BLEACH 〜Higher Than That Moon〜 作:虹捜索隊
〜忘れることのできない演習地〜
「蟹沢がやられた演習地じゃねぇか!!」
「いきなりどうしたの?檜佐木君。」
檜佐木が後ろを振り向くと、そこには学生用の白と赤の死覇装を来た蟹沢が心配そうな顔をして立っていた。
そして自分の服装を見てみると、、
青い袴に白い道着。
学生時代の格好だった。
すると前に立っていた男、学生時代の
「檜佐木!!ここは、、、」
「あぁ、あの時の実習だ。」
その光景は、かつて檜佐木、青鹿、蟹沢が六年生だった頃、後輩の引率として付いて行っていた対ダミー虚の実戦実習そのものだった。
「とりあえず無事終了ね。」
蟹沢の言葉に檜佐木はハッとした。
「結界組!!応答しろ!!」
檜佐木が無線を飛ばすが、演習地を守る結界組からの応答はない。
「まずい、、!ということはもう始まる!」
そう声を発したのも束の間。
蟹沢は前方数十メートルのところに巨大な虚が佇んでいるのを発見し、檜佐木の名を叫ぶ。
「檜佐木く、、」
蟹沢が呼び終わる前に檜佐木は抜刀し、斬魄刀の名を呼んだ。
「刈れ、風死!」
つられるように青鹿も始解する。
「固まれ、
〜そこから数百メートル離れた地点〜
意識が戻ると恋次、イヅル、雛森の3人は横並びで歩いていた。
まず声を発したのは雛森だった。
「ここは?」
「この格好、学生時代のじゃねえか!?」
恋次は自身の格好を見て驚いている。
「みんな元の意識はあるようだね。」
イヅルは立ち止まって顎をさすっている。
「ここはあの時の演習地、、、そして今並んで歩いてるってことは、、、」
「蟹沢先輩が危ない!」
イヅルに続くように雛森が叫び、それと同時に走りだした。
3人が少し駆けると、前方から巨大な虚がだんだんと姿を現した。
忘れるはずもない、二本の角が生え、般若のような顔をした虚。
両腕は鋭い鎌のようになっている。
その虚は大きな鎌を振り上げると蟹沢に向かって、猛スピードで振り下ろした。
キンッ
その虚の爪を、檜佐木と青鹿が蟹沢を護るように防いでいる。
「檜佐木君、青鹿君!?」
「この感じ、、やはり力は今のままみたいだな、、!」
2人は能力は学生の頃に戻っていないことを再確認する。
「檜佐木くん、、、何それ?刀の形が、、、?」
「蟹沢、お前は
「何を言ってるの?檜佐木くん、、、?」
自分と青鹿は元の意識を持っているのに、蟹沢はまるであの時のまま。
檜佐木の頭は混乱していた。
すると、横から恋次が斬魄刀を振るい虚を浄化する。
「阿散井!」
「檜佐木さん!こりゃ一体どうなってんだ!?」
「お前たちも元の意識があるようだな。」
「とにかく、周りの虚を片付けましょう。」
雛森がそう言うと、高く跳び上がり周囲の虚に斬りかかった。
檜佐木、青鹿、恋次、イヅルも続いて虚に向け跳び上がり次々と斬り伏せていく。
「とりあえずは片付けたな。」
檜佐木が刀を下ろした時だった。
とてつもない霊圧が辺りを包む。
その霊圧とは真逆の、低く落ち着いた声が心地よく響いた。
「よかった。怪我がなくて。」
穏やかな雰囲気ではあるが、彼の本性を知る今なら、その歪な霊圧を少しながら感じ取ることができる。
「まさか君達学生が虚を倒したのかい?」
その男こそ、、、
「藍染、、、!」
檜佐木は風死を強く握りしめ、その男、藍染を睨んだ。
恋次は尸魂界の敵となるその男に詰め寄ろうとする。
「怪我がなかっただと?てめえが仕組ん、、」
しかし恋次を遮るように雛森が鋭い口調で言葉を発した。
「あなたが画策したんじゃないですか!藍染惣右介!!」
「雛森、、、」
藍染は瞬時に“この者たちは使えない”と判断し、救助から殲滅へと目的を変える。
「なぜ君たちが怒っているのかは分からないが、、、それよりまずこれを見てくれないかい?」
藍染は斬魄刀を鞘から抜くと、切っ先を下に向け逆さの状態で斬魄刀を把持した。
「野郎解放するつもりだ!絶対見んじゃねえぞ!」
その言葉を聞き、隣に立っていた市丸ギンは曇った表情を示した。
「なんやこの子ら知ってるみたいですねぇ。」
「ギン、予定変更だ。違う子を探そう。この子達はここで片付ける。」
非情にそう言い放つと、藍染は右掌の上に歪な霊圧を構築した。
「破道の九十、
「縛道の九十八、
恋次は高等鬼道で藍染の黒棺を防いでみせた。
「藍染、俺はお前を倒せるよう修行したんだ。」
さすがの藍染も学生が自分の鬼道を防いだことに驚いている。
「学生で高等鬼道を使えるとは驚いたよ。」
「吠えろ、蛇尾丸!」
恋次は藍染に向け蛇尾丸を伸ばした。
藍染は片手で蛇尾丸を止めると、刃節を繋いでいるワイヤーを斬ろうと刀を振るった。
キンッ
金属音がこだまする。
「斬れねぇよ。あの頃とはもう違う!」
かつて恋次は双極の丘で藍染と刃を交えたことがあったが、その時は成す術も無く蛇尾丸をバラバラにされてしまったのだった。
「学生なのに始解までも使えるとは面白いね。」
「縛道の九十九第二番、
雛森は手を地面につき、高等縛道を唱える。
「
手をついた地面から幾本もの包帯のような布が藍染へと伸び、何重にも巻き付いた。
「
そしてその上から錐のような太い針が何本も刺さっていく。
「檜佐木さん!今です!!」
「あぁ!」
雛森が手を地面につけたままそう叫ぶと、檜佐木は風死を振り上げながら藍染へと向かっていった。
キンッ
しかし再度金属音が鳴り響く。
檜佐木の斬撃は藍染に届く前に、何者かによって止められていたのだ。
「あなたは、、、」
そうしている間に藍染を封じていた卍禁が、藍染の霊圧によって破られていく。
「
「
東仙は自分を隊長と呼ぶ学生の言動を
「隊長だと?お前、私を知っているのか?」
檜佐木はその問いに答えることなく、恋次に呼び掛けた。
「すまない、阿散井。東仙隊長は俺にやらせてくれ。」
「構わねぇっすよ、俺も藍染倒すの横取りされたくねっすから。」
その言葉を聞いた檜佐木は鍔迫り合いのまま東仙に移動するよう持ち掛ける。
「場所を移しましょう、東仙隊長。」
「なぜお前に従う必要がある?」
そこで藍染が檜佐木の提案に興味を示し、話に割り込んだ。
「いいじゃないか、要。面白そうだ。」
「しかし、藍染様、私は、、、」
「もう一度言うよ、要。いいじゃないか、面白そうだ。」
藍染は東仙に対して途轍もない霊圧を放っている。
「はっ。申し訳ありません。」
「じゃぁ行きましょうか。」
檜佐木がそう言うと、東仙と共に瞬歩でその場を後にした。
イヅルは藍染と少し離れたところにいたギンに斬りかかった。
そしてギンがそれを受け止め鍔迫り合いとなる。
「隊長、、、」
「隊長て、それ僕に言うてんの?」
副隊長である自分になぜ目の前の学生は“隊長”と言ってくるのかが理解できなかった。
藍染隊長と勘違いをしているのだろうか、ギンはそんなことを呑気に考えていた。
「
その言葉を聞きギンは目の色を変え斬魄刀を解放させた。
「射殺せ、
イヅルは刀で防ぐが、ギンはそのまま神槍を伸ばし続け、かなり遠くまで吹き飛ばした。
そしてギンは吹き飛ばしたイヅルの元へ瞬歩で移動する。
藍染達とかなり距離が開き、ギンとイヅルは一騎打ちの状態となった。
「、、、、君、さっきのはどういう意味や?」
「あなたは藍染を討つために、藍染の側にいる。そうですよね?」
藍染投獄後、イヅルは乱菊や一護からギンの本当の目的を聞いていた。
ギンが藍染に付き従っていたのは、藍染を討つための芝居であり、懐から藍染を斬るためだった。
藍染はギンの思惑を知った上であえて懐においていたのだが。
本来それを
しかし藍染に自分の思惑が感づかれていないと思っていたギンは、イヅルの質問にも嘘で答えていた。
「ふぅん、君おもろいなぁ。そんな訳ないやないの。」
すかさずイヅルは次の質問をぶつける。
「松本さんのためじゃないんですか?」
ギンは蛇の様な鋭い目つきでイヅルを睨みつけた。
「その話どこで聞いたんや?」
イヅルはまっすぐギンを見て何も答えない。
「君なんや怖いなぁ。ここで片付けとかな。」
ギンは脇差を持った右手を後ろに引き勢いをつけ前へと突き出した。
「(勝負は一瞬!)」
「面を上げろ、侘助。」
イヅルは神槍を半身になって躱し、そこで何度も斬りつけた。
「まだまだや!」
ギンは横に避けたイヅルを追う様に刀を横へ振るう。
イヅルはカウンターの要領でまた数回神槍を斬りつけた。
「!?」
神槍を持ったギンの右手は突然地面へと押し付けられることとなる。
「先程僕はあなたの斬魄刀を10回斬りました。ということはその脇差が0.4kgだとして2の10乗倍で、、、約410kgです。」
「到底持つことはできません。」
「なんや色々と怖い子やなぁ。ここら辺で早いとこ片付けななぁ。」
ギンは頭を少し掻きながら小さく笑った。
しかし目は全く笑っておらず、殺気を払っている。
「ほんなら仕方ないなぁ、、、卍、、」
イヅルは卍解を遮るようにギンに忠告した。
「塵にしても無駄ですよ。形作った時点で重さがのしかかる。つまりあなたは僕に照準を合わせることはできない。」
ギンは目を細め、自身の卍解を知っているような説明に耳を傾ける。
「伸縮の際、塵となって相手を貫いたときにカケラを残す。体内に残したカケラには細胞を溶かす猛毒がある。」
自身の卍解の能力を言い当てられたギンは沈黙した。
「市丸隊長、僕は貴方を慕っていました。だからこそ、、、」
イヅルは今まで四人の隊長に仕えたことがある。
市丸ギン
そして檜佐木修兵。
その中でも市丸ギンは特別だった。
確かに掴み所はなかったかもしれない。
しかしどこか居心地が良かった。
だからこそ、藍染の配下だと知ったときには気持ちの整理がつかなかった。
そしてギンが実は埋伏の兵であり、藍染と対峙したがあと一歩のところで届かなかったことを知ったとき、イヅルには二つの感情が浮かんできた。
それはギンが藍染の配下ではなかったという安堵。
そして、一人で背負わせてしまったという自責の念。
「市丸隊長、今の僕たちなら藍染を討てます。」
「ほんまに君、、、何者なんや?」
「卍解、双王蛇尾丸!」
「君は卍解も出来るのか。興味が湧いてきたよ。」
本来ならあり得ない学生の卍解を目の当たりにした藍染だが、それでも全く焦る様子は見られなかった。
「余裕なのは今の内だ。解放を見なけりゃいいだけだろ!」
「君は本当に私の斬魄刀の能力を知っているようだ。」
藍染は納刀すると、右手を静かに前へと出した。
「だがその言葉は、私の死神としての素の能力と渡り合えてから言うべきだと思うがね。」
「破道の九十九、
藍染は五体の紫龍を発現させ、余裕の表情で口角を上げている。
しかし恋次はまったく焦るような素振りは見せていなかった。
「破道の九十九!五龍転滅!!」
「阿散井君、いつの間に五龍転滅を!?」
雛森は恋次が五龍転滅を使用したことに驚きを隠せないでいた。
鬼道の達人としても知られる雛森でも唯一まだ修得していない程の高等破道。
それを、学生時代は鬼道が大の苦手だった恋次が修得していたのだから、驚かずにはいられなかった。
恋次の放った橙の龍は藍染の紫龍とぶつかり相殺する。
「見えてるぜ!!」
五龍転滅同士の相殺で衝撃波が周囲を襲う中、恋次は藍染による背後からの斬撃を防いでみせたのだ。
「この状況で私の瞬歩を追うとは、霊圧覚知も優れているのか。」
「成程。君の言う“私を倒せるように修行した”という意味は分からないが、実力は本物のようだね。」
「これで鏡花水月も使えないとなると、中々に面白いが厄介だよ。」
「これを使うのは君たちで二度目だ。」
藍染は斬魄刀の鋒を天に向けると、こう小さく呟いた。
「卍解、、、。」
To be continued.....