死にたがりの閻魔の明日なき答え   作:ノリさん

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わたしは死の意味が知りたい。その意味を知れなければ俺の苦悩に意味などない


死にたがり閻魔の問い

墓場は良い。静かで落ち着く。どうも公園とかファミレスとか気分転換に寄ったりしたこともあったが落ち着かない。騒がしいし、何より皆誰かといる方が多い。

 

正直に言おう。俺に友達はいない。強いて言うなら本が友達。墓場は落ち着いて本が読める。この墓場は身寄りのない人達のお墓だ。というか俺の家が管理してる墓地だしお参りしてく人なんていないし手入れしてるの俺だから本を読むくらい良いだろう。丁度いい気があってそれに寄り掛かりながら木陰で風に吹かれて読み進めるのが好きだ。

 

静かだ。聞こえるのは風の音だけ。家も墓地の側にある古い家だから幽霊屋敷とか言われてさ。近寄られなかったから静かでいい。やっぱ平穏は良い。俺は他の同級生みたいにやいのやいの出来ないんだ。

 

 

…静かなんだけど、俺にはやる事がある。まぁ、やる事になってしまったというのが正確なんだけれども。

 

 

夕方から夜にかけて忙しくなるんだ。そろそろカラスが帰る時間かな。

んじゃ、ぼちぼち準備始めますか。

 

 

俺の家は昔ながらの平屋なんだけど、奥の部屋にちょっとだけ特別な部屋がある。

死んだ者たちの世界。俗に言うなら閻魔様から判決が出るまでのたまり場、天国と地獄の間みたいなものだろうか。

 

正確にはちょっと違うんだけど、大体そんな感じだ。

 

さて俺にはお仕事がある。判決を言い渡された魂が滞りなくその場へ行けるよう未練を断ち切らねばならない。

 

色々な方法があるけれど、基本的には、生前に善行を積んだモノには出来るだけ望む方法で未練を断ち切る。

善行を積まず、悪徳を積んだモノには、地獄へ行く前に手始めとして、望まぬ方法で未練を断ち切らせる。

 

まぁ、場合によっちゃ救いの神にもなるし、ただの汚れ仕事だったりする。

だが俺の出生上、致し方ない。まぁ、正直楽しい仕事ではないけれど、自分の未来の安寧の為ならばと諦めている。

この世界での生を使い果たし、その時までのに行えた仕事の成果によって俺の未来が決まる。現状悪くない。むしろ良いくらいなのでこのまま終わらせたい。今の人間の世の中は圧倒的につまらん。故に早々に死にたい。

 

 

だが自ら死ぬ事は許されていない。正確にはしても良いが正確には碌な事にならないので、結果的に許されていないのと同じである。

 

どっちにしろやれる事なんて多くはない。それでも出来る事をするだけ。だが地味に面倒なのでそろそろ助手なり人員が欲しいところ。言ってはいるがなかなかこない。都合の良い人手がないんだとか。

 

愚痴ってもしょうがないので仕事に行くことにする。

 

さて今日のお客様は?

 

 

 

 

*******

 

 

 

 

今日、最後のお客は…ちょっと厄介そうだな。

 

 

「……」

「いやなんか話してくれないと進められないんだけども」

「あ、あの、いきなり死んでいきなり地獄行きって言われてここに連れてこられたんですけれども、何がいけなかったんでしょうか!」

 

 

あぁ~、偶にいるこのパターンね。突然死過ぎて急遽裁くことになって、魂が前世の記憶とか諸々思い出す前の状態でここに来たパターンね。

まぁ、ほっておいたら時間経過で戻るとは思うけど、、一応簡素な説明しておこうか。

 

「落ち着けって。っても身に覚えない状態だし仕方がないか」

「何でですか?」」

「だから落ち着けと言っているだろうに。ちなみにアンタ自身が悪い訳じゃ無い。正確に言うなら其の魂がよくなかった」

「え?魂ですか?」

「お前さんの魂は前世で悪行を積んだ女の魂だからな。今の貴方の人生で前世の罪を清算できるだけの善行を積められるか、その試練のの転生後に思わぬ事故で早い内に死んだと、まぁそんな感じみたいだな。年齢にして高校一年生といった所か。まだ若かったな」

「え?それ私悪くないですよね?」

「まぁ、そうだな」

「なのに地獄行き?」

「そうだな」

「変えられないんですか?」

「基本的に閻魔が裁いた後に判決が変わる事はないな」

「どうしても⁉」

「どうしても」

「何とかしてください!」

「そこまでする義理はない」

「この人でなし‼」

「まぁ、まともな人間はここに居る訳ないしな」

「そうではないですこの屁理屈屋‼」

「屁理屈屋⁉」

 

初めて聞いたぞ、そんな罵り方。

 

「あのな、もう出ちまってるもんはしょうがないだろ。諦めて、地獄に行きな」

「嫌です!何が何でも私は転生して目的を果たします‼」

「むしろ何でそこまで生にこだわるのか…」

「だって私には絶対に果たしたい願望があるんですから、こだわりもします‼」

「ほう」

「だって…私には…私にはっ‼」

 

あ、たまに来るいい感じの話系の奴かな。感動的な物かな、また前世の夫と一緒になりたい的な。

あれ?でもこの魂に愛し合った夫なんて居なかったと思うが…。むしろの魂の悪行って…

 

 

 

「だって私の理想のご主人様に出会えていませんもの‼」

 

 

 

「そんなんで結婚詐欺まがいの事したりとかしてたりしたのお前⁉馬鹿かよ‼」

「馬鹿とは何ですか馬鹿とは!それにあれは仕方のない事なんですよ‼」

「一応理由を聞こうか」

「私って美人じゃないですか」

「まぁ、そういう特性の魂だもんな」

「で、おの人がご主人様かなーって、ちょっと様子見でちょっかい掛けたらすぐ引っ掛かって来てしまいまして…」

「ほう」

「でも違うなって思って離れようとしても、案外しつこかったりして面倒でしたし、大変だったんですよ」

「まぁ、それは大変かもしれんが」

「何より理想のご主人様に会えた時に貢ぐものが無ければ愛想をそもそも向けられないかもしれないじゃないですか?だからしつこかった人間から毟っただけですよ?それの何がいけないんです?だっていずれ出会う運命の私のご主人様の為なんですもの!」

「うわぁ、引くわ~。なかなかどうしてぶっ飛んでるわー。早く地獄に落としたいわ~。仕事じゃなきゃ即刻切ってたわ~。あ、ちなみにその理想のご主人様とやらはどんなイメージなのよ」

「決まっています‼私の美貌に惑わされる事なく、私を従えてくれる殿方ですわぁ」

「何、お前精神的に奴隷属性なの?」

「違います‼愛する者のために尽くして尽くして尽くして尽くして尽くして尽くし尽くしたい、純愛属性ですわ!」

「純愛の理が聞いたら卒倒するわ。謝れ」

「何て辛辣なお言葉!でも私は純愛です!だから…ゆ・る・し・て」

「マジでそろそろ強制的に未練断ち切って、地獄に落とそう」

「なんで私のお願い聞いてくれないんですか‼」

「だってもう色々キツイ。だから地獄に落とします。はいじゃあこの剣で切るから動かないでね…って何だよ」

「やっと出会えた…」

「は?」

「やっと出会えましたわぁ、運命のご主人様ぁ‼こんな所にいらっしゃったなんてなんでもっと早く気が付かなかったんでしょう‼あぁ、性にばかり目が言ってましたがこんな所で出会えるなんて、なんて運命的なんでしょう‼さぁ、何でも致しますわぁ、何なりとご命令を‼」

「じゃあ、地獄に落とすわ。俺の精神衛生上よろしくないし」

「そんな⁉気に入らぬところがあれば直しますからお側においてくださいぃぃぃぃぃ‼」

「えぇい、離せ、うっとおしい‼」

「お願いしますぅぅぅ!炊事掃除洗濯裁縫はもちろんの事、身辺調査や書類整理に帳簿などできますからぁ」

「無駄にハイスペックだな‼」

「それに夜のお世話もお望みどおりに…」

「あ、それはいいです」

「まさか私がありながら間に合っているとでも‼」

「違う‼…はぁ、しかしよくもまぁ会えるかどうかもわからん奴の為に、そこまでの情熱を注げたものだ」

「当然です!愛する運命の人の為なら何でも出来る‼それが純真に恋する乙女のパワーです‼」

「うん、恋する乙女って怖いんだな」

「酷いですわ。こんなにも貴方様の事を真剣に想っていますのに…」

「うん、俺たちそもそもさっき初めて会ったばかりだしね」

「あまりにも素っ気ないですわ、ご主人様ぁ」

「俺はご主人でも何でもないんだが…」

「でもほら私大概の事は何でもできますよ。分からなくてもご主人様の為ならすぐに習得して見せましょう。それに何よりも私、美人ですしお得ですよ」

「そうだな」

「やん、釣れない態度も…ってあれ?」

「なんだ?」

「いえ、なんだかそんなに急に素直になられるとこちらも心の準備が…」

「めんどくさいな、お前」

「そうやって罵られるのもなかなかっ…」

「あ~、こりゃマジもんだわ」

「では、私と結婚してくださるんですね」

「いや、それはない」

「酷いですわ。散々弄んで」

「人聞きの悪い事を言うな。あくまで俺との隷属契約だ」

「何でもいいですわ‼ご主人様と結ばれるなら‼」

「ならこれに血判を・・ってはやっ‼」

「あぁ、これで私はご主人様のモ・ノ♡」

「あぁ、うんそうだね。とりあえず暫くしたら体が再構築されるはずだから…」

「はい、すぐに参りますからね~~~~」

「いや、別にいいからな」

「そんな釣れない態度もス・テ」

 

ヒュン

 

なんかドッと疲れたわ。しっかし、いくら人手が足りなくて、使えそうだからってあんなヤバめな奴を部下にして大丈夫だろうか。

 

…今日はここらにして帰って寝よ。

 

 

 

 

*******

 

 

 

 

「おはようございます。ご主人様♡」

 

「おはよう。いきなり俺の家で起こされるとは思わなかった」

「もうこれからここは私達の家ですわ」

「よーし、ツッコまんぞ」

「朝餉の用意は出来てますわ」

「何でそこ真面目なの⁉」

「お腹はすいてませんでしたか?それでしたらお風呂にでも入りますか?もちろんお背中はお流ししますわ」

「朝食を貰おう」

「あぁ、釣れないですわぁ♡」

 

 

俺、こんなの部下にしちゃたんだけど、大丈夫かなぁ。

 




毎度の事ながら最後までお読み頂きありがとうございました。


気が付けば初投稿から二年が経ってました。早かったようなそうでもなかったような。気が付いたら二年経ってたといった感じです。途中で間が空いたりと色々ありましたがそれでも読んでくれたり応援してくれた人たちのお陰で続けてこれました。

二年経っての記念と言う事でオリジナルを投稿してみました。様子見て良さげだったら続き書こうかなと思います。

これからも頑張っていくのでまた他の作品も読んで頂けると嬉しいです。
それではまた次のお噺でお会いしましょう。さようならさようなら。
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