BLEACH 〜Higher Than That Moon〜 作:虹捜索隊
〜霊王の脊髄迎撃地〜
「オマエ、更木剣八ダナ?」
フードを被ったまま霊王の脊髄は片言の言葉で剣八に問いかけた。
「なんだてめぇ、喋れんのか?脊髄なんだろ?」
「シニガミ、敵、殺ス。」
「会話はできねぇみたいだな。」
すると脊髄の背中から蜘蛛の足のように骨が伸び剣八を襲う。
「格好は虎徹の卍解みてぇだな。」
剣八は伸びてくる骨を一気に切り落とし相手の攻撃を止めた。
しかしその切断面から糸のようなものが伸び地面に寄生する。
「なんだぁ?」
すると地面がめくり上がり剣八を包み込んだ。
そして横のビルにも寄生し、ビルを剣八へと倒壊させる。
「なるほど、涅の野郎が言ってやがった神経がどうのこうのって奴か。」
「となると体乗っ取られりゃめんどくせぇことになるな。涅の野郎からもらったやつ飲んどくか。」
剣八は降りかかる瓦礫を斬りながら懐から怪しげな小ビンを取り出した。
ビンのラベルには、“神経を防御するヨ”と書かれている。
「ほんとに効くんだろうな。」
剣八は一口で薬を飲み干した。
そして再度相手の方を見ると、背中から蜘蛛の足のように生えた何本もの骨が折れ曲り剣八の方を向いていた。
「あぁ?」
背骨から弾丸のような骨の破片が発射される。
剣八が飛んでくる骨の破片を刀で撃ち落としていると、突然刀の制御が効かなくなった。
斬魄刀を見ると血管のようなものが張り付いている。
「斬魄刀にも寄生すんのか。」
さらに神経は斬魄刀を伝い、剣八の腕に寄生しようとしたが薬の作用で抗体霊圧が発動し灰となった。
「ほんとに体には入らねぇのか。霊圧で焼き切れるってこたぁ、、、」
剣八は斬魄刀に寄生した神経を焼き切ろうと霊圧を上げる。
寄生した神経は黒い灰となり空気中を漂った。
「なるほど、ちっとは耐えるみてえだがその骨の欠片中にゃそんなに神経は入ってねえみてぇだな。」
「サッキカラ痛イ。痛イ、イヤ。イヤ、殺ス。」
脊髄は神経を四方のビルに伸ばし、剣八に向け倒壊させた。
剣八は倒壊するビルへと高く跳躍すると斬魄刀の名を呼んだ。
「行くぜ。呑め、野晒!」
倒壊したビルの瓦礫は剣八を避けるように真っ二つに落ちていく。
すると脊髄はその瓦礫に神経を寄生させゴーレムのような兵士を作り出す。
瓦礫に寄生した神経は本体から切り離され、独自で動き始めた。
すでに十体以上ものゴーレムが剣八を取り囲んでいる。
「数で勝ちゃいけるとでも思ってんのか?」
剣八が野晒を一振りすると全てのゴーレムが腰のところで上下真っ二つとなった。
しかし上半身は下半身に瓦礫を集め、下半身は上半身に瓦礫を集め数を二倍に増やし再生した。
さらにそれぞれが瓦礫や信号機、ガードレールを取り込み巨大化していった。
脊髄もすでに瓦礫に包まれ、どれが本体かわからなくなっている。
「隠れやがって、面倒くせぇなあ。」
剣八は次々と周りのゴーレム達の手足をを斬り捨てていく。
しかし何度斬ってもその断裂面に瓦礫が集まりまた新たなゴーレムを作りだした。
キンッ
「チッ、刀が通らなくなってきたな。」
肥大化したゴーレムの体表は厚く、野晒も通らなくなってきていた。
数十体のゴーレムが剣八と交戦している間、その後ろでさらに十数体ものゴーレムが集まり光を放っている。
ある一体のゴーレムを中心に、左右に各五体のゴーレムが30メートル離れたところに立っていた。
そしてその両端が霊圧の線で結ばれ、線の中心に立つゴーレムがまるで弓を引き絞るように線を後ろに引っ張り始める。
同じく30メートルほど引っ張ったところで、周りからとてつもない霊圧を放ったゴーレム達が集まり、巨大な岩の塊となった。
「コレデ更木剣八モ終ワリ。」
それは滅却師の得意とする弓矢と言うよりはパチンコ玉を連想させるものだった。
剣八はそれに気づかず剣を振るっていると、突然周りのゴーレムが剣八に抱きつき始めた。
「なんだ?」
「終ワリ、死ネ。」
放たれた巨大な岩の塊は神経を網のように伸ばし、周りのビルやその瓦礫を巻き込みながら剣八へと迫っていく。
「くそっ、そういうことかよ。」
剣八は迫り来る塊を見て、なぜゴーレム達が突然集まってきたのかがやっと理解できた。
身動きの取れない剣八は野晒で防ぐが受け切れず大爆発とともに吹っ飛ばされてしまう。
轟音は暫く鳴り響き続けた。
粉々になった小さな破片はまた小さなゴーレムとなり、その数は一万を超えていた。
「オマエ弱イ。モウ死ネ。」
どこにいるかもわからない本体がそう告げると一斉に滅却師の弓矢を生成し剣八がいるであろう砂煙に向かって放った。
「言ってくれるじゃねぇか。なぁ野晒。」
「見せてやる。
「卍解。」
ーーーーーーーーーーー
〜霊王宮〜
数日前のこと。
「更木や。おんしは対話と具象化は既に済ませてある上に、卍解の力にも少し触れている。」
「らしいな。」
「しかし卍解を修得するには斬魄刀を屈服させなければならん。」
「屈服だぁ?なんだ?野晒を斬り伏せりゃいいってか?」
「斬り伏せられるのならな。まぁその前に儂と剣を交えてもらおうか。」
そう言うと兵主部は斬魄刀を取り出した。
「黒めよ、
兵主部が斬魄刀を解放させると、まるで筆のような刀へと形を変える。
「なんだ?筆で俺を斬ろうってのか?」
「筆か刀か見分けがつかんかね?」
兵主部が一文字を振ると、墨が飛び散り剣八を黒く染め上げた。
「今のおんし
「名前が無ぇだと?」
剣八には言っている意味が理解できなかった。
「名がない、その痛みおんしならわかるはず。まぁそれもよく話し合うのがよかろう。」
兵主部は意味深な言葉を発すると、再度霊圧を上げた。
「さて、ではおんし
「
現在では卍解と呼ばれる“真打”という名称は兵主部が初めて斬魄刀を二段階解放させたときに呼んでいた解号だった。
そして兵主部が白色の一文字で、全身が黒くなっている剣八とその斬魄刀に“名”を与えた。
そこには“更木剣八”でも“野晒”でもなく、《獣》と書かれている。
「一度失ったおんしとその刀の名をよく理解しろ。」
剣八はそこで一度意識が途切れた。
薄暗く殺伐とした地を濃い霧が円状に取り囲んでいた。
そして静かに響く声。
「ようこそ、我が主。」
姿はなく声だけが聞こえてくる。
「誰だ。」
「(兵主部のおっさんに斬られたんじゃねえのか?)」
剣八は何が起こったのか理解できず辺りを見回している。
「あなたが私に会ってから長い間、私の名前を知ろうとはしませんでした。」
「なんだと?」
すると霧の奥から巨大な柄の無い斬魄刀を持った人物が歩いてくる。
「一護!」
「しかしあなたは黒崎一護との戦いで私たちに歩み寄ろうとしましたね。」
一護に敗北した時強くなりたいと心の底から願った。
初めて斬魄刀の名前を知りたいと思った瞬間だった。
「しかしあの時私たちはあなたに応えられませんでした。なぜならあなたは自分自身で力を抑えていたから。」
目の前の一護は卯ノ花に姿を変える。
「卯ノ花八千流との戦いであなたは自身の力を解き放ち、そして私たちの声が聞こえた。」
最高の時間だった。初代剣八、卯ノ花八千流との命を賭した斬り合い。
あの時、更木区の剣八から十一番隊隊長更木剣八となった。
そしてその戦いの後に聞こえた斬魄刀の声。
「お前、やちる、いや野晒か。」
「私たちはあなたの言う“やちる”ではありません。」
卯ノ花の姿は霧となり、滅却師の中でも最強と名高い想像した事象を現実に変える力を持つ
「グレミィ・トゥミューとの戦いで私たち“野晒”を使い、共に勝利を得ました。」
グレミィはまた霧となり
「そしてジェラルド・ヴァルキリーと戦い、卍解の力に触れましたね。」
「あなたは野晒のすべてを掌握した、そう思っていませんか?」
そう問いかけられ剣八は自身の持っていた浅打を見つめる。
「あなたはまず野晒を根本から理解しなければならない。」
すると霧の中から二体の異形の者が現れる。
青い髪の生えた骸骨、黒いローブ様の物を纏った死神。
全身が卵色の体毛に覆われ、丸々とした体型の怪物。
「私たちが野晒です。」
「難しいことは言いません。あなたの好きな《斬り合い》を始めましょう。」
「ハッ!面白れぇ!斬り合いは、、、大好きだぜ!!」
剣八が斬りかかろうとしたとき、前方の死神が切りかかってくる。
剣八は間一髪で剣を振るい、相手の骨で出来た刀を防ぐ。
すると同時に怪物が菜切り包丁のような刀で斬りかかってくる。
剣八と怪物は袈裟斬りの形で刀を交差させ、お互いの剣圧で弾き飛んだ。
「どうなってやがんだ。」
「更木剣八、あなたは野晒の能力を知っていますか?」
「あぁ?巨大な力でなんでもぶった斬れんじゃねぇのか。」
「なるほど。道理であの時あの程度の力しか出せていなかったのですね。」
「本来なら真っ二つに斬れていた所をあなたのその思い違いで本来の力が出せず、砕くということになったのですね。結果的には良かったのでしょうが。」
剣八は“砕く”と聞き、グレミィの召喚した隕石を思い起こす。
「よくわかんねぇが、真似ばっかしてても俺は斬れねぇぜ!?」
そして剣八はまた斬りかかる。
何度やっても鍔迫り合い。
何度やってもお互いに弾かれる。
ただあちらは二人掛かり。二人で斬りかかられると力負けするときもあった。
「力まで俺と同じたぁ、驚いたぜ。」
死神と怪物からの答えはなかった。
「なんだ?来いよ。」
「行かねえならこっちから行くぜ!!」
そしてまた刀は交差する。
何度も何度も。
「更木剣八、いつまでたっても私たちを理解できませんよ。」
「俺の一振りでお前らも一緒に斬ってんだろ?つうことは、野晒の力は俺一人で普段の3倍の力が出せるってこった。」
「気づいていたのですか?」
「気づいてはいたが、どうしても斬り伏せたくてなぁ。」
「あなたの言う通りです。始解はね。」
「始解は、、、か。なら卍解はそうじゃねぇってか?」
すると別の声が霧の奥から聞こえてくる。
「それは私が説明しましょう、、、。」
霧の中からさらにもう一体、鮮やかなピンク色の獅子が現れた。
その獅子は光に包まれ、光り輝きながら二足歩行に、そして小さくなっていく。
それは剣八のよく知る一人の少女だった。
「やっほー、剣ちゃん!」
「やちる!」
剣八と長きに渡り相棒として、家族として共に生きてきた少女、草鹿やちるは困った表情を浮かべている。
「うーん、、、やちるなんだけど、この世界では
“ ............................ ”
だよ?」
「(なんだ?聞こえねぇ。)」
「剣ちゃん、多分あたしの名前聞こえてないよね?」
やちるは困った表情から笑顔に変わり、剣八の方へスキップをし近づいていく。
「始解はね、対話すればいいの。」
やちるは剣八の方を見ることなく、ケンケンパをしている。
「けど卍解はそうじゃなくて、理解して屈服させないといけない。」
するとやちるは腰に携えていた斬魄刀を引き抜いた。
「さぁ、行くよ?剣ちゃん。」
「出ておいで、
やちるの後ろにはさっきの死神と怪物が佇んでいる。
「とりゃ!」
やちるが袈裟斬りで斬りかかってくると剣八も同じように体が動き、全く同じ形で斬撃を受けることとなった。
そしてやちる達の重い斬撃に剣八は膝をついてしまう。
「三人分ってことかよ、、、。」
少しだけタイミングをずらして怪物、やちる、死神の順番で斬りかかって来た。
特に二発目の、やちるが振るう斬撃の重さが尋常ではなかった。
「これがあたし達の力だよ。」
「そりゃぁ!」
ガンッガンッガンッ
「くっ、、、」
やはり二発目がどうしても重い。
さらにここで気づいたことは、一発目の怪物と三発目の死神の斬撃が自分の斬撃の威力と全く同じだということだった。
「(くそっ、、やちると同じように動いちまうならこっちが不利だ。どうにか、、、)」
剣八が苛立ちで何気なく剣を振ると、やちるも同じように刀を振っていた。
「!!俺たちはどっちも同じように動くのか、、、。」
何かを思いついた剣八はやちるに問いかけた。
「やちる、お前を倒せば屈服になるのか?」
「モフモフとホネホネとあたし、三人をいっぺんに倒さないとダメだよ!」
「そうかよ。」
剣八は自らの腹に斬魄刀を刺した。
するとやちるも刀で自分の腹を貫いた。
横にいるモフモフ、ホネホネと呼ばれる前獣と後獣も同じように腹に刀を突き刺している。
「硬さ勝負するか?」
「気づいたんだね、、、。」
やちるは苦悶の表情を浮かべるでもなく剣八に語りかけた。
「剣ちゃん、あたしたち三人はみんな“野晒”。そのなかでもあたしは核の部分なんだ。」
「“野晒”はね、真似っこなの。モフモフとホネホネが剣ちゃんに合わせて剣を振るうの。」
「一振りすると二人も真似して振るうから一振りで三人分の威力になる。」
「解放したら霊圧自体もすごく上がるから、始解してない時と比べたら数十倍の力だよ。でもその代わり負担も数十倍になる。」
「ここまでが始解の説明!」
「それで卍解だけど、、、あたしが卍解の力を司ってるの。」
「前はごめんね。あたしが力を解放しすぎて剣ちゃんが耐えきれなかった。」
ジェラルド・バルキリーと戦ったとき、負担に耐えられず右腕が折れてしまったことがあった。
「あの時はまだ剣ちゃんが卍解を理解してなかった上に、あたしが調節を間違えちゃった。」
「あたしの力は、剣ちゃんの潜在能力を引き出して膂力をあげ、さらに同じタイミングで剣を振るうこと。」
「あと剣ちゃんの動きの前後にタイミングをずらしてモフモフとホネホネが真似っこするから、剣ちゃんの一振りで、モフモフ、あたしとけんちゃん、ホネホネの四振りしたのと同じことになるの。」
「死神、怪物、獅子、、、そして鬼。」
「あたしたち四人で一つの“獣”だよ。」
「わかった、、、、ありがとよ、やちる。いや、、、」
ーー斬魄刀と共に戦う?戯れ言だーー
ーー教えちゃくれねえか、お前の名をーー
ーー初めまして更木剣八、私の名はーー
ーー嬉しいなァ、野晒ーー
ーーその力の名はーー
ーーーーーーーーーーー
「見せてやる。
「卍解。」
「
To be continued.....