しかし今回は設定の都合上、サブタイの通り去年のクリスマス編の後日談、つまりクリスマス特別編なのにクリスマス終わった辺りの時系列の話になります……自分で言ってて良く分からなくなってきた…;
そして、例によってかなり長くなりそうで、また年明けまで続きそうな予感が既にヒシヒシと…(汗)
「すいません、わざわざ折角の休日に…」
「良いよ良いよ気にしなくて、僕も特に予定無かったし」
時は12月末、クリスマスも終わり、世間が年越しに向けてに染まってきた頃。未だに潜入任務続行中でIS学園に在籍中のシャルロットは、同じくフォレスト一派のスパイとしてIS学園に潜入中のヴィシュヌに招かれ、彼女の部屋に来ていた。
「で、相談したいことって?」
「えっと、実は私…」
今朝、ヴィシュヌに唐突に声を掛けられ、相談に乗って欲しいことがあると言われたシャルロット。同じフォレスト一派、しかも共通の友人に、自分と同じ代表候補生の肩書。何より二人の基本的に穏やかな性格もあって、良好な友人関係を築くのには大して時間は掛からなかった。そんな彼女に相談したいことがあると言われたので、何事かと気を引き締めて来たのだが…
「アイゼンさんと付き合うことになりまして」
この発言には思わずシャルロットも言葉を失った。表情が笑顔のまま固まり、ピシリと音を立てながら皹が入ったかのような錯覚に襲われた。しかし、無理やり笑みを維持をしたまま小さな咳払いを一つして、念の為にとヴィシュヌに問いかける。
「買い物に? それとも、仕事に?」
「いえ、彼氏彼女の関係に、と言う意味です」
「嘘ぉ!?」
思わず叫んでしまったシャルロット。そんな彼女の反応に、思わずあたふたし始めるヴィシュヌだったが、シャルロットとしてはそれどころでは無かった。
「そ、そんなに驚かなくても…」
「君達ってまだ付き合って無かったの!?」
「そっちですか!?」
そう、シャルロットとしては、むしろそっちの方が驚きだった。
「いや、だって、ええぇぇ…あれだけヴィシュヌが毎日の様にアピールしてたのに、まだくっついて無かったのが逆に驚きなんだけど。て言うか織斑君じゃあるまいし、あのアイゼンが君の好意に気付かない筈がないよね?」
今でこそ皆と馴染んできたヴィシュヌだが、フォレスト一派の庇護下に入るまでの道のりは非常に複雑で面倒なものだった。その過程で同じ亡国機業でありながらフォレスト一派と敵対関係にあるトウ派に命を狙われ何度も危険な目に遭わされたのだが、その度に彼女を救いだし、トウ派の魔の手から彼女の身柄を守り続けたのがアイゼンである。
その事もあり、ヴィシュヌはフォレスト一派の中でもアイゼンに対して特に心を許している。それどころか、彼に対して好意を抱いているのは火を見るよりも明らかだった。無論、他の仲間達にも充分に優しいが彼に対してのみ、その優しさが明らかに5割ほど増している。その甲斐甲斐しい姿から人知れず『良妻』と呼ばれていたりするのだが、それに気付いていないヴィシュヌはともかく、あのアイゼンが彼女の好意に気付いていないとは思えない。
「何度か告白したんですが、『それはただの吊り橋効果の延長だよ、きっとその内に目が醒めるさ』って言って、中々首を縦に振ってくれなくて…」
「ちょっとアイゼンに盾殺しブチ込んでくるね」
真顔でそう呟いて部屋を出て行こうとしたシャルロットを、慌ててヴィシュヌが引き留め、このままでは半殺しにされかねない彼のことをを必死で擁護する。
曰く、フォレスト一派の庇護下にあるとはいえ自分の意志で組織入りした訳では無いヴィシュヌと、完全に汚れきった自分とでは釣り合わないと思っていた。曰く、まだ若いヴィシュヌには、これから先も多くの出逢いがある。その中で、きっと自分なんかより良い相手と巡り合える筈だと。早い話、『君みたいな良い子が、俺なんかを好きになるな』と言う訳だ。
しかし、そうやってヴィシュヌの好意から逃げ続けてきたアイゼンだったが、諦めない彼女の前に遂には折れた訳で、結局は彼自身もその選択をしたこと自体は後悔していないそうだ。
「だからって、遠ざけるにしたってもっとマシな言葉があるだろうに。恋する乙女の心を何だと思ってるのさ、まったく。オランジュと言いアイゼンと言い、どうしてフォレスト一派の男子って妙なところで面倒くさいかな…」
「実を言うと、その辺もシャルロットを頼った理由の一つなんです」
「え、その辺って?」
「シャルロットはオランジュさんと付き合ってますよね?」
ヴィシュヌの言う通り、現在シャルロットはオランジュと交際関係にある。実に複雑な面も多々あるが、当人たちの関係そのものは実に良好であると言えるだろう。実際、軽い気持ちでシャルロット達にナンパしようとした男が数日後に行方不明になったり、オランジュに軽い気持ちでちょっかいを掛けた女が後日虫の息でゴミ捨て場に捨てられていたりとかするぐらいには。
そして、そのシャルロットにヴィシュヌはこう言った
「私達、恋人同士になったのは良いんですけど、そこからどうすれば良いのか分からないんです。私って、例の癖のせいで色恋沙汰の経験が皆無で、特にデートとか全く…」
「つまり、僕に恋の先輩として、アドバイスをして欲しいということだね?」
その言葉にヴィシュヌは少し顔を赤くしながら、照れくさそうにシャルロットから目を逸らして、両手の人差し指を合わせつつ、小さな声で『はい』と答えた。
好きな人…アイゼンと念願の恋人関係になれたのは良いが今まで恋愛経験ゼロ、同じ女性として唯一相談できそうな人物はフォレスト一派に入るまで母しか居らず、その母とも現在は気軽に連絡を取る事はできない。そんなヴィシュヌが恋をし、彼氏彼女の関係になりたい一心で少女漫画を参考にしながら全力を注いで念願叶った訳だが、この可愛い顔に似合わず脳筋な少女は、その後のことを欠片も考えていなかったのである。お蔭で、物語で言うとろこの『めでたしめでたし』の後が完全にノープランで、彼氏になったアイゼンとこれまで通りにするべきか、もっと変わるべきなのか、とにかく今後どう接すれば良いのか分からないでいた。ましてやデートなんて特にさっぱりで、彼女単独では一緒にヨガ、もしくは筋トレするぐらいしか思いつかなかったのである。
そんな彼女に少し苦笑いを浮かべながらも、シャルロットはある種の余裕を見せながらこう言った。
「ふふっ、だったら断る訳にはいかないね。分かったよ、僕に任せて」
◆◇◆◇◆
1時間後…
「で、ドヤ顔まで決めて引き受けたは良いものの、独特過ぎる自分達の男女関係を参考にして良いのか不安になって、逆に俺達に相談しに来たと…」
「……うん…」
「て言うか、肝心のアイゼンはどうした。あの万能人間ならデートプランの一つや二つ、割と簡単に思いつくだろ?」
「仕事が忙しそうだから、ヴィシュヌ自身が『私が考えます!!』って言っちゃったんだって」
恋の先輩としての余裕はどこへやら、どんよりと暗い雰囲気を纏ったシャルロットは、現在オランジュとセイスの元に来ていた。さっきヴィシュヌには任せろと言ったばかりだが改めて考えると、自分とオランジュ達の関係は世間一般のそれと比べると普通と呼ぶには少し…否、かなり程遠い。まかり間違っても純情乙女なヴィシュヌが参考にして良いような関係では無いのは確かだ。
何せ現在オランジュは本人達公認のもと、シャルロット、レイン、フォルテの三人と同時に関係を持っているのだ。
「なぁセイス、客観的に見て俺達の関係ってどう見える?」
「何かの選択ミスったら刺されそう」
「刺さないよ!!……多分…」
「シャルロット、そこは断言して欲しかったな…」
「じゃあ、刺す」
真顔で即答したシャルロットに、思わず口元が引き攣るオランジュ。実際、この関係に落ち着くまでの道のりは随分と険しいものだったし、オランジュが比喩でもなんでもなく血を見る羽目になった回数は一度や二度では済まなかった。
恩と愛を感じオランジュを追いかけてきたシャルロット、かつての想いを捨てきれず元カノからよりを戻したレイン、レインを奪われまいと嫉妬心から睨み続けていた結果、彼の良さに気付いていつの間にか惚れていたフォルテ。そんな三人によるオランジュ争奪戦は、彼が三人を平等に愛することで一応の決着はついたものの、やっぱり好きな男の一番で在りたいと言うのが彼女達の本音であり、今でも水面下で女の駆け引きが日夜繰り広げられている。
「それはさておき、まだセイスとエムの方が普通なんじゃないか、彼氏彼女の在り方としては」
「うーん、確かにそんな気はするけど…」
そんなオランジュ達と比べたら、セイスとマドカの関係は至ってまともと言えるだろう。二人の相思相愛っぷりは組織でも派閥に関係なく有名で、隙あらば惚気、いちゃついている。まぁ尤も、元々無自覚にいちゃついていた二人が、やっと互いに意識していちゃつくようになっただけなので、周囲の反応はあんまり変わらなかった。精々、独り身であることに深刻な悩みを抱えている一部の行き遅れ達がトドメを刺されたことぐらいだろう。
因みに完全な余談だが、この二人、社内報『ふぁん☆たすティック』掲載の『今年の亡国機業ベストカップルランキング』で二位に大差をつけて優勝した。
「でも、エムと同じことをヴィシュヌが出来ると思う?」
「無理だろ」
「無理だな」
好きな相手に抱き着く、堂々と自分の男(女)であると公言する、お出掛け=デートが最早デフォルト化、愛を囁くのに躊躇しない、ナチュラルに間接キス、不意打ちでキス…これらは全て、最近のマドカがセイスに、そしてセイスがマドカに行っていることである。超積極的なこれらの行動を、アイゼンとの付き合い方の相談だけであそこまで照れていたヴィシュヌに提案したところで、顔を真っ赤にして首を横にブンブンと振りながら『無理です無理です!!』と連呼する彼女の姿が容易に想像できた。
「けれど、やっぱ俺達、全部が全部変って訳じゃ無いと思うんだよな。姉御からもアドバイス貰ってるし…」
「問題は、どこからどこまでが二人の参考になるか、か…」
「もういっそ何も考えず、そのままデートに行けば良いんじゃね? 俺もマドカも、ずっと一緒に過ごしている内に何となく互いの距離感が掴めていった感あるし」
「でも、あの状態のヴィシュヌがこのまま行っても、もの凄くギクシャクする予感しか…」
セイスとマドカの在り方は、一カップルとして間違っていないだろう。そしてオランジュ達の在り方も、本人達が納得してそれなりに満足しているのであれば、それも一つの形としてありなのだろう。結局のところ、一組の男女によるカップルとしての正しい在り方なんてものも、人それぞれと言うことだ。そう考えるとヴィシュヌとアイゼン、二人の恋人同士として最適な距離感と接し方と言う物もある筈なのだが、問題は肝心の本人達が未だにそれを把握できていないと言う点だ。そこをどうにかしない限り、この先どうにもならない。
「決めた、こうなりゃ質より量で行こう」
「どういうこと?」
頭を抱える三人だったが、ふとオランジュがそう言った。そしてシャルロットの問いに、不敵な笑みを浮かべながらこう答えた。
「デートするのさ、俺達も一緒にな」
◆◇◆◇◆◇
そして翌日…
「と言う訳で皆さん、これよりカップル限定特別デートツアーを開催しまーす!!」
「「「「「「「イェーい!!」」」」」」」
「「ちょっと待ちましょうか!!」」
彼等の主な活動地域である、IS学園のある街から電車を乗り継いで暫く、その町の駅に私服且つ完全なオフモードで集合した10名もの亡国機業メンバーは約2名を除いて大いに盛り上がっていた。
朝一でシャルロットに電話で呼び出され、言われるがままに身支度を済ませて待ち合わせ場所に着いたらアイゼンも含めた見知った顔がたくさん居て、極めつけに先程のオランジュの言葉、ヴィシュヌは思わずシャルロットに詰め寄った。
「シャルロット、どうしてそうなったんですか!?」
「えっとね、あれからオランジュ達と相談した結果ね…」
どうすれば良いのか分からないのであれば、口で説明するよりも実際に見て貰った方が早い、という結論に至った3人は身内に協力を要請、巻き込まれた彼女達は楽しそうと言わんばかりにノリノリでそれを承諾した。そして、朝一でセイスとマドカがアイゼンを襲撃し、簀巻きにしてこの場所に連行し、ヴィシュヌの到着を全員で待っていたとのことだ。
「だからって、全員で来なくても…」
「ごめん、折角の二人きりのチャンスを潰しちゃったのは悪いと思ってる。けど多分ね、ヴィシュヌ達にはこの方が良いとも思ってるんだ」
そう言ってシャルロットは、ヴィシュヌと共にそっと集団から離れ、こっそりと彼女に耳打ちする。
「まず、恋人同士によるやり取りの一例が見れます」
耳がピクリ
「これだけのカップルが居ると色々なパターンが見れます。つまり真似したいこと、真似できることが吟味し放題です」
目がパチクリ
「案外、周りがイチャイチャしてると、自分もこれくらいならって思って普段よりも遠慮や躊躇、自重する気が失せるんだよねー」
一度凄い勢いでアイゼンの方を向いて、再びシャルロットにゆっくりと向き直ったヴィシュヌは、彼女の手を固く握って短く一言、『感謝します』と…
「最近のシャルロット、着実にお前に染められていってるな」
「会話してるとたまに、オランジュさんと話してるみたいな気分になる時があるっス」
「言うな、自覚してる」
日に日に口が回るようになってきたシャルロットに、どこか遠い目をするオランジュとレイン、そしてフォルテ。恋のライバルとして互いに火花を散らし、時には手を組む関係にある彼女達。今回の計画は同じ恋する乙女としてヴィシュヌの応援をしたい気持ち半分、丁度良いから自分達もデートしようと思ったのが半分で参加をした。普段は個々で、もしくは4人全員で行ったりすることは良くあるのだが、このようなダブルデートならぬクワトロデートは初めてで、ちょっと楽しそうと思った面も強い。
セイスとマドカも似たようなもので、特にマドカに至ってはセイスとのデートを楽しむ傍ら、友人達をからかうネタを探す気満々のようだ。今も遠目から分かるくらいにシャルロットの口車に反応しまくるヴィシュヌの反応を見てほくそ笑んでおり、そんな彼女の様子を見てセイスは苦笑いを浮かべていた……無論、手を繋ぎながら…
「あの、一つよろしいですか?」
と、そんな時だった。躊躇いがちに、そして酷く戸惑った声が聴こえてきたのは。全員が視線を向けると、そこに居たのは気不味そうに挙手して立ち尽くしているフォレスト一派の財布眼鏡、メテオラだった。
「なんで私も呼ばれたんでしょうか?」
「お前の彼女さんが参加したいって言ったから」
そして、オランジュが指差した方向に居るのは、満面の笑みを浮かべる赤毛の麗人、二代目ブリュンヒルデにして亡国機業の客将、アリーシャ・ジョセフタークが悪戯気な笑みを浮かべながら、彼に向かってヒラヒラと手を振っていた。取り敢えずスーツで現れたメテオラに合わせたのか、こちらもすっかり高そう且つお洒落なファッションで身を固めてきていた。
オランジュに電話で『美味しい話がある』と言われ、その言葉を鵜呑みにしてノコノコ現れたメテオラ。実際は、ヴィシュヌの相談の件を小耳に挟んだアリーシャが、これ幸いとばかりに話に乗ったのである。
「あの人は、断じて、彼女じゃ、ありません!!」
「お前まだそんなこと言ってんのか」
「いい加減に素直になれよ」
「そーだそーだ、もっと自分に正直になれヨ、このエロ眼鏡」
「誰がエロ眼鏡ですか、この脳内お花畑!!」
先日のクリスマス・パーティにてアリーシャが幼馴染であり、しかも初恋の相手であったことを暴露する羽目になったメテオラ。本人は頑なに認めようとしないが、確実に今も彼女の事を好いている。あの酒の席で洗い浚いゲロッたこともそうだが、あの後もそれらしい様子が多々目撃された。
一例を挙げると、アリーシャに食事に誘われると口では嫌そうにしながらも結局は着いて行き、しかも支払いは必ずメテオラが…あの守銭奴が自ら出す。昔の様にアリーシャに手を繋いで引っ張られると、何だかんだ言って少し嬉しそうにする。アリーシャが来ると、更識いもう党の会合があったとしても、アリーシャが帰るまで絶対にその場から動かないなど、彼の事を知る者が見れば心底仰天するような行動が度々目撃されている。
因みに、逆にアリーシャがメテオラの事をどう思っているのかは、言うだけ野暮ってものだろう。と言うか、彼が幼馴染のエミリオと分かってからの彼に対する接し方でお察し下さい。
「ま、取り敢えず行こうか。早速だけど最初はどうする?」
「ご飯」
「いやマドカ、まだ10時だぞ?」
休日の都合上、集まれるのが今日だけで、一時的な集合場所しか決められなかった一行。故に、ここからは行き当たりばったりになる。とは言え幸いなことに、ここに来るまでに町の名所はある程度調べられたので行き先の候補は幾つかある。
「荷物持ってうろつくの嫌だから、買い物系は後にしようぜ」
「じゃあ、ご飯」
「お前、さては朝飯食って来なかったな?」
セイス、腹ペコ娘を引き摺るようにして、コンビニへ一時離脱。
「じゃあ、まずは遊ぶとして、何にする?」
「ゲーセン」
「カラオケ」
「ボウリング」
二人を見送った残りのメンバーは話し合いを再開、各自行きたい場所を候補として次々と挙げていく。この町もIS学園のあるいつもの街に負けず劣らず色々な施設が揃っており、遊びから食事まで並大抵のことなら不自由しなさそうだ。強いて言うなら、他の町と比べ犯罪や事件の発生率が日本とは思えないぐらいに高いことが少々気になるが、この面子なら巻き込まれたところで正面から捻じ伏せていくだろうから無用な心配か。
「ヴィシュヌは何が良い?」
「え…」
オランジュ達が話し合っているのを遠慮がちに少し離れた場所で眺めていたヴィシュヌに、ふとアイゼンがそう声を掛けた。因みに今日、珍しくアイゼンも私服姿だ。半ば仕事着と化しているニット帽を今日は被っておらず、マフラーも首元までしか巻かれていない。つまり、普通に彼の顔が見れた。
アイゼンはドイツ人と聞いていたが、成程、確かにハーゼやティーガーに似た空気を感じる。だが同時に、二人とは違う柔らかい気配も感じた。そこはやはり、二人とはかなり違う彼の人となりが出ているのかもしれない。
そんな想い人の素顔を直視して人知れず内心ドキドキしながらも、ヴィシュヌはどうにか口を開く。
「えっと、私は皆が良ければそれで…」
「ゲーセン」
唐突にヴィシュヌの言葉を遮るように出てきたその言葉に、彼女は思わず言葉を止め、きょとんとした。それに構わず、逆にアイゼンは言葉を続ける。
「カラオケ、ボウリング、ショッピング、食事……良し…」
そして、アイゼンが何やら満足げな表情を浮かべて頷いた直後、合わせたかのようなタイミングでオランジュが二人に声を掛けてきた。
「アイゼン、ヴィシュヌ、お前らの希望は?」
「あ、私は…」
「ボウリングに一票ずつ」
「……え…?」
「はいよー、ボウリングに三票目っと…よし、こりゃ最初はボーリングに決定だな」
ヴィシュヌに被せるように放たれた、アイゼンの返事。オランジュは一瞬だけチラリとヴィシュヌの方を見て小さく苦笑いを浮かべた後、『この期に及んで遠慮せんでも…』と呟きながら、セイス達にこれからの予定を伝えるべく携帯を取り出した。
あっという間の出来事に、直前まできょとんとしていたヴィシュヌは、今度はポカンとして立ち尽くしていた。その様子にアイゼンは、珍しくどこか焦った様子を見せた。
「あれ、違った?」
「え、あ、いや……むしろ、なんで分かったんです…?」
その言葉の通り、実はボーリングをやってみたかったヴィシュヌ。しかし彼女の性格上、どうしても自分の希望を進んで言うことが出来ず、そのまま流れに身を任せるつもりだったのだが、こうしてアイゼンが言ってくれたおかげで、希望が叶ってしまった。
ただ素直に嬉しいと思う反面、言っても無いし、顔に出したつもりも無いのに、どうして自分の思っていることが分かったのだろうと不思議でしょうがない。
「内緒」
自分より年上の筈だけど、悪戯気な笑みを浮かべたこの時ばかりは、彼が無邪気な子供のように見えた。
○今回のデートツアー参加メンバー(↓)
・セイス&マドカ
・オランジュ&レイン&フォルテ&シャルロット
・アイゼン&ヴィシュヌ
・メテオラ&アリーシャ
○他の馴染みのメンバーは今どうしているのか、それはまた次回に
○そして彼らが訪れた町、実は…
「ルナちゃーん、どこ行ったのかなー、早く出ておいでー」
「……バンビーノ…」
「お、どうしたクーリェ」
「ん」
「ねぇねぇ見せて見せてお願いだから見せてそんなに恥ずかしがらないで大丈夫心配無いよ何も感じる暇も無くすぐに終わらせるからねぇ良いでしょうだから君が隠してるもの全部見せてよ取り敢えずその眼鏡だけでも!!」
「ちょ待っ、何だお前、離せって言うかやめろぉ!!」
「ふふふのふ、良いではないか良いではないか、何度も言うけど大丈夫だいじょーぶ、何も心配は…」
「ルナちゃあん?」
「ひぇッ…!!」
◇◆◇◆◇
「ごめんね」
「い、いや、別に気にしては…いたけど、もう良いよ」
「はい、良くできました。少年、うちの子が悪かったな。御詫びと言っては何だが、これでジュースでも買って飲んでくれ、じゃあな」
「バンちゃん、ごめんなさい」
「気にしない気にしない、でも次はもっと上手くやろうな。例えば、相手に悟られずに見たり、盗んだり、もしくはオランジュみたいに相手から見せたくなるように誘導するとか」
「……反省する部分が違う気がする…」
「良いんだよクーリェ、叩いたら埃だらけなのは、あの眼鏡小僧も一緒だろうしな」
「え?」
「眼鏡は発信機、蝶ネクタイは変声機、腕時計は麻酔銃、見た感じ靴とベルトにも仕込みあり。007も真っ青な玩具で全身フル装備してるような奴が、ただのガキな訳ねーだろうよ」
to be continue