BLEACH 〜Higher Than That Moon〜 作:虹捜索隊
「か、夏梨、、、、?」
「一兄、、、」
一護は浦原の胸ぐらを掴み鋭い語気で問いただす。
「どういうことだ!!」
「やめて一兄!!」
「これはあたしが頼んだことだからさ。」
「浦原さんには無理を言ってやってもらったし、親父にも許可は取ったんだ。」
浦原を掴む一護の手が少し緩む。
「親父が、、、?」
「二人ともに反対されたよ。あたしが力を持つこと。」
「けどあたしが親父に頭下げてお願いしたの。」
「戦いの最前線に立たないっていう条件でね。」
浦原はずれた帽子を被り直しながら夏梨に続く。
「その姿を見て一心サンも夏梨サンの望む通りにしようと。」
「それでアタシがお貸ししたんです。崩玉を。」
「なんで親父は!!」
「自分の無力感に思い悩む夏梨サンを見て昔の自分と重ねたのでしょう。」
浦原は一心がグランドフィッシャーを斬った後の事を思い出していた。
「夏梨が無力感、、、?」
「あの藍染ってやつとの戦いの後の一兄、正直見てられなかった。」
「一兄はあたしが霊見えるの気にしてたでしょ?」
「自分も見えれば虚と戦えるのに、みんなを守れるのにって。」
「できることならあたしの霊力を一兄にあげたかった。一兄がルキアちゃんから死神の力をもらったって親父から聞いて、、、。」
「それで浦原さんから崩玉っていうのを借りて一兄の力になりたいって願ったら死神の力が開花した。」
「まぁ結局別の方法で一兄は霊力が戻ったんだけどさ。」
ルキアはあの時一護に霊力を戻すため尸魂界を奔走したことを思い出す。
「実はさ一兄に霊力が無かった時、浦原さんに鍛えてもらってたんだ。死神として。」
「その時あたしの斬魄刀と対話して気づいたの。あたしの魂魄は区切られてるって。」
「その境界を取り除くために再度アタシが崩玉をお貸ししたんです。」
「なんで取り除くんだよ!?」
「滅却師との戦いで役立つと踏んだからです。」
「意味わかんねぇよ!」
「アタシは星十字騎士団から卍解を取り戻すため《侵影薬》という薬を開発しました。」
事実日番谷はこの薬のおかげで星十字騎士団の蒼都を破ることができた。
「これを使えば強制的に虚化させることができます。」
「実はこれ、夏梨サンの始解の能力を応用して作ったものなんです。」
「夏梨サンは斬魄刀との対話でその能力と、自身の魂魄には他の能力が眠っていると聞かされました。」
一護にはその他の能力がなんなのか分かっていた。
「虚と滅却師、、、、」
「あたしの斬魄刀の能力は、自分の属性を他人に付与できる能力。」
浦原が夏梨の後に続く。
「つまり夏梨サンの虚の属性を付与する能力を参考にして作ったんです。」
「しかしそのためには境界をなくして霊圧を流し、死神以外の能力を目覚めさせなければならない。」
「そういう理由です。」
「だから一兄、浦原さんを責めないで。全部あたしが決めたことだから。」
一護は全身の力が一気に抜けた。
まさか自分の妹もこの危険な世界に入っていたとは。
そしてそれを知るのが10年も経った今だとは。
「そうか、、、、すまねぇ浦原さん、、、」
一護の手はすでに浦原から離れていた。
「ということで、これから夏梨さんの魂魄データを調べてみます。」
「それで黒崎サンと朽木サンに頼みたいことがありまして。」
「蛆虫の巣で仙波という人を探してほしいんす。」
「蛆虫の巣てお前、、、」
ひよりは初めて蛆虫の巣に入った時のことを思い出す。
暗く不気味な雰囲気。
いきなり襲ってくる精神錯乱者。
今思い出しても異質な空間だった。
「蛆虫の巣?聞いたことないが。」
二番隊とは無縁のルキアはその単語すら耳にしたことがなかった。
「二番隊の管轄内にある危険分子たちが収容されてるところっす。」
「夜一さんから砕蜂サン、あと看守の三席にも連絡してもらいますので。」
「わかった、今から向かおう。」
「よろしくお願いします。」
2人にだけ役割が振られひよりは面白くなさそうに喜助に問う。
「おいコラ、ウチはなんかないんか!」
「ないっす。」
「ん〜、、、、」
ひよりは少し考えて、、、
「よっしゃ!じゃあウチが蛆虫の巣を案内したるわ!」
〜一番隊隊舎〜
「日番谷くん、気にするなって言っても気にしちゃうと思うけどさ。日番谷くんの責任じゃないからね。」
京楽は一番隊に状況報告に来た日番谷を気遣う。
「やつは、、、草冠じゃない、、、。」
「日番谷君、、、?」
「草冠は自分を私とは言わないし、俺を日番谷とは呼ばない。」
「そうかい、、、。」
京楽は少し考えて、
「じゃあ犯人探しと行きますかぁ!」
「涅隊長のところへ行ってみよう。」
「京楽、、、。」
京楽と日番谷は技術開発局へ向かう。
〜技術開発局〜
「たしかに霊圧自体は草冠のものとは違うネ。この瀞霊廷に該当者はいないヨ。」
「じゃあやっぱり日番谷君の言う通り、、、。」
「失礼します!」
局長室に凛とした女性の声が響き渡る。
「京楽隊長!行き先くらい教えてください!」
一番隊副隊長の伊勢七緒は少し息を切らせていた。
「七緒ちゃん、どしたの?そんなに慌てて。」
「四十六室から呼び出しです。緊急で。」
「えぇ〜、、、。」
〜一番隊隊舎〜
「いや、悪いねぇ、急に集まってもらって。」
「上が王印の奪還部隊を作れってうるさくてさぁ。」
「こっちで指定させてもらったから呼ばれた人は奪還部隊として頼むよ。」
「平子隊長、六番隊朽木隊長、更木隊長、涅隊長、大前田副隊長、雛森副隊長、斑目副隊長、四楓院三席、綾瀬川三席の9名、部隊長は平子隊長で。」
「ええ〜!うそやん!!」
「おれ綱彌代の時も出たやん!なんでおればっかやねん!ずっと暇なやつおるやろ!」
「やいやい言いなや真子。あんたが一番暇なんやからしゃあないやろ。」
隊首会にもかかわらず八番隊隊長矢胴丸リサは雑誌を読んでいた。
そしてそれを平子の雑音で邪魔されたためイラついていたのだ。
「リサお前隊長の地位利用してエロ本売りさばいとるだけやんけ!」
平子はさらに畳み掛ける。
「お前のほうが暇やろが!!」
リサは雑誌を地面に叩きつけ平子に向き直る。
「やかましい!アタシは護廷十三隊の士気上げとるだけやないの!」
「まぁまぁ頼むよ、平子隊長。一番隊長歴長いんだからさ。」
京楽が両手で二人を制している。
「こういう時だけ先輩風吹かしたないわ!」
「おれは絶対にやらへんからな!!!」
〜五番隊隊舎〜
「御機嫌よう。平子部隊長殿。」
「その呼び名やめろや、しばくぞ白玉団子!」
「フン、全く、なんとも品のない男だヨ。」
「そんでなんやねん!」
「あの時と同じ霊圧が逆骨で検出された。」
マユリはバインダーにはせられた資料に目を通している。
「逆骨ってお前、、、。」
「そう、《霊王の右腕》があったところだヨ。」
霊王の右腕。
ミミハギ様と呼ばれ奉られていた霊王の一部。
東流魂街の逆骨地区でミミハギ様は土着神として崇められていた。
「あの地区は以前から《霊王の一部》がないか探索されていた場所だネ。」
「てことはあいつ霊王の一部を味方につけようとしとるっちゅうことか?」
「さぁ。」
マユリは護神大戦で戦った《霊王の左腕》ペルニダを思い出していた。
「ただあのレベルがまた来るのは勘弁してもらいたいところだヨ。」
「おそらく草冠もどきもその周辺にいるだろうネ。」
「既に更木が向かっている。奴のことだ、草冠もどきに何の考えも無しに斬りかかるだろう。」
「まずいんか?」
「それが分からないから不味いんじゃあないかネ?」
二人の会話に大声で悪口の横槍が入る。
「おう!妖怪白玉団子にハゲ真子!今日もえらいハゲとんなぁコラ!」
「げ!!ひより!なんでお前こんなとこおんねん!?」
「せっかく尸魂界来たし、お前のうっすい平らな顔踏んだらなと思ってな!」
その妖怪白玉団子はひよりを一瞥する。
「面倒臭いのが来たから私はこれで失礼するヨ。」
マユリはすでに背を向けて歩き始めている。
「お前聞こえとんねんマユリ!」
「君のような知能指数の低い雌猿と話しているとこちらまで退化しそうだからネ。」
マユリは立ち止まり振り向くことなくひよりに口撃を浴びせる。
「ウチかてお前みたいに顔面真っ白にするまで頭良うなりたくないわ!」
お互い言葉に棘はあるものの懐かしんでいる様にも見えた。
言葉を交わすのはひよりが十二番隊にいた時以来のことだ。
「その白い頭どうにか、、、!!」
これから蛆虫の巣に向かうからか、ひよりは蛆虫の巣で初めて会った時のマユリを思い出してしまった。
「ぷっ、、、、、、」
「あはははははははははは!!!」
「なんやひよりいきなり、お前ついに頭おかしなったんか!?」
「いや、こいつの蛆虫の巣おったときくらいの顔思い出して、あはははは!」
「お前あの時スッカスカの白玉団子やったなぁ!!」
さすがのマユリも振り返り怒りを爆発させる。
「やかましいヨ!!!」
「なんでお前いきなりそんなこと思い出すねん、、、」
ひよりは笑い涙を拭きながら答える。
「これから蛆虫の巣行くねん。喜助がなんや仙波を探せとかなんとか。」
その名前にマユリは顔色を変え、ひよりに迫る。
「仙波と言ったかネ?」
「なんやお前も聞き覚えあんのかい。ウチもどっかで聞いたことある気がすんねんなぁ。」
「三下の研究者、私も手を焼かされたものだヨ。」
「奴と関わるのはお勧めしないがネ。」
「では私は行くとするヨ。君たちと違って人類は忙しいのでネ。」
「猿ちゃうわ!!!」
平子とひよりのツッコミが五番隊隊舎にこだまする。
〜流魂街逆骨地区〜
「なんだよ、誰もいねぇじゃねぇか。」
更木は辺りを見回し敵を探している。
「隊長ーーー!」
後ろから斑目一角が追いかけてきていた。
「おめぇも来たのか、邪魔だから来んなっつったろ!?」
「可愛い部下にも斬らせてくださいよ。」
「うるせぇ。」
更木の中の野生の勘が後ろに何かがいると警鐘を鳴らしている。
咄嗟に振り返るとこの間の草冠の様な男が立っていた。
「やぁ更木剣八。」
「おめぇそれどうやってんだ?霊圧全く感じねぇが。」
「さぁどうでしょう。」
「おめえが草冠もどきか。」
「何を言ってるんです、私は正真正銘の、、、」
「もう一遍言うぞ。おめえが草冠もどきかって聞いてんだ。」
「斬って確かめたらどうです?得意分野では?」
「はっ!それもそうだ、行くぜ!」
剣八が斬りかかると、男は軽やかな身のこなしで斬撃を避け剣八の胴を斬り抜く。
「やるじゃねえか。」
「楽しめそうだ。」
剣八は相手の脳天めがけて突きを繰り出すが、またすんでのところで躱され間合いを詰められる。
ほぼ同時に剣八は斬魄刀を横にして守るが、男は読んでいたかのように横から斬りつける。
鮮血が飛沫となり宙を舞う。
「隊長!!」
一角が駆け寄ろうとするが、、、
「邪魔すんじゃねぇ!」
更木は不敵な笑みを浮かべている。
「面白えじゃねえか。」
「呑め、野晒。」
更木の斬魄刀は巨大な斧となり、とてつもない霊圧を放っている。
「更木剣八の始解か。さすがに解放なしでは無理ですかね。」
男は斬魄刀を抜き、胸の前で水平に保ち左手を刀身に当てる。
「
To be continued.....