BLEACH 〜Higher Than That Moon〜   作:虹捜索隊

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第14話 寄り添う心

 

 

 

「押し切れ、枝分刀(しぶんがたな)!」

射場の斬魄刀から枝分かれしたように小さな刀が伸びる。

 

「お前の能力は知っている!鍔迫り合いに強い斬魄刀だとな!」

 

射場がかつて仙波麓源と戦っていた時の映像をホムラは確認していた。

仙波麓源の斬魄刀は射場と鍔迫り合いになったときに、枝分刀の枝分かれした小刀によって押(・)し(・)切(・)ら(・)れ(・)た(・)のだ。

 

「確かに儂の始解は対人向き。つまり自分と同じくらいのもんとの斬り合うための能力っちゅうことじゃ。」

 

射場は低くドスの効いた声で続けた。

 

「けどのう、卍(・)解(・)は(・)違(・)う(・)。儂の卍解は儂(・)よ(・)り(・)も(・)大(・)き(・)い(・)奴(・)に対抗するための能力なんじゃ。」

 

ホムラは《儂よりも大きいやつに対抗する能力》と聞いて少し顔を強張らせている。

 

射場はあえてホムラの不安を取り除くかのように語りかけた。

「心配するな。お(・)前(・)に(・)は(・)使やせんわい。」

 

心を見透かされたような気がしたホムラは慌てて虚勢を張ってみせる。

「こ、怖がってなどいない!」

 

「この卍解は意識や自我を持っとる者には向けたくないんじゃ。」

 

「それが例え、虚や破面じゃろうと。」

 

「ほんでもう一度聞くが、ほんまにその卍解はお前とは繋がってないんよのう?」

 

射場の再確認がホムラの不安感を煽る。

「な、何度も言わせるな!僕は狗村左陣の卍解を越えたのだ!」

 

「ほうか、、、安心したわい。」

 

射場は静かに刀を下ろすと、霊圧を急激に上げた。

 

「卍解。」

 

「枝分刀(しぶんがたな)鋸化逆突(きょかのさかづき)」

 

 

枝分刀は匕首(あいくち)ほどの小さな懐刀となり、刀の枝分かれも見られなくなった。

そしてその小さな刀にはノコギリのような刃が付いている。

 

 

「そんな小さなものが卍解だと?」

 

思い描いていた卍解とかけ離れていたためホムラは目を凝らして何度も確認していた。

 

遠くから見れば果物ナイフと言われても納得してしまいそうなほど小さな刀。

 

「そんな小さなものが自分よりも大きい相手専用の技だと?」

 

ホムラの中での卍解のイメージは、黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)のように巨大な力の塊だった。

しかし眼前の敵が繰り出した卍解は真逆のものだった。

 

「その刀では刺したとしても致命傷には程遠いぞ!?」

 

その言葉を聞き、射場は不気味な笑みを浮かべる。

「どうかのう、、?」

 

射場が懐刀を前に突き出すと、斬魄刀が市丸ギンの神槍のように伸び、切っ先が黒鎖天譴大明王(カデナ・デル・カスティゴ)の胴体を貫き、背中から突き出て行く。

 

「の、伸びたのか!?」

 

すると射場の斬魄刀の切っ先から小さな刀身が枝分かれし始める。

枝分かれした刀身からさらに枝分かれをし、みるみるうちに刀で出来た木のようになっていった。

 

「いくで。」

 

射場がそう言うと、刀についたノコギリの刃がチェーンソーのように回転し始める。

 

「鋸化逆突(きょかのさかづき)。」

 

そして射場は思い切り刀を手前に引き抜いた。

そ(・)の(・)刀(・)の(・)木(・)ご(・)と(・)。

 

刀の木はホムラの鎖天譴大明王(カデナ・デル・カスティゴ)の体をえぐりとる。

 

鎖天譴大明王(カデナ・デル・カスティゴ)は至るところが穴あきとなり、轟音を立てながら崩れ落ちた。

 

 

「黒鎖天譴大明王(カデナ・デル・カスティゴ)が、、、!」

 

ホムラの虚の仮面も同時に蒸発するように消えていく。

 

 

「こ、これで終わりではない!僕の斬魄刀もあるんだ!」

 

ホムラは射場に先を与えないよう、すぐ様自身の腰に携えてある斬魄刀を抜き解号を唱えた。

 

「ふ、踏みつけろ、大太郎法師(だいだらぼっち)!」

 

斬魄刀は光の小胞となりホムラの手足を包み込み、徐々に手甲と足甲を形作っていく。

 

「なるほどのう。手足の装甲か。」

 

「いくぞ!」

ホムラは右腕を振りかぶると、その腕を倍加させた。

狗村の天譴(てんけん)のように大きな腕。

 

「巨大化もできるんか!」

 

射場はホムラの攻撃を避けながら反撃の機会を窺っていたが、ホムラの一部分である腕を斬るのに躊躇していた。

 

「どうした!?手も足も出ないか!?」

 

その躊躇いは剣に表れ、射場はホムラの攻撃を防ぐことしかできなかった。

 

「まだまだ!!」

ホムラは攻撃の手は止まない。

 

「くっ、、、」

 

防ぐだけでは埒があかないと考えた射場は四肢の腱を斬ってホムラの動きを封じようと試みる。

 

「すまん、、、命まではとらん。」

射場は覚悟を決め、ホムラの左腕の腱を断ち切った。

 

「くそっ、、、腱を、、、」

 

「これで腕を振るえんじゃろう!次は右腕じゃ!」

 

ホムラは自身の足元のコンクリートを右腕で殴りつけ、瓦礫を辺りに飛ばす。

射場はその瓦礫を躱すため、ホムラとの間に十分な間合いを取った。

 

 

「“条件付き鬼道”を知っているか?」

 

「条件付き鬼道じゃと?」

聴き慣れない鬼道に射場は眉を顰(ひそ)める。

 

「ある鬼道の発動をきっかけに違う鬼道が発動する。」

 

そんな鬼道が存在するとしても、使える死神は限られていることは想像に難くない。

浦原喜助や藍染惣右介、元鬼道衆総帥の握菱鉄裁(つかびしてっさい)ならばできるのかもしれないが。

 

ただ、目の前にいる死神としても未熟な少年にそんな高等鬼道が使えるとは思えない。

 

「そんな高等鬼道、誰が使えるゆうん、、、」

 

そこまで言いかけたところで、相手側に鬼道の天才がいることに気づいた。

 

「鬼白峯(おにしろね)殿か、、、!」

 

「そうだ!あの死神なら条件付き鬼道など容易いこと!」

 

 

「縛道の一、塞(さい)!」

 

そう言うとホムラは大きく体が痙攣し、その場に膝をついた。

 

「一体何が、、、?」

 

ホムラはゆっくりと立ち上がると、射場に向け不敵な笑みを浮かべる。

「空間転移で心臓を捧げたのだ。」

 

「お前、、まさか、、、!」

 

「人化の術だ!!これで腱を斬られようが関係ない!」

 

人化の術は、肉体の機能を失う代わりに、意識と霊子のみで体を動かすことができるようになる。

当然痛みもなく、腱が斬られたとしても、滅却師の乱装天傀(らんそうてんがい)のように霊子によって四肢をコントロールできる。

 

 

「そらそら!!」

 

 

「鉄さん!」

うるいとショウマが射場の元へ向かおうとするが、射場が声で制する。

「お前らは下がっとれ!!」

 

「こうなったら時間切れを狙うしかないのう、、、。」

 

「縛道の二十一、赤煙遁(せきえんとん)!」

射場が両手を地につけると大量の煙幕が、ホムラと射場を包む。

 

「縛道の七十三、倒山晶(とうざんしょう)。」

煙幕の中、どこからか射場の声が聞こえる。

 

煙が晴れるとそこに射場の姿はなかった。

 

「どこに行った!?」

 

 

「鉄砂(てっさ)の壁、僧形(そうぎょう)の塔、灼鉄熒熒(しゃくてつけいけい)、雷鳴の馬車、糸車の間隙、自壊せよ、ロンダニーニの黒犬、、、」

 

ホムラが目を凝らすと、射場がアパートの屋上で隠れるように詠唱をしていた。

 

「そこか!」

 

ホムラが腕を倍加させ、射場を殴りつけるが倒山晶による結界で弾き返される。

 

「一読し・焼き払い・自ら喉を掻き切り、光もて此(これ)を六(むつ)に別(わか)つ、 湛然(たんぜん)として終(つい)に音無し。」

 

「くそっ、、、」

 

ホムラが腕を弾かれ反動で宙に浮いたと同時に、射場の詠唱が完了した。

 

「複合縛道、六撃光牢五重鉄貫(ろくげきこうろうごじゅうてっかん)!」

 

六つの光の柱に紅色の鎖が纏わり付き、さらにそれが五つずつ、つまり三十本もの光の柱がホムラの体を押さえつけた。

 

「う、動けない、、、!」

 

 

「鉄さんすごい、、、!複合の三重詠唱だ、、、!」

うるいとショウマは見たこともない高度な鬼道を目の当たりにし、目を丸くしている。

 

ホムラは右腕に全力を注ぎ倍加させ、なんとか縛道の柱を弾き飛ばした。

 

「く、、、人化の術が解けていく、、、!」

 

右腕は自由になったものの、残りの柱を取り除くのは容易ではない。

 

ホムラが左腕を倍加させて、柱を取り除こうとした時だった。

ホムラの右肩あたりに何かが激突し、そのままその何かに組み伏せられた。

 

「な、なんなんだ一体、、、お前は!」

仰向けに組み伏せられたホムラが目を開けると、一匹の狼が悲しそうな顔をしてホムラの上に乗っていた。

 

「左陣様!」

うるいとショウマがその狼の名を呼ぶ。

 

ホムラが右腕を倍加させ狗村を吹き飛ばしたが、すぐさま狗村はホムラに飛びかかり、次はホムラの右腕に噛み付いた。

 

「鬱陶しい!!」

ホムラは右腕を倍加させ振り払おうとするが、狛村は牙を突き刺したまま離さなかった。

 

狛村はボロボロになりながらも、振り払われるたび何度もホムラに噛み付き続ける。

 

「このままでは、、、!」

すでにホムラの手は狼のものとなっていた。

 

狗村は射場の方を向き、目で何かを訴える。

 

狗村との関係が長かったからか、射場はすぐに狗村の意図を読みとった。

 

「(左陣殿、、、分かりました!)」

 

 

「縛道の九十一、十二杖光牢(じゅうにじょうこうろう)!」

 

射場は狗村ごとホムラを再度縛道で縛りつける。

 

 

最初は暴れて抵抗していたが、狗村に噛み付かれ、ホムラは諦め抵抗をやめた。

そしてホムラは人化の術が解け、完全な狼となってしまった。

 

ーーごめんよホムラ、、、仇討てなかったよーー

 

 

射場は意気消沈したホムラを見て縛道をゆっくりと解く。

すると狗村はホムラに向かって吠え始めた。

 

「左陣殿はなんと?」

 

ショウマが答える。

「バイケイにお説教してるみたい。」

 

そして狗村が一頻(ひとしき)り吠え終わった後、うるいが狗村を見つめたまま射場に伝える。

 

「あと、左陣様はバイケイに教えてあげてるんだ。」

 

「何をじゃ?」

 

「バイケイの名前の由来だよ。」

 

「名前の由来?」

 

「バイケイソウの花言葉。」

 

「左陣様は大事にしてほしいことを僕らの名前にしてくれたんだって。」

 

 

自分の名前の由来を聞いたバ(・)イ(・)ケ(・)イ(・)が遠吠えをすると、2匹の狼は射場達を置いて走り去っていった。

 

 

「バイケイ、、、。」

 

「大丈夫じゃ、左陣殿が導いてくれるはず。」

 

 

 

ーー名前の意味を知ったら、自分の名前なんて好きになれるはずがないーー

 

 

ーーバイケイ、お前の名前の意味はーー

 

 

 

To be continued........

 

 

 

 

 

 

 

 

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