BLEACH 〜Higher Than That Moon〜 作:虹捜索隊
「卍解!!!
――卍解は治せない。私のは
――お前の卍解とじゃまだ天と地じゃろう――
――おんしの卍解はこのままじゃとハズレじゃ――
一角は鬼灯の花に囲まれた地に立っていた。
そして目の前には浅黒い肌をした槍を持った鬼。
「鬼灯丸!お前本当の名を俺に言ってねえらしいじゃねえか!」
「てめえがいつまでもつまらねえ意地張ってるからじゃねえのか?」
「なんだと?」
「お前が人前で卍解を使わない理由は、使えば隊長候補になるかららしいな?全く恥ずかしいぜ。」
「心配するな、今のおまえの実力なら隊長にはまず選ばれねぇ。」
かつて射場にも言われたそのセリフは、自分の強さを否定されているようで受け付けなかった。
「なんだとてめぇ!」
一角は手に持った槍を鬼灯丸に向ける。
「てめえの槍なんざ素手で十分よ。」
鬼灯丸は一角の槍を右手で掴むと、奪い取り両手でへし折った。
そして一角の前に折れた槍を投げつけた。
「てめぇが更木の元で戦うって決めたんだろ?卍解がバレようが何しようが変わらねぇんじゃないのか?」
「そもそも更木の元で戦いてえ、それは本心か?」
――生きて俺をもう一度殺しに来い――
「本当は更木を倒してぇんじゃないのか?」
あの人の下で戦って死ぬ。
そう心に誓っていたはずだった。
「お前自身があれからずっと壊れたままなんだよ。脆いんだ。意思が。」
かつて斬術指南をした後輩の姿が浮かぶ。
――おれは朽木隊長を超えてぇんだよ――
そうか。あいつの方が自分に向き合ってたってことか。
「戦い方を教えたつもりが、これじゃぁ先輩失格だな。」
「やっと固まりやがったか。」
下なんかじゃねぇ。
俺はあの人の、、、
更木剣八の
負けっぱなしなんざゴメンだ。
――――――――――
姿形は今までの卍解とさして変わりはなかった。
扇型のをした斧の先のような斬魄刀。
それを両手に携え、頭上にはさらに大きな扇型の斬魄刀が浮かぶ。
今までの卍解では頭上の斬魄刀にだけ龍の刻印が施されていたが、不壊龍紋火火着丸はすべての斬魄刀に刻印がなされていた。
とてつもない霊圧に包まれた一角は落ち着いた様子で狩矢に問いかける。
「お前
「ああ、知っている。」
かつてヨーロッパに身を置いていた狩矢は食用としての鬼灯を見たことがあった。
「あれには毒があってな。その毒には麻酔として使われる成分が微量だが入ってるらしい。」
「不壊龍紋火火着丸は威力を増しながらその成分を大量に分泌する。」
「
「ほぉ。」
狩矢は目を細め、興味深そうに一角を見ている。
「さらにこいつの切っ先は山本前総隊長の卍解と同じ能力が一つある。」
「あの山本重國の、
「刃先の一筋に熱を集中させ焼き切る。」
「それがどうした?痛みを感じず、刀の切れ味が上がっただけか?」
「そんでもって
狩矢は右手の灰色の刀剣を振り上げ、一角に斬りかかる。
一角が右手の斬魄刀で狩矢の刀を受け止める。
そして左手の斬魄刀を狩矢の首を目がけ突き出した。
すると狩矢の体の周りを風が包み込む。
「風ってのは刀も防げんだな。」
間合いを取る狩矢を見て一角
風によって一角の攻撃ははじかれたのだ。
「斑目一角、前と比べると霊圧があがっているようだな。やるじゃないか。」
「やるかどうかは、、、」
一角は高く飛び上がると、狩矢に向け不壊龍紋火火着丸を振り下ろす。
「死んでから決めろ!!」
「
狩矢は飛び降りてくる一角に向け、風の刃を飛ばす。
「息吹け!龍紋火火着丸!」
龍紋火火着丸の切っ先は赤く熱を帯び、煙を上げ始めた。
そしていともたやすく風の刃を切り裂き、狩矢に迫る。
「まだだ。」
狩矢は連続して風の刃を放つ。
「おらぁ!」
一角は両手の斬魄刀を手放すとひと際大きな頭上の斬魄刀に持ち変えた。
そして下に向け斬魄刀を回転させる。
鎖に引っ張られた二つの斬魄刀がプロペラのように周り始めた。
放たれた風の刃は回転する龍紋火火着丸によってかき消され、そのまま狩矢は龍紋火火着丸の攻撃に飲み込まれた。
土煙が立ち込め、一角は間合いを取った。
「どんどんと霊圧が上がっているようだが?」
土煙の中から左腕に傷を負った狩矢が姿を現した。
「まだまだ上がるぜ?こいつは敵をブッタ斬って、ブッタ斬られてやっと目が覚める。」
「そして3つの龍が赤く染めあがった時、本当の力が解放される。」
「なるほど。お前の卍解は雑魚だと聞いていたが、なかなか楽しめそうだ。」
「
狩矢は赤黒い虚閃を竜巻の形で一角に向け放つ。
一角は両手の龍紋火火着丸で虚閃を防ぐと、すぐさま攻撃態勢へと移った。
「今度はこっちの番だぜぇ!」
一角が狩矢に斬りかかろうとした時だった。
「かはっ、、、、」
一角の背中に滅却師の矢のようなものが刺さる。
「なん、、、だと、、、?」
一角は何が起きたのか理解できなかった。
目の前にいる狩矢は何も攻撃をしていなかったからだ。
火火着丸の能力で痛みはすぐに消えたものの、体へのダメージは無視できなかった。
そして一角が後ろを振り向くと、そこには数十個の『黒い眼球』のようなものが浮かんでいた。
そしてその眼球の瞳が赤黒く光り始める。
「また虚閃撃つつもりか、、、!」
「あれは、、、、!」
古賀はかつての仲間が使っていた能力に目を見開いた。
「なぜ狩矢が《ゲゼル》を、、、、」
その宙に浮く黒い眼球はかつての仲間であった、
「やれ、ゲゼル。
数十のゲゼルの瞳が赤く光りを放っている。
「こりゃ流石に不味いな、、、!」
一角は3つの斬魄刀を盾にして王虚の閃光に備えた。
そして数十もの王虚の閃光が一角を襲う。
再びあたり一面に煙が立ち込める。
「黒崎にも言ったが、人は自分よりも秀でているものを忌み嫌う。」
「信じられなどしない。いずれ仲間は去っていく。」
「信じられるのは、ドールだけだ。」
「五月蠅ぇんだよ、、、、。」
煙が晴れると、大量に血を流す一角が立っていた。
「ボロボロだな。護廷隊最強十一番隊の副隊長。」
「俺がボロボロってことはそれだけコイツの威力が増してるってこった。」
「行け、《アイネトール》。」
狩矢は左の手のひらから緑色に光る楕円の球体を発現させた。
「やつは、、、!ケインの、、、!」
その不気味でありながら美しさも兼ね備えたドールを目の当たりにし、古賀は忌々しい記憶を呼び起こされた。
――おっさん、死にたく、、――
アイネトールと呼ばれるドールはかつて古賀と共に暮らしていた若者、ケインのドールだった。
このアイネトールこそが自身の主人であるケインの命を奪ったのだった。
アイネトールは緑光を放ちながら浮かび上がる。
「あんたも力を見せてよ。」
アイネトールの声は高く、辺りによく響く声だった。
「んだと?」
突然現れた禍々しい霊圧を放つその妖精のようなドールに一角は警戒心を最大にしていた。
「アハハハハ!!」
アイネトールの光はさらに強くなり、カマキリの上半身のような姿に変わる。
その手は巨大で指一本一本が鋭い刃のようで、赤く光る眼が不気味に輝いていた。
「アハハハ!」
アイネトールが一角に向け鋭い刃を振るう。
「なんだこの禍々しい霊圧は、、、バウントの力が弱まっているのにこれ程の力とは、、」
古賀は上空のアイネトールと一角を不安の眼差しで見つめていた。
「クソ、硬えな、、、。まだ威力が足りねぇ、、、。」
威力の上がった龍紋火火着丸がアイネトールの刃に弾かれていることから、その刃は相当な高度であることが窺える。
「待て、アイネトール。」
無暗矢鱈に龍紋火火着丸を攻撃し続ければ、威力が増していくことを懸念した狩矢はアイネトールに声をかけた。
「あんたは黙っててよ!」
しかしアイネトールは狩矢の命令を無視し、一角への攻撃を続ける。
「あんたの力も見せてよ!!」
一角はアイネトールのしなる刃を防ぎ続けるが、鞭のように動く刃を前に、だんだんと体に傷がつき始めた。
「何もしないの?あんた死んじゃうよ!?」
一角は無言のまま攻撃を受け続ける。
「つまんない、、、。もう終わらせよっか。」
嘲りながら攻撃を続けるアイネトールは一角にとどめを差すべく、両手を大きく振りかぶった。
その時、三振の斬魄刀の龍紋が紅く染めあがる。
「行くぜ、火火着丸!!」
龍紋火火着丸の刃は赤く熱を帯び、ゆらゆらと陽炎を発生させている。
「焼き斬れ!龍紋火火着丸!!」
山本元柳斎重國の卍解の能力と形容したのは間違いではなかった。
元柳斎がかつてユーハバッハに化けたロイド・ロイドを斬り捨てた時のように、一角も袈裟斬りの形でアイネトールを切り伏せたのだ。
「そん、、、な、、、、」
アイネトールは斬り口からだんだんと蒸発するように空気に溶けていった。
同時に狩矢はガクっと膝から崩れ落ちた。
「だから、、、待てと、、、言ったんだ、、、。」
ドールは自分の一部。
今の狩矢は自身のドール、《メッサ―》以外にも、《ゲゼル》や《アイネトール》を自分の力として従えていた。
その自身の一部が消滅したということは狩矢にとっても大きなダメージであることは言うまでもなかった。
狩矢は膝をつき、呼吸を整えている。
しかし、狩矢の息はさらに上がり始めた。
「どうしたぁ?もう終わりじゃねぇだろうなぁ?」
膝をついている間に一角の周りに浮かんでいた黒い眼球の《ゲゼル》がすべて斬り落とされいたのだ。
「やはり、、、使い慣れないドールを使ってもだめだな、、、、。」
狩矢はゆっくりと立ち上がると左手に螺旋状の風を発生させた。
「やはりお前しか、、、行くぞ、、、メッサ―。」
そして左手を振るうと風のドリルが弾き出され一角を襲う。
その攻撃を一角は手拳で殴り、弾き飛ばした。
「おい!てめぇ!小手先のつまんねぇ技出してんじゃねぇよ!」
「お前の全力で来いよ。」
一角は不壊龍紋火火着丸を構え直した。
「ふっ、双極の丘で刃を交えた時とは大違いだな。斑目。」
狩矢は全身に風を纏い、右手の刀剣に全霊圧を注ぎ込んだ。
「御託はいい、、、行くぜ、、、!」
一角も三振の不壊龍紋火火着丸に全霊圧を込め迎え撃つ。
勝負は一瞬。
目にも止まらぬ刃の衝突が、大きな衝撃波と共に同心円状の突風を発生させた。
突風が止むと、一角と狩矢は背中合わせに間合いを取っていた。
「流石は、護廷隊最強、、、十一番隊の副隊長だ、、、、。」
「当たり前だ。なんたって今日のオレは過去最高にツイてるからな。」
狩矢は腹から胸にかけて大きく斬られ、勢いよく吐血した。
「私は、、、、バウントを、、、、」
そのとき狩矢の頭に断片的な記憶が流れ込んでくる。
それは途切れた記憶の先だった。
黒崎一護との一騎打ち。
斬られたのにも関わらず、憎しみはもうなかった。
そして穏やかな顔をした自分。
――終わりのようだ――
――黒崎、、、私は――
そこで完全に途切れた記憶。
かつての記憶を思い出し、少し口角の上がった口からは依然として血が流れている。
「そうか。私は、、、」
今の自分も同じ顔をしているのだろうか。
しかし心は同じだと言い切れる。
狩矢は背を向けたまま顔を上げ、小さくつぶやいた。
「黒崎、古賀、一ノ瀬、そして斑目、、、」
「刃を交えた今ならわかる、私は、、、」
狩矢は言葉の途中で灰となって消えていった。
「本当に最後まで言い切らないやつだな。」
古賀も穏やかな顔を浮かべていた。
この戦いを経て、バウントという種族は虚、破面、滅却師、完現術者と並び認知されるようになった。
そして蘭島と一ノ瀬がバウント対策として外世部隊に入ることとなり、古賀はヨーロッパで威勢のいい女性滅却師達と雑貨屋を営むことになるが...........
.それはまた別の話。
――刃を交えた今ならわかる――
――私は、信じられる仲間が欲しかった――
To be continued......