BLEACH 〜Higher Than That Moon〜 作:虹捜索隊
さーせん。
「卍解、
――斬りて染めるな
――
砕蜂は一度だけ彼の始解を見たことがあった。
在校任官の視閲式でのことだ。
真央霊術院の学生でありながら、護廷十三隊への入隊を上申された青年。
十二番隊隊長檜佐木修兵が目にかけている隊士。
かつて
綱彌代の配下としてその禍乱の中心にいた少年こそ錆面彦禰であったと知るのは、彼が護廷十三隊に入隊してから数年が経ったときだった。
錆面彦禰……かつての名は
彼が十二番隊隊長檜佐木修兵より上申されたときは、すでに錆面姓であった。
その名は錆面。
西流魂街の第六十四地区――
綱彌代から解放された少年が生きていくと決めた場所。
その命名はさながら、治安の悪さにおいて比肩する地区無しと謳われた北流魂街第八十地区“更木”で名を馳せた型破りな死神のようだった。
錆面彦禰。
彼の始解は相手の体をすり抜ける刀。
出血もなければ外傷も負わせない。
しかしそれは、すり抜けた際に痛みの感覚のみを神経に伝達させる鬼道系の斬魄刀であった。
つまり、何度でも同じ場所を攻撃することが可能な斬魄刀ということだ。
相手を圧倒する実力さえあれば、相手の命を奪うことなく敵を無力化することができる。
砕蜂の能力は始解が弍撃決殺、卍解が一撃必殺。
敵を殺さずに無力化するなど、檜佐木の卍解と似た“甘い”能力だと感じたことを砕蜂は覚えていた。
そんな“甘い能力”の卍解。
六車が期待を寄せるからには、それなりに特殊な能力を持った卍解だと彼女は推察していた。
彦禰の手に斬魄刀はなかった。
解号と共に彼が掌を刀に突き刺したかと思うと、柄の根本まで貫き、瞬く間に刀身は暗赤色にどろどろと溶解したのだ。
「いきますよ。」
彦禰がそう言うと、右手から約50センチメートル程の“暗赤色の針”が滴り出た。
彦禰の周りには赤黒い瘴気のようなものが円状に広がっている。
「
彼はそう唱えて針を自身の左腕に刺して引き抜くと、続いてジェラルドの右腕に向けて素早く放った。
赤黒い針がジェラルドの右腕に見事命中し刺さったが、皮膚が硬いせいか深くは刺さっていない。
しかし彦禰に焦る様子はない。
「
彼の号令とともにジェラルドの右腕はみるみる内に赤黒く、そして炭のように黒くなっていった。
「なんだあれは・・・?」
訝しそうに彦禰の卍解を見ている砕蜂に、六車が解説をした。
「奴の能力は、敵に対して自分に刺した場所と同じ場所に刺せば、その部位の血液と、その中に流れる霊子の循環を止めて急速に壊死させることができる。」
「部分的な弍撃決殺に似てるかもしれねぇな。」
彦禰は敵の右腕が壊死したことを確認すると、振り返って大声で叫んだ。
「壊死させた部分を破壊してください!
その声に反応したのは砕蜂だった。
「大前田!!」
「分かってますよォ!!」
明らかに疲労の表情が見える砕蜂がそう叫ぶと、大前田が彼女の背後に位置した。
「おい・・・いけんのか?」
六車の問いに対し砕蜂は気丈に振る舞っている。
「吹き飛ばされたくなければ下がっていろ・・・」
「卍解・・・
砕蜂の右腕に纏われた金属製の雷管が発現し、程なくして雀蜂雷公鞭が射出される。
射出された誘導弾は、一直線にジェラルドの右腕へと煙を吹きながら向かっていった。
直撃とともに鳴り響く轟音、そして大爆発。
煙が晴れると、そこには変わらずジェラルドの巨大な腕が残っていた。
「くそっ、火力が足りないってのかよ!」
この戦闘で砕蜂が撃った卍解は今日だけで既に4発。
彼女の卍解の火力は凄まじい反面、通常3日に1発が限度であった。
そのため無理をして放った彼女の卍解にはいつもの威力の10分の1程の威力にも満たなかった。
「足りねぇのかよ・・・なら俺が・・・!」
「ダメです!僕の卍解は近づいたり触れたりすると霊子の腐敗が感染します!」
「クソっ・・・!」
苦い表情を浮かべる六車とは対照的に、彦禰は落ち着いていた。
「苺花さん!!出番ですよ!」
彦禰は振り返ってにこやかに苺花に呼び掛ける。
「分かってるって!・・・ったく!指図しないでよ彦禰!!」
「技術もへったくれもない力技で吹き飛ばしてください!!」
「あんた言い方っ!!ったく……」
いつもの通り、彦禰の悪気のない物言いに呆れながらも、苺花は二振りの斬魄刀を重ね合わせるように振り上げた。
「いくよ
「卍解!!」
「
To be continued.....