BLEACH 〜Higher Than That Moon〜 作:虹捜索隊
「卍解、
恋次と雛森は万一に備え、顔を背ける。
「見ても見なくてもいい。」
「これは始解を補完するための卍解だからね。」
「補完だと?」
「あぁ、鏡花水月に比べると少し劣るからあまり使いたくはないんだが。」
藍染は自身の斬魄刀を見つめた。
「だが、鏡花水月が使えないとなると仕方がない。」
「破道の九十、黒棺。」
恋次は咄嗟に黒棺を避け、再度藍染へと正対する。
「な、、、藍染が、、、」
すると恋次達の目の前にいる藍染は、軽く数百を超えているであろうほどに増殖していた。
「さぁ、どれが本当の私かな?」
「まどろっこしい!雛森!!俺と藍染を囲め!」
その言葉を読んでいたかのように雛森は素早く鬼道を発動させた。
「
恋次と大勢の藍染は鬼道の城壁に四面を囲まれる。
「縛道の七十九、
そしてその城壁を囲むように何本もの光の鎖が包み込んだ。
何重にもなった九曜縛はどんどんと収縮していく。
そして恋次と大勢の藍染は鬼道の鎖によって締め付けられる。
「硬さ勝負といこうじゃねぇか、藍染!」
「
恋次のオロチ王と狒々王をが赤く光を放ち始めた。
そして大きな爆発音と共に、爆炎の柱が空高く伸びる。
黒く立ち込める爆煙の中から藍染が飛び出した。
「そこそこに硬えじゃねぇか、、、」
その時だった。
途轍も無い速さで伸びた刃が藍染の左腕を貫く。
「
瞬歩で現れたギンの解号によって、藍染の左腕に風穴が空き、そこからどんどんと体を蝕んでいく。
藍染は顔色を変えず、自身の左腕を切斬り落とした。
「なるほど、、、この子達は君の差し金だったのか。」
「いつ反旗を翻すのかと楽しみにしていたが、、、思っていたより早かったよ。」
「だが、卍解の能力を君に教えた覚えはないが?」
「そら見たらわかりますわぁ。」
「仲間だと思ってた
「なっ、、!」
その言葉を聞いて、恋次は目の前の藍染を凝視する。
「止まれ、暗鏡流水鏡花水月。」
水が流れるように、藍染の姿が空気ぼやけると、雛森の姿があらわとなる。
「ひ、雛森!?」
「阿散井君!?」
自分の戦っていた本当の相手を見て、お互いに言葉を失う。
その姿を見てギンが目を細めた。
「お互いに完全睡眠にやられとったみたいやねぇ、、、」
ギンは藍染の方へ視線を向け、話を続ける。
「けど、そのおかげで藍染隊長の卍解の能力が分かったわ。」
「始解は、その解放を見せた者を完全睡眠に陥れる能力。」
「そして卍解は、解放を見せていない者を完全睡眠に陥れる能力。」
「それじゃ逃れようがないじゃねぇか!」
「いや、僕の推察が正しければ、、、」
ギンの後にイヅルが続く。
「卍解を使っている間、始解は解除される、ですね?」
「その通りや。」
「君達の前で卍解を使うのは失敗だったかな。」
「それに、君の卍解の能力にまさか体を蝕む力があるとは。」
藍染は斬り落とした自分の腕に目をやると、その腕は徐々に融解されていっていた。
「13キロメートル斬魄刀が伸びる、というのは嘘だとは思っていたが、ここまで厄介な能力とは。」
「いくら藍染とは言え、崩玉と融合してなければいける!!」
隻腕の藍染を見た恋次は斬魄刀を抜き、藍染に向け飛び上がる。
藍染は片手で悠々と恋次の斬撃を防ぎ、鍔迫り合いとなった。
「吉良!!」
恋次の声に応えるように、イヅルが瞬歩で移動し斬魄刀を振るう。
「軽い斬撃だ。」
藍染はイヅルの斬撃を止めることなく、カウンターの要領で振り払った。
「本当に軽いですか、、、?」
藍染がイヅルの笑みを怪訝に思うと同時に、右手が地面へと引っ張られる。
「なんだ?斬魄刀が、、、」
イヅルはギンの方を振り返ることなく、その名を呼んだ。
「今です!市丸隊長!」
「隊長ってのはよくわからんけど、、、」
イヅルの声とともにギンは藍染に向け斬魄刀を伸ばす。
「なっ、、、」
藍染の少し反応が遅れ、左足を刀が貫通する。
「市丸隊長!!!」
再度イヅルがギンを呼ぶ。
「
そのギンの解号と共に、藍染は自身の左足を斬り捨てた。
ギンは額に汗をにじませ、その様子を注意深く観察しながら目を細めている。
「あと少し、あと少しや、、、乱菊、、、!」
「砕けろ、鏡花水月。」
空間がまるで鏡が割れたように崩れ落ちる。
「な、、、キミは、、、、。」
目の前には赤い髪の学生が、斬り落とした左足を押さえていた。
ギンが貫いていたのは恋次の左足だったのだ。
「残念だが、ギンが見ていたのは私ではない。」
「な、、卍解を使っていたはず、、、」
「いつから始解に戻していないと錯覚していた?」
言葉を失うギンの横をイヅルが駆け抜ける。
「だとしたら今僕たちに見えてるのが本物ということだ!」
「卍解、
イヅルが両手で斬魄刀を振り上げると、藍染は地面に伏した。
「これは、、、」
「対象に、霊圧に比例して重力を与える力だ。」
「貴方程の霊圧なら立ち上がることはできないはず。」
「今だ!」
イヅルは雛森の方へと振り向いた。
「弾け、飛梅!!」
雛森の放った火球は、地に伏す藍染に直撃する。
そして辺りが黒煙に包まれた。
皆が確かな手応えを感じていたその時。
その空間を切り裂くように解号が響く。
「止まれ、暗鏡流水鏡花水月。」
藍染の声を聞き、皆が凍りついた。
黒煙が晴れると、そこに伏していたのはギンだった。
そしてイヅルや雛森の後ろから声が響く。
「いつから卍解を使っていないと錯覚していた?」
「ギンはずっと呼びかけていたよ、君たちにね。」
「やっぱり藍染隊長に勝つなんて、、、」
藍染に勝つことが如何に無謀であるかを雛森が思い知っていた時だった。
ーーまだ憧れているのですか?ーー
その声と共に、雛森の意識は一度途切れた。
ーーーーーーーーーーーーーー
目を開けると、そこはかつて自身の斬魄刀と対峙したときの森の中だった。
そして目の前に立つ巫女のような少女に問いかける。
「と、
「ここはあなたの精神世界です。」
「前に私が具現化したとき、あなたにイライラするって言ったことあったでしょ?」
以前、朽木
その際、雛森と飛梅は刃を交えていたのだ。
「あのとき言ったことは本音よ。裏切られて、明らかな敵なのにいつまでも藍染惣右介に憧れ慕い続ける。」
「今だって、藍染惣右介と呼び捨てにしているものの、心の中では藍染
「本当に、、、どこまで憧れてるんだか、、、」
「あなたのその気持ちに折れました。まぁあの時に屈服はしてますからね。ほんとに私の持ち主は、、、。」
「ごめんね、飛梅。」
「憧れて慕っているけど倒したい。」
「それが私の、、、あなたの新たな力となる。」
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「卍解、
雛森の周囲からは数百、数千もの炎弾が現れ同心円状に放たれると、一斉に倒れている恋次の方向へと進み始めた。
完全睡眠で自分を認識できていないはずなのに、自分に火球が迫ってきていたのだ。
「完全睡眠が効いていない?」
藍染は向かってくる炎弾を避けるが、炎弾は方向を変え、藍染に迫っていく。
「追ってくるのか。」
「破道の九十九、
藍染は炎弾を相殺させるため、5体の霊圧の紫龍を発現させた。
すると、先頭を奔っていた3つの炎弾が五龍転滅へとぶつかり跡形もなく消滅させた。
「私の五龍転滅をたった3つの炎弾で相殺させただと?」
その炎弾が数千の群れを作って、波のように藍染へと押し寄せる。
「まだまだいきますよ!!」
雛森は霊圧を上げると、二波目となる炎弾群を出現させ放出した。
藍染は一波目の炎弾群につかまり、途轍もない威力の炎弾をその身に受けながら叫んでいる。
「馬鹿な!!そんなことが!!たかが学生風情に、、、この私が、、、!!」
「何だ!この威力は!!なぜ、、、、」
二波目の炎弾群が藍染を包み込み、轟音を立てて一輪の花のように燃え盛る。
藍染は少しでもダメージを相殺させるためにと、全ての霊圧を使い果たし、炎が収まると同時に真下へ落下した。
仰向けに倒れる藍染の視界に雛森が現れる。
「私の卍解は、憧れた対象を攻撃が追い続ける。霊圧ではなく、その魂を目標として。」
「そしてその威力は憧れの大きさに比例する。」
「つまり、、、君は僕に憧れていた、、ということか、、、」
雛森は穏やかな顔で藍染を見下ろす。
「おそらく、私がこの威力の卍解を放つことはもうないでしょう。」
「まるで僕を倒すためだけの、、、卍解だね、、、。」
藍染は雛森から目を外すと、遠く空を見つめた。
「君には理解、、、できないだろうな、、、私の為そうとしている事の意味が。」
崩玉、破面、王鍵、霊王。
藍染の為そうとしていたことは分からない。
霊王になりたかったのか。
霊王を殺したかったのか。
世界を創り変えたかったのか。
世界を終わらせたかったのか。
「ええ、憧れは理解から最も遠い感情ですから。」
「ふふ、、、それだけは、、、同意するよ。」
「私を倒す存在が学生だったのは驚きだが、、、、」
「悪くはない感情だ。」
藍染は満足そうな顔をしていた。
雛森は一護から聞いたことがあった。
対峙している最中、藍染から感じたことを。
ーー皆と同じになりたかったーー
藍染が強すぎたため、比肩する者はなく、常に孤独だったのだろう。
自分と同等かそれ以上の存在を求めていたのではないのか。
藍染の反乱後、雛森はそんなことばかりを考えていたのだ。
それ故に雛森は、藍染が望む存在になれたことがこの上なく嬉しかった。
「吉良!雛森!」
そこへ檜佐木が駆けつける。
そして地に伏す恋次とギンに目を向けた。
「阿散井!市丸隊長!」
「君も、、、僕を隊長言うんかいな、、、」
「治療は青鹿に頼もう、あいつは回道の秀才だからな。」
檜佐木はそう言ってあたりを見回した。
「って、青鹿と蟹沢は?」
To be continued.........