BLEACH 〜Higher Than That Moon〜 作:虹捜索隊
第11話 0℃
「水天逆巻け、
「舞え、
水と氷が相対する中、融和する水と氷もあった。
〜
金髪に褐色の肌、レザージャケットを着た女性。
首元には破面独特の仮面の名残が見られる。
そして白髪で《十》の隊長羽織り羽織った青年。
まだ青年ではあるが、彼には幾度もの修羅場を乗り越えてきたような風格があった。
「お前らが私の相手か。破面に若造が相手とは舐められたものよ。」
感情を表してはいるが、その霊骸の無機質な表情がより不気味さを醸している。
「俺たちはお前にとって一番の天敵だと思うがな。」
そう答えたのはかつて神童とまで呼ばれた天才、十番隊隊長日番谷冬獅郎。
「まさかお前と共に戦う日が来るとはな。」
そしてその横には《虚圏の女王》と呼ばれる女性破面、ティア・ハリベルも立っていた。
「日番谷冬獅郎とティア・ハリベル......」
「我々の名を知っているのか。」
「ノヴァディオは用意周到でな。基本的な相手戦力の情報は全てある。」
「なら俺たちのことはもう知ってるってわけか。」
「あぁ。幼馴染を自らの手で刺した神童と、無様にも滅却師に囚われた虚圏の女王。」
「てめぇ、、、!」
「それに虚圏の女王に至っては、滅却師に捕縛されたときに力を削り取られたんだろう?」
それを聞いたハリベルは眉間にしわを寄せ、静かに目を閉じる。
事実、ハリベルの解放は以前のものと大きく違っていた。
肩にあった破面特有の外殻と右手にあった大きな刀剣が、滅却師との戦闘によって一部削り取られ
そのため破面の特徴として外見から見て分かるのは、首元から胸にかけて伸びている白い外殻だけだった。
「だが、お前を斃すにはこの残った力で十分だ。」
ハリベルは目を開き右手を前に出すと、その手の周りを水が渦巻き始めた。
「では、その言葉本当かどうか試してやろう。」
燬鷇王は体から炎を噴出させ始め、その炎を胸の前に集めて火球を作り出した。
「防いでみろ!死神の小僧に破面の小娘!」
火球は冬獅郎たちに向け、勢いよく放たれる。
すぐ様ハリベルが右手の水を球状に集め、目の前に浮かべた。
「
冬獅郎が刀の切っ先を水の球に向けると、氷塊へと変わり勢いよく火球と衝突する。
氷塊は火球にぶつかりバラバラに粉砕されたが、その瞬間中から水が飛び出した。
「なるほど.....氷で威力を落とし、水で相殺させたか。だいぶ対策を立ててきたようだな。」
「お前の炎じゃ俺たちは斃せねぇ。」
「なるほど。では山本重國の斬魄刀の威力を試してみるか。」
燬鷇王は腰に携えた斬魄刀をゆっくりと引き抜いた。
「万象一切灰燼と為せ、
斬魄刀は凄まじい霊圧と共に炎を吹き上げる。
斬魄刀の名は違うもののその解号と霊圧は流刃若火そのものだった。
「やはりお前らが盗んでいたのか、、、!」
それは一番隊隊舎に保管されていた元流斎の遺品。
京楽を通じて、中央四十六室から、元流斎の流刃若火と元七番隊隊長、
しかし、京楽の命令はそれだけではなかった。
護廷隊を支え、護神大戦で命を賭して戦った二人の死神の名誉を捻じ曲げられた屈辱を晴らすため、その二振りの斬魄刀の調査部隊を設立させた。
そしてその部隊長に名乗りを上げたのが、現七番隊隊長の射場だった。
射場も大方、ノヴァディオ一派が盗んでいると踏んでいたが、居場所が突き止められず足踏みをしていたのだった。
「山本重國の斬魄刀で斬られることを誇りに思うがいい。」
喉が渇く。
冬獅郎は思い出すようにその熱さを感じていた。
「はぁ!」
燬鷇王が流刃若火を振るうと炎の斬撃が冬獅郎とハリベルに迫る。
「下がっていろ。」
ハリベルが冬獅郎の前に立つと水の盾を発生させた。
炎の斬撃が水の盾にぶつかると辺りが白い水蒸気で包まれる。
「くっ、、、」
ハリベルは感じ取っていた。
自身の放った水の霊圧が薄れていくのを。
「
水の盾と衝突し威力の弱まった炎を氷の斬撃が消しとばした。
「ただ一振りしただけなのに大騒ぎだな。小僧に小娘。」
「それはそうだ。さっきのお前の炎と違い、あの山本元柳斎重國の炎だからな。」
冬獅郎はそのハリベルの言葉に驚いていた。
ハリベルも認めていたのだ。
山本元柳斎重國という死神の力を。
「その減らず口をきけなくしてやろう。」
「
燬鷇王が流刃若火を振り上げると、冬獅郎とハリベルをそれぞれ球状の炎の壁が取り囲んだ。
「たしかに、お前達二人が力を合わせると面倒だが、一人ずつに分けてしまえば取るに足らん。一気に叩き潰してやる。」
炎に包まれた冬獅郎とハリベルはそれぞれ氷と水で炎を破ろうと試みが、どちらも氷と水を生成することができなかった。
「まさか.....!」
冬獅郎は護神大戦の時、滅却師の
その際、相手の使う大紅蓮氷輪丸が無効化された時があったのだ。
それが、山本元柳斎重國の......
「卍解、残火の太刀。」
先ほどまで燃え盛る炎を纏っていた斬魄刀は、まるで鎮火したように煙を上げた。
予想外だった。
いくら燬鷇王が炎の化身だからといって、仮に流刃若火を持っていたとしても卍解までは使えないと思っていたのだ。
卍解は対話、具象化、屈服、そして理解を越えた先にある奥義。
他人の斬魄刀をたかが数日で使いこなすのは不可能でありであるため、冬獅郎をはじめとして浦原や京楽も始解ですらできないと踏んでいた。
が、しかし、燬鷇王はやってのけた。
これが護廷隊側の大きな誤算となったのは言うまでもなかった。
「さてどちらから先にするか。」
「破面で終わらせるのは面白くない。どうせなら護廷十三隊の天才で終わりにしよう。」
そう呟くと、燬鷇王はハリベルを包む炎の方へと向かい、火の壁をすり抜け球体の中へと入った。
「先に虚圏の女王から片付けることにする。」
「
三人の女性の声が重なり響く。
そして3本の虚閃が炎の壁の上方を打ち破った。
「破道の九十一、
そして冬獅郎の方の炎の壁にも鬼道によって穴があけられる。
「ハリベル様!助けに来ました!」
「おいアパッチ!なにでしゃばってんだよ!さっきのはあたしらも撃っただろ!?」
「あたしのが一番威力強かっただろうが!」
「あんた達!言い争ってないで戦いなさいよ!」
「あのお猿さん達と一緒にしないで欲しいですわ。」
「誰が猿だ!スンスンてめぇ!」
冬獅郎とハリベルが炎の壁から脱すると、そこには十番隊副隊長の松本乱菊と、ハリベルの
「行くぜ!」
アパッチの掛け声とともに4人はそれぞれ力を解放させる。
「突き上げろ、
「喰い散らせ、
「締め殺せ、
「唸れ、
アパッチ、ミラ、スンスンは虚閃を、乱菊は灰の刃を燬鷇王に向け放つ。
「残火の太刀・西、
燬鷇王は高密度の霊圧を体に纏う。
その霊圧はまるで体から噴き出る炎のように揺らめいている。
4人の放った渾身の攻撃はこの残日獄衣によって簡単に阻まれた。
自身の始解も防がれたのを見て、乱菊は沈黙している冬獅郎の元へと駆け寄る。
「た~いちょっ!」
乱菊にハイテンションで声をかけられた冬獅郎はすでに鬱陶しそうな顔をしていた。
「あれじゃ卍解使えませんねぇ~?かといって、あの
「だからそんな作戦名にした覚えはねぇ!それに残火の太刀じゃ卍解どころか始解も無理だ。」
乱菊はその言葉を聞き、嬉しそうにに口角を上げた。
「じゃぁあたしが卍解しましょうか?」
「炎相手じゃ使えないだろ。」
「まぁそうですけど、
「てめぇ.....」
冬獅郎と乱菊がやり取りをしている間に、アパッチ、ミラ、スンスンは自らの片腕を贄として《アヨン》という
「ちょろちょろと鬱陶しいな。」
燬鷇王は炎で薙ぎ払い、一旦ハリベル達と距離をとると、斬魄刀を地面に突き刺した。
「残火の太刀・南、
炎が地中に伝わり赤く光りを放ち、一斉に何百という黒い骸骨が地面から這い出てくる。
「なんだこれ!?」
アパッチはその異様な光景に冷や汗を流している。
「呆けている暇はありませんわよ!」
すでにスンスンは虚閃を放ち這い出てきた骸骨をなぎ倒していた。
「数が多すぎる......」
ハリベルも虚閃を放ちながら応戦するが、数の勢いに飲まれそうになっていた。
「隊長!これならあたしいけますよね?」
「そうだな。」
乱菊はいつものうっぷんを晴らすがごとく、冬獅郎に上から言葉を浴びせる。
「じゃぁお願いしてください。」
ブチッと音が聞こえるくらい頭にきた冬獅郎は思い切り怒鳴り散らした。
「つまらねぇこと言ってねぇで卍解しろ!!」
「せっかく隊長より優位に立てたのに~.....まぁいっか。」
乱菊はトホホ、というような顔で骸骨の集中している場所の上空に移動する。
「あんたたち!下がってなさい!」
ハリベル達に呼び掛けると、灰猫を刀剣状態に戻し、刀身に手をかけた。
「卍解。」
「
乱菊の言う通り、冬獅郎の元まで退いたハリベルは乱菊を見据えたまま尋ねる。
「おい、一人で大丈夫なのか?お前の部下なのだろう?」
大量の骸骨を前にして、乱菊一人で立ち向かうことにハリベルは不安を抱いていたのだ。
冬獅郎は焦るでもなく、心配するでもなく、淡々と乱菊の卍解の力を説明し始める。
「松本の卍解は、始解で使う灰をより多く生み出す能力だ。」
「なんだそれ!雑魚じゃねぇか!」
思いのほか弱そうな卍解にアパッチが思わず声を上げた。
「まぁ、待て。まだ続きがある。」
ハリベル達が心配そうに乱菊の方を見ると、乱菊の周りの空気がゆらゆらと陽炎のように揺れていることに気付く。
「一人でだと?この燬鷇王と流刃若火を前に副隊長如きの卍解で太刀打ちできると思われているとは......舐められたものよ。」
燬鷇王は副官如きでは相手にならない、と嘲笑っている。
その間も、冬獅郎はハリベル達に説明を続けていた。
「灰を生み出すには物を燃やさなきゃいけねぇ。松本の炎は、物理的に形ある物ならなんでも灰にできる。」
「やつの卍解の能力の注目すべきところは、その《結果》じゃねえ、《過程》だ。」
「形あるものすべてを燃やし尽くす炎か。」
乱菊は自身の周囲から炎を放出させ、手掌で操り大量の骸骨を包み込んだ。
ほんの数秒ですべての骸骨、瓦礫、草木が灰へと帰す。
「残念ね!これでその技は封じたわ!」
「なるほど......だがまだ一つが封じられただけだ。」
燬鷇王は霊圧を上げ、斬魄刀を構えなおした。
「残火の太刀・東、
~霊王の右脚迎撃地~
京楽達が霊王の右脚を乗っ取ったメタスタシア斃した直後のこと。
「段々と勝敗が決してるみたいだね。」
「卯ノ花サンも復活させたらよかったのに。ほんならあの人無双してたんちゃうか?」
ボロボロになった平子が冗談めかして、前四番隊隊長、卯ノ花烈を復活させなかった理由を暗に尋ねた。
「本当は卯ノ花隊長もその予定だったんだけどさ。復活させたら怒られそうで。」
「怒られる?」
「“四番隊隊長は勇音が、剣八は更木隊長が”ってね。だから今回は死神2人と破面1人だけにしたんだ。」
「破面やと!?」
「大丈夫さ。信頼できる
「しかも十刃かい!十刃に信頼できるもクソもあるかいな!!」
平子はてっきり、涅骸部隊や外世部隊のネルやハリベルだと思っていた。
しかし、十刃で、かつ復活した破面と言えば完全に新戦力ということになる。
「ほんまに、、、って、ん?死神2人って、、、?」
もはやツッコミも間に合わなくなっていた。
「大先輩さ。卯ノ花隊長以上にね。」
平子は頭の中で検索をかけていた。
卯ノ花以上に大先輩で、かつすでに死去している死神......
その検索を遮るように京楽が平子に話しかけた。
「この霊圧わかるだろう?」
「あぁ、爺さんの卍解やろ?持ってたのは当たってたけど、その後の予想が外れたなぁ。まさか卍解使えるとは思わへんわ。」
「けどこれであの人も黙ってないだろう。」
「あの人ってさっき言ってた死神かいな?」
「あぁ、こんな残火の太刀を見たら怒るだろうねぇ。」
「だから誰やねん!」
「そりゃもう“雷鳴”の如くね。」
To be continued.....