アイ潜IF外伝   作:四季の歓喜

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お待たせしました、続きの更新です。

森さん仕込みの腹黒セッシー、本領発揮です。


IF未来 戦力過多な森一派のIS学園 その4

「いきなり何ですの?」

「何ですの、じゃないわよ!! そもそもアンタ…えっと、名前なんだっけ?」

「セシリア・オルコットです」

「セシリアね、分かったわ。んじゃ改めてセシリア、アンタどういう事よ!?」

「どういう事、は此方のセリフですわ」

 

 いきなりの展開に、流石のセシリアも眉を顰めた。しかし、当の鈴は周りの視線など知った事か言わんばかりに、まるで親の仇…否、大切なものを持ち去った盗人を見るような目をセシリアに向け続けている。

 

「おい鈴、やめろって…」

「うっさい、アンタは引っ込んでなさい!!」

「いや、そう言われても…!!」

 

 終いには、思わずと言った感じで駆け寄ってきた一夏の静止も振り払い、それでも尚止めようとする彼と口論を始める始末。余りに騒がしくしたせいで、食堂中の視線がセシリア達のテーブルに集中し、様子を窺いに来た野次馬根性丸出しなギャラリー達も集まってきた。そのギャラリーの中に、先程まで一夏達のテーブル付近で昼食をとっていた相川清香を見つけた。セシリアが自分の元へ手招きすると、彼女は迷う事無くセシリアのテーブルへと駆け寄ってきた。

 

「相川さん、説明を」

「えっと、実は二人が織斑君の近況について話してたんだけど…」

 

 思い出話に花を咲かせていた二人だったが、話題が一夏がクラス代表に就任したことに変わった辺りから雲行きが怪しくなった。幼馴染のよしみで、鈴が一夏にISの特訓に付き合うと提案したのだが、まず無理矢理二人のテーブルに同席した箒が、それを断固として拒否。この時点で鈴は外野に口を出されたことに既にイラッとしていた訳だが、自分が代表候補生であることを強調し、すぐさま箒を黙らせる。更には、そんな自分が特訓に付き合えば間違いなく一夏は成長するし、何ならコーチとして一夏を指導してあげるとも。しかし、それに対する一夏の返答が彼女の火に油を注いでしまった。

 

『コーチ役はオルコットさんで間に合ってる』

 

 当然ながら、それを聞いた鈴の第一声は『いや、誰よソイツ?』である。目の前に座る鈴の機嫌が悪くなったことに微塵も気付かない一夏は、セシリアのことを彼女に説明する。クラス代表を決めるに辺り自分と戦ったこと、その際に自分の認識の甘さを気付かせてくれたこと、自分とは比べ物にならないぐらい強いこと、指導も素人の自分にも分かりやすように教えてくれること、強いだけじゃなくて格好良いこと、厳しさの中にちゃんと優しさが籠められていること、て言うか普通に美人だよな等々。途中からセシリアの紹介ではなく、如何に彼女が素晴らしい人かを、それも嬉々として語り出す一夏。

 そんな一夏の姿を前にして、彼の二人の幼馴染は一瞬意識が飛びかけるも、鈴の方は我に返ると同時に、ふつふつと強い怒りが込み上げてきた。久しぶりに再会した幼馴染にして想い人である一夏と過ごす機会だけでなく、心まで見ず知らずの女に奪われかけているのだ、心中穏やかにいられる訳が無い。そして、向こうのテーブルで食後のティータイムと洒落込んでいるのがセシリアだと知り、そのまま勢い任せに突っかかってきたそうだ。

 

「言っとくけどね一夏、私は代表候補生なのよ。そんじょそこらの奴らとは実力が違うのよ、実力が」

「あぁ、そう言えば鈴もオルコットさんと同じなんだっけ」

「同じって、コイツも代表候補生なの!?」

 

 何か言ってやられねば気が済まないと思って来てみたものの、それと言ってまともな内容も思いつかず、おまけによりにもよってそれを一夏に止められる始末。箒を黙らせた代表候補生の肩書きは、向こうも持っているので通じない。て言うか幼馴染である自分を差し置いて、一夏がポッと出のこの女を信頼している事が何よりも気にくわない。やがて、苛立ちと怒りで身体をプルプルと震わせた鈴は、唐突に腕を振り上げ、力強い動きでセシリアに向かって、ビシぃッと指を差した。

 

「決闘よ!!」

 

 その宣戦布告に、ことの成り行きを見守っていた大半の生徒達が息を呑み、当事者の一人であるセシリアはティーカップ片手に深い溜め息を零した。その神経を逆なでするようなセシリアの様子に鈴は更なる怒りを覚えながら、構わず続ける。

 

「私が勝ったら…」

「別に指導役なら譲っても構いませんわよ?」

「一夏のコーチ役を……って、へ…?」

「え…?」

 

 が、鈴に一瞥もくれることなく呟かれたセシリアの言葉に、先程までの勢いが一瞬で失せる。出鼻を挫かれ、口が半開きの状態で固まる鈴。しかし、セシリアの言葉が予想外だったのは彼女だけでは無いようで、多くのギャラリーが鈴と似たり寄ったりの反応を見せ、一夏も鈴に負けず劣らずの間抜け面で固まっていた。そんな中、いち早くセシリアに詰め寄ったのは箒だった。

 

「お、おいオルコット、貴様どういうことだ!?」

「篠ノ之さん、なんで貴女まで狼狽えるんですの?」

「いや、だって、お前が指導役やめたら特訓にかこつけて一夏と過ごす大義名分がゲフンゲフン…こいつは二組の生徒だ、つまりクラスの代表戦では敵同士だ。一夏に敵の施しを受けさせると言うのか、お前は!!」

 

 セシリアは一夏を特訓する際、同じ一組の生徒達の参加も受け入れていた。真面目に参加する者も居るが、中にはこれを機にセシリアと一夏の二人とお近づきになりたい者も居る。箒はどちらかと言うと、一夏目当ての後者。それを知った上でセシリアは、特訓の邪魔にならない限りと言う最低限の一線を設けながらも、そんな彼女達の下心ありきの参加を容認していた。

 そのセシリアに代わり、箒から見ても一夏に恋心を抱いていること間違いなしの鈴が指導役となるのは、彼女にとって非常によろしくない。恐らく彼女は恋敵と成りうる自分達の参加を絶対に認めないだろうし、下手をすれば特訓の名の元に一夏を独占しかねない。そうなると専用機を持ってなければ代表候補生ですら無い自分は、今まで以上に不利だ。

 

「私は一夏さんがクラス代表として強くなってくれればそれで構いません。それに私と一夏さんの戦闘スタイルは真逆、基礎はともかく、そこから先を私が鍛えるには限界があります。だから一夏さんとの特訓に篠ノ之さん達を参加させたんですが、最初にそう言いましたわよね?」

「うぐッ…」

 

 とは言え正直なところ箒も、セシリアには下心満載な特訓の参加理由を悟られていることは薄々察してはいる。察してはいるのだが今更口に出して認めるのも嫌で、正論を出されると何も言えない。

 

「それに対して、聞いた話によれば凰さんは近接主体の万能タイプ。一夏さんを鍛えるには、まさに適役かと思いますが?」

「ぬ、ぐぅ…!!」

 

 もう、ぐうの音しか出ない箒。逆に鈴はと言うと、自分の希望がすんなり叶いそうで拍子抜けしていた。むしろ一夏のコーチ役に適任と言われた為か上機嫌になり、先程とは打って変わってニコニコでセシリアの方を向いた。

 

「あ、アンタ、思ったより話の分かる奴じゃない。ちょっと誤解してたわ、ごめんなさッ…」

「俺はオルコットさんに教わりたい」

「って、一夏ぁ!?」

 

 しかし一切空気を読まずに放たれた一夏の言葉に、再びその場が荒れる。唖然とする鈴の叫びを無視するように、一夏はセシリアを見つめた。どことなくその目は、飼い主に捨てられそうになって悲しそうにする忠犬のようだった。

 

「だって、俺…」

「織斑さん」

 

 それまでずっと紅茶カップに向けられていたセシリアの目が、そこで初めて一夏に向けられる。薄っすらと帯びた微笑と共に向けられたそれを見ただけで、一夏は思わず口を閉ざしてしまった。そして黙り込んだ彼とは逆に、彼女はゆっくりと口を開いて、こう言った。

 

「私、待っているとは言いましたが、あまり遅過ぎると置いて行きますわよ」

 

 

―――貴方が私達と同じ高みへと上り詰める日を、心からお待ちしておりますわ―――

 

 

 思い出すのは先日の決闘で負けた際、倒れた自分に送られたこの言葉。自分の甘さに気付かせてくれて、自分の力を認めてくれて、その上で送られた激励とも取れるセシリアの言葉が、あの日、一夏の中に眠る何かに火を灯した。それからというもの、セシリアによる指導の元、ISの訓練に身を費やし、基礎知識皆無なため苦手だった座学全般も必死で勉強した。お蔭で最近は、極たまにだが、あの千冬にも褒められる時もある。しかし一夏としては、目指す頂きは未だ遥か彼方。

 全ては、あの言葉に報いる為。そして初めて姉以外の人間に憧れを抱いた、あの格好良い背中に追いつく為。彼女が待っている高みに早く辿り着く為には、あまり手段は選んでられない。

 

「……分かった…」

 

 最後まで悩み躊躇ったものの、一夏は結局首を縦に振った。

 

「では、話は決まりましたね。彼のこと、よろしくお願いしますわ、凰さん」

「なんか凄い複雑な気分だけど、まぁ一応礼は言っておくわ。ありが…」

「ただし」

 

 再び鈴の言葉を遮ってセシリアは立ち上がり、正面から彼女と向き合う。その時、セシリアが浮かべていた表情は、とても穏やかな微笑だったのだが…

 

「実力の有無と、指導役としての向き不向きは話が別。貴方に任せた結果、彼が弱くなるようなことがあれば、それ相応の責任は取って頂きますので、そのつもりで」

 

 何故か鈴は、彼女のその笑みがとても恐ろしいものに見えた。彼女の静かな迫力に気圧され、ゴクリと唾を飲み込み、気付いたらその場で一歩後ずさっていた。セシリアの迫力にビビってしまった事実を誤魔化すように、鈴は思わず叫ぶようにして彼女に言い返す。

 

「じょ、上等よ。私の手に掛かれば、一夏を他のクラス代表を瞬殺できるぐらいに成長させるなんて朝飯前だわ!!」

「ふぅん、瞬殺かー」

 

 その鈴の言葉に返ってきたのは、テーブルを挟んだセシリアの反対側。その場に居た彼女達は、漸くシャルロットの存在に気付いた。因みに、鈴達が喋っている間に昼食は完食したようである。

 

「誰よアンタ」

「あら、そう言えば皆様はまだ初対面でしたわね。彼女は私の友人でして…」

「初めまして、僕はシャルロット・デュノア。一年三組のクラス代表をやらせて貰ってるよ」

 

 片手を挙げ、人懐っこそうな微笑を浮かべてそう言って来るシャルロット。セシリアとは違い、特に変わった雰囲気を感じず内心でホッとしながら、鈴は『どーも』と軽く返事をするに留まる。

 

「あと、デュノア社のテストパイロットでもあるよ。皆、よろしくね」

「そして彼女も私達同様、代表候補生です。実力に関しましては私と互角、とだけ言っておきましょう」

「オルコットさんと、互角…」

 

 そんな鈴とは逆に、一夏達は地味に戦慄していた。いずれ学園の授業や行事でぶつかるであろう他のクラスの代表達、その一人が目の前に居る。しかも彼女は代表候補生にして企業のテストパイロット、おまけに一組の全生徒が一目置いているセシリアの友人であり、そのセシリアが自分と互角の実力者と称している。

 ここ最近は特訓と勉強で一杯一杯だったので、他のことを気にする余裕は無かったが、まさかこんな形でどんな相手なのかを知るとは思わなかった。正直言って、今の自分ではまるで勝てる気がしない。

 

「今月のクラス代表戦、楽しみにしてるよ、二人共。それじゃ、お先にー」

「私も失礼しますわ。では皆様、ご機嫌よう」

 

 そう言って二人は固まる一夏達を余所に、席を立って食堂を後にした。昼休みも中盤に差し掛かり、人もそれなりに多い廊下を並んで歩く中、シャルロットはセシリアに小声で訊ねた。

 

「良いの? 織斑君の指導役譲っちゃっても?」

「どうせすぐに向こうから戻ってきますわよ、私の優秀さをより理解した状態で。それに言質は取りましたもの、いざとなったら力ずくで奪い返しますわ。むしろ私としては、そういった展開になって貰った方が何かと都合が良いのですけど…」

 

 とんでもないことをサラッと零すセシリアだが、結局はそう言う事だ。

 ぶっちゃけた話、ISを動かすことに関して鈴は天才の部類に入る。しかしそれ故か、あの性格も相まって教える事に関してはてんで向いてない。鈴が転校してくると知った時点で、既にセイスを経由して彼女の主な情報を入手していたセシリアは、先程の食堂でのやり取りでそれを確信した。恐らく一夏も、そんな長い時間を掛けずに鈴のポンコツぶりを、そしてセシリアが如何にコーチ役として優秀だったのかに気付くことだろう。後は頃合いを見て、コーチ役を鈴に任せてしまったことを謝りながら連れ戻せば、更に自分の事を信頼するようになったワンちゃん…もとい一夏の完成である。

 ついでに言うとセシリアには、今の鈴にならIS戦でも圧勝する自信がある。なので鈴が先程の言質を忘れて渋る様なら、引き立て役として利用するだけした後、最後は二人の仲を裂こうとする悪役として華々しく散って貰うだけだ。

 

「あぁそれと、二組は私が頂いてよろしいかしら?」

 

 まるで明日散歩行ってきますとでも言いたげな気軽さで、何でも無いように出てきた言葉に思わすシャルロットは苦笑いを浮かべた。

 

「やっぱり本命はそっち?」

「自分のクラスそっちのけで隣の男子と乳繰り合ってる無責任な人が代表をやってるんですもの、ちょっと親切にしてあげれば、きっと多くの方がオトモダチになって下さいますわ」

 

 セイス達の存在があるとは言え、舞台であるこの学園を取り巻く環境は実に複雑で広大だ。役に立ちそうな駒(オトモダチ)との情報網(キズナ)は、多いに越したことは無い。

 あの品の無い中国娘は恐らくクラスで孤立する、いや、いっそ孤立させてやろうか。態々変わって貰ってまで手に入れたクラス代表の座を使って最初にやることが隣のクラス代表の指導、これで二組の生徒達が良い顔をしている訳が無い。そこへ入れ替わるように親切な自分が代表候補生として、専用機持ちとして彼女達の面倒も見たら、さぞかし面白いことになるだろう。やってることは鈴と変わらないが、こちらは大抵のことなら目を瞑って貰うだけの信頼をクラスメイト達から既に集めている。そもそも自分は、一組と二組の両方の生徒達の面倒を見るくらいの余裕はあるし、箒みたいに反発する輩を説得する自信もあるので、何の問題も無い。

 

「良いよ、代わりに僕は四組貰うから。実は最近、仲良くなった子が居るんだ」

「あらシャルロットさん、貴方も手の早いこと」

「いえいえ、オルコット様程では」

 

 腹に黒い物を抱いた二人の少女の笑い声が、平和な学園の廊下に木霊する。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「ふんふふーん♪」

 

 セシリアと別れたシャルロットは、IS整備室へと向かっていた。実は今日、彼女が会いたくて仕方なかった人がこの学園にやって来ることになっていた。その人は自分が所属するデュノア社の一社員兼専属スタッフとして、テストパイロットであるシャルロットの様子の確認と、後日送られてくる新装備と、彼女の専用機の調整の為に派遣されてくる技術スタッフ達に関する打ち合わせをする為にやって来る。

 しかし、それはあくまで表向きの話。その人は…彼は自分と同じく、亡国機業の一員。社会の光に紛れ込み、闇に生きる者。何より彼は自分にとって恩人であり、とても大切な人。向こうにとって自分は、数多く出会った内の一人に過ぎないかもしれないけれど、自分を助けてくれたあの時からずっと、彼のことが好きだった。そんな彼が今日、このIS学園にやってくる。

 

「あ、アレってもしかして…」

 

 見間違う事など有り得ない、久しぶりに見えた彼の横顔。整備室の入り口前で佇む、ビジネススーツを着こなし、ほんの二つしか年齢が変わらないと言う事実を忘れそうになるくらいに大人びた雰囲気を出すその姿は、日頃仲間達から阿呆専門と呼ばれているのが嘘の様。

 そのいつもとは違う格好良い、そして久し振りに見た彼の姿を前に、シャルロットは思わず走り出して飛びつきそうになった。

 

「ひ、久しぶりだな、ダリル…じゃなくて、レイン」

「お、おう、ざっと二年振り、か…?」

 

 その彼…オランジュが、あの忌々しいレイン・ミューゼルと見つめ合ってなければ、だが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 因みに…

 

 

 

 

「なんスか、何なんスか、その男は何なんスか先輩…!?」

 

 その二人の様子を目撃していたのは、シャルロットだけでは無かった…

 

 




○この黒セッシーが本気でイジメの主犯になったらヤバい気がする…
○シャルロットと仲の良い四組の子は、多分皆様の想像通り
○新デュノア社と言う名の、亡国機業技術開発班の変態共が作り出したロマン溢れるIS装備に興味を引かれたのが交流の切っ掛け
○まだ現時点では両想いと言う訳では無い阿呆とシャル
○じゃあレインに気があるのかと言うと…
○次回、プチ修羅場
○何度も強制終了するから、アーキタイプブレイカー、スマホからデータブレイクしてやった
○でもAB編はちゃんと書くからご安心を
○クリーブ兄貴姉貴可愛い
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