BLEACH 〜Higher Than That Moon〜 作:虹捜索隊
〜朽木邸・当主の間〜
「それで、決まったのか?」
恋次は正座で、お腹の大きなルキアは足を崩し、白哉の前に座っていた。
「いえ、、、それがまだ話し合い中で、、、」
白哉は義妹夫婦に貸し出していた字画の記載された書籍や、朽木家歴代の名簿を自身の横へと移動させ、積み重ねた上で整えている。
「字画や、伝統から離れることも悪いことではない。」
「お前たちにとって、娘が将来どうなって欲しいかを考えてみろ。」
〜朽木邸・廊下〜
「どうなって欲しいか、かぁ、、、」
「俺は勢いのある漢気のある子に育ってほしい!」
「莫迦者!娘だぞ!?」
〜現世・空座町〜
阿散井夫婦が現世の歩道を歩いていると、偶然にも、尸魂界でも有名なデコボコカップルと出会う。
「おう、石田。彼女との調子はどうだ?」
「阿散井、なんで君が先輩面してるんだ、、、?」
ルキアは初対面である雨竜の彼女の方に正対し、姿勢を正した。
「初にお目にかかる。私は、、」
「知ってるわよ。朽木ルキアと阿散井恋次でしょ?虚夜宮に乗り込んできた。」
「で、なんで君たち夫婦が現世に?デートかい?」
「違ぇよ!お前らと一緒にすんな!」
恋次は煽るようにニヤニヤしている。
そしてその煽りにまんまと引っかかったのがチルッチだった。
「だ、だれがこのメガネとデートを、、、!こっちから願い下げよ!」
「なんだと!?今回は君が服を見たいっていうからついて来たんだろ!?」
思いもよらない展開に恋次は少しばかり罪悪感を覚え、話題を変えた。
「まぁまぁ、、、それより石田!」
恋次は、チルッチと口喧嘩をする雨竜を肩を組むように引き剥がすと、女性陣と距離をとりひそひそ話を始めた。
それを見たルキアも同じ女性としてチルッチに悩みをぶつける。
「実は子供の名前で悩んでいてな、、、お主達に子供ができたらどうやって名前をつける?」
チルッチは驚いた様子で少し間を置くと、真剣な面持ちでアドバイスを始めた。
「あんた達二人の要素から取ってみるのは?」
「私達二人の要素、、、か、、。」
ルキアは顎に手を当て二人の名前を組み合わせ始める。
「恋、、、キア、、、、ル、、、恋、、、」
「別に名前じゃなくてもいい。あんたなら氷とか雪とかさ。あんたの旦那の能力は知らないけど。」
それを聞いてルキアは恐る恐る、将来雨竜達の間に生まれてくるであろう子供の名を口にした。
「ならお主達は、、、滅、、、破、、?」
「物騒すぎんでしょ。例えば、、、あいつの竜に私の要素を加えるとかさ。」
「なるほど、、、!」
「まぁ、あいつとの子供だなんて万に一つもないけどね。」
「子供ってウザそうだし。」
チルッチは雨竜の背後に近寄り、襟元を掴むと強引に歩き始めた。
「まぁ色々考えてみたら?」
「おっ、おい!襟を掴むな!しわがつくだろう!」
引きずられていく雨竜を眺めながら、恋次はつい心の内を吐露してしまう。
「あいつも尻に敷かれてんだなぁ、、、かわいそうに、、、。」
「あいつ
「い、いや!なんでもねぇ!そ、それより!もう帰ろうぜ!」
恋次は話を逸らすように穿界門を開き、中へと駆け込んでいった。
〜尸魂界〜
恋次は雨竜からのアドバイスをもとに、考えを巡らせていた。
「結局石田の考えも朽木隊長とおんなじだよなぁ、、、」
ドンッ
「痛っ、誰だ、、、って!」
恋次がぶつかった相手は、恐らく誰もが一番ぶつかりたくない死神だった。
「更木隊長!!」
目の前の男はこれまでに経験したことのないような殺気を放っている。
「阿散井、てめぇしっかり前見て歩け。」
「も、申し訳ねぇっす!更木隊長にぶつかるなんて!」
「莫迦野郎、そうじゃねぇ。」
「てめぇの女が腹に子供抱えてんだ。夫のてめぇがしっかり進む道を見とけっつってんだろうが。」
「更木隊長、、、!」
すると剣八の後ろからスキンヘッドが顔を覗かせた。
「で、何をそんなに悩んでたんだ?恋次。」
「いや、、、生まれてくる娘になんて名前をつけようか悩んでたんすよ、、。」
恋次が神妙な面持ちでそうこぼすと、剣八が即答した。
「なってほしい姿を名前にすりゃいいだろ。」
「だから俺は自分を剣八と名乗った。」
ーー八千流、俺が唯一人こうありたいと願う人の名だーー
ーーお前にやるーー
「悩んで決めりゃいいじゃねぇか。」
「名前ってのは親が初めて子に贈るもんだろ。」
そう言うと剣八は、ルキアから動線を外し歩き始める。
「行くぞ。」
ルキアと恋次は目を丸くして、鬼と呼ばれる死神の背中を見ていた。
「更木隊長、、、丸くなったってのはほんとみてぇだな、、、。」
〜朽木邸・ルキアの部屋〜
恋次とルキアは向かい合って座っていた。
「俺は、、、!俺の思う娘になってほしい姿は、、、!」
「は、恥ずかしいから一回しか言わねぇぞ!」
恋次は一呼吸おくと勢いよく話し始める。
「真っ直ぐに育って欲しい!壁にぶち当たろうが何度も立ち上がって生きていって欲しいんだ!!その、、、あいつみたいに、、、」
ルキアは微笑みながらその人物を言い当てた。
「一護のようにか、、?」
「あぁ、そうだよ!悪いかよ!」
ルキアは穏やかな顔をしながら続ける。
「そうか、、、なら割れたな。」
「私は織、、、井上のように人に優しく、強くあって欲しい。」
ルキアはそう言うと、祝言の際織姫から貰った壁に飾ってある白無垢に目をやった。
ーー苺の花模様ーー
恋次もつられて、その白無垢に目をやった時だった。
「あ!」「あ!」
二人の声が部屋の中でこだまする。
「いいこと思い付いたぞ。」
妙案が浮かんだ、と言わんばかりに恋次は嬉しそうな顔をしている。
「まさか一緒ではあるまいな?」
そうやり取りをしながら、二人は筆を取り白紙に殴り書いた。
「よし、せーので見せるぞ!?」
「せーの!!」
恋次が掛け声をかけたが、ルキアは紙をひっくり返さなかった。
そして恋次だけが名前を見せることとなる。
ペラッ
《苺花》
「これなら一護の要素も入ってるし、井上の要素も入ってるだろ!」
ルキアはその名を見て、目を閉じて柔らかく微笑んだ。
「流石は私の夫だな。」
そう言い、ルキアも紙を裏返す。
ペラっ
《苺花》
「一緒だな。」
恋次とルキアはお互いを見つめ合い、微笑んだ。
「読み方は、、、」
「いちごばな」「いちか」
「たわけっ!!訓読みにするなっ!!」
〜終わり〜