篠ノ之束(ダメ人間)は改造人間、もとい頭脳、身体能力双方においてオーバースペックな存在である。だがコミュ障だ。わ〇モテの主人公並に。
ぶっちゃけそのオーバースペックな能力を使えば、世界から賞賛を受けることは容易であるはずだった。だがコミュ障だ。どこぞの小人さんと語り合う人並には。
彼女がISを開発し白騎士事件をマッチポンプしたのも、自分の力を世界に見せつけその存在を誇示したかったからに他ならない。だがコミュ障だ、そして空気が読めない。川崎在住の剥いた海老の先輩並に。
天は人に二物を与えずというが、彼女に至っては真に必要な一物が与えられなかった。彼女がそれを自覚した時、神を恨んだ。
「もし生きてたら殺しにいってやる」
そう慟哭する程に。立川にホームステイしている某二人が聞けば、何それ困ると苦笑するだろう。
ISによって世界はイロイロと動乱したが、殆どの人にとっては時代も進歩したくらいの印象しか植え付けなかった。日本がその最もたるモノで、自国で発見されたにも関わらず特に隠匿することなく、そのまま世界に放流した。
これにはウサギも苦笑い。彼女的には自分の力で日本TUEEEしてやろうと、白騎士事件の後日本政府にISの存在を伝えた。だが彼女はコミュ障だ、他人と話して挙動不審がオーバースペックな人の言葉がまともに伝わる訳はなかった。
「何故だッ、何故誰も私の話しを聞きやがれねぇッ……こんなのぜったいおかしいよ……」
あくまで原因を自らではなく他者に求める辺り、ダメな大人である。オーストリア付近出身のクロとナポリのイタも、それを痛感していた。
クロ、クロエ・クロニクルの名を持つ黒目幼女はとある事件でウサギに助けられた人の形をしたナニカである。眼鏡を掛けているが、別に目が悪い訳でもなくなんとなく、ウサギとイタ公も同様で眼鏡を掛けている。
イタに至ってはなんかいたのでウサギが拾った。ピッツア大好きイタ、戦闘揉め事荒事全てにおいて苦手も苦手。得意なのは料理と逃走、ナンパに家事だ。だが男だ。
そんな社会不適合者3人、今日も今日とて悪巧み。ノリノリなのはウサギだけな辺り、3人の温度差は計り知れなかった。
「さぁ今日も行くでガンスよ、世界は私で廻ってるのだ!愚民に私の英知を見せつけてやるわヌホホホホホ!!」
「また今日もトバしてますね束様、うわめんどくせえ」
「うへえ」
幼女と伊は冷めた目で見るが、いつものことと会話を交わす。ウサギとコミュニケーションとれる時点で彼らもかなりアレであるが、自らを天災と同類と認識出来ないしたくない為気付かない。
「さあさあどうしてくれようか!!白騎士事件のように、また世界を混乱させてやろうかいやまて天丼は良くないならば火星に行ってテラフォーミングでもしてゴキブリを進化させようかムフフ知的好奇心がワクワクさんダゼェ……」
「大丈夫ですか束様」
「御免クロちゃん救急車呼んで来て黄色い奴」
ふとナンパ野郎が周りを見渡すと、昨日大掃除をした部屋が腐海に沈んでいた。具体的にはゴミ屋敷、某ジャガ芋大好き娘の部屋だ。Gがいないだけ有情、そんな状態だ。
「なんで昨日掃除したのに此処まで汚染されてるんデスカァァ!!アンタISと一緒に暗黒物質でも作ってんノ!?」
「いやいや、束様が料理なんかするわけないでしょうおバカさん。開発しつつ2ちゃん見ていた束様に夜食作っただけですよ、私が」
「テメェも共犯か!!アレ料理って言わなねーヨ !!ただの炭化物だ!!」
卵が可哀相な状態だ、産んだ鶏に黙祷を捧げつつ掃除にかかる。ウサギの世話は現在自分とクロの二人で行っている。昔は3人纏めて戦乙女に寄生していたが、オカンがキレて実家に帰った為せざるえない状況なのだ。完全に自業自得である。
ちなみにウサギ24、クロ幼女、イタ31。もうイロイロと駄目な面子である。こいつらが世界規模で指名手配されている愉快犯とされている辺り、世界は暇人だらけである。
「もうルンバ造ろうぜ、TF並にデカイの」
「イイネ!!変形はジェット機にしようか!」
「束様違います先ずカーナビ付けましょう」
「お前ら掃除機ってんだろうが何作る気ッ!?」
今日も移動式『吾輩は猫である』は平和だった。
◇
「あー疲れた、アホに幼女の世話も楽じゃないぜ……」
そういって、格好つける三十路のロマリアンは愛用のエプロンを纏い調理に従事する。家事とナンパ以外はダメダメな自分を棚上げしつつ、夕食を作っていく。
移動式『吾輩』の中は割と快適で調理スペースも過不足なくあった。本来調理なぞしなかったニート3人の体調の為、戦乙女が無理矢理ウサギに増改築させたのが発端である。
ウサギの謎言語をかろうじて翻訳できる人だからこそできる芸当である、自分達枢軸外人ですら、半分ほども通訳できない。
「というより何言ってんのかわからねーのが原因だけどな、『モキモキモキィ!!』って奇声発した時は流石に壊れたかと思った」
過去のウサギの奇行を思い出し乾いた笑いを出すイタ男。マフィアにコンクリ詰めされ地中海に還る寸前に救われた恩など既に忘れている。
「この恩知らず、と言うことが出来たらどれだけ良かったでしょうねハハハ」
「うんお兄さんもそう思う、てかクロちゃん同族見る目で見ないでくんない?」
「何をおっしゃる。無職プータローの甲斐性なし」
「ハハハこやつめ」
「ハハハ」
幼女に対しキレる三十路、完璧に大人気ない風景だが日常茶飯事である。無職プータローに至ってはクロもブーメランであるが幼女と三十路、比較対象がおかしいのでお互い言わない。言ったら戦争である。
「で、何作る気ですかイタ」
「ビスマルク」
不意に幼女がガッツポーズをとる。流石独逸、いや付近出身。卵大好き幼女はケタケタと不気味に笑う。段々とウサギに似てきた気がして軽く欝になる。
「こら、変な笑い方するな。千冬さんが見たら泣くぞ」
「好物目にして愉悦がとまらないはずがない。故に大丈夫、問題ない」
何が大丈夫なのだろうか、頭?それなら既に終わってる。
とりあえず、幼女にも手伝わせ調理を続けていく。今晩は郷土飯、ピッツアにパスタ、カツレツにスープ、おまけにデザートだ。この時ばかりは普段の苦しみから離れられるのだ。
ありがとう戦乙女、私に居場所(厨房)を与えてくれて。
「イタ、デザート味見していいか?答えは聞いてない」
「クロちゅわん!?それ味見じゃねぇよ完食ってんだ!あとついでにとばかりにニョッキ喰うな!無くなるから、無くなるから!」
ツッコミをいれながらクロを止めつつ、パスタ料理を作るナンパ野郎。慣れた手つきでパスタに肉、野菜を詰めていく。
「ラヴィオリですか、では一口」
「だからヤメロ、それまだ生だから!!」
食い意地はウサギと同レベルの幼女は、知ったことかとばかりにつまみ食いをしていく。誰か怪盗レト〇ト呼んできて、もしくはコンビニ店員でも良いから。
「早くしてください。こちとら生ハムとチーズ乗せた脂身たっぷりのカツレツと、一緒に食べる半熟トロトロ卵のビスマルクピザの為に我慢しているのですから」
「美味そうな解説乙、なら邪魔しないでウサギのストッパーになってきなさい。そしたらさらに美味しくなるよ」
「だが断る」
「このドグサレがァーー!!」
気がつけば倒れていた自分がいた。誰にやられたかは思い出せない、妙な違和感を感じつつ厨房を見れば誰もいなかった。
冷蔵庫に入れていたハズのマスカルポーネをたっぷり使い、洋酒とエスプレッソで風味を付け、隠し味でココアをブレンドしたティラミスが無くなっていたことを除いて。
「よろしいならば戦争だ」
今ならば、修羅をも越えそうな程に怒りを纏い、ウサギの部屋に突貫していく三十路男であった。
くーちゃんはラウラの先行失敗作、ですが千冬ママンの決死の教育であんなんになりました。
ナンパ野郎に関しては現世において贖罪喰らってる、憐れなダメ人間の認識で良いです。救われたと思ったら地獄への片道切符を渡された、そんな感じで。