BLEACH 〜Higher Than That Moon〜   作:虹捜索隊

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第9話 Passing through one thousand nights

 

 

 

 

〜墓地上空〜

 

 

 

「ほら来たよ。」

 

シエンは駆けつけた一護と白哉を一瞥した。

 

「だから言ったじゃないか。穏便にって。」

 

 

 

「茜雫!!」

 

「一護、、、?」

 

 

「てめぇ!」

 

一護は瞬歩でシエンへと斬りかかる。

 

シエンは硬化した自らの腕で一護の斬撃を防ぐと、茜雫に呼びかけた。

 

「さっき言った通りだ。だが、お前が朽木白哉を倒せば彼女達を殺しはしない。」

 

 

「くっ、、、」

 

茜雫は白哉の元へと向かいながら斬魄刀を解放させる。

 

「夕闇に誘え、弥勒丸(マイトレイヤ)!」

 

風を巻き上げながら向かってくる茜雫に対し白夜も始解をする。

 

「散れ、千本桜。」

 

そして紅葉を纏った風と桜の刃が正面からぶつかった。

 

白哉は茜雫と刃を交えながら問いかける。

 

「いいのか?黒崎一護が気になっているようだが。」

 

茜雫は白哉の言葉を聞き思い切り斬魄刀を振り下ろし白哉を後退させた。

 

「あんたに何が分かるっての!!?」

 

そして再度茜雫は白哉へと斬りかかった。

 

「あたしがあんたを倒さなきゃ一護の家族が殺されるんだよ!!?」

 

白哉は鍔迫り合いをしながら答えている。

 

「今黒崎一護が戦っているではないか。よもや奴が負けると思っているのか?」

 

「シエンの強さを知らないからそんなこと言えるんだ!!」

 

茜雫は風を発生させ白哉との間に距離をとった。

 

「そう思うのなら助けに行ったらどうだ?ここで奴を倒して仕舞えば問題ない。」

 

 

白哉はさらに続けた。

 

「それに私が言う“いいのか?”とはそういう意味ではない。」

 

「気持ちを伝えずして良いのか、と聞いている。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

あの時気持ちを伝えていなければ死ぬまで後悔しただろう。

 

 

 

〜南流魂街七十八地区・戌吊〜

 

 

「朽木様、またこのような所に、、、。」

 

緋真。

戌吊の虚討伐で来た時に助けた流魂街の民。

 

そのとき私は虚を倒し損ね、逆に緋真に助けられた。

 

それをきっかけにこうして定期的に、周りの目を盗んで会っていた。

 

 

「朽木様といるとなんだか安心します。」

 

「私もだ。」

 

 

お互いに気づいていた。

身分に差がありすぎる。

 

緋真は頭がいい。

私の、朽木家の迷惑にならないよう、会う時にも場所や着衣等に細心の注意をはらってくれていた。

 

緋真の思う通り、朽木家も次期当主が流魂街の民と結ばれることを許さないだろう。

 

 

この世界にはどんなに願い望もうが変えられぬことが沢山ある。

 

私が想いを伝えようと彼女は私のために断るだろう。

 

 

私は勝手に一人でそう思っていた。

 

 

 

 

 

「また流魂街戌吊で多数の虚です!負傷者も多数とのこと!」

 

私は命令が下される前に隊舎を飛び出した。

 

 

「緋真、、!」

 

私は戌吊に向かう道中後悔していた。

想いを伝えておけばよかったと。

 

確かに世界には変えることのできないことがある。

 

「だが私が緋真を想うことも変えることのできぬ事実。」

 

 

間一髪だった。

緋真が虚に襲われる寸前で私はその虚共を斬り伏せた。

 

 

「朽木様!」

 

すぐ様緋真の元へ駆け抱き寄せた。

 

「緋真、私はおまえを、、、」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「けど一護には織姫さんも一勇もいる!」

 

「もう何かを変えることはできないんだよぉ!」

 

茜雫は斬魄刀を振り下ろし、竜巻を白哉に向ける。

 

その竜巻を刃がの花びらで打ち消すと白哉は茜雫に語りかけた。

 

「確かに変える事は出来ぬ。」

 

「だったら、、、!」

 

「だがおまえが黒崎一護を想っているということも変える事は出来ぬ。」

 

「確かに想いを伝えることは怖いだろう。だが想い人に想いを伝えることは結果がどうであろうと何より素晴らしいことだ。」

 

「あの時言っておけばよかったと後悔するのは嫌なのでな。」

 

その言葉を聞き茜雫はがくっと手の力が抜けて戦意を喪失したようだった。

 

「どうするのだ?」

 

 

「一護、、、、」

 

茜雫は一護の方を見つめている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ、、、、」

 

一護はシエンの拳を一対の斬月で受けるが、止めきれず遥か後方に吹っ飛ばされた。

 

「おいおい、黒崎一護!?」

 

シエンは一護を嘲るように笑っている。

 

「この程度かい!?君は滅却師から特記戦力として数えられたんだろう!?」

 

「こいつ、、、強え、、、」

 

一護は片膝をつきながらゆっくりと立ち上がっている。

 

 

「つまらないからもう終わらせるよ。」

 

シエンがかざした手の前には高濃度な虚の霊圧が球状となり浮かんでいた。

 

王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)。」

 

 

「一護!!」

 

いくつもの竜巻が連続して王虚の閃光とぶつかり轟音を響かせながら相殺した。

 

「茜雫!」

 

予想外の展開にシエンも驚いている。

 

「おいおい、裏切るのか?」

 

 

一護の前に茜雫が立ちはだかり、斬魄刀を構えている。

 

「今度はあたしが一護を守る!」

 

 

その瞬間、何体もの欠魂(ブランク)が斬魄刀から飛び出し、茜雫の周りを飛び回った。

 

 

斬魄刀(マイトレイヤ)は解放前へと戻っている。

 

 

「隙がありすぎだよ!」

 

シエンはまた右手をかざし、手の前に赤黒い高濃度の霊圧の球を出現させた。

 

そしてまた王虚の閃光を撃とうとした時だった。

 

桜の刃が波となってシエンを飲み込む。

 

 

「白哉!!」

 

一護の横には白哉が立っており、千本桜を操っていた。

 

「時間を稼ぐだけだ。」

 

 

千本桜が散るとシエンが無傷のまま姿を現わす。

 

「何が時間を稼ぐだけだって?そんな手加減をしてないで殺し合いをしようじゃないか、朽木白哉。」

 

白哉は驚くでもなく余裕な様子で静かに答えた。

 

「兄を倒すのは私ではない。」

 

白哉の視線の先には茜雫がいた。

 

 

 

 

欠魂は茜雫の周りを飛び交いながら語りかけていた。

 

 

 

『やっと決心がついたのね。』

 

『君が決めたなら僕は付いていくよ。』

 

『今度はおれが助ける番だ。』

 

『今なら本当の名前を思い出せるはずだよ。』

 

 

 

そうだ。この力の本当の名前は、、、、

 

 

 

茜雫の周りを霊圧の風が吹き荒れ、紅葉も舞っている。

 

 

その力は生まれ変わる。

 

一護を守れるようにと。

 

 

 

 

「夕闇に誘え!!」

 

 

 

 

弥勒丸(みろくまる)!!」

 

 

 

 

 

 

以前の解放とは比にならない霊圧を放っている。

 

茜雫は風と紅葉を纏っていた。

 

 

「やぁぁぁぁぁぁ!!」

 

弥勒丸からいくつもの竜巻を発生させシエンへとぶつけた。

 

「こんな風、さっきと同じで涼しいだけ、、、、?」

 

鋼皮(イエロ)に加え、静血装で茜雫の放った竜巻に備えたのだが、えぐり取るような風の感覚を覚え、咄嗟に距離をとった。

 

「相当威力が強くなっているようだね、、、。」

 

シエンは余裕な表情を見せてはいたが冷や汗を流していた。

 

シエンは頭上に黒腔を出現させ、そこから何体もの最下級大虚(ギリアン)を召喚した。

 

「この量を捌けるかな!?」

 

 

「私が最下級大虚(ギリアン)を潰す。」

 

白哉は斬魄刀から手を離す。

 

「卍解、千本桜景厳。」

 

白哉は億の刃を手掌で操り最下級大虚(ギリアン)を斬っていった。

 

シエンは白哉が離れたのを見計らい、強力な霊圧を纏った拳で茜雫に襲いかかった。

 

しかしシエンの腕は突然発生した竜巻によって複雑に折れ、さらに突風で吹っ飛ばされてしまう。

 

「本当にさっきまでとは別人だね、、、。」

 

シエンは腕を押さえながら態勢を立て直していた。

 

そこへ茜雫は弥勒丸(みろくまる)を振り上げシエンへと斬りかかる。

 

 

「くそっ、、、!」

 

シエンは霊子を固め弓を生成し、斬りかかってくる茜雫に向けて放った。

 

「まだまだ!!」

 

さらに大きな竜巻を発生させ矢と相殺させた。

 

しかし相殺の爆風が晴れるとその先にはいるはずのシエンが消えていた。

 

 

「こっちだよ!」

 

 

シエンの腕は再生しており、茜雫の頭上ですでに弓を引き絞っていた。

 

 

「まずいっ、、、」

 

 

「茜雫!!月牙十字衝!!」

 

シエンと茜雫との間に一護が現れ、月牙十字衝を放った。

 

だが高濃度の虚の矢は月牙を突き破って一護に命中し大爆発を起こした。

 

そして一護は気を失って落下していく。

 

「一護!!」

 

そこへ白哉が瞬歩で走り受け止めた。

 

 

シエンは改めて茜雫に問いかける。

 

「今黒崎一護と朽木白哉を倒せばお前は無事に我々の元に戻れる。さぁどうする?」

 

 

茜雫は弥勒丸を握りしめ答えた。

 

「知らないわけじゃない。あたしは無事でなんかいられない。あたしがいる理由はあたしを使って尸魂界や現世で大爆発を起こさせるためなんでしょ、、、。」

 

「あたしが戻るってことはあたしも一護も2人とも死ぬってこと。」

 

「けどあたしが戻らず、ここで死ぬまで抵抗すればあたし1人だけで済む。」

 

「自分を犠牲にするというのかい?」

 

 

茜雫は左手で死覇装の裾を力強く、そして震えながら掴んでいた。

 

「やっぱり、、、自分が死ぬよりも、、、」

 

 

「一護が死ぬのが嫌なんだよぉ!!」

 

 

 

茜雫の斬魄刀が光を放ち始め、その光が茜雫を包み込んだ。

 

 

 

 

 

光の中に浮かぶ茜雫。

 

目の前には大勢の人(自分)が立っていた。

 

 

『あなたの思いに根負けしちゃった。』

 

『私も同じ気持ちよ。』

 

『君のその覚悟には感服したよ。』

 

 

 

さらにそこには赤い髪留めをした茜雫(自分)が立っていた。

 

『これが(一護)を守るための新しい力。』

 

 

 

私が

僕が

ウチが

オレが

あたしが

儂が

自分が

 

 

 

一緒に戦うよ

 

 

みんなで守ろう

 

 

 

 

 

光はだんだんと収縮し、弥勒丸に吸い込まれた。

 

 

 

 

「卍解!」

 

 

 

 

風神弥勒丸(ふうじんみろくまる)!!」

 

 

 

 

茜雫は白い袈裟に、天女を思わせるような淡い赤色の羽衣を纏っていた。

そして頭には黄色、赤色、オレンジ色のリボンがついた金色の髪飾りがつけられている。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「卍解だと?」

 

 

見たところ茜雫の外見上の違いは、天女の羽衣と髪飾り、そして左手に持った赤い紅葉を思わせる羽扇だった。

 

そして右手には依然として金色の錫杖があった。

 

 

「はぁ!!」

 

茜雫が右手の錫杖を振ると始解よりも大きな竜巻が発生した。

 

 

シエンは強力な吸引力により竜巻へと引き込まれて直撃した。

 

 

竜巻が消えると大量に血を流すボロボロのシエンがかろうじて立っていた。

 

「たしかに威力は上がっているようだが、、、!」

 

元の状態とまではいかないものの、見る見るうちにシエンの体は再生していった。

 

「それが卍解の能力ならハズレだね!」

 

シエンが攻撃に移ろうとした時だった。

 

 

茜雫が左手に持つ羽扇を振ると、次の瞬間にはシエンの右胸に小さな竜巻がめり込んでいた。

 

その竜巻は小さいながらもとてつもなく威力があり、シエンの右胸をいとも容易く貫通した。

 

「ぐぁぁぁ!くそっ、、、、鋼皮と静血装を貫通するだと!?」

 

 

シエンは激高したまま、また高濃度の虚の矢を生成し躊躇なく撃ち放った。

 

「さっきよりも霊圧を込めた!これがお前如きに防げるはずが、、、?」

 

 

茜雫は右手の錫杖の先をカン、とゆっくりと霊子で固めた地面に打ち付ける。

 

すると茜雫の後ろで竜巻が発生し、そこから大量の紅葉が茜雫の目の前に集まった。

 

 

シエンの矢は紅葉の盾によっていとも簡単に防がれた。

 

「なんなんだ!その力は!?」

 

「一護を守るための新しい力よ!!」

 

 

 

茜雫の後ろには大勢の人影がうっすらと浮かんでいた。

 

「いっけえええええ!風神弥勒丸!!!」

 

巨大な竜巻と弾丸の竜巻がシエンを包み込む。

 

 

「クソガァァァァァァァァ!!」

 

 

 

 

 

 

「一護!!」

 

茜雫は一護と白哉の元へと向かう。

 

 

「一護は!?」

 

「心配ない。今は気絶しているだけだ。直に目を覚ますだろう。」

 

 

「見事だった。お前の想い、確かに黒崎一護に届いていたぞ。」

 

そう言い残して白哉は瞬歩でその場を後にする。

 

 

 

 

夜が明けた肌寒い土手沿いの道。

 

茜雫はボロボロになった一回りも大きい一護をおぶって歩いていた。

 

 

「茜雫、、、、?」

 

「気がついた?ちょっとだけでいいから付き合って。あたしも限界超えてそう長くないから。」

 

 

赤信号、その近くには40kmの速度制限の標識。

 

もう明け方だが人影はやはりない。

 

 

茜雫はあの墓地へと向かっていた。

 

 

「一護、、、あの時お墓の前で、、、ありがとね。」

 

 

ーーあぁ、あるぜーー

 

ーーおまえはこの街で生きてきたーー

 

ーー家族もちゃんといたーー

 

 

 

「安心させてくれて。嬉しかったよ。」

 

 

そして茜雫は墓地へと入っていった。

 

 

今なら行ける。

 

一護と一緒の今なら。

 

 

自分の墓なのかどうかを確かめに。

 

自分の生きた証があるのかどうかを確かめに。

 

 

突き当たりから4つ手前の墓。

 

 

 

 

ーー佐藤一夫ーー

 

ーー佐藤 学ーー

 

 

 

「ほら、やっぱり。一護は嘘つくの下手だから。」

 

「お前の生きた証は残る、、、。」

 

「俺にも残ってたようにみんなの記憶に残る、、、。」

 

「だから、そんな顔しねえでくれ、、、。」

 

 

想いを素直に伝えるのは怖い。傷つくから。

でも今なら言える。

自分の気持ちを伝えることは世界で一番素敵なことだから。

 

 

 

「一護ありがとう。大好きだよ。」

 

「あぁ。」

 

「やっぱり、、、あったかい。また会おうね。」

 

 

茜雫の頬を涙が流れ落ちる。

 

そして紅葉は空へと舞い上がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた!!」

 

自宅で目を覚ますと目の前には織姫の顔があった。

 

「俺は一体、、?」

 

「全然知らない人のお墓の前で倒れてたの。白哉さんが教えてくれて。」

 

「そこにこれが、、、。これって茜雫ちゃんのだよね、、、?」

 

ボロボロになったオレンジ色のリボン。

 

「あぁ、そうか。今度はちゃんと茜雫の記憶があるんだな、、、。」

 

一護はオレンジ色のリボンをそっと受け取り握りしめた。

 

 

「またな、茜雫。」

 

 

 

 

 

To be continued.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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