BLEACH 〜Higher Than That Moon〜 作:虹捜索隊
〜東流魂街62区•花枯〜
「崩玉は手に入れたが、、、魂魄が耐え切れないか。」
仙波は瀕死の死神や滅却師、破面を集めては実験を行なっていた。
「魂魄が離散する前に再構築できれば、、、」
「再構築、、、そうだ!王印があれば!!」
涅マユリの電子記録に入っていた王印の資料。
あれを応用すればあるいは、、、。
「王印の移遷は10年に一度、、、」
「ということは10年後か。」
どうあがいても王印無しでは、仙波の計画達成はなし得ない。
「不本意ではあるが、それまでゆっくりと力をつけることにしよう。」
しかしそれに異を唱える者がいた。
「ふざけるな!!シャズ様の仇を打てるというから協力したんだ!」
滅却師の残党だ。
「なら行くといい。」
「今行けば確実に返り討ちだがな。」
「今急いて目的を諦めるか、耐え忍んで目的を果たすか。」
仙波は尚も実験を続けながら、その滅却師にそう告げた。
「自分で決めるといい。」
「くそっ、、、」
そして仙波は自身の息子の方に振り返る。
「麓源、この10年でお前にも戦力になってもらう。」
「はい!」
過去の様子を麓源は遠目から見つめていた。
「シャズは負け、父上も死神達に敵わなかった。」
「戦力が、、、足りていなかった、、、!」
今の自分なら、未来に何が起こるかわかっている自分なら、何かができる、麓源はそう確信していた。
「尸魂界と戦う勢力を集めなければ。」
しかし、今の自分を頼るということは、一度は死神に敗れ、時流の爆発に呑まれて過去に戻る事実は曲げてはならない。
「つまり、あの敗北は受け止めなければならない、、、。」
悔しいがそうするしかなかった。
「二度目は、、、負けんぞ、護廷十三隊、、、!」
「まずはこの戦争で生き残らなければ、、、!」
〜霊王護神大戦終結後〜
あれから麓源は名前を隠し流魂街を放浪しながら、味方になり得る勢力を探していた。
しかし無闇矢鱈に動くことはできない。
なぜなら過去の自分は、父から得た情報だけで、三界で何が起きていたかはほとんど知らなかったからだ。
辛うじて知っていたのは
下手に動けば大きな時流を変えてしまう。
そう考えて、麓源自身が知る大きな流れ、つまり父が王印奪取に動くまでは情報収集や、計画の準備に徹すると決めていたのだ。
「お、兄ちゃん、聞いたかい?」
「あの鬼白峯の当主が戦死したらしい。鬼白峯家も終わりだな。」
このように、麓源はひたすら情報を集めていた。
斬魄刀と融合した男。
バウント。
思念珠の存在と、それがもたらす大きな影響。
十刃。
元三番隊隊長と
八代目剣八。
色白で緑髪の破面。
滅却師の残党。
藍染に運命を翻弄された者。
瀞霊廷壊滅事件に関わった姉弟。
そして今得た情報である、没落寸前の貴族の存在。
これらの情報を元に、麓源は着々と準備を進めていた。
さらに分かったことがもう一つ。
父を蛆虫の巣へと収容する判断を下したのは、山本元流斎重國ではなく、中央四十六室だったこと。
その中央四十六室は諸悪の根源とも言える存在で、生き永らえるに値しない存在であること。
滅却師によって虐殺された四十六室は、総入れ替えとなったが、それでも麓源の中では、屑の集まりという認識には変わりなかった。
麓源にとって、護廷十三隊の殲滅と四十六室の蹂躙が生きる目的となっていった。
そして父が王印移遷襲撃事件が起こし、満を持して麓源は動き出す。
〜
「さぁ、地獄へ行きましょうか。」
麓源が黒腔を抜けると、目の前には羽の生えた破面、シュリーカーと、奇抜な死神、涅マユリが立っていた。
「お、お前だれだ?」
シュリーカーは警戒を強める。
「シュリーカー、地獄へはどうやったら行けるのです?」
突然の問いにシュリーカーは拍子抜けしてしまった。
「も、もう俺の鎖は壊されたから俺は行けねえよ。」
「生前に罪を犯した虚を斬るしかねぇんじゃねぇのか?」
「やはりそうですか、、、。」
麓源は瞬歩で移動しシュリーカーの胸を貫く。
「て、てめぇ、、、、なんで、、、?目の前のやつは、、、」
完全な不意打ちだった。
それもそのはず、シュリーカーとマユリの目の前には麓源が今も立っていたからである。
「あなたは虚ベースでしたよね。斬魄刀で斬られればもちろん、、、。」
「クソッ、、、!」
空間から仰々しい地獄の門が出現する。
そしてその扉が開くと、中から巨大な刀とそれを持つ腕が現れた。
そしてシュリーカーはその大刀により貫かれる。
「ありがとう。シュリーカー。先に行っていますよ。」
麓源は門の隙間から地獄へと入っていった。
「クソがぁぁぁぁぁ!嫌だぁぁぁ!」
「一体なんなんだネ、、、」
〜地獄〜
「君は?こんなところまで来るなんて正気じゃない。」
麓源は情報で得ていたピンク色の髪をした破面と交渉を始めようとしていた。
「地獄から出て、私の元で戦いませんか?」
「君は?」
ここで名を明かせば、何かのきっかけで、過去の自分に伝わってしまうかもしれない。
そうすれば事実をねじ曲げることとなる。
それだけは避けなければならない。
「そうだなぁ、、、ノヴァディオとでも呼んで下さい。ザエルアポロ•グランツ。」
「ほう、僕を知っているのか。いいだろう。面白そうだ。」
「さて、では次はアーロニーロ•アルルエリを見つけて、早く大虚の森へ行かなければ。」
「涅マユリが我々の切り札を持っていく前に。」
〜大虚の森〜
いつもと同じ、大きな霊圧の塊がぶつかり合っていた。
「破道の七十三、双連蒼火墜!」
赤髪の死神が放った鬼道を、破面が拳で殴り飛ばす。
「まだまだだよ!」
打ち破られた鬼道の煙に紛れて死神は斬魄刀で斬りかかった。
「一刀両断!」
死神の斬魄刀が破面の胸から腰にかけて大きく斬り傷を与え、破面の身体から鮮血が吹き出した。
「おっと、、、今回はここまでだ!また遊ぶとしよう、死神!」
そう言い残すと、破面は黒腔へと消えていく。
「逃したか。」
そして破面が黒腔から自身の住処へと出た時だった。
「剣八と戦いたくありませんか?」
麓源は破面に問いかける。
「誰だ?」
麓源は破面の問いに答えることなく続けた。
「私に着いて来れば剣八と戦うことができます。」
「へぇ、君は?」
〜
「これは面白いネ。」
マユリは液体の入った高さ1メートルほどの円柱状のカプセルを眺めていた。
「霊王の右足に脊髄。やはりすでに見つけていたか。あのときは他の部位を探していた、というところかネ。」
「それは我々の物です。涅マユリ。」
麓源の声が響く。
麓源の後ろには3人のフードをかぶった破面が立っている。
「間に合ってよかったです。あなたが奪って行く前に。」
「退いてもらえませんか?ここで暴れて霊王の肉体に傷はつけたくないのです。他のものならどれだけ研究しても構いませんから。」
「こんな物を前に退くと思うかネ?」
「でしょうね。」
麓源は小声で斬魄刀の解号を唱え、瞬歩でマユリの背後を取る。
麓源により羽交い締めにされたマユリの前にはザエルアポロが立っていた。
「ではな、三流の研究者!
マユリは羽交い締めから逃れようとするが、まるで岩のように固くやっとの思いで右手だけが自由になる程だった。
「これはまずい、、、」
マユリはすぐ様刀を取り出し自身に突き刺す。
パシャッ
間一髪マユリは液体となり部屋の隅へと流れていく。
麓源は計画と違う攻撃を放ったザエルアポロを諫めた。
「あのまま撃っていれば、涅マユリは死んでいたかもしれません。涅マユリは殺さないという約束だったはずです。」
涅マユリを殺してしまえば、時の流れに矛盾が生じる。
「感動の再会だったものでついね。すまない。」
ザエルアポロは悪びれる素ぶりさえ見せない。
麓源は胸元からある機器を取り出す。
「ソレハ何ダイ?」
アーロニーロはその見かけない機器を指して問いかけた。
「これは血を解析しその人物がどこにいるかを把握することができる装置です。」
麓源の父、仙波逸ノ将が更木剣八と交戦した際に採取した血液が入っている。
更木剣八の存在は大きい。
護廷十三隊と交戦するにあたって、更木の居場所は重要となることを父もわかっていたのだ。
「あの人も目の付けどころはいいんですが、少しばかり抜けているのと、すぐ熱くなるところが惜しくてね、、、」
麓源の父は昔から涅マユリや藍染、浦原喜助の話となると、すぐに激昂していた。
そして激昂すると、周りが見えなくなり猪突猛進状態となるのが玉に
「まぁだからこそ私の策がうまく事運ぶのですが。」
「何ノ話ヲシテイルンダ?」
「あ、いえいえ、こちらの話です。今は更木剣八がどこにいるかが分かるようになっています。」
更木剣八の名を聞いて、今まで沈黙していたシエン•グランツが突然話し始める。
「更木剣八だって?どこにいるんだ?僕は約束したんだ。また殺し合いをするとね!」
「今はまだダメです。計画が狂います、筋道通り進めなければ。」
「ならいつならいいんだ!!」
「100年後まで御機嫌よう、といったところでしょうか。」
麓源はザエルアポロの方を向き、その言葉を伝えた。
「なぜ僕に言うんだ?」
「なんにせよ霊王の欠片を持っている状態で彼とは会いたくないですからね。」
「では霊王の右足と脊髄を持って先に行っててください。」
「私はここで会うべき人がいますから。」
そして麓源は3体の破面を残して、黒腔へと姿を消した。
〜寂れた小部屋〜
幼い麓源はポツリと1人座っていた。
斬魄刀を折られてしまったことで父から叱責を受け、落ち込んでいたのだった。
青年の麓源は黒腔を抜け、幼い自分の目の前に現れる。
しかし幼い自分はうつむいていて全く気付いていない。
その様子を見て麓源は懐かしく感じていた。
当時落ち込んでいたところ、顔を上げると、目の前には黒いコートの人物が立っていて腰を抜かすほど驚いたのを、鮮明に覚えていたからだ。
そして幼い自分が顔を上げ、驚いた顔で未来の自分を見ている。
あの時の自分は何と言ったのだろう。
今から言おうとしている言葉は、あの時と同じ言葉なのだろうか。
そんなことを考えながら青年の麓源は言葉を発する。
「やぁ、はじめまして。いや、私は初めましてではないか。」
幼い自分は警戒心を前面に出している。
「お、おまえは?」
そんな未熟な自分を微笑ましく思いながら、当時の自分から言われたことを伝えた。
「いいことを教えてあげよう。君の父上に報告するといい。」
「ここに置いてあった霊王の一部は、、、、」
「涅マユリが奪って行った。」
それを聞いた幼い麓源は薄暗い廊下を全速力で駆け出した。
「やはり若いな。」
青年の麓源は微笑しながら黒腔を開き、満足そうに中へ入って行った。
そして、ザエルアポロ達の前に黒腔が開き、麓源が現れる。
「遅かったじゃないか。何をしていたんだい?」
ザエルアポロの問いに、麓源は静かに答えた。
「過去を塗り替えてきたんです。」
過去の自分が認識していた事実は変えていない。
しかし内容は変えてきた。
涅マユリに、死神側に霊王の一部が渡っていたら、戦況はかなり厳しくなっていただろう。
「ここが我々にとって勝利のターニングポイントとなる。」
これで、これから向かう未来では有利に働くはず。
私が必ず浄化する。
To be continued.....