アイ潜IF外伝   作:四季の歓喜

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注意事項

○トライアングル編と違ってこの話の楯無はセイスに恋してません

○一部本編のネタバレ有りです

○IFストーリーのため、この展開が本編に影響されるとは限りません

ご了承くださいませ


IF未来 学園編 その1

 

 

 

「…ん?」

 

 

 

「あ…」

 

 

 

 

 何かを漁る様な物音に気付き、目を覚ます。ここはとある施設にある俺の部屋。さっきまで爆睡していたのだが、いったい誰だ……俺の至福のひと時を邪魔しやがったのは…?

 

 

 

 

「私だッ!!」

 

 

 

「なんだ、ただの食い意地バカか…」

 

 

 

「色々と待て」

 

 

 

 

 やっぱりテメェか、マドカ。どこぞの銀髪眼帯娘と違い、裸でベッドに潜り込むなんて真似はしてないみたいだが…少し、尋ねたい。

 

 

 

 

「……何をしていた…?」

 

 

 

「起こしに来てやったんだが?」

 

 

 

「お前が持ってるそれは何だ?」

 

 

 

「金ダライ」

 

 

 

「…どうやって起こそうとした?」

 

 

 

「吊るして、落として、クワーン!!と」

 

 

 

「寝言を言うくらいなら二度寝してこい…」

 

 

 

 

 

 本当にコイツはよう、いつまでたっても、“この場所”に来ても、“その制服”を着てもずっとこんな調子か…

 

 

 

 

「そんなことよりセヴァス、そろそろ時間だが良いのか…?」

 

 

 

「ん?…あぁ、今日の勤務時間は昼からだ。むしろ時間がヤバいのはお前の方だろ?」

 

 

 

「いいんだ、どうせ退屈極まりない。お前と駄弁ってた方が楽しい」

 

 

 

「そりゃ嬉しいね」

 

 

 

 

 本当にこういうとこは何も変わらないな、コイツは……悪いとこも、良いとこも…ま、それは俺も同じなんだがね…。

 

 

 

 

「だが、残念だなマドカ……」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「俺の幻覚じゃなけりゃ……ドアの前に阿修羅が降臨してるぞ…」

 

 

 

「…?」

 

 

 

 俺の言葉に対して不思議そうな表情を浮かべるマドカだったが、すぐにその言葉の意味を身を持って理解することになった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の目の前でボイコット宣言とは、良い度胸だな……この愚妹…」

 

 

 

「ッ…!?」

 

 

 

 

 

―――部屋のドアの前で、世界最強(ブリュンヒルデ)織斑千冬が仁王立ちしていた…

 

 

 

 

 

「ね、ねね姉さん…!!」

 

 

 

「さぁ、マドカ…“六道”に遺言は残しておいたか?」

 

 

 

「言い訳すらさせて貰えないのか!?」

 

 

 

 

 おぉう…コイツの数少ない天敵ゆえに狼狽えっぷりが半端無いねぇ。昔はこの人に復讐することを生きる目標にしてたってのに、随分と変わったもんだ…。

 

 いや、ぶっちゃけ俺も潜入生活時代の時から怖いんだけどね、この人…。

 

 

 

 

「あぁ、そうだ六道…いや、セヴァス……」

 

 

 

「は、はい…?」

 

 

 

 

 俺が手に入れた新しい名前で、千冬さんは俺のことを呼んだ。ただ、その瞳に込められたモノは背筋に冷たいものを走らせる…。

 

 

 

 

「……ヤッて無いだろうな…?」

 

 

 

「やってませんしてません手出してませんッ!!」

 

 

 

 

 すんげー殺気を向けながら尋ねてきたよ、この人…ブラコンに加えてシスコン属性も追加されてしまったようだ……いつだか見つけたノートを読んだら納得出来るが…。

 

 

 

 

「何か私にとって放置できないことを考えなかったか…?」

 

 

 

「イヤイヤ、そんなまさか…」

 

 

 

「……ふん、まぁ良い…」

 

 

 

 

 あ、危ねぇ…そういや、この人は読心術並の鋭さを持ってるんだった。だが、残念。俺はどこぞの唐辺木と違ってポーカーフェイスを貫けるのさ!!

 

 

 

 

「さて、逝くぞマドカ…」

 

 

 

「ま、待ってくれ姉さん!!何か発音が変だったぞ!?セヴァス、助け……」

 

 

 

「Adiós♪(さいなら)」

 

 

 

「セヴァーーーーーーーーーーーーーーース!!」

 

 

 

 

 “IS学園の制服”に身を包んだ織斑マドカは、織斑千冬に首根っこを掴まれてズルズルと引きずられていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

―――俺が任務でここに来たのが2年前…

 

 

 

―――亡国機業が世界を巻き込む大事件を起こしたのが去年の秋…

 

 

 

―――織斑一夏という存在を中心に集まった者達と、亡国機業内の離反者によって事件が終結したのが去年の冬頃…

 

 

 

―――そして、今は再び季節は巡り巡って春……俺達はというと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、セイス君…じゃなかった、『セヴァス・六道』君♪」

 

 

 

「おや、更識元生徒会長。邪魔ですウザいです目障りです消えてください、ていうか帰りやがれボケナス」

 

 

 

「酷ッ!?」

 

 

 

 

 学園の敷地内で仕事してたら、公私共に面倒くさいと感じる相手…更識楯無が現れた。彼女はとっくにこの学園を卒業しているのだが、諸事情により度々この学園に顔を出しにくる。

 

 

 

 

「冗談だよ、半分…」

 

 

 

「半分本気なの!?」

 

 

 

「これでも仕事中だ…」

 

 

 

 

 そう言って俺は手に持った竹箒と塵取り、そして身に着けた事務員の制服を見せる。

 

 

 

 

「あら、すっかり様になっちゃって…」

 

 

 

「自分でもビックリしてる…」

 

 

 

 

 亡国機業が壊滅した日…俺とマドカはフォレストを中心とする離反組に属していた。結果的に復讐を誓った相手を助ける形になるぞ?と尋ねたら、何やらフッ切れた表情で『もう、良いんだ。既に決着は着いてる……私の負けでな…』と返してきた…。

 

 どうやら俺の知らない時に単身でケリを着けにいき、いつのまにか全部終わってたらしい。どうりで随分良い顔を見せるようになったと思ったら、そういうことだったらしい…。

 

 そして全てが終わった後、俺達は各国政府に保護された。逮捕でも捕縛でも無く、どういうわけか保護されたのだ…。

 

 

 

 

「で、フォレストの旦那の行方は?」

 

 

 

「……ごめんなさい、さっぱり…」

 

 

 

「だろうな…」

 

 

 

 

 俺達が逮捕では無く、保護されたのはフォレストの旦那が裏で手を回してくれたからだった。しかし、そのフォレストの旦那は亡国機業が壊滅した後、ティーガーの兄貴と共に行方不明になっている。IS委員会や各国政府は旦那の身柄を必死に追跡しているのだが、楯無がこんな調子じゃ一生捕まらないだろうな…。

 

 

―――本当にあの人には返しても返しきれない恩を貰っちまったもんだ…

 

 

 で、その後の俺達の身柄についてだが…マドカは織斑姉弟に引き取られることに決まったらしい。それを俺に伝えに来たマドカの表情は戸惑いと嬉しさが混ざった複雑な表情を浮かべていたな…。

 

 

 

 

「そういえば、またCIAが君の事を勧誘しに…」

 

 

 

「『Dado Un tipo del goddamn(くたばれクソ野郎)』と伝えとけ」

 

 

 

 

 俺の方だが…アメリカが“所有権”を主張してきた。なんでも『我々が造り出した生物兵器故、管理は我々が行うのが道理』だとよ。失敗作とか言ってスペインの辺境地にポイ捨てしたくせによく言ったもんだ…。

 

 が、俺以上にその言葉に対してキレた奴が居た……織斑一夏だ…

 

 後から聞いた話なのだが、マドカが織斑家に引き取られる際に俺の事を語ったらしい。それも、本人が自覚できないくらいに嬉々として…。そんな俺が物扱いされたことが許せなかったらしい。全く…そういうところがあるから女達が寄ってくるんだよ、このイケメン……心の中で密かに感謝したが…。

 

 

 

―――しかし、一番ブチ切れてたのは……

 

 

 

 一夏の激昂を何食わぬ顔で受け流したアメリカ政府は俺を連行……しようとしたのだが、そこに織斑千冬が立ち塞がった…。その場に居た全員が意外な人物の意外な行動に戸惑ったが、そんな俺達を余所に彼女は何かの書類を取り出して、政府の役人に見せた。

 

 何が書いてあったのかは知らないが、それを見た奴らは全員顔を真っ青にして崩れ落ち、何故か俺は解放された。いきなり自由の身になり、何が起きたのか分からぬまま呆然とするしかなかった俺だったが、そしたら今度は『ドゴォン!!』という轟音が響いた。これもまた織斑千冬が何かしたのかと思ったが、俺らと同様に唖然としていることを考えるに違うらしい。恐る恐る音の発生源へと視線を移したら、おっかないものが見えた…

 

 

 

 

 

 

 

―――俺を物扱いした政府の役人が、マドカにボッコボコのフルボッコにされている光景だった…

 

 

 

 

 

 

 あまりに壮絶な光景で、あの千冬さんでさえドン引きしていた。だが、これだけの事があったのにも関わらず彼女はお咎めなし……何が書いてあったんだ、あの書類…。そんなこんなで、俺は取り敢えずIS学園に引き取られた。ISは動かせないので事務員としてだが、学生じゃないのでクビにされない限りずっと居られるからむしろありがたい。

 

 そして、マドカはISに関しては国家代表クラスの実力と知識を持っているが、一応学園に入学することに決まったらしい。だからこそ俺は事務員の作業服、アイツはIS学園の制服を着ていたわけなのである。

 

 

 

 

「ま、元気そうで何よりね。こうやって普通に会話することには、未だに違和感を感じるけど…」

 

 

「それに関しては同感だ。けど、もうお前と命懸けの鬼ごっこする気は無いぞ…?」

 

 

「それは残念…て、命懸けって言い過ぎじゃない?」

 

 

「三回目以降からISを躊躇せず展開し、加減ミスって何度も俺を殺しそうになったのは誰だ…?」

 

 

「……。」

 

 

「目ぇ逸らすな…」

 

 

 

 

 隠れることもせず、逃げることもしないで済む日々が来るとは思いもしなかった。しかも、それに対して充実感まで抱いているのだ。今までの日常を自分の手で終わらせた時はどうなるかと思ったが、今の日常は案外悪く無いと思ってる…。

 

 

 

「…おっと、喋ってたらもう昼か。そろそろ行くよ、じゃあな……」

 

 

「ん、お勤めご苦労様♪」

 

 

 

---たっちゃんせんぱい は なげキッス を はなった !!

 

 

 

 

「…ていッ」

 

 

「あ、ちょッ!?」

 

 

 

 

---セヴァス は なげキッス を たたきおとした !!

 

 

 

 振った手に彼女はウインクと投げキッスで返してきたので、飛んできたソレを思いっきり叩き落とすフリをしてやった。結構ショックを受けたみたいだが、文句を言われる前に退散するとしよう…。

 

 後ろでギャアギャア騒ぐ楯無の声を背に、俺はその場をさっさと走り出した。

 

 

 

 

「さて、昼飯は“アイツら”のとこにでも行くか…」

 

 

 

 

 かつてはコッソリ覘き見て、時には見守るだけだったアイツら…今は大切な友人達になったアイツらの事を思い浮かべながら、俺は足早にその場所へと向かっていった。

 

 

 

~つづく~

 

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