ソードアートオンラインにTASさん(らしきもの)をぶち込んでみた   作:無玄

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TASさん無双にしたかったがダメだった。とりあえず反省します。





第1話

2022年11月6日 午前7時57分

 

「……ふぁぁぁぁぁぁ。」

 

その日、少女は大きな欠伸と共に目を覚ました。瞼を開けると見慣れた自分の部屋。ベッドのすぐ傍には時計があり、その時計を掴んで目の前まで持ってくる。

 

「……8時。」

 

眠気で閉じそうになる瞼を必死に開けながら時計の針を見る。少女の周りでは珍しいアナログの時計で、本人曰く一秒ごとに鳴る針の音が好きだから使っているらしい。

 

「……今日はアレのサービス開始。」

 

アレとは『ソードアート・オンライン』、世界初の完全フルダイブのオンラインRPGである。ナーヴギアというゲームハードによってプレイヤーの意識を仮想世界へ飛ばし、実際に体を動かしてゲームをするという、まさに世界中のゲーマーが夢見ていたゲームである。

 

「……早く始まらないかな?」

 

少女はベッドから這い出て机の上の箱の中身に触れる。彼女の作ったナーヴギアの外付けアクセサリだ。

 

「……暇だし取り付けしとこうかな。」

 

こうして少女は作業に入る。作業中の彼女の集中力は視覚、聴覚、嗅覚、触覚が完全に遮断されるほどで、一度こうなってしまった彼女を止められる人間は居ない。

 

 

 

 

 

「………………。」

 

どれくらい時間が経っただろう。少女のナーヴギアは、最早最初にあったそれとは何もかもが違っていた。

 

「……やりすぎた……かな?」

 

流線的なデザインだったそれは、一部が鋭角的になり、かつ目を引くのが額から伸びる角のようなナニカ。

 

「……ま、いいか。」

 

呟きながら時計を確認する。丁度サービス開始時刻の3分前だった。

 

「……丁度いい時間。」

 

少女はナーヴギア(のようなもの)を装着し、ベッドに横になる。と、その時……

 

コンコン

 

扉をノックする音が聞こえた。少女は一度起き上がり、どうぞと返事をする。ドアが開き、入ってきたのは……彼女の母だった。

 

「これがナーヴギア?随分独特な形をしてるのね……。」

 

「……ん。」

 

実際は少女が色々と魔改造を施したので、元の形は面影すらないほど……辛うじてヘッドギア帖だということぐらいしか共通点を見出せないほど変化しているのだが。

 

「フルダイブのゲームがどんなものなのか、後で感想聞かせてね。」

 

「……うん。約束。」

 

そう言って部屋を出て行く母。その時、微かに「いってらっしゃい」と聞こえたような気がした。

 

「……行ってきます。リンクスタート。」

 

少女が地獄から帰還し、母との約束を果たすのは、実にこの2年後、2024年11月7日のこととなる。

 

 

 

 

 

「あー……感動だわー……。」

 

オッサンが棒読みで呟く。手に持った剣を真横に振り、猪のようなモンスターを弾き飛ばしながらだ。

 

「その割に棒読みだねー<アルタ>君。」

 

「仕方ないだろ、ここら辺の光景はベータの時に嫌というほど見たんだから。」

 

非常に面倒といった素振りで武器を振り続けるアルタと呼ばれたオッサン。その疲れたような声質と挙動が、オッサン型のアバターによく似合っている……というかほぼ違和感がない。

 

「ってことはこの辺りの案内や護衛なんかは期待してもいーのかな?」

 

「案内はしてやってもいいが、自分の身は自分で守れよ。」

 

そのアルタの横に並んで剣を振っているのは、<あああああ>という名の少女。中身(プレイヤーの性別や容姿)は不明で、アルタがレベル上げが終わってはじまりの街に帰ってきたところを話しかけられ、何故か基本のレクチャーをすることになり、現在に至る。

 

「いーじゃない、初日数時間でレベルふた桁まで上がってるんだから……ちなみにどうやったの?」

 

「無駄に頑丈な初期装備の特徴を利用して、雑魚召喚する雑魚モンスターを狩りまくってた。ちなみにこの方法は絶対にお勧めしない。」

 

「何故?」

 

「危険と見返りが釣り合わない。確かにレベル自体は短時間で上がるが、別にそこら辺ののモンスターを順調に狩ってた方が安全だし楽だ。」

 

「でも死んでも復活するから大丈夫でしょ?」

 

「そこが問題だ。確かにこのゲームは死んでも復活できる。しかし、それによって起こるタイムロスを考えると、普通に狩った方が効率が良い。ソロや少人数なら特にな。」

 

「ちなみに何回死んだの?」

 

「今のところは一度も、途中ヒヤッとした場面はあったけど。」

 

会話しながらモンスターを狩り続ける二人。レベルふた桁のアルタと、そのレクチャーを受けたあああああ(以下アゴ(あ5))は、並みのモンスターでは止められない強さになっていた。

 

 

 

 

 

数十分後、HPも減ってきた2人ははじまりの街に戻ってきていた。しかしここでアゴがあることに気付いた。

 

「何かあっちの方が騒がしくない?」

 

アゴに言われた方向を見ると、そこには人だかりができていた。そこから「ぶっ殺せ!」などの言葉が聞こえる。

 

「穏やかじゃないなぁ……。」

 

「行ってみようよ!」

 

アゴに腕を引かれて人の群れの中に入っていくアルタ。その顔には疲れと呆れがしっかりと表れていた。

 

 

 

 

 

アルタとアゴが外でレクチャーをしている頃、はじまりの街の一角ではデュエル大会が行なわれていた。それに参加している一人の女性は、どう見てもデフォルトキャラである。

 

「畜生!参った!」

 

相手が降参の意を表したことにより、目の前にウィナー表示が現れる。

 

「すげぇ!これで23連勝だ!」

 

見物人の誰かが大声で叫ぶ。その叫び声に合わせたかのように見物人が一斉に歓声を上げる。

 

「次の挑戦者!誰か居ないか?」

 

見物人の一人が挑戦者を募ると、一人の男が前に出てきた。

 

「僕が挑戦します。初撃決着でいいですね?」

 

「……いいよ。」

 

男は女性の返事を聞くと両手剣を構える。対する女性は、先程から左手を動かしてメニューウィンドウを開いたり閉じたりしている。

 

「何がしたいのか……さっぱり読めま……せん!」

 

両手剣を勢いよく振り下ろす男。ソードスキルは使用していない。それを右へのステップで躱す女性。その間も左手は止まっていない。

 

「まだまだ!」

 

振り下ろした状態から体を捻り、回転斬りに繋げる。これもソードスキルは使っていない。

 

「これで!」

 

回転斬りによって生み出された力を全て利用してもう一度剣を振り下ろす。しかし、その一撃は難なく防がれる。

 

「しまった!」

 

ソードスキルを使っていないとはいえ、全力で武器を振り下ろした直後では、隙が生まれる。当然、相手からすれば絶好のチャンスである。すぐに攻撃を防ごうと剣を目前まで持ってくるが……。

 

「何ですと!?」

 

その剣は……根元から斬られていた。折れたのではない、斬られていたのだ。結果、男は女性の一撃を防ぐことができず、HPが半分を下回って決着となった。

 

「僕の負けですか……ありがとうございました。」

 

「……ん。」

 

2人は握手し、男は立ち去る。するとそこに……。

 

「24連勝!24連勝だ!さぁ!次の相手は誰だ!?」

 

「はい!次の相手はこの人がやります。」

 

オッサンが少女に引き摺られてきた。言うまでもなくアルタである。

 

「アゴ!勝手に決めるなよ。」

 

「アゴ!?勝手に酷い渾名付けないでよ!」

 

「おっと!挑戦者だ!これで25連勝となるか!はたまたそれを食い止めるのか!?」

 

実況解説風の男が場を盛り上げる。更に見物人が前に詰め寄ってくる。その結果は……。

 

「退けなくなっちまった……。」

 

アルタは渋々とメニューウィンドウを開き、デュエルの申請をする。

 

「初撃決着でいいな?」

 

「……うん。」

 

女性がデュエルの申請を受け、カウントダウンが始まる。その間にアルタは剣を抜き、八相の構えを取る。

 

「あれ?」

 

見物人が疑問の声を上げる。アルタは八相の構えを取っているのに対し、女性は剣を右手で持ち、左手は前に胸の前で握りこぶしを作るように構えている。

 

「メニュー開閉はしないのかい?」

 

「……そんな余裕はない。」

 

2人は構えたまま一切動こうとしない。まるで、先に動いた方が負けるといわんばかりに。

 

 

 

 

 

2人の決闘は、意外な形で幕を閉じる事になった。決闘に集中していた2人は気付かなかったが、周囲の見物人はある現象に頭を悩ませていた。その現象とは……ログアウト不可。見物人がガヤガヤと騒ぎ出した直後、異変が起こった。それは決闘中の2人ににも同じく……。

 

「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ。」

 

「!?」

 

「……?」

 

気が付くとシステムアナウンスの文字と共に赤いローブのアバターが映し出されていた。……いつの間にか場所も広場へと移動している。

 

「私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。」

 

茅場晶彦。ゲーマーならばその名を知らぬ者はいない。量子物理学者でありナーヴギアの開発者にしてSAOを手がけたゲームデザイナー。天才とは彼の為にあるような言葉だろう。その茅場の口から衝撃の事実。

 

・ログアウト不可はバグではなく仕様である。

 

・外部の人間がナーヴギアを外そうとすれば高出力のマイクロウェーブによって脳を焼却する。

 

・ゲーム内でHPが0になった者も同様。

 

・ゲームがクリアされれば生き残ったプレイヤーは全員解放。クリア条件はアインクラッド全100層突破。

 

「マジか……。」

 

「………………。」

 

「それでは最後に、諸君のアイテムストレージに私からのプレゼントを用意してある。確認してくれたまえ。」

 

その言葉を聞いたアルタはメニューウィンドウを開き、アイテムを確認する。そこに書かれていたのは『手鏡』。それをオブジェクト化すると……。

 

「ん?……うお!?」

 

鏡を覗いた瞬間体が光に包まれる。そして光から出てきたのは……茶髪の青年だった。再度鏡を覗き見る。

 

「俺の顔だ……。」

 

「……私の顔。」

 

アルタが先程まで決闘していた女性が居た方向を見ると……半開きの目が印象的な少女が居た。アルタはその少女に近づいて問う。

 

「済まないが確認させてくれ、さっきまで俺とデュエルしていたのは君か?」

 

「……うん。」

 

「そうか……君は今の話を聞いてどう思う?」

 

「……分からない。」

 

少女は首を振って答える。

 

「これからどうする?」

 

「……決まってる。」

 

少女は、その可愛らしい姿とは裏腹に力強く宣言するように言い切った。

 

「……このゲームを攻略する。」

 

これが最強の少女<タス>と後にその相棒となる<アルタ>の初めての出会いであった。

 

 

 

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