BLEACH 〜Higher Than That Moon〜 作:虹捜索隊
〜現世・某国〜
「何の用だ?」
キャンディスとリルトットはナジャークープを睨みつけている。
「お前らに頼みごとがあってな。それより2人はどうした?」
ナジャークープは辺りを見回していた。
いつもならあと3人いるはずだからだ。
「あいつらとは決別した。」
「決別だと!?」
驚きでつい声が大きくなってしまう。
「面倒だな、、、。まぁ二つあれば足りるか。」
ナジャークープは独り言を言うと手を口元に当て少し考えている。
「まぁいい。とりあえずお前ら2人ともメダリオンを俺にくれ。」
リルトットが表情を変えずその理由を問いただす。
「なんでだ?」
「近々また尸魂界に殴り込みに行く。その時にいるんだよ。」
「懲りねぇなぁ。」
リルトットは呆れている。
「で、どうなんだ?」
「もちろん断るぜ。俺たちはもう面倒ごとは懲り懲りなんでね。」
「そうか、、、。」
「じゃあ力ずくで奪うしかねえな!」
ナジャークープは滅却師十字を取り出すと、手に霊子を集め矢を生成し始めた。
その様子を見た店の男はキャンディスとリルトットをそれぞれ両手で肩に担ぎ走り出した。
「なにすんだよ!?」
キャンディスはいきなり持ち上げられたことに激昂している。
「あそこは俺の店だぞ?壊すつもりか?」
男は細い路地を何度も曲がり、その先の広い空き地へとたどり着く。
「よくわからんが、奴をここで迎え撃つ。」
男は腰のポーチから鉄球を取り出した。
「
男はそう命令すると鉄球を手放す。
鉄球はブクブクと細胞分裂のようにどんどんと膨れ上がり、次第に人型を形成していく。
鉄球は濃い紫色の女性のような形に変化した。
「あ〜、久しぶりに出た気がするわ。」
その鉄球の女性は男の後ろに立つキャンディスとリルトットを見て率直な感想を漏らす。
「なぁに?この子達。あんた知らないうちにこう言う趣味ができたの?」
初めて見る能力を前にリルトットは驚きを隠せなかった。
「なんだこいつ?完現術の一種か?」
そしてそれは追いついてきたナジャークープも同じであった。
「おいおい、なんだそいつは?」
「ダルク、頼んだ。あの男だ。」
男はその鉄球の女性をダルクと呼んでいた。
「久々に張り切っちゃうわよ〜!」
ダルクは両手を前へ突き出すとそこから鉄球を猛スピードで飛ばした。
「まだ観察できてねぇってのに!」
ナジャークープは避けながらダルクを分析している。
「上手いこと避けるのねぇ!ならこれはどうかしら?」
ダルクは腕に小さい銃口のようなものを作り鉄球を放つ。
それはまるで無限に撃てる機関銃のようだった。
幾百にも上る鉄の雨を前にナジャークープは次第に逃げられなくなっていく。
「クソッ!このままじゃやられるっ、、、!」
彼は頭をフル回転させ打開策を考えた。
その時目に入ったのが、男や鉄球の女性と離れたところにいたキャンディスとリルトットだった。
ナジャークープは静血装を最大にし、キャンディスとリルトットに狙いを定め
「(お前ら純粋な滅却師に虚閃は致命傷のはず!)」
その狙いにいち早く気づいていた男はキャンディスとリルトットの元へ駆け、二人をその場から放り投げた。
「ダルク!!」
鉄球の女性、ダルクは男に向かってサッカーボールほどの鉄球を放出した。
鉄球は男の身体の左側面に当たり男を吹っ飛ばした。
それによって虚閃を避けたのだ。
「おっさん!!」
キャンディスが男の元へ駆け寄った。
「おっさんなんで!?」
男は左腕を押さえ倒れている。
「なんとなくお前がケインに似ていたからだ、、、。」
「もう俺の前で若い者の命は散らせない。」
「ケイン、、、?」
リルトットナジャークープの虚閃、手負いの男、そして戦意を喪失しているキャンディスを見てどうするべきかを考えていた。
そして10秒ほど考え、リルトットはキャンディスの元へ駆け、自身と彼女の懐からメダリオンを引っ張り出して、2つとも遠くへと投げ捨てる。
「これがほしいんだろ!?おらっ!!」
「てめっ、、、!」
ナジャークープは放物線を描き飛んでいく2つのメダリオンを目で追いながら、その方向へと飛廉脚で飛んで行った。
「今のうちだ!」
キャンディスは男に肩を貸して立ち上がらせ、リルトットは浦原から譲り受けた簡易黒腔発生装置を取り出し、黒腔を出現させた。
〜虚圏〜
「ん?なんか座標変わってないか?」
黒腔から出てきたリルトットはいつもと違う風景を目の当たりにし、座標が違っていることに気づく。
するとそこへショートカットでありながら、左の髪が肩まで伸びているアシンメトリーの女性が、負傷している男を見て、心配そうに近寄ってきた。
「おかえりなさいませ、、、どうしたんですか!?」
「アウラ、こいつの手当てを頼む。」
アウラと呼ばれる女性は医療箱のある戸棚の方へと急ぐ。
リルトットは当たりを見回しアウラに尋ねた。
「ネルやらハリベルは?」
「現世の黒崎一護さんの元へ行きました。正しくは浦原商店ですが。」
アウラは自分の目線と同じくらいにある戸棚を探りながら答えた。
男が左腕を押さえながらさらに尋ねる。
「浦原だと?お前たちも呼ばれていたのか?」
キャンディスは男の左腕を気遣った。
「おっさん大丈夫かよ。」
「腕と肋骨数本が折れただけだ。それより一体何が起こっている?」
男はキャンディスにも尋ねた。
「あたしらも一ヶ月くらい現世で食料調達してたからな、、、。」
アウラが状況を説明し始める。
「虚夜宮はノヴァディオという者に占拠されました。」
「ノヴァディオ?」
「ハリベル様の話では、その配下には元十刃や滅却師もいるようです。」
「尸魂界では護廷十三隊を中心に、現世と虚圏では黒崎さんを中心に対抗戦力を集めているようです。」
「私はここの調理師ですのであまり詳しくは聞かされていませんが、、、。」
アウラは自分の知り得る限りの情報を伝た。
「それを言ったら俺達だってここ専属の食材調達業者みてぇなもんだけどな。」
男はひとしきり話しを聞くと左腕を押さえながら立ち上がる。
「現世に、空座町に連れて行ってくれ。おれも浦原に呼ばれて日本に行くところだった。」
「おっさんも浦原に?ってかおっさん名前は?」
「俺はクラウド・ゴーガン。だが今から当分の間は、、、」
「古賀
〜無間〜
一つ暗闇の中を歩く影があった。
そこに声のみが響く。
「久々だね。もういいのかい?」
低く落ち着いた声だった。
「あぁ。何千年とかけてゆっくりと理解した。お互いにな。」
さらにその人物は話を続けた。
「その間に外では、、、色々あったようだな。滅却師、綱屋代、そして仙波。」
「君が出ていれば犠牲は減らせたかも知れないな。」
相手の顔は暗闇で見えないものの、嘲笑しているのが分かる。
「お前が犠牲とは、死神側についたというのは本当だったようだな。」
「はは、客観的に犠牲を語ってみただけさ。私以外は敵だよ。」
「今護廷隊は大丈夫なのか?私がいた頃やお前のいた頃よりも弱体化しているように思えるが。」
「私を除けばの話だが、今の護廷隊は今まででもかなり強い方だと思うがね。」
「特に新戦力。」
狩能雅忘人
阿散井恋次
檜佐木修平
「狩能雅忘人は始解無しで更木剣八を認めさせるほどの実力を持つ。」
「阿散井君は護神大戦で、檜佐木君は綱彌代時灘の件でその能力の高さを証明したからね。」
相手の思いもよらない評価に少し驚いていた。
「お前が護廷十三隊を褒めるなど珍しいな。」
「私を除けばの話だと言ったはずだよ。」
「それで、君は行くのかい?」
「今尸魂界は危機にさらされている。」
「ということは
「
「いや、今の私はただの
痣城と呼ばれる男は一しきり話し終えるとまた歩き始め、門の元へとたどり着いた。
ギィィィ
すると門が開き始め、外からは深く暗い霊圧が流れてきた。
「やぁやぁ、痣城クン。」
「京楽春水、、、。」
「喜助クンからの天挺空羅は聞いたろう?迎えに来たよ。」
「まさか総隊長も了承済みとは。」
痣城はわざと呆れたように振る舞った。
「まぁそこら辺のことも含めて一番隊隊舎で話すよ。」
「じゃあ行こうかねぇ。」
京楽はそう言うと振り返り門の外へと出て行く。
かれこれ30分ほど歩いただろうか?
静かに足跡だけが響く暗闇の中、京楽が突然言葉を発した。
「ちょっと待ってくれるかい?」
痣城が左を向くとそこには暗闇の中、赤黒い門があった。
「ここは、、、大焦熱?」
大焦熱とは無間に次いで大罪者を収監する監獄である。
「ここにも1人罪人が居てね。喜助クンの声がかかったんだ。」
「誰だ?」
「君は知らないと思うけど、元十一番隊隊士だよ。」
「罪人を2人も集めるとは尸魂界も寛容になったものだな。」
京楽は不気味に笑うと門に手をかざした。
「偉いさん方も分かったんだろう。自分たちを守るには力が必要だったね。」
京楽はさらに続けた。
「それに今回は、敵対していた破面だろうと滅却師だろうと、復元したデータだろうとこちら側の戦力になるならなんでも使うつもりだからね。」
門が開き始めると、隙間から帯刀した死神が立っていることが確認できた。
「やぁ、久しぶりだねぇ。」
〜浦原商店地下・勉強部屋〜
「なんで俺のは具象化しないんだ、、、?」
一勇は遠目で苺花が具象化した斬魄刀と戦っている様子を見ていた。
「今解析中っす、、、。」
そう言い、浦原は困った様子で携帯機器を操作していた。
そこへ少し離れたところにいた一護が近づいてくる。
「俺なりに原因を考えてみたんだが、、、」
一護は午前中からずっと考えていた。
今の状況をどう打開すべきなのか。
「一勇、お前自分のルーツがどんなか知ってるよな?」
「あぁ。」
かつて一護から聞いていた。
祖父にあたる一心は死神で、祖母にあたる真咲は滅却師だった。
そしてその2人が出会う際に真咲は計らずも虚化してしまった。
そのため自分にも死神、滅却師、虚の力が宿っていると。
さらに母の黒崎織姫からは舜瞬六花の能力も受け継いでいる可能性があるとも。
「けどお前今使えるのは死神の能力だけだよな?」
一護の言葉を聞いて浦原は勘付いた。
「なるほど、死神の力とは対話はしているが、その他とはしていないということですか。」
「俺は滅却師の力と死神・虚が混ざり合った力、それぞれと対話をして真の斬月を手に入れた。」
「死神のみの力が出てきているのを見ると、一勇は死神と虚の力が混ざっていない。」
「一勇は死神以外の力とも対話をしなきゃいけねぇ。」
すると一護たちの背後から関西弁が聞こえてくる。
「なるほどなぁ。なんで俺呼んだんや思うたら、そういうことかいな。確かにお前んときも俺が強制的にやらせたんやったなぁ。」
「悪いな平子。」
岩の陰から出てきた五番隊隊長平子真子は普段の死覇装ではなく、私服にハンチング帽を被っていた。
「ほんまに黒崎家は手のかかるやっちゃで。こっちは忙しゅうてしゃあないっちゅうのに。」
「せやから今回も説明は無しや。行くで一勇。」
平子は一勇の顔に手をかぶせる。
そして一勇は深い意識の中へと誘われた。
「後悔しなや。」
To be continued......