BLEACH 〜Higher Than That Moon〜 作:虹捜索隊
始解と卍解。
始解とは斬魄刀と対話することで至ることのできる能力の解放。
始解が使えれば席官入りは固く、死神がまず目指すべき斬魄刀戦術である。
そして卍解。
死神として頂点を極めた者のみに許される斬魄刀戦術の最終奥義。
卍解を修めた数ある死神も始解、卍解の順に修得してきた。
それは黒崎一護のような異質な死神でも例外ではない。
しかしただ一人、卍解から修得した死神がいた。
それは数百年前に遡る。
かつてある貴族が財力によって地位を得ていた。
その貴族は力で成り上がったものの、それから地位に
そんな一族には、護廷十三隊に入ろうとする清廉勇敢な姉と、その姉を少し疎ましくも誇らしく思う弟がいた。
姉が真央霊術院に通っていた時のこと。
彼らの財力に狙いをつけた貴族同士が結託し、彼らに対し尸魂界への反逆という罪を着せた。
冤罪だ。
彼ら一族はすでに死神としての力はないに等しく、捕らえられるのにそう時間はかからなかった。
一族は処刑と称して、処刑用の穴の中で虚と戦わされた。
力ない彼らにとってはまさに虐殺だった。
一人、また一人と殺されていく。
そして最後に姉と弟が浅打を持たされ処刑場に入れられた。
姉は虚との戦闘の前、処刑を見物する貴族たちに対し、《姉弟が虚を斃した場合、貴族たちが四十六室に延命を進言する》という口約束を取り付けた。
姉は虚に健闘したものの、やはり力及ばず追い詰められていった。
ーー強い死神になってね、双ちゃんーー
姉は弟を助けるため、使えるはずもない
姉は自身を犠牲に弟を助けたのだ。
しかしあろうことか貴族達は新たな虚を穴に放つ。
腹を抱えて笑っていた。
そしてその時弟は悟った。
この瞬間、この少年は始解を経ず卍解に至った。
その少年の名は痣城双也。
卍解を先に修得した彼の始解は、卍解ありきの始解だった。
〜シエン迎撃地〜
「沁み入れ、
ーーキヒヒッ、あんたこの霊圧耐えれるの?ーー
ーーあの時はまだ
ーー今は
「その名を知るために
痣城は更木剣八に敗れた後、技術開発局で手に入れた超人薬を使い、永遠とも感じられる程の時を斬魄刀との対話に費やした。
ーー何年?百年?千年?忘れちゃったよーー
「なるほど。君は卍解で霊子と融合し、始解でその霊子を集約する。」
シエンの言う通り、痣城の斬魄刀は途轍も無い霊圧を放っている。
「確かにそれほどの霊圧なら僕でも致命傷は避けられないだろう。当たればの話だがね。」
シエンが皮肉混じりでそう言い放った瞬間、痣城の背後からアシドが空中へ飛び出す。
「俺が当てさせる。縛道の六十三、
アシドが縛道を放つと、シエンも虚閃を放ち相殺させた。
「痣城、俺が当てさせてやる。」
アシドは爆風を避けるように痣城の隣に着地すると、そう宣言する。
「いいか、連携は味方の目線と霊圧の流れを読め。」
「分かった。」
ーーあんたが連携だなんて明日は槍が降るねーー
痣城は
「お前は憎くないのか?私はお前の隊長を殺した男だ。」
アシドは一呼吸おいて、低く静かな声で答える。
「より強い者が剣八。それが掟だ。」
かつて十一番隊隊士だったアシドは剣八の意味を理解していた。
そして痣城も剣八の一人として認めていた。
「ただ一つ憎んでいるとすれば、あんたがその掟に従わず九代目に剣八を継がせたことだ。」
「痣城、
アシドが中段に構えると、霊圧による突風が発生し、アシドの周りを渦巻き始めた。
「卍解。」
「
斬魄刀は一回大きくなり、刀身も少し長くなった。
「先に教えといてやる。この卍解は単に力が増幅するだけの卍解だ。
「その力の増幅は、、、」
その先をシエンが得意げに続けた。
「5~10倍だろう?」
アシドは少し間を置き、嘲笑うように答えた。
「悪いが、
眉を潜めるシエンを傍目にアシドは説明を続けた。
「ただし正面から斬られた時だけ傷を負わない。」
「そんなことを信じる敵がいると思うかい?」
「信じるかどうかはお前次第だ。」
その言葉を発するや否や、シエンの目の前には斬魄刀を大きく振りかぶったアシドが現れた。
「虚閃!」
シエンは咄嗟に虚閃をアシドの斬魄刀に放ち、強引に押しのける。
「.......地に満ち、己の無力を知れ。」
シエンの背後から、低く静かな声の詠唱が響く。
「本当の狙いはこっちか!」
「破道の九十、黒棺。」
痣城が歪な霊圧の棺でシエンを包んだ。
そして体勢を立て直したアシドも痣城に続き、詠唱破棄した高等鬼道で追い討ちをかける。
「破道の九十一、
千手皎天汰炮が消滅すると同時に、痣城がその中心部へと移動し、刀を振りかぶった。
「いけ!痣城!」
アシドの声を受け一瞥した後、痣城は爆風の中に立つ人影に斬撃を浴びせる。
一閃。
しかし痣城の斬撃は勢いよく空を切った。
瀕死の状態のシエンは、自身の腹に
「まだだ、、、!」
シエンとの距離は遠くはない。ほんの数メートル。
痣城はもう一度斬撃を浴びせるべく、斬魄刀を振り上げようとする。
するとシエンが痣城との間合いを詰め、あろうことか痣城の斬魄刀を掴んで自身の腹に突き刺した。
「残念だったね、、、。その霊圧で両断できていれば超速再生もできていなかっただろう。」
痣城が突き刺したシエンの腹は、雨露を包み込むように再生している。
「君たちの言葉で言えば、肉を切らせて、ってやつかな?」
さらに鬼道でボロボロになっていた体も回復しはじめていた。
「これで終わりだ。」
シエンが痣城を触手で封じ、目の前で虚閃を放つため黒球を発現させる。
「そうだな。」
アシドがシエンの背後から痣城ごと斬り捨てた。
「仲間ごと、、斬ったのか、、、?」
「かつては涅局長とやりあった程の頭脳だと聞いていたが。」
ーー正面から斬られた時だけ傷を負わないーー
シエンはアシドの言葉を思い出す。
「卍解の能力は本当だったということか、、、」
「鬼道も痣城の空振りも全て計画通りだったと、、、」
「死神にも中々頭の切れる奴がいたようだ。」
仰向けに倒れたシエンは満足そうにアシドを見上げた。
その時だった。
遥か遠くから黒い砂嵐のようなものが近づいてくるのにアシドが気付く。
「あれは!?黒煙か?」
シエンがアシド達が目をやる方向へ視線を動かすと呆れたように鼻で笑い、タメ息をついた。
「ここを去った方がいい。」
「なんだと?」
「あれは破面だ。飲み込まれれば切り刻まれる。」
「なぜお前が俺たちにそんなことを言う?」
アシドは、シエンに何か思惑があるのでは、と
警戒していた。
「警戒しなくてもいい、最高のひと時をくれた礼だよ。」
「狩能。」
痣城がアシドに対し、この場を離れるよう目配せをする。
痣城とアシドは瞬歩でその場を後にした。
「シエンだ!」 「遊ぼう!」
「久しぶり〜」 「痛そう、、」
「Qrrrrrrr」 「切り刻んで遊ぼ!」
「面白そう!」 「そうかなぁ、、」
「また
そしてシエンは
〜ザエルアポロ迎撃地〜
シエンと同じ顔立ちをした破面が嬉々として、かつての仲間に語りかけていた。
「いやぁ、こんなにも僕を歓迎してくれるなんて嬉しいよ。」
「でも意外だね。このメンバーは。」
「ネリエル、グリムジョー。」
「そして、、、スタークに
「まさか君達がいるとはね。涅マユリの記録では京楽春水に討たれたとなっていたが?」
スタークはザエルアポロに答えるように事情を話し始める。
「総隊長さんがおれたちをデータから再構築しろって命令したんだってよ。」
―――――――――――――
〜霊王宮・技術開発局〜
薄暗い無機質な部屋。
足元には緑がかった水が流れている。
「俺は、、、一体、、、?」
空座町で八番隊隊長に討たれたはずだった。
あそこで自分は死んだはず。
頭の中で混乱が渦巻く中、ふと前に目を凝らすと、そこには人影があった。
「あ、、、あんた、、、。」
「久しぶりだね。」
その男こそ、空座町で自身を討った男だった。
「俺は一体、、、?」
「喜助くんに頼んでデータから再構築してもらったんだ。」
喜助、、、
確か自分の所属していた組織の頭領がその名を口にしていた。
気を払うべき相手だと。
そこでふと疑問が浮かび上がる。
「なぜ俺を?」
「今度、新たな種族の敵さんが攻めてくるからねぇ。その補強さ。」
その男、元八番隊隊長で、現総隊長である京楽春水が飄々と話しを続ける。
「そうじゃねぇ、なんで十刃の中から俺を選んだんだ、って聞いてんだ。ヤミーやバラガンのおっさん達の方が能力的にも強えだろ。」
「君があの中で“信頼できる”と踏んだからだよ。」
「もちろん
「それに、、、君と
―――――――――
「元一番がいるとは光栄だよ。」
ザエルアポロは余裕の表情で小さく拍手して見せる。
「だけど、、、、」
「やはり君は場違いじゃないかな?」
ザエルアポロは鬱陶しそうに、一番端に立つ顔の右半分が仮面に覆われた女性破面に目をやった。
「なぁ?ロカ・パラミア。」
ロカと呼ばれるその女性破面はザエルアポロに対し軽く頭を下げる。
「ザエルアポロ様、お久しぶりです。」
その軽い礼が気に障ったのか、ザエルアポロはわざとらしく舌打ちした。
「お前がかつてシエンを斃したのは知っている。お前の能力も知っている。それくらいで図に乗るな。」
「
ロカは元々
彼女はザエルアポロが作った人工的な虚。
そしてそこから進化した破面だ。
破面としての刀を持たない彼女は、自身の能力を封じこめていないということになる。
そのため彼女は能力の解放ではなく、能力の開花という特殊な過程で帰刃に至ったのだ。
それを可能にしたのが、、、
「
ザエルアポロはすでにどういう過程でロカが帰刃に至ったのか分析済みだった。
「まさかそんな力が使えるようになっているとは思ってもみなかったが。誰かに教わったのかな?」
ザエルアポロはネリエルを一瞥する。
「だがまぁ流石は僕の作った道具だ。
それに対してロカの
「そうだろう?
「道具ってリリネットのこと言ってんのか?俺は道具なんて思ったことはねぇよ。」
スタークの横にいた少女の破面リリネットは、ザエルアポロが暗に自分が京楽に劣っていた、と言っていると理解し激怒した。
「スターク、あいつムカつく!」
「そう怒るな。お前は道具じゃねえだろ。」
スタークはリリネットに優しく言葉を向けた。
ザエルアポロの長話にとうとう我慢できなくなったグリムジョーはズカズカと前へと出ていく。
「
グリムジョーは刀を抜くと、鋒の方から柄に向け刀身を爪で引っ掻き能力を解放する。
「こら!グリムジョー、一人じゃ、、、って、もう、、、。
ネルはグリムジョーに呆れながらも刀剣解放し、ケンタウルスのような姿となった。
そして右手には背丈を超える大槍が。
「
ザエルアポロの背中からは触手のようなものが生え、下半身からも触手が生え並んでいる。
「待ちなさい!グリムジョー!」
一人先走るグリムジョーをネルが制止しようとする。
「忘れたの!?ザエルアポロの能力を!飲み込まれれば、複製されり、臓器を自由にやられるのよ!?」
グリムジョーは鬱陶しそうに返事をすると立ち止まった。
「あぁ?だからこうすりゃいいんだろ?」
「
グリムジョーは、ザエルアポロから20メートルほど離れたところで、膝から弾丸を噴出した。
迫りくる弾丸を眺めながら、ザエルアポロはグリムジョーの成長に感心していた。
「なるほど、ただの獣じゃなくなったようだ。」
「
ザエルアポロは王虚の閃光をぶつけ相殺させた。
「間合いを取るとは、グリムジョー、君は情報から学ぶということをするようになったようだね。」
「けど、、、今の僕にはその間合いは無意味だ!」
ザエルアポロは腕を前に出すと、ピンク色の光を放つ霊子の弓を構築した。
すると、ザエルアポロは背中の触手から垂れ下がっている雫のような赤い肉の塊を引きちぎり、弓にあてがう。
「
ザエルアポロはその肉の雫を矢のように放った。
「
ネルの放った槍が肉の雫を突き破る。
「読んでいたのか。」
「大方、それに飲み込まれれば複製されるってことでしょ?」
「さぁ、それはどうかな?」
すると、ザエルアポロの背中の触手から垂れ下がっている肉の雫が大きく膨れ上がると、そこから《目の周りに模様のついたネル》と《ネルのような人形》が産み落とされた。
「あれは!?」
ザエルアポロは人形を拾い上げると、舐めるようにまじまじと観察している。
「行け。」
ザエルアポロがそう言うと、偽物のネルが本物のネルへと間合いを詰めていく。
「なぜ!?」
「武器や攻撃から霊圧を解析し、その個体を複製する。それが僕の新たな能力だよ。」
「そして、、、」
ザエルアポロは不気味に笑うと、ネルの人形をカプセルのように開け、中から臓器や腱の名前が書いてある模型を取り出した。
――PULMO――
「これは確か肺だったかな?能力に変化が現れるのはいいが、言語まで変わるとは困ったものだよ。」
バキッ
ザエルアポロは肺の模型を粉々に粉砕した。
「ごはッ」
その瞬間ネルは勢いよく吐血し、その場に崩れた。
そして偽物のネルがとどめを差そうと槍を振りかぶる。
キンッ
「グ、グリムジョー、、、」
「やられそうになってんじゃねぇかよ。雑魚はそこで倒れてろ。」
「虚閃!」
グリムジョーは
「君は本当に変わったようだね、グリムジョー。」
「あぁ?何言ってやがんだてめぇ。」
すると、ザエルアポロの触手に生えている肉の雫から、ネルとグリムジョーが産み落とされた。
「偽物と接触するだけでも霊圧の情報が取れるのか。」
スタークは冷静に状況を分析している。
「さぁて、どれにしようか。」
ザエルアポロはグリムジョーの人形から潰す臓器や腱を選んでいた。
――AILLESILIO TENDONO――
「これはなんだったかな。まぁいい、これにしよう。」
バキッ
するとグリムジョーが突然態勢を崩す。
「ハハッ、アキレス腱か!」
その一瞬の隙をつき、偽物のグリムジョーとネルが攻撃を仕掛けてきた。
「行くぞ、リリネット。」
スタークは傍らに立つリリネットの頭に手をのせると、青白く光りを放つ。
「蹴散らせ、
スタークが把持する2丁の拳銃から霊圧の弾が放たれ、偽物たちを打ち抜いた。
「いきなり劣勢だが、やるしかない。」
スタークは後ろを振り向き尋ねた。
「あんたはいけるか?」
「はい。」
ロカは力強く頷き、霊圧を高める。
「踊り狂え、
To be continued.....