BLEACH 〜Higher Than That Moon〜   作:虹捜索隊

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日本語がおかしい部分がありましたので訂正致しました。
指摘していただきありがとうございます。


第5話 その花捩(はなねじ)れど咲きて(いさ)まし

 

 

 

「儂は、、、まだ死なぬ、、、死なぬぞ!!朽木ルキア!!」

 

 

「なんやあいつは?」

 

砂煙の中に立つ異様なシルエットに平子は目を凝らす。

 

 

そこへルキアを負ぶった岩鷲が瞬歩で駆けつける。

 

ルキアは平子や勇音、京楽がいるということは、ここは霊王の右脚迎撃地だと理解した。

 

しかし遠目から京楽の背後にもう一人人影があることに気づく。

 

「浮竹隊長!!?」

 

 

 

「くっ、、、せっかく我が身になったのにこのままではやられてしまうわい、、、。」

 

メタスタシアはあたりを見回し現状を確認していると、アーロニーロの中で聞いていた人物を発見する。

 

「奴は霊王の右脚か!」

 

「気絶しておるのか?丁度良い!」

 

「アーロニーロ、今まで世話になった礼じゃ。儂とともに霊王の一部にならせてやろう。」

 

するとメタスタシアの手から髪の毛の束の様なものが霊王の右脚へと流れ込んでいく。

 

 

「まさか霊王の一部にまでなれるとは思わなんだ。」

 

 

「おいおい、なんや右脚また動き出したで!」

 

ルキア達と京楽達は合流し勇音が回道で回復させていた。

 

 

「やつは、元十刃(エスパーダ)のアーロニーロ・アルルエリです。しかし今はメタスタシアという虚が乗っ取っています。」

 

「メタスタシアだと!?」

 

その名に浮竹が反応する。

 

 

「なんやそいつ?」

 

「海燕を殺した虚だ。」

 

 

ルキアは《海燕を殺した》という言葉を聞き、目を伏せた。

 

 

「お前らには感謝する。こんなに良い体を消さずに残しておいてくれて。」

 

 

「まずいねぇ、、、」

 

京楽は復活した右脚を見て冷や汗を流している。

 

 

「そうだな。まさかお前どころかアーロニーロの野郎までそっちに連れてってくれるとはな。」

 

 

突然響く()()()()声。

 

 

「やはり出てきたか。」

 

 

「くっそ、アーロニーロの体ボロボロ過ぎてここに来るにも一苦労したぜ、、、。」

 

 

突然現れた()()()()顔。

 

「何見てんだ、見せもんじゃねぇぞ?朽木。」

 

「それともなんだ?俺がカッコよ過ぎて目が離せないってか?」

 

突然蘇った懐かしい暖かさ。

 

 

「海燕殿、、、?」「海燕!!」

 

ルキアと浮竹は同時にその名を呼んだ。

 

 

海燕は二人の方を向きニカッと笑うとその横に立つ勇音を呼ぶ。

 

「お前虎徹だな!?ちょっとでいい、俺を回復させてくれ!」

 

「は、はい!」

 

かつてまだ席官に入りたてだった勇音は、その当時の十三番隊副隊長を思い出した。

 

 

海燕の周りを緑色の半透明の球体が包む。

 

 

 

「さぁ、来い!来い来い来い!喰ろうてやるわ!!」

 

そう挑発した矢先、メタスタシアの左腕は斬り落とされた。

 

さらに背後からメタスタシアの頭を鷲掴みにし、斬魄刀を解放させた。

 

「水天逆巻け、捩花(ねじばな)!」

 

 

(そめ)の舞、蒼月(あおづき)!」

 

捩花の手元に水流が出現し、その水流によって海燕の繰り出した突きは加速する。

 

メタスタシアは咄嗟に態勢を変え致命傷を避けた。

 

海燕は間合いを取り、メタスタシアの真正面に立つ。

 

ルキアの技である《初の舞》や《次の舞》は海燕との修行を経て模倣し、開発習得したものだった。

 

“舞”とは海燕の独特な槍術から由来している。

 

 

(つぎ)の舞、蒼漣(そうれん)!」

 

海燕の目の前に水のような高密度の霊圧が漂い、それを槍を突くとまるで(さざなみ)のように水紋を立て高速でメタスタシアに迫る。

 

 

「くっ、、、」

 

避けられず直撃すると、鎌で斬られたようにメタスタシアの体に漣による傷が残った。

 

メタスタシアは防戦一方。全く反撃する暇がなかった。

 

「なるほど、やはり強いな。」

 

 

海燕は槍を右肩に乗せるとメタスタシアにこう告げた。

 

「お前がどんだけ強かろうが、反撃させなきゃいいんだよ。」

 

「それが敵を殺すための戦い方だ。」

 

 

勇音はその言葉を聞き自分の習得した戦い方は海燕によるものだと知る。

 

勇音は隊長になるため、剣八との戦いを経て卍解を習得するに至った。

 

しかし本当の敵と戦う戦闘に慣れていなかった勇音は思い悩んでいた時期があった。

 

そしてそれに見兼ねた勇音の妹、清音が十三番隊副隊長執務室に昔から置いてあった本を手渡した。

 

それを書いた者こそ海燕だったのだ。

 

 

 

「段々理解できてきた。この霊王の一部の力を。」

 

メタスタシアは斬り落とされた腕から神経を伸ばし、落ちている腕を引き寄せ再生させた。

 

さらに蒼月で穿たれた左の脇腹の孔も塞がっていっている。

 

 

「さらにこれならどうじゃ?」

 

メタスタシアは自身の姿を変化させた。

 

「さすがは霊王の一部。なんでもできるわい。」

 

 

そのメタスタシアの姿に海燕は言葉を失う。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「あれは、、、(みやこ)殿。」

 

ルキアがそう呟いた都とは、かつて海燕が副隊長をしていた時の第三席で海燕の妻だった女性だ。

 

 

「これでもお前は儂を斬れるか?」

 

「貴様!!」

 

ルキアは左手で刀を抜きメタスタシアに向かっていく。

 

しかし海燕の前まで行ったところで、海燕に手で制された。

 

「待て朽木。俺一人でやらせてくれ。」

 

「隊長もいいっすよね?」

 

海燕は振り向くことなく後方にいる浮竹に確認をとった。

 

「隊長は朽木だぞ。」

 

浮竹は目を閉じ小さく笑った。

 

 

「そうっすね。」

 

 

「つうことだ、()()()()。」

 

 

海燕は前へ出ると高霊圧の水流を発生させ自身の周りに纏った。

 

「都とは長く戦いたくねえから早めに終わらせるぞ?」

 

 

「、、っとにてめえに会ってから人生捩れ放題だ。」

 

 

 

 

卍解

 

水渦龍捩花(すいかりゅうねじばな)

 

 

 

 

 

「海燕殿、、、!」

 

 

ルキアは誇りを守る海燕の戦いをただ見守るしかなかった。

 

 

 

海燕は悲しそうな顔で捩花に渦を纏わせている。

 

「まさかお前に卍解を使うことになるとは思わなかったぜ、都。」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

〜十三番隊隊舎〜

 

 

「五席がいらっしゃいますので。」

 

 

 

「あいつがあの、、、」「もう七席らしいぜ」「貴族だろ?」

 

鳴り物入りで入隊した海燕は貴族ということもあり色々な噂が立てられ、中には心無いものもあった。

 

「(うるせぇな。貴族だろうが関係ねぇだろ。)」

 

そこにドスドスドスドスと足音が響く。

 

「見せものじゃないのよ。持ち場に戻りなさい!」

 

ガラッ

 

扉が勢いよく開くと一人の若く、美しい女性が立っていた。

 

「五席の四ツ葉都(よつのはみやこ)よ!」

 

「よろしくね!」

 

それはとても凡庸な出会い。

けどそれは俺の求めていたものだった。

 

 

「お、おう、、、」

 

「おう?何なのその挨拶は!?」

 

「五席が名乗ってるのよ!?あなたも名乗って『よろしくお願いします!』でしょうが!」

 

「し、志波海燕、、、です。よろしくお願いします、、、」

 

 

「オッケー、海燕ね!」

 

「今うちの隊は副隊長から四席までが現世で死神代行追ってるから、私が副隊長兼務してるの。」

 

「浮竹隊長は体弱くて殆ど私が仕切ってるから時々四ツ葉隊長って呼んでもいいわよ!」

 

 

 

都は俺を俺として、志波家の海燕ではなく、志波海燕として扱ってくれた。

 

 

 

 

 

 

〜西流魂街第三地区・鯉伏山〜

 

 

「海燕!」

 

 

べしっ

 

どっさぁ

 

 

「痛ぁ!何すんだよ都!いきなり!」

 

突然後頭部を(はた)かれた海燕は頭を押さえている。

 

「敬語使いなさいよ。あなたまだ五席なのよ?」

 

「お前が歳近いから敬語じゃなくていいよって言ったんだろ!それにもう席次は一つしか変わらねえじゃねえか!」

 

「あのときはお酒が入ってたから、、、」

 

バツが悪そうな都は木刀を拾い上げる。

 

「ほら、修行再開するわよ!」

 

 

しかし海燕はそのまま頭の所で腕を組み寝転がった。

 

「なぁ都、俺たちって何のために護廷十三隊にいるんだろうな。」

 

 

都はきょとんとした顔で答えた。

 

「そんなの決まってるじゃない!」

 

 

「“戦って”“守るため”よ。」

 

 

「何を守んだよ?」

 

 

都は真面目な面持ちで答えた。

 

「、、、、心よ。」

 

 

「くっせ。」

 

 

「うるさい!」

 

都は手を上げて怒っている。

 

 

「じゃ、じゃあ!心ってどこにあると思う?」

 

次は都から海燕に問いかけた。

 

 

「ここじゃねぇの?」

 

海燕は自分の左胸を親指で示す。

 

 

「海燕、手出して拡げて。」

 

海燕は寝転がったまま右手を前に出し、近寄ってくる都に向け拡げた。

 

すると都はその拡げた手に自らの左手を重ねる。

 

「何か感じた?」

 

 

「ん〜、、、、手汗がすごいな。」

 

「コラ!!」

 

都はまた手を上げて怒っている。

 

「で、なんなんだよ?」

 

 

「ここにあるんじゃない?心。」

 

海燕と都は見つめ合ったまま少しばかり時が流れた。

 

 

「くっせ。」

 

「コラッ!」

 

 

「あ、でもね、心を守るために戦う中で絶対やってはいけないことがあるの。」

 

「まだ続くのか?」

 

 

「それは1人で死ぬことよ。」

 

 

「心は仲間に預けていくの。」

 

「だから仲間を大事にすることが一番大事。私たちの命は、人を愛し人に愛されて芽吹いて咲くんだから。」

 

 

海燕は起き上がると笑いをこらえながら言葉をひねり出した。

 

「ぷっ、、やっぱくせぇ、、、お前詩人か!」

 

 

「もういい!修行の続きよ!」

 

「まだやんのか!?折角桜も綺麗に咲いてんだし、ゆっくり花見でもしようぜ。」

 

「早く追い抜いてもらわないと、約束果たせないわよ!」

 

「分かったって、そんなにやいやい、、、、」

 

 

 

 

ーー全滅だそうだ、彼女の部隊はーー

 

 

 

都、お前が最後の1人だったそうだな。

 

部隊の奴らを庇いながら、、、

一人一人やられていくのを目にしながら、、、

 

奴らを1人で死なせないために。

魂を預けさせるために。

 

でもお前は1人で死んだ。

 

お前の魂はまだ奴に喰われたままか?

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「卍解を使えるとはやるではないか。」

 

捩花にほとんど変わりはなかった。

ただ一つ、持ち手の周りを捩れた鉄の龍が螺旋状に付けられているところを除いては。

 

「てめぇ、その声で喋んじゃねぇよ。」

 

 

 

「いやはや声まで再現できるとは流石は霊王の一部よ。」

 

 

「手加減は無しだ、行くぜ水渦龍捩花。」

 

 

海燕が水渦龍捩花を振るうと、捩れた鉄の龍が水色の光を放ち、切っ先から光線のようなものが放出された。

 

メタスタシアが跳躍し海燕の攻撃を避けると、その後ろのビルが横真っ二つに切れた。

 

「水の刀か!」

 

「ご名答。これはよく切れる水の鞭みたいなもんでな。」

 

 

 

海燕は何度も何度も水渦龍捩花を振るい、切れ味抜群のウォーターカッターでメタスタシアを追い詰めていく。

 

 

「貴様も斬るのか!?自分の妻を!!」

 

「斬る。都をお前如きに(おとし)められたくないからな。」

 

「あそこの白髪といい、朽木ルキアといい、お前といい、、、」

 

「正気かァァァ!!」

 

「けど都を、自分の妻を斬りたくないってのも本音だ。」

 

「いくぜ!」

 

水渦龍捩花の三つの矛先から三本の水の線が放出され、その三本は捩れ一本になっていく。

 

「おら!」

 

海燕が水渦龍捩花を振るうと太い水の鞭はメタスタシアの左足に巻きつき絡め取った。

 

再度振るうと鞭は切れ、近くの地面にドリルのように突き刺さりメタスタシアを固定した。

 

「これで捉えたつもりか!?」

 

メタスタシアは手で引きちぎろうとするが、触れた瞬間指が吹き飛んだ。

 

「それ、回転してるぜ。巻きついた後から触れたものに対してだけ有効って便利な技なんだよ。」

 

「まぁ取れない縄みたいなもんだ。」

 

海燕はそのまま残りの手足も拘束していく。

 

「くそが!!」

 

さらに海燕は拘束したメタスタシアを水で包み込んだ。

 

 

メタスタシアはもがき苦しむが、程なくして窒息し気絶した。

 

 

「俺がやってやれるのはここまでだ、、、、」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

メタスタシアに意識が戻るとそこは夜の森の中だった。

 

「やっと中に戻ってきたわね。」

 

そこに立っていたのはかつて十三番隊第三席を務め、聡明で容姿端麗な女傑として名を知られていた、志波都だった。

 

「貴様!あの夜の!なぜ儂の中で生きている!?それにここは!?」

 

「あの人が私の魂を連れ戻してくれるのを待ってたからよ。」

 

「私はお前を倒して、私として海燕に会う!」

 

能力とは真逆の色である白い柄を手にして斬魄刀を抜き取った。

 

 

「儂の精神世界で、自らの力を創り出すとは、、、!」

 

 

「雨降り注ぎて光無く、両翼傷付きて動き揺れろ。」

 

暗雨無明(くらさめむみょう)。」

 

 

「はぁ!」

 

都は瞬歩でメタスタシアの背後に回り一太刀浴びせた。

 

 

「なんじゃ、普通の刀ではないか。」

 

 

「今は、、、ね。」

 

 

「ふはは!次こそは乳から上も喰ろうてやろう!」

 

メタスタシアは本来の姿に戻っており、六足歩行で頭から背中にかけ触手が所狭しと生え並んでいた。

 

 

触手で都の斬魄刀を防ぎ、さらに別の触手で都の腹を突く。

 

 

「がはっ、、、」

 

都は吹き飛ばされた。

 

 

「弱い、弱いのう。また喰われるのも時間の問題、、、」

 

その時メタスタシアは水滴が落ちてきた感覚を覚えた。

 

「ん、、、雨?」

 

 

吹き飛ばされた都は立ち上がりながらメタスタシアに話しかける。

 

「雨って憂鬱よね。暗くなるし周り見えづらいし。」

 

 

「なんじゃこれは!!?」

 

メタスタシアは突然目の前が真っ暗になった。

 

 

「なっ!?」

 

さらに両足が動かなかくなっている。

 

 

「これが私の斬魄刀の能力。結構強いでしょ?」

 

 

「あの時は斬魄刀が消滅しちゃって使えなかったけど。」

 

 

「終わりにしましょうか。私は海燕に会いに行かないといけないの。」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

拘束され水に包まれているメタスタシアは光を放ち始める。

 

それをみた海燕は水の拘束を解く。

 

 

拘束を解かれたメタスタシアは倒れ地面に伏した。

 

 

海燕は急いで駆け寄る。

分かっていた。もうメタスタシアではないと。

 

「都!!」

 

 

「あなた、、、、。」

 

ゆっくりと起き上がる都を海燕が介抱する。

 

「魂を、、、預かりに来てくれてありがとう、、、」

 

都は涙を浮かべている。

 

 

「すまねぇ、遅くなっちまったな。」

 

 

「後悔してるでしょ?」

 

「後悔?あぁ、してるよ。」

 

「こんなことになるなら一回でもお前と花見しときゃ良かったな。」

 

海燕はニカッと笑い、都に満面の笑みを見せた。

 

都はボロボロの海燕と自分を見て命が長くないことを悟る。

 

「私もあなたもあと少しみたいね、、、。」

 

 

「生まれ変わったら、、、、桜の下でまた会いましょう。」

 

「あぁ、そんときはずっと笑って一緒に居ようぜ。」

 

都は海燕の手を借り立ち上がる。

 

海燕と都の周りにはいつのまにか浮竹、ルキア、岩鷲が立っていた。

 

「誇りは守れたようだな。」

 

「長かったっすけどね。」

 

海燕は晴れ晴れとした表情をしている。

 

 

「じゃあ、そろそろ行きます。浮竹隊長。」

 

「あぁ。またな。」

 

浮竹も満足そうな顔で海燕と都を見つめていた。

 

 

「ルキア、あんまり気負い過ぎるなよ。」

 

「はい、、、、」

 

ルキアは涙を流している。

 

 

「そんで岩鷲。十三番隊を頼んだ。空鶴にもよろしく言っといてくれ。兄貴として何もしてやれなくて悪かった。元気でな。」

 

岩鷲は頷きながら目に焼き付けるように自身の兄を見ていた。

 

 

「じゃあな。」

 

海燕と都は向かい合い両手を繋いだまま、淡い桃色の光となって空へ舞い散っていった。

 

 

まるで春を想わせる桜のように。

 

 

 

 

To be continued.......

 

 

 

 

 

 


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