BLEACH 〜Higher Than That Moon〜   作:虹捜索隊

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Extra Ⅱ

 

 

 

〜空座町某病院前〜

 

 

「私はユーグラム・ハッシュヴァルトの意思を継ぐ者。」

 

細目の女性がそう言った瞬間、一勇の立っている場所の床が青く光り始めた。

 

「これは、、、破芒陣(シュプレンガー)!?」

 

一勇は驚く暇もなく、地面に刻まれている滅却印(クインシーツァイヒェン)から生成された()()()()に閉じ込められてしまう。

 

「貴方の中の陛下の欠片を最適な者へと移植します。」

 

細目の女性は霊子を集め弓を作ると、銀の(やじり)を取り出し弓にあてがった。

 

「おい、やめろ!!」

 

一勇はその女性が竜燕のいる霊子の箱に向けうとうとしているのを見て、すぐ様斬魄刀を引き抜く。

 

が、間に合わず一勇は霊子の箱ごと射抜かれた。

 

「一勇さん!!」

 

 

鏃は一勇を貫通した後、背後にある扉に刺さり青白く光りを放っている。

 

破芒陣(シュプレンガー)が消滅すると、倒れている一勇が目に入った。

 

「一勇さん!大丈夫ですか!?」

 

竜燕はすぐさま駆け寄り、倒れている一勇の体を揺らしたが反応は得られない。

 

 

その間に細目の女性滅却師は扉に刺さった鏃を引き抜いた。

 

「これでハッシュヴァルト様も、、、、」

 

少しの間鏃を見つめると、覚悟を決めたように竜燕の方に向き直る。

 

「一勇!!」

 

女性滅却師が鏃を再度弓にあてがったところで一護が息を切らせて到着した。

 

 

そして倒れた一勇とその体を揺らす竜燕が目に入り、一気に頭に血が上ってしまった。

 

「てめぇ!!」

 

一護は目の前に佇む明らかな敵を睨みつける。

 

 

「黒崎一護。まさかここまで速くキルゲ様やジゼル様、ミニーニャ様を退けたというのですか?」

 

「うるせぇ!てめぇ一勇に何しやがった!?」

 

「殺してはいませんよ。滅却師の、、陛下の力を頂いただけです。直に目覚めるでしょう。」

 

「なぜ一勇なんだ!?ユーハバッハの力なら俺でもいいはずだろ!」

 

女性滅却師は鏃を当てがった弓を下すと、ゆっくりと一護の問いに答え始めた。

 

「黒崎一勇は10年前に陛下の残片に触れました。その時に陛下の力が潜在的に黒崎一勇の体に宿ったのです。」

 

「一勇が、、、、?」

 

「そしてその残滓は今この鏃に、、、」

 

「鏃、、、?」

 

「これは虚の霊子を集めて作った鏃です。」

 

「虚だと?」

 

「ええ、滅却師の力は元々陛下のお力。滅却師の霊子では射抜き取ることはできません。」

 

「かと言って死神の力では威力が足りない。そこで、、、」

 

一護は女性滅却師に代わって言葉を続けた。

 

「滅却師が抗体を持たない虚の霊子か。」

 

「そういうことです。」

 

「あとはこれを石田竜燕に突き刺し霊子を流し込めば陛下を復活させることができます。」

 

女性滅却師は再度竜燕に向け弓を引き絞る。

 

「そうかよ、、、!ならそれを竜燕に突き刺させなきゃ復活しねぇってわけだ。」

 

一護は二振りの斬月を手に取ると女性滅却師に正対し構えた。

 

 

「月牙十字衝!!」

 

女性滅却師は十字の斬撃が直撃すると同時に姿を消した。

 

滅却師の歩方、飛廉脚(ひれんきゃく)だ。

 

「どこだ!?」

 

一護は霊圧覚知を最大限にし、女性滅却師の行方を追う。

 

「そこか!!」

 

一護の後方に姿を現した女性滅却師は鏃を弓から外していた。

 

そして銀筒(ぎんとう)を一護へと投げつけ、口上を唱え始める

 

大気の戦陣を(レンゼ・フォルメル・)杯に受けよ(ヴェント・イ・グラール)。」

 

聖噬(ハイゼン)。」

 

聖噬(ハイゼン)という霊子でできた柱が一護を襲う。

 

 

「黒崎さん!!」

 

 

「やられるかよ!月牙天衝!」

咄嗟に片方の斬月で月牙を放ち聖噬(ハイゼン)を突き破る。

 

 

しかし女性滅却師は再び銀筒を目の前に投げ口上を唱えた。

 

盃よ西方に傾け(イ・シェンク・ツァイヒ)緑杯(ヴォルコール)。」

 

月牙天衝に衝撃波をぶつけ相殺させた。

 

 

衝撃波による砂煙が晴れると、女性滅却師はすでに次の銀筒を投げていた。

 

一護ではなく竜燕に向けて。

 

 

銀鞭下りて(ツィエルトクリーク・フォン)五手石床に堕つ(・キーツ・ハルト・フィエルト)。」

 

一護は竜燕へと手を伸ばす。

 

「竜燕!!」

 

 

五架縛(グリッツ)。」

 

竜燕は霊子の縄によって拘束されてしまった。

 

 

そして女性滅却師は鏃を弓に当てがい目いっぱい引き絞った。

 

 

「く、、、、」

 

目の前で弓を引き絞る滅却師を見て竜燕が観念したときだった。

 

目の前に突然人影が現れ竜燕の視界を覆う。

 

 

「黒崎さん!」

 

竜燕がそう叫んだと同時に、一護が鏃に射られ吹き飛ばされ竜燕にぶつかった。

 

 

大きく吹き飛ばされた一護に刺さった鏃から大きな霊圧が流れ出す。

 

そしてその霊圧は一護を包み込み始めた。

 

 

 

 

 

〜浦原商店前〜

 

 

「この霊圧は一護なのか、、、?」

 

一護の異様な霊圧に銀城達は自身の霊圧覚知に疑いを隠せなかった。

 

 

「彼女、、、しくじったようですね。」

 

そして銀城達と対峙するキルゲは静かに呟いた。

 

 

 

 

~空座町某所~

 

 

「!!」

 

リルカも一護の異変に気が付いていた。

 

「一護、、、?滅却師の霊圧が高まっていってる、、、?」

 

ジゼルは渋い顔をしながら弓を引き絞っている。

 

「ちょっとした誤算だけど、ようやく陛下の復活かぁ。」

 

 

 

 

~空座町某病院~

 

 

「黒崎さんが!!まずい、、、!一勇さん!起きて下さい!!」

 

 

一護の体を乗っ取ったユーハバッハがゆっくりと起き上がり、自身の体をまじまじと見ている。

 

「まさか、一護の体で復活するとは、、、、。」

 

 

そして一護の姿をしたユーハバッハは目の前にいる二人の青年に目をやった。

 

「その霊圧、、、。そうか。お前達も我が息子というわけか。」

 

 

「お前は、、、ユーハバッハ、、、?」

 

竜燕も名前を聞いたことはあった。

滅却師の始祖であり、尸魂界に侵攻した男。

 

 

竜燕はすぐさま滅却師十字(クインシークロス)を手に取り弓矢を構成した。

 

「見えているぞ。我が息子よ。」

 

 

竜燕が霊子で構築された弓に目をやると、あろうことかすでに朽ち果てていた。

 

「なっ、、、!」

 

「滅却師の基本は霊子の隷属だ。」

 

竜燕が構築した弓の霊子はユーハバッハにどんどんと吸い取られていく。

 

 

「お前はまだ霊子の隷属ができていない。」

 

 

「陛下、、、。」

 

細目の女性滅却師はユーハバッハの背後からゆっくりと近づいた。

 

「お前は確かハッシュヴァルトの、、、。お前が私を蘇らせたのか?」

 

「はい。」

 

女性滅却師は恭しく頭を下げた。

 

「なぜだ?」

 

女性滅却師は面を上げると、自身の願いでもある理由を告げた。

 

「ハッシュヴァルト様にもう一度付き従いたく、、、。陛下」

 

「そうか。」

 

ユーハバッハは一護の顔で柔らかく微笑んだ。

 

 

「では、その願いを叶えてやろう。」

 

女性滅却師の周りを高密度の霊子の弾が漂う。

 

「陛下、、、?」

 

 

次の瞬間その弾は光を放ちながら女性滅却師を蝕んでいった。

 

まばゆい光に竜燕は手で目を覆う。

 

 

目を開くと女性滅却師の姿はなかった。

 

「まさか、、、殺したのか、、、?」

 

「望み通りハッシュヴァルトに付き従わせただけだ。」

 

 

その残酷さ。

一護の姿形であるがためにその違和感はぬぐい切れなかった。

 

 

「さて、、、。お前には虚の力が色濃く残っているようだな。」

 

「一護の体にはなぜかもう虚の力がほとんど残っていない。」

 

ユーハバッハは手のひらを上に向けると、その上に霊子の球体を発現させた。

 

「お前の霊子を取り込んで虚の抗体を持った滅却師になるとしよう!」

 

そして竜燕に向けその球体を放つ。

 

 

「くっ、、、、」

 

ユーハバッハの霊子の隷属で思うように霊子を操ることができなかった竜燕は、ユーハバッハの攻撃を待つしかない。

 

 

 

が、その時だった。

 

 

 

(うつ)ろえ!融月!」

 

そこには特徴的な、そしてどこか寂しさを感じる仮面をつけた一勇が立っていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

禍々しくも暖かい霊圧がユーハバッハの放った球体を打ち消す。

 

 

「一勇さん!」

 

 

父親の異常な霊圧を感じ取り、一勇は事の顛末を悟った。

 

「親父、、、」

 

 

一勇に答えるようにユーハバッハは言葉を発した。

 

「お前は一護の、、、。」

 

 

「ああ!俺は黒崎一勇!」

 

 

「死神代行だ!!」

 

 

 

To be continued ExtraⅢ......

 

 

 

 

 


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