマドカの突然の強襲に混乱したためか追ってこない……もしかしたら、フォレストの旦那が指揮系統を滅茶苦茶にしてくれたのかもしれない…。

 

 流石にあれだけの期間を過ごしただけあって、この任務が終わることに未練が少しも無いかと問われればNOだ。けど、別に悲しくなんてない。俺の日常は、あそこだけにしか無いわけじゃない…。

 

 

 

---そう、俺の…俺たちの日常と居場所は……

 

 

 

「なぁ、マドカ…」

 

 

「どうした?」

 

 

 

 厚い装甲に包まれた華奢な腕に抱かれながら、俺は彼女のことを見つめながら呟いた…。

 

 

 

 

 

 

「ありがとう…」

 

 

「……こちらこそ、な…」

 

 

 

 

---時刻は夜中、空も海も真っ暗。けれど、俺は今この瞬間を眩しいものに感じた…。

 

 

 

~おわり~

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